Hothotレビュー

実売10万円以下、Ryzen搭載のビジネス特化ノート「MateBook 14 2020 AMD」

ファーウェイ「MateBook 14 2020 AMD」

 ノートPCにもRyzenの波が押し寄せている。最近ではライバルに並ぶ、もしくは超える性能をもつRyzen 4000シリーズが登場したこともあって、一段とコストパフォーマンスの高い「10万円以下ノートPC」が続々と増えてきている。

 今回紹介するファーウェイの「MateBook 14 2020 AMD」(以下、MateBook 14)も、そんな競争が激化している実売10万円以下クラスのAMD Ryzen搭載モデルだ。競合とは違うMateBook 14ならではの魅力はどこにあるのか、チェックしてみよう。

1万円差のRyzen 7版ではなく、Ryzen 5版を選ぶ理由とは

 MateBook 14自体は、2020年にRyzen 7 4800H搭載モデルとして発売されている。そのスペックを抑え、「10万円以下」のいわば「普及価格帯」に落ち着かせたバージョンとして2021年2月に発売されたのが、今回のRyzen 5版MateBook 14だ。

今回紹介するのはRyzen 5版のMateBook 14

 ただ、2021年3月時点の実売価格で言えばギリギリ10万円以下とは言え、従来のRyzen 7版は11万円弱で、1万円ほどの差しかない。この程度の価格差なら、スペックとしては間違いなく高いだろうRyzen 7版を選びたくなるところ。

 しかし、これはおそらく明確なコスト減を狙ったものではなく、個人事業主をターゲットにしているのではないかと想像する。つまり、白色申告者が単純に経費処理できる10万円以下の価格帯に設定して購入しやすくする、ということを目的にした「スペック調整」なのかもしれない。

 たとえば働き方改革や在宅勤務などによってフレキシブルな働き方ができるようになり、その影響で副業をもつ人が増えているようだが、個人事業主の立場でそうした副業をこなしているケースも多いはず。10万円以下のモデルをラインナップすることは、今の時代PCメーカーにとって重要な戦略の1つになっているとも考えられる。

 といったようなことを前提とするなら、個人事業主としてPCを使う場合、あるいはBYODで副業と本業の両方を1台のPCでこなす場合、という視点からMateBook 14を見るべきだろう。そういう意味では、ビジネス用途にとことん絞りきったモデルということもできそうだ。

 なので、「10万円以下のノートPCとしてどうか」よりも、どちらかと言うと純粋に「1台のビジネスノートPCとしてMateBook 14がどうなのか」を確かめたいところ。

Ryzen 5版のMateBook 14は、個人事業主向けPCとして考えるべきかもしれない

 そんなわけで、改めてMateBook 14を紹介すると、本製品はCPUにRyzen 5 4600H(6コア12スレッド、3~4GHz、TDP 45W)を、GPUにCPU内蔵のRadeon Graphicsをそれぞれ採用し、16GBのメモリと512GBのNVMe SSDを搭載した、14型ノートPCだ。コスト重視のモデルではRyzen 5 4600Uがチョイスされがちだが、それよりもクロック数で勝る4600Hとしているのは、安価でも可能なかぎり高い性能がほしい業務用途にはうれしい部分だろう。

 液晶ディスプレイは非タッチパネル。2,140×1,440ドットというややイレギュラーな解像度ながら、縦スクロールアプリケーションやデジカメ画像の表示・編集などに都合の良い3:2のアスペクト比となっている。フルHDよりひとまわり大きい解像度であることを考えると、動画編集にも適したサイズ感ということもできる。

 内蔵Webカメラは、キーボードのファンクションキーの並びに埋め込まれたポップアップ式で、720p。本体側面にはヘッドフォン端子があり、約15.9mmの薄型筐体ではあるものの標準のHDMI出力端子も装備している。

720pのWebカメラはポップアップ式
左側面には充電兼用のDiplayPort Alt Mode対応USB Type-Cとヘッドフォン端子、HDMI出力

 USBポートはType-Cが1つ、Type-Aが2つ。いずれもUSB 3.0相当(最大5Gbps)で、Type-CについてはDiplayPort Alt Mode対応の充電兼用端子となっている。同モード対応の外部ディスプレイに画面出力しながら給電可能であることも確認できた。

右側面にはUSB 3.0ポートが2つ
ケーブル1本でデュアルディスプレイ化&MateBook 14への給電が可能

高い質感とロングライフバッテリ。在宅勤務とモバイルシーンの両方に

 これまでのMateBookシリーズがそうであったように、このMateBook 14も外観の品質は相変わらず高い。中身がぎっしり詰まっているかのような高剛性のアルミニウム合金筐体に、ブラスト加工された肌触りのいい表面処理。余計な装飾のないシンプルなデザインで、所有感は高い。画面占有率約90%の狭額縁ディスプレイは、14型という数値以上に広々とした印象を受ける。

所有感が得られる高級感のある外観デザイン
ディスプレイは2,140×1,440ドット、3:2のアスペクト比。画面専有面積は90%以上

 落ち着いたグレーのカラーリングは、ある意味「無個性」でもあり、自宅から外へ持ち出して、オフィスやコワーキングスペースなど他人の目に触れる場所で使うさいにも悪目立ちしないのがいい。

 スペックシート上の重量は約1.49kg(実測1,461g)で、軽量というほどではないものの、モバイル用途も十分にまかなえる範囲だろう。バッテリ持続時間は約11.2時間で、1日のビジネスアワーをたっぷりカバーしてくれる。高負荷時の冷却ファンの音が、不快な高音が混じらないジェントルなノイズなのも、長時間使用向きと言える。

薄型でモバイル用途にもマッチする

 キーボードはごく標準的なレイアウトで、無理なくきれいにまとまっている。ストロークはやや浅いが、頼りがいのある反発力で感触はいい。トグル式の「Fn」キーのおかげでファンクションキー(マルチメディアキー)も使いやすい。

 タッチパッドは広めでジェスチャー操作にも対応するが、押し込んでドラッグ操作するようなときは少し堅めに感じ、筆者としてはもう少し軽く操作できればありがたいな、と思う部分。

無理なくきれいにまとまったキーボードレイアウト
トグル式のFnキーで、ファンクションキーやマルチメディアキーが使いやすい

 ビジネス用途を考えたときにとくに都合がいいのは、Windows Hello対応の指紋認証機能を備えていることだろう。電源ボタンを兼ねる指紋センサーに指をかざしてログオンする方法は、数ある認証手段のなかでも手軽で、セキュリティ的にも安心度が高い方法だと個人的には考えている。

 カメラを使った顔認証のように見張られているストレスがなく、きちんと「ログオンしたいとき」に使えるからだ。顔認証だととくにPCを使う用事がなくても、PCのほうを向いただけでロック解除されるため、うっとうしく感じるときもある。

指紋センサーも兼ねた電源ボタンで、Windows Helloによる指紋認証が可能

 外観と装備を総合的に見ると非常にバランスが取れているが、1点残念なところを挙げるとすれば、ネットワーク周り。無線LANはWi-Fi 5までで、昨今のトレンドであるWi-Fi 6には非対応だ。

 有線LANポートも備えていない。新しいPCでありながら、将来的なネットワークの高速化に単体では対応できないことについて、「Wi-Fi 5が使えれば十分」と割り切れるかどうかが1つの分かれ目になるだろうか。

ビジネスアプリケーションで高い性能を発揮

 ベンチマークテストも見てみよう。PCMark 10やCinebenchについては、同じ6コア12スレッドの第10世代Core i7-10750H(Iris Plus Graphics)と、第11世代Core i7(Iris Xe Graphics)のちょうど間くらいの好成績を叩き出している。バッテリ駆動時間も、負荷をかけ続けた状態での7時間半超えは立派。一般的な使い方なら充電なしで1日もつ、と言い切っても良さそうだ。

PCMark 10の結果
3DMarkの結果
Cinebench R23.200の結果
CrystalDiskMarkの結果

 あくまでもビジネス向けPCであり、本格的なゲーミング用途を意識していない内蔵GPUであることから、3DMarkや3Dゲームのベンチマークはそこそこの数値だ。それでも「ファイナルファンタジーXIV」ではフルHD解像度で「快適」と判定されていることからも、一定のゲーミング(3D)性能は確保できていることがわかる。「ASSASSINS CREED VALHALLA」のようにさらにヘビーなゲームとなると、やはり荷が重いようだが……。

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークの結果
ASSASSINS CREED VALHALLAのベンチマークモードの実行結果

 また、実用アプリケーションのテストとして、RAW現像ソフトの「DxO PhotoLab 4」を使い、50枚のRAW画像をJPEG変換するのにかかる時間も計測してみた。こちらもGPU性能が高いほど短時間で処理できる「DeepPRIME」というノイズリダクション機能を使っているため、MateBook 14にとっては不得意な分野となる。

DxO PhotoLab 4によるRAW画像50ファイルの現像時間

 ここでは参考までにCore i7-10750Hを搭載したmouse K5で、CPUのみで処理した場合と比較している。結果としてはGPU未使用時のCore i7-10750Hの2分落ちで、まずまずといったところだろうか。とは言え、このような極端に重い処理にはやはり向いているPCとは言えず、MateBook 14はもう少しライトなアプリケーションで実力を発揮するノートPCと考えたほうがいいだろう。

「個人事業主向けPC」として満足度高く使える堅実な1台

 Ryzen CPUの高いポテンシャルに、デザイン性の良さからくる所有感の高さや、長時間使用にも配慮したバッテリ駆動の長さとファンノイズの少なさ、指紋認証によるセキュリティなどが合わさって、MateBook 14はビジネス用途のノートPCとしてじつに良くバランスの取れている製品だと感じる。

 今どきのPCとしては、Wi-Fi 5までというネットワーク周りの若干の弱さが気にならなくもないが、そこさえ許容できるなら、堅実な個人事業主向けPCとして満足度高く使いこなせるはずだ。