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国内PC市場は2023年が需要の底に。1月出荷は台数減でも金額増。JEITA調べ

AV&IT機器世界需要動向調査によるPC市場推移

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、「AV&IT機器世界需要動向調査」を発表。2023年の国内PC市場は、前年比1.1%減の935万台になると予測した。だが、中期予測では、2023年を底に、2024年から成長に転じ、2026年には1,016万台と、5年ぶりに1,000万台を突破すると見ている。

 AV&IT機器世界需要動向調査は、業界団体であるJEITAが毎年発表しているもので、レポートの表紙が黒いことから、通称「黒本」と呼ばれている。1991年の初版発行以来、今回が33版目となり、2027年までの需要予測を行なっている。調査は富士キメラ総研が協力している。

2023年は国内PC需要の底。24年以降は徐々に回復

 これによると、2022年の国内PC市場は、前年比14.9%減の945万台となり、そのうち、ノートPCは17.2%減の720万台、デスクトップPCは6.2%減の225万台となった。Windows 7のサポート終了や、GIGAスクール構想による特需、テレワーク需要の増加によって、2019年に1,480万台、2020年には1,450万台と出荷規模が拡大していたが、2021年には前年比23.4%減の1,110万台と約4分の3の規模に縮小。2022年はそこからさらに減少し、1,000万台を割り込んだ。

PCの国内市場予測
富士キメラ総研 第二部の三橋慎吾課長

 JEITAでは、2023年もさらに減少傾向が続くと予測。前年比1.1%減の935万台になるとした。内訳はノートPCが0.7%増の725万台、デスクトップPCが6.7%減の210万台としている。

 だが、減少が続くのは2023年までとしており、2024年以降は成長基調に転換。2024年の国内PC市場は前年比1.3%増の947万台、2025年は3.4%増の979万台となり、2026年には3.8%増の1,016万台と、年間1,000万台の規模に回復。2027年は4.6%増の1,063万台に到達すると予測した。2027年の内訳は、ノートPCが前年比6.2%増の860万台、デスクトップPCは1.5%減の203万台としており、ノートPCは拡大傾向が続くが、デスクトップPCは縮小すると予測。2027年には、出荷台数全体の80.9%をノートPCが占め、初めて8割に到達すると見ている。2019年のノートPCの構成比が67.6%であったことに比べると、8年間で13.3ポイントも構成比が高まることになる。

 調査を担当した富士キメラ総研 第二部の三橋慎吾課長は、「2022年は、Windows 7のサポート終了に伴う買い替え需要増加の反動や、コロナ禍でのリモートワーク向けノート型の需要増加の反動により大幅な需要減少となった。だが、2023年までは需要減少が続くものの、2024年から2026年にかけては、2019年のWindows 7サポート終了を控えた買い替え需要、2020年から2021年のGIGAスクール構想関連需要の買い替えサイクル期にあたり、リプレイスが発生することから、需要は増加傾向に転じると見込まれる。また、ノートPCは、GIGAスクール構想関連の買い替えが本格化する2025年以降に、比較的高い成長率での増加が見込まれる」と予測した。

 Windows 10がサポート終了を2025年10月に迎えるため、それに伴う買い替え需要が想定されるが、「Windows 11にはアップデート対応となり、必ずしもハードウェアの買い替えが必要ではない。大きな買い替え需要には寄与しない」(富士キメラ総研の三橋課長)との見方を示した。業界内では現在利用されているPCの約半分で、Windows 11が動作しないとの見方も出ており、見解が分かれている。

PCの世界市場予測

 世界のPC市場は、2022年には前年比14.8%減の2億6,150万台となり、大きく減少した。2020年から2021年にかけて、コロナ禍でのリモートワーク向け需要が増加したが、2022年は反動によって需要が減少に転じたとしたほか、中国における都市ロックダウンや部材価格、物流費高騰などを背景とした製品価格見直しによる買い控えも需要減少に影響を与えたという。

 2023年の世界のPC出荷は前年比7.8%減の2億4,100万台と引き続き縮小傾向にあるが、2024年は0.4%増の2億4,200万台と微増になり、その後も微増で推移。2027年には0.8%増の2億4,800万台になると予測している。

 2024年以降は、2019年から2020年にかけて発生したWindows 7のサポート終了による需要増や、2020年以降のリモートワーク関連需要によって導入されたPCが、買い替えサイクル期にあたることから、微増傾向が続くと見込んでいる。

PCを取り巻くトピックス

 また、「高性能GPUや高画質ディスプレイを生かした利活用シーンが拡大するほか、eスポーツやVR、メタバースのニーズが増加する。高度なグラフィックスゲーミングに対応したGPU性能や、高いディスプレイ性能を有するゲーミングPCが増加し、自発光の有機ELディスプレイによる画質強化も需要にはプラスになる。VR Ready対応PCは、2023年には5,000万台に迫る勢いになっており、今後も堅調に拡大していく領域と見ている。今後はVRゲームのプラットフォームとして、また、メタバースにおける仮想世界と現実世界のインターフェイスとして、PCの存在感が増していく」(富士キメラ総研の三橋課長)と予測した。

 PC市場全体におけるVR Ready対応PCは、2021年には14%であったものが、2027年には50.6%と半分を占め、ノートPCにおける有機ELディスプレイ搭載比率は2021年の1.7%から、2027年には20%に拡大すると見込んでいる。

需要減少が続くタブレット。ノートPCやスマホと競合

AV&IT機器世界需要動向調査によるタブレット市場推移

 タブレット端末については、2022年の世界需要は前年比12.1%減の1億6,000万台。日本では前年比10%減の810万台となり、そのうち個人向けタブレットが5.4%減の563万台、法人向けタブレットが19%減の247万台となった。

 また、2023年は世界需要が前年比5%減の1億5,200万台と予測し、2027年に向けても市場規模は縮小を続け、2027年は2.1%減の1億3,900万台になると見込んでいる。「2023年以降は、スマホやノートPCとの競合を背景に、需要減少傾向が続く」としている。

 スマホの大画面化とフォルダブル端末が増加するのに加えて、ノートPCのラインアップが10型以上から用意されたり、2in1の着脱式ノートPCが品揃えされていることから、7~9型が中心となるタブレットが中途半端な位置付けになると指摘。スマホとノートPCにタブレットの需要が浸食され、減少傾向が継続すると見ている。

タブレットの需要動向
PC、タブレット、スマホの競合状況

 日本では、2023年は前年比3.7%減の780万台と縮小し、2024年もその傾向は続くが、2025年からプラスに転じ、2027年には3.8%増の830万台にまで回復すると予測。法人向けタブレットが2023年からプラスに転じ、2027年には14.3%増の400万台に達すると予測した。「法人向けタブレットは、在庫管理端末や受付端末などの特定業務用端末のほか、金融分野向け端末で堅調な需要増加が続く。また、2025年以降には、GIGAスクール構想で整備されたタブレットの買い替え需要が発生すると見込まれ、増加傾向に転じる」(富士キメラ総研の三橋課長)としている。

出荷台数が減少するも販売金額は増加。2023年1月の国内PC出荷

 一方、JEITAでは、2023年1月の国内PC出荷実績について発表した。

 同調査は、自主統計として毎月発表しているもので、Apple Japan、NECパーソナルコンピュータ、セイコーエプソン、Dynabook、パナソニックコネクト、富士通クライアントコンピューティング、ユニットコム、レノボ・ジャパンの8社による統計になる。日本HPやデル・テクノロジーズなどは参加していない。先に触れたAV&IT機器世界需要動向調査とは異なる集計となっている。

JEITA 2023年1月パーソナルコンピュータ国内出荷実績

 これによると、2023年1月の出荷台数は前年比4.3%減の52万8,000台と、4カ月連続での前年割れとなった。出荷台数はノートPCおよびデスクトップPCも前年割れとなっている。

 ノートPCは前年比5.2%減の42万1,000台となり、そのうちモバイルノートは17.6%減の16万4,000台、ノート型・その他は4.9%増の25万8,000台となった。また、デスクトップPCは0.7%減の10万6,000台。そのうちオールインワンが15.6%減の2万2,000台、単体が4.1%増の8万4,000台となった。

 このように台数ベースでは、前年割れとなったものの、金額ベースでは前年実績を上回っている。2023年1月の国内PCの出荷金額は前年比11.5%増の653億円となり、8カ月連続で前年実績を上回った。また、ノートPCは15.4%増の503億円と2桁増となり、デスクトップPCは0.3%増の150億円と微増。いずれもプラスとなった。

 2023年の国内PC市場は、厳しい1年になると見込まれており、台数ベースでは想定通りに前年割れのスタートとなった。だが、金額ベースではプラスに転じており、1月の実績でも2桁増の高い伸びを見せている。ここでは、部材価格の高騰や物流費の高騰などを背景にしたPC本体の値上げの影響がある。2023年は出荷台数は減少しながらも、販売金額は前年実績を上回るという異例の1年になりそうだ。