笠原一輝のユビキタス情報局
テレワークでトラブりがちなビデオ会議を快適に! Windowsのマイク周りの設定を解説
2020年4月9日 12:30
政府が東京都などに対して緊急事態宣言を出すなど、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)による混乱は深まるばかりだ。このため、オフィスワーカーの多くが自宅でのテレワーク/リモートワークを強いられ、ZoomやTeamsなどのビデオ会議ソフト/サービスを利用しているのではないだろうか。
そうしたビデオ会議をPCでうまくこなすためのコツの1つとして、ここでは「マイク」にこだわって紹介していきたい。マイクは自分の声を記録し、それを相手に伝えるデバイスだ。自分の主張を好感を持って受け取ってもらうためにも、ノイズだらけの聞きとりにくい音声では、会議の妨げになってしまう。
ノートPCのマイクについての基本的な知識と、あまり音声が良くないときにはどのように対処したらよいのかなど、その対策方法をお伝えしていく。
最新のハイエンドノートPCには高性能な遠方界マイクなどが標準装備されている
そもそもノートPCにマイクが搭載されたのは、Skypeなどのビデオ会議アプリ向けにWebカメラが実装されるようになってからで、じょじょにノートPCの標準装備となった。
当初のWebカメラは、VGA(640×480ドット)といった低解像度で、動画が紙芝居になってしまうようなフレーム数の少ないものが使われていたが、年々品質が向上しており、最近では少なくともHD(1,280×720ドット)で秒間30フレーム(30fps)の動画をキャプチャできるカメラが一般的な仕様だ。フルHD(1,920×1,080ドット)対応のものも増えつつある。
そうしたカメラの解像度の変化に比べると地味だが、マイクに関しても静かに進化してきている。とくにここ数年で発売されたハイエンドPCは「遠方界マイク(Far Field Microphone)」と呼ばれる、集音性に優れた高性能マイクが採用されつつある。
その最大の理由は、MicrosoftのCortanaやAmazon Alexaといった音声認識機能への対応だ。デジタルアシスタントを使った音声認識機能を快適に利用するには、高感度で集音性に優れたマイクが必要になる。
こうした音声認識機能では「コルタナさん」や「アレクサ」といった人間の呼びかけに反応して、デバイスをスタンバイモードからウェイクアップする機能などがあるが、ユーザーがPCから離れていても、発した声を確実に捉えられるようにするには、低品質なマイクでは限界がある。
このため、最近のハイエンドPCはマイクが強化がされており、レノボが2019年に発売したThinkPad X1 Yoga Gen4は、ディスプレイパネルの上辺に4つのマイクを搭載することで、360度の遠方界で人間の声を捉えられるようになっている。同じく、デルが今年(2020年)に入って発売したXPS 13(モデル9300)も、ディスプレイの上辺に2つのマイクが搭載されており、従来よりも広い範囲をカバーできる設計になっている。
このように、最新のノートPCでは広範囲に音声を拾うために、複数のマイクを取りつけるのが1つのトレンドになっている。テレワークのためにノートPCを必要としているなら、ここで説明した遠方界マイクの装備の有無が、購入の1つの指標になるだろう。
アナログのオーディオ端子には3極と4極が……。めんどうならUSBがおすすめ
すでに最新のノートPCを持っている場合は、前述のように高性能なマイクが装備されており、音質が大幅に改善されている可能性が高い。しかし、ノートPCが最新のものではなく、マイクの性能が低いという場合には、外部マイクを追加することでで改善可能だ。
ただし、追加のマイクを購入する場合には大きく3つの選択肢があり、それぞれ注意点がある。
(1)ノートPCに用意されているオーディオ端子
ノートPCに用意されているオーディオ端子は、いくつかの種類がある。古いノートPCにはヘッドフォンまたはラインアウト端子だけというものがあるが、現在はヘッドフォン、ラインアウト、マイク入力が1つの端子になっているユニバーサル端子であることが一般的だ。
ここで注意したいのは端子の極数だ。大きく分けて、3極の場合と4極の場合があり、ノートPCのスペック表に書いていないことが多い。筆者の手持ちのPCに3極と4極のマイクを接続して調べてみたところ、それぞれ次のようになっていた。
発売年 | オーディオ端子 | |
---|---|---|
デル XPS 13(モデル9300) | 2020年 | 3極 |
Microsoft Surface Pro X | 2019年 | なし |
レノボ ThinkPad X1 Yoga Gen4 | 2019年 | 4極 |
富士通 LIFEBOOK UH/95 | 2019年 | 3極 |
Microsoft Surface Go | 2018年 | 4極 |
HP Spectre X2 | 2017年 | 4極 |
Huawei Matebook | 2016年 | 4極 |
レノボ ThinkPad T420s | 2011年 | 4極 |
表を見ると3極か4極のどちらであるか、新旧で傾向があるわけではないことがわかる。今回テストした製品のなかで今年発売されたデル XPS 13(モデル9300)は3極だし、2011年発売のThinkPad T420sは4極だ。したがって自分のノートPCがどちらになっている確認するには、まずPCメーカーが公開しているカタログやスペックを参照し、もしも情報が得られなかったら、サポートに問い合わせる必要がある。
なお、3極のマイク端子になっていれば、オーディオ機器用のコンデンサマイクなどを使える場合がある。3極のデル XPS 13(モデル9300)ではソニーのECM-C10というコンデンサマイクを利用できたが、4極のレノボ ThinkPad X1 Yoga Gen4の場合には利用できなかった。
4極の端子の場合でも、4極から3極へと変換するケーブルを利用すると、3極のマイクを利用できる。今回はレノボ ThinkPad X1 Yoga Genに、サンワサプライが販売している変換ケーブル「KM-A25-005」を利用して、バッファローの3極のマイクである「BSHSM03BK」を接続してみたところ問題なく利用できた。4極端子の場合でも回避手段があることは覚えておこう。
なお、最近のノートPCにはオーディオ端子が用意されていないものもある。たとえば、Surface Pro Xはその典型的な例で、ヘッドフォンなどをBluetoothで接続することを想定しているためだ。こうした製品では次で紹介するように、USB接続のマイクを検討したい。
(2)USB端子
USB端子で接続する場合は、3極/4極で悩む必要がない。ただし、現在PCのUSB端子は、従来のUSB Type-AからUSB Type-Cへと移行がはじまっている。ノートPCによってはすでにType-Cの端子しか装備していない製品もある。
USBマイクのほとんどはまだUSB Type-Aなので、そうしたときには数千円で売られているUSB Type-C Hubを購入すると良いだろう。これから買うなら、USB 3.1(10Gbps)やUSB PD(Power Delivery)に対応しているエレコムの「U3HC-A423P5BK」のような最新の製品を購入しておくことをおすすめする。
(3)Bluetoothヘッドセット
PCにBluetooth機能がついていれば、Bluetooth対応のワイヤレスヘッドセットが使える。ここ5年以内に発売された製品であれば、Wi-FiとBluetoothは1つのモジュールとして提供されているので、よほど低価格のノートPCでもないかぎり搭載されているはずだ。
ただ注意したいのは、Bluetoothのヘッドセットは、PCとはHFP(Hands-Free Profile)やHSP(HeadSet Profile)と呼ばれる低遅延で音がずれないことに重点を置いたプロファイルで接続されるため、逆に言えば音質は二の次になっているということだ。
そのため、マイク側の性能がいかに良くても、Bluetoothで送られるときの音の劣化は避けられない。したがって、音質を重視するなら、USBやオーディオ端子経由での方法を選んだほうが良い。
以上のような3つの方法があるが、手っ取り早くビデオ会議を快適にしたいなら、筆者としては高音質で導入も簡単なUSBマイクをおすすめしたい。Bluetoothヘッドセットに関してはBluetoothの制約で音声がよいとは言えない状況だし、アナログのオーディオ端子の場合には3極/4極の問題があるからだ。
ただ、企業によっては従業員に持たせるPCのUSBポートを使えなくしている例もある。その場合にはUSBマイクは使えないので、オーディオ端子かBluetoothマイクのいずれかを選択しなければならない。
Windowsのマイク設定はコントロールパネルの「サウンド」で設定する。ボリュームを上げておくことをお忘れなく
Windows 10ではマイクを複数持つことができ、アプリケーションごとに割り当てもできる。そして、それぞれのマイクに合った設定はコントロールパネルにある「サウンド」で変更可能だ。
従来はタスクバーのスピーカーのアイコンから直接呼び出せるようになっていたのだが、Windows 10では一度「設定」メニューの「サウンド」に飛んだ後、「サウンド コントロールパネル」を押さないと呼び出せないようになっている。
ビデオ会議のたびにこの設定画面を呼び出すのはめんどうなので、デスクトップにのショートカットを作っておくことをおすすめしたい。具体的には、Windowsのスタートボタンの隣にある検索バーで「コントロールパネル」を入力して呼び出し、コントロールパネルの画面の右上にある表示方法を「カテゴリ」から「大きなアイコン」に変更。表示された「サウンド」アイコンをドラッグ&ドロップでデスクトップ上に持ってくれば良い。
サウンドが表示されたら「録音」タブを選ぶと複数のマイクが表示される。Windowsのマイクには2種類の既定のマイクを設定でき、「既定のデバイス」と「既定の通信デバイス」がそれに該当する。前者は録音アプリが利用し、後者はSkypeなどの通話系のアプリが利用する。
ただし、現状では「既定の通信デバイス」を使うアプリはほとんどなく「既定のデバイス」を指定できるアプリがほとんどなので、普段利用するマイクは「既定のデバイス」にしておこう。
マイクの詳細を設定したい場合には、目的のマイクをダブルクリックすると「マイクのプロパティ」が表示されて詳細な設定が行なえる「レベル」タブを選ぶと、マイクのボリュームを設定できるので、適度な大きさに変更したい。
どの程度の大きさにするかは、自分の声をWindows 10標準の「ボイスレコーダ」アプリなどで確認して調整すればよい。基本的にWindowsのマイクは全体的にボリュームが小さいので、筆者の場合最大値の100にして使っている。
なお、オーディオデバイスの種類によっては、ここに「マイクブースト」というデジタル処理でゲインを上げる機能が用意されている場合があるが、オンにすると音が割れて聞きにくいと感じているので筆者はオフにしている。
また、本当に音が入っているのかが不安なら、前述のコントロールパネルのサウンドのウィンドウを表示しておけば、ゲインの変化がグラフィカルに確認できるのでおすすめだ。
ノイズキャンセリングなどの音質加工が必要ないと感じたらオフにできる
最近のPCは、メーカー独自の機能として、ノイズキャンセリングなどが用意されていたりする。こうした機能の仕組みとしては、マイクから入るキーボードの音などを加工して、そのノイズを低減したりするのだが、結局加工しないほうが音がクリアだったりもするので、好みに応じて使い分けたい。
Windowsの設定からオフにするには、先ほどのマイクのプロパティで「詳細」タブを開くと、「信号の拡張機能」(製品によって表記は異なる)といった項目があるので、そのチェックを外すことで加工の行なわれない純粋なマイク音にすることができる。なんかこもったような音になるなと感じた場合は、この部分をチェックしたい。
また、サウンドにそうした項目がなくても、先ほどのLenovo Vantageの例のように、PCメーカー独自の設定ツールで変更できる場合もあるので、そちらを確認してみると良いだろう。
マイクの準備ができたら、あとは電話会議アプリから利用するマイクを設定するだけだ。すでに述べたとおり、Windows 10ではマイクを複数持つことができ、かつアプリケーションごとにそれを切り替えて利用できる。
たとえば、Teamsを例に紹介しておくと、自分のアイコンをクリックし、「設定」を呼び出す。設定のなかに「デバイス」という項目があるので、そこで利用するスピーカーとマイクを選択して指定することができる。
たかがマイク、されどマイク、Windowsのマイクもこだわると結構奥が深い世界である。ここで紹介した外部マイクやWindowsの設定などを活用し、読者のみなさんが快適なテレワーク生活を送るための一助になれば幸いだ。