特集

Amazonで買える1万円のAndroidタブレットは「使える」のか?購入して分かったアリとナシ

SVITOO P10

 スマホより大画面で、ゲームや動画視聴、あるいは仕事にも便利に使えそうなAndroidタブレット。通販サイトで検索すると、メジャーなブランドから聞いたこともないメーカーの商品まで幅広い価格帯のものがずらりと並ぶ。高いものであればきっと不満は少ないはず。でも、1万円程度の格安タブレットはどうなのだろう。気になったので実際に購入し、実用に耐え得るものなのか、性能や使い勝手を確かめてみた。

CPU、メモリ、インターフェイスなどの基本スペック

 タブレットを購入するにあたっては、10型クラスのAndroidタブレットでGoogle Playが利用できること、さらに技術基準適合証明(技適)を取得済みで、かつ実売価格1万円前後のものであることを条件とした。今回選んだのは「SVITOO P10」というモデルだ。

技適マークは背面に記載されている

 主なスペックは下表にも記載したが、Android 14に対応し、1,280×800ドットの10.1型ディスプレイで、4GBメモリ(+仮想メモリ8GB)と128GBストレージを搭載。「UNISOC T606」と呼ばれるArm Cortex-A55ベースの8コアプロセッサ(最大1.6GHz)を採用し、550MHz動作のGPU(Imagination PowerVR GE8322)を内蔵している。

SVITOO P10のスペック
OSAndroid 14
CPUUNISOC T606(8コア、最大1.6GHz)
GPUImagination PowerVR GE8322(CPU内蔵)
メモリ4GB+仮想8GB
ストレージ128GB
ディスプレイ10.1型液晶(1,280×800ドット)
インターフェイスUSB Type-C 1基、microSDカードスロット、3.5mmヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 5、Bluetooth 5.0
カメラアウトカメラ800万画素、前面カメラ200万画素
サウンドステレオスピーカー
バッテリ6,000mAh(リチウムイオン)
充電最大10W
同梱品USB充電器、USBケーブル、カバーケース
サイズ約246×163×10.5mm(実測)
重量約530g(実測)
8コアCPUにメモリ4GB、ストレージ128GBを搭載する

 2025年1月9日現在のAmazon価格は1万2,980円(3,000円引きクーポン適用時)だが、筆者が購入した2024年12月のタイミングでは9,880円で1万円を切っていた。時々セール価格になることがあるようなので、購入を検討しているならそのタイミングを見計らうのもいいかもしれない。

 しかし1万2,980円だとしても、格安タブレットであることは間違いない。それでいてスタンド機能一体型の専用カバーケースが付属しており、画面には最初からフィルムも貼られ(TPUで傷つきやすいので注意)、充電用ケーブルとアダプタが同梱されていた。この価格帯にしてはホスタピリティ高めな感じだ。

最初から専用ケースに装着された状態で梱包されていた
画面はしっかりカバーされる
カバー部分を折りたたむことで簡易的なスタンドに
付属品はほかにUSB充電器とケーブル、日本語対応の説明書

 充電・データ転送用のポートはUSB Type-Cで、その横にはmicroSDカードスロット(スペックシート上では最大1TB対応)が設けられている。これを活用すれば内蔵ストレージが不足したとしてもある程度カバーできるだろう。最近めっきり搭載機種が少なくなったイヤフォン(ヘッドセット)端子を装備しているのも、個人的には好印象だったりする。

Type-CポートとmicroSDカードスロットを装備
ケース装着状態でもType-Cにアクセスできるが、USBメモリは差し込めなかった。microSDカードスロットは塞がる
音量キーと電源キー、角にはヘッドセット端子がある。ちゃんとマイク付きイヤフォンが使えた

 サイズは実測で約246×163×10.5mm、重量は同530g。しっくりくるサイズ・重量感で、積極的に持ち運んで使えるレベル。メタル風(おそらくサイドのフレームがメタルで背面はプラスチック)のボディは見た目の質感と手触りは良いが、少し力を入れて背面を押し込むとペコペコするので、それなりの剛性感ではある。

本体重量は実測530g
ケース装着状態で実測719g

全体的な使い勝手、快適度は?

 決してパワフルなCPUではなく、物理メモリも4GBと少なめなので、全体的な動作の鈍さはどうしても感じられる。ボタンをタップしたはずなのに認識されずもう一度タップしなければならなかったり、ワンテンポ遅れて反応したり、という現象は少なからず発生する。画面に貼られたフィルムの影響もあるので、少しでも操作性を高めたいならフィルムははがして使ったほうが良い。

さすがにサクサク感はないが、スペック的に仕方がないところか

 筆者が普段使いしているGoogle Pixel Tabletと比べると、さすがに快適さの面では見劣りしてしまうところが多い(Pixel Tabletもスペック的にはハイエンドではないが)。

 感覚的には(家族用にしている)Amazon Fire HD 10 タブレットと同等か、それよりもわずかにもたつくかな、といったところ。サクサク動作を期待するのは、このクラスのタブレットには少し酷だろうか。

 それでも、Webブラウジングするのには過不足はないし、Google ドキュメントでワープロ的に使う程度ならなかなかに実用的だ。筆者としては、Bluetoothキーボードと組み合わせて原稿執筆用マシンにしてもいいかも、と思えるほど。ただし、Microsoft 365(Web版)のPowerPointのスライド編集を試したところでは、画像を扱うときにぎこちなさが出てしまい、実用度低めだった。

Bluetoothキーボードと組み合わせて原稿書きマシンにしてもいいかも

ディスプレイの品質、バッテリ性能は?

 搭載しているディスプレイはIPS液晶と思われ、明るく、輪郭のくっきりした映りで違和感なし。1,280×800ドットなので高精細ではないものの、10型というディスプレイサイズならHDクラスの解像度でも許容できる。実際、動画再生で映像が粗く感じることはなかった。若干太く見えるベゼルも没入感を妨げるほどではない。

 しかしながら、色合いとしては鮮やかさ、コントラストが低めで、写真を表示したときはメリハリが弱く見える。また、(横置きした時に)上下方向の視野角がわずかに狭い。とはいえWebブラウジングなど一般的な用途でそれが気になることはないから、実用面への影響は少ないだろう。

左がTAB P10、右がGoogle Pixel Tablet。鮮やかさやコントラストがやや低めに見える
上下方向(横置き時)の視野角は少し狭い
左右方向はより浅い角度からでも見える

 一方でバッテリは6,000mAhとなかなかの大容量。重い処理をし続けない限りは朝から晩まで使えるくらいのスタミナがある。が、アプリでバッテリ情報をチェックしてみたところ、サイクルカウント(充電回数)が最初から1,800を超えていたのは不安を感じさせる部分だ。

バッテリ情報ではサイクルカウントが1,800超え

 これが誤認識なのか、そうでないのかは分からないが、約1年半使っているPixel Tabletを同じアプリでチェックした場合は130回ほどだったことを付け加えておく。また、充電は最大10Wとなっており、満充電までにはかなりの時間を要することにも注意しておきたい。

アウトカメラはなんと2眼!? 画質はどうか

 背面側に2つあるカメラレンズだが、実はこれ、1つはどうやら機能しておらずダミーのようだ。Amazonの商品説明でもアウトカメラ800万画素、インカメラ200万画素という紹介があるだけで、アウトカメラが2眼であることにはまったく言及がない。

標準カメラに加えて広角やマクロ用のカメラもあるのかと思いきや、写真左側のカメラレンズは使えない

 設定アプリのシステム情報では「Secondary Camera: 0.08MP」とあり、一応認識はしているようなのだが、カメラアプリで設定やズーム倍率をいろいろ変えてみても有効にならない。あくまでも想像だが、ODMの上位モデルの設計を流用しているために、とりあえずダミー的なカメラに置き換えているのか、それとも2眼だとカッコ良さげに見えるからなのか……。

「Secondary Camera: 0.08MP」と認識されており、存在はしているようだが……

 生きているほうのアウトカメラでの撮影は、標準倍率の1倍から、最大10倍ズームまで可能。1倍超は(おそらく)デジタルズームとなる。画質については下記に示したサンプルの通り。800万画素(3,264×2,448ドット)ではあるものの、輪郭が甘く、ノイジーで、ハイライト周辺は盛大に白飛びしてのっぺりしている。しかしマクロ撮影はなぜか意外と得意なようだ。

アウトカメラの撮影サンプル
アウトカメラの撮影サンプル
アウトカメラの撮影サンプル(2倍ズーム)
アウトカメラの撮影サンプル(5倍ズーム)
アウトカメラの撮影サンプル(10倍ズーム)
アウトカメラの撮影サンプル。被写体に数cmまで接近して撮影できた
インカメラの撮影サンプル

Wi-Fi 5対応のネットワーク性能の実力は?

 ネットワークはWi-Fi 5(IEEE 802.11ac、最大433Mbps)に対応し、Webブラウジング、SNS、音楽・動画のストリーミング、Web会議など一般的な用途で不足を感じることはなさそうなスペックではある。

 実際、ほとんどの場面で通信速度に不満を感じることはないが、筆者の環境ではWi-Fi 5(11ac、5GHz)で最初つながっても、すぐにWi-Fi 4(11n、2.4GHz)に切り替わる現象が頻繁に発生した。こうなると実効速度が20Mbps前後になってしまうので、特にアプリやファイルのダウンロードでフラストレーションが溜まりがち。

最初はWi-Fi 5でつながってもすぐにWi-Fi 4に落ちることがあり、20Mbps前後でしか通信できないことも

 ちなみに、後ほどエンタメ性能のところで紹介する「原神」のインストールでは、30GB以上の初期データをダウンロードするところでたっぷり2時間かかった。まとまったサイズのデータをネットでやり取りする時は、Type-CポートにUSB LANアダプタを接続してあえて有線で通信したほうが速いかもしれない。

Type-CポートにUSB LANインターフェイスを接続すれば有線で通信も可能

動画、サウンド、ゲームなどエンタメ性能は?

 YouTube、Netflix、Amazon Prime Videoなど、いくつかの動画配信サービスを利用してみたところでは、HD画質の映像を高画質かつスムーズに再生できた。デジタルコンテンツ保護技術のWidevine L1に対応しており、こうした動画配信サービスの視聴も問題なく行なえる。HDR非対応とはいえ、10型ディスプレイで見る分には画質的にも十分だ。

 しかし、スピーカーの音質はかなりネックに感じられた。ステレオスピーカーであるにも関わらず音の広がりは少なくモノラル感が強い。低音はほとんどカットされ中高音域ばかりが目立ち、正直なところ聞くに耐えない。なので、Bluetoothオーディオを利用するか、イヤフォン端子にヘッドフォンや外部スピーカーなどを接続して聞くことをおすすめしたい。

ステレオスピーカーを内蔵。ただし音質は厳しい

 ゲームは、3Dグラフィックを伴わないカジュアルゲーム程度なら問題なくプレイできるだろう。原神のような本格3Dゲームも動作するが、先ほど触れた通り初期ダウンロードで少なくとも2時間、その後のシェーダの準備に1時間、計3時間以上かかってようやくゲームを始められる。グラフィック設定をデフォルトの最低に設定すれば遊ぶことは可能なレベルだが、操作に対するレスポンスは機敏とは言えない。

原神はグラフィック設定を最低にすることでプレイできなくはないレベルに

総合的には「アリ」だが満足度は高くない

 ほかにも音量のゼロと1の差が激しい(1にするといきなり大きくなる。これはAmazon Fire HD タブレットもそうだが)とか、ジェスチャーナビゲーションにおける左右フリックでのタスク切り替えがなぜかできないなど、細かいところで気になる部分もあったりする。

ジェスチャーナビゲーションで左右フリックしてタスクを切り替えようとしても、元に戻ってしまう

 が、ちゃんとAndroid 14搭載でGoogle Playが利用でき、動画再生マシンや原稿執筆用マシンとして十分に実用できることを考えると、1万円前後で購入可能なタブレットとしては総合的には「アリ」ではないか。ただ、タブレットとしての満足度は決して高くはない。

 とりあえず電子書籍や動画が快適に見られればいい、日々の情報収集やSNSのチェックを大画面でこなしたい、という風に割り切って使う分には期待に応えてくれる。が、オールマイティに使い倒したいということであれば、より高性能なモデルを検討したほうが無難そうだ。