笠原一輝のユビキタス情報局

第12世代Core HX+RTX 3080 Tiなノートは、12900K+3060なデスクトップもM1 Maxも上回る性能を発揮

第12世代Core HXと、それを搭載したMSI Titan GT77

 Intelは「最後の第12世代Coreプロセッサ」のシリーズとして、第12世代Core HXプロセッサを5月に発表した。発表の概要などに関しては以下の別記事に詳しいのでそちらをご参照願いたいが、Core HXはノートPC向けの第12世代Coreプロセッサの中で最上位に属する製品で、デスクトップPCに匹敵するような性能をノートPC(というよりはデスクトップリプレースメントPC)で実現することが最大の特徴となっている。

 今回Core HXを搭載した「MSI Titan GT77」を入手したので、ベンチマークプログラムなどを利用してその性能に迫っていきたい。テストをしてみて分かったことは、第12世代Core HXとdGPUとしてGeForce RTX 30シリーズを搭載したシステムは、デスクトップPCに匹敵する性能を持っており、さらにAppleの現時点での最上位製品であるM1 MaxをCPUでは圧倒的に、GPUではやや上回る性能を発揮することが見えてきた。

第12世代Coreの最後のピースとして発表された第12世代Core HX、デスクトップリプレースメント向け

Visionの基調講演で第12世代Core HXを発表するIntel 上級副社長 兼 クライアントコンピューティング事業本部 事業本部長 ミッシェル・ジョンストン・ホルトス氏。ホルトス氏が手に持っているのが第12世代Core HX

 Intelが5月に発表した第12世代Core HXは、Intelが「最後の第12世代のシリーズ」と表現するように、昨年(2021年)の10月にデスクトップPC向けのSシリーズが、1月のCESでHシリーズが、2月の末にPシリーズとUシリーズがと順々に発表されてきた第12世代Coreの中で最後に発表された製品となる。それぞれのCPUコア数やGPUのEU数、dGPU用のPCI Expressスロット、パッケージ、熱設計消費電力、ターゲットとなるシャシーの種類などを図示したものが以下の図となる。

【図1】第12世代CoreのSシリーズ、HXシリーズ、Hシリーズ、Pシリーズ、Uシリーズの違いを図にしたもの(Intel社が公開している資料などより筆者作成、いずれもシリーズの最大構成)

 Core HXは何かと一言で言ってしまえば、デスクトップPC向けの第12世代Core Sを、ノートPCのシャシーに入るようにパッケージをBGA1964に変更し、そして熱設計の枠をノートPCにも入るように抑えたモノとなる(全然一言ではないが……)。

 デスクトップPC向けの第12世代Core Sは、LGA1700というSoCをワンタッチで取り外すことができるLGA(Land Grid Array)というパッケージの形状で提供されている。LGAにすることで、デスクトップPCメーカーは組立時にCPUのグレードを選択できるし、自作PC市場向けにはCPUとマザーボードを別々に販売することができるというメリットがあり、長い間こうした形で提供されるのが一般的になっている。

デスクトップPC用のLGA1700用のパッケージ、交換可能などのメリットはあるがソケットとパッケージでどうしても厚みがでてしまう
ヒートスプレッダ(ダイの上にあるアルミの蓋のこと)がないのがCore HXのBGAパッケージ

 しかし、LGAではパッケージとCPUのソケットがそれぞれ別のモジュールとなってしまうため、どうしても高さ方向が増えてしまうため、スペースが限られているノートPC向けに採用するにはあまり適していない。このため、HXプロセッサはダイ(チップそのもののこと)こそSプロセッサと共通だが、パッケージに関してはマザーボードに直付けすることが可能で、高さがあまり必要のないBGA(Ball Grid Array)に変更して提供している。

 もう1つの違いは熱設計のスペックだ。デスクトップPC向けのSシリーズは、従来TDPないしはPL1と呼ばれていたベース電力が125W、そして従来PL2と呼ばれていたターボ時最大電力が241Wになっている。これはスペック上のベース周波数で最低限動かすために排熱すべき熱を発生している時の電力の想定値が125W、ターボモード(CPUメーカー公式のオーバークロックモードのこと)でベース周波数よりも高い周波数で動作している時に、排熱すべき熱を発生している時の電力の想定値が241Wになり、実際にCPUが消費する消費電力そのものではない(実際にはこれらのスペック以上に消費していることもあるし、それよりも低いこともある、CPUの負荷に応じて動的に変動している)。

 それに対してHXではベース電力が55W、ターボ時最大電力が157Wになっており、ノートPCの供給電力(その電力量はACアダプタのスペックで決まってくる)に納まるように抑えられており、デスクトップPC向けのCPUなどに比べるとその分若干性能が低下することになる。

 逆に言うとそれ以外の点ではSシリーズとほぼ同じで、最大構成はPコアが8コア、Eコアが8コアで16コア、24スレッドになること、32EUのXe-LP世代のGPUを内蔵していること、PCI Express Gen 5に対応したx16スロット(ただし、現状はノートPC向けでPCI Express Gen 5に対応したGPUはまだないが……)、CPU/GPUとPCHの2チップ構成であることなど、いずれも共通の仕様となっている。

 つまりCore HXというのは事実上、デスクトップPCのCPUの消費電力などを調整して、パッケージをノートPC向けに変更した「デスクトップリプレースメント」向けのCPUと考えていいだろう。

Core i9-12900HXとGeForce RTX 3080 Tiという強力な組み合わせが採用されているMSI Titan GT77

 今回Core HXを搭載したノートPCのテスト機として用意したのがMSIの「MSI Titan GT77 12UHS」という製品になる。MSI Titan GT77 12UHSのスペックは以下のようになっている。

MSI Titan GT77 12UHS
【表1】MSI Titan GT77 12UHSスペック
CPUCore i9-12900HX(Pコア×8、Eコア×8、ベースクロック2.4GHz)
GPUGeForce RTX 3080 Ti(GA103、7,424CUDAコア、1,045MHzベース/1,465MHzブースト、16GB/GDDR6/256 bit幅)
メモリ64GB(DDR5-4800)
ストレージSamsung MZVL21T0HCLR(1TB NVMe SSD、PCIe Gen 4) x4
ディスプレイFHD(1,920×1,080ドット)/360Hz

 日本ではこのMSI Titan GT77 12UHSとほぼ同じスペックで、ディスプレイが4K/120Hzになっている製品がTitan GT77 12U」(GT77-12UHS-001JP)として発表されている。

解像度はフルHDで、360Hzの高リフレッシュレートに対応している

 今回紹介しているMSI Titan GT77 12UHSは海外バージョンとなり、ディスプレイがフルHD/360Hzと解像度はフルHDになっているものの、高リフレッシュレートになっていること、またSSDの容量(12UHSはSSDが1TBx4、12Uは2TBとなる)が大きな違いとなる。それ以外のスペックはほぼ同じになっているので、日本で購入する場合にはTitan GT77 12U(GT77-12UHS-001JP)になり、ディスプレイが4Kになるのが大きな違いと読み進めてほしい。

 搭載されているCPUはCore i9-12900HXで、それより上のSKUとしてCore i9-12950HXはあるが、Core i9-12950HXはvProやECCといったビジネス向けの機能に対応したSKUで、オーバークロック機能も限定機能になるなど、どちらかと言えばビジネス向けのSKUとなる。従ってコンシューマ向けとしてはCore i9-12900HXが最上位SKUとなる。

本体の左側面
本体の右側面
キーボード
ACアダプタは出力330Wと高出力

 CPUは8つのPコア、8つのEコアを備えており、16コア構成になっており、PコアはHTに対応しているため24スレッド構成になっている。内蔵GPUも搭載されており、Xe-LPアーキテクチャで32EUの内蔵GPUが搭載されている。

 Titan GT77では、後述するdGPUとSoCに内蔵されているGPUの間で動的に切り替えることが可能になっており、たとえばバッテリ駆動時には内蔵GPUで利用し、GPUの性能が必要なときだけdGPUを利用するという使い方も可能だし、dGPUだけを有効にして性能を最大限発揮させる使い方も可能になっている。

 dGPUはNVIDIAのGeForce RTX 3080 Tiが採用されている。ダイはGA103になっており、CUDAコアは7,424基と、デストップ版GeForce 3090 Tiなどに利用されているGA102の1,0752基に比べるとやや少ないが、モバイル向けのGPUとしてはかなり大型の演算器を搭載している製品だと言うことができる。少なくとも現時点ではノートPC向けGPUとしては最高峰のGPUとなっている。

Core i9-12900HXとGeForce RTX 3080 TiはデスクトップPCも、M1 Maxも上回る性能を発揮

 そうしたCore i9-12900HXとGeForce RTX 3080 Tiを搭載したTitan GT77の性能をベンチマークで見て行きたい。まずは通常CPU/GPUのプラットホームを超えた違いを計測するときに利用しているCinebench R23とGFXbenchの2つを利用して、過去に紹介したノートPCで計測したスコアとの差を見ていきたい。

 今回紹介しているCore HXはデスクトップリプレースメント向けということで、デスクトップPCとの性能差がどの程度なのかを見るために、第12世代Core Sシリーズの2製品(Core i9-12900KとCore i7-12700KF)とGeForce RTX 3060(GA106、3584CUDAコア)から構成されているデスクトップPC(実際には自作PC)を用意し、その結果も計測している。

表2 テスト環境(自作PCのスペックとノートPC)
Apple M1Apple M2Apple M1 MaxRyzen 7 5800UCore i7-7600UCore i7-1065G7Core i7-1185G7Core i7-1280PCore i7-12700KF+GeForce RTX 3060Core i9-12900K+GeForce RTX 3060Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Ti
マシン13インチMacBook Pro(2020)13インチMacBook Pro(2022)16インチMacBook Pro(2021)ASUS ZenBook 13 OLEDLenovo ThinkPad X1 Yoga Gen 2Surface Pro 7Surface Pro 8Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 10自作PC自作PCMSI Titan GT77 12UHS
メモリ16GB8GB32GB16GB16GB16GB16GB32GB16GB16GB64GB
SSD256GB256GB1TB1TB1TB256GB256GB256GB1TB(WD SN770)1TB(WD SN770)1TB
OSmacOS MontereymacOS MontereymacOS MontereyWindows 10Windows 10Windows 11Windows 11Windows 11Windows 11Windows 11Windows 11
【グラフ1】Cinebench R23

 グラフ1のCinebench R23はMAXONが開発している「Cinema 4D」というソフトウェアをベースにしたベンチマークで、CPUを利用してレンダリングを行なうことで、CPUの純粋なピーク時の性能を計測することができる。実際のアプリケーション環境ではここまでピーク性能が要求されることはほぼないのだが、純粋なピーク時の性能を知りたいユーザーにとっては分かりやすい数値であり、かつWindows版だけでなくmacOS(かつArmネイティブ)版も用意されており、筆者がノートPCに搭載されているCPUの性能を計測する時に使っている。結果のグラフには便宜的にGPUの名前も入っているが、このテストではGPUの性能は全くと言って良いほど影響は与えないので、純粋にCPUの性能だと考えていただきたい。

 結果を見ると、マルチスレッド(複数のCPUコアを利用して演算する方法)ではCore i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Tiは、デスクトップPCの2つの組み合わせCore i9-12900K+GeForce RTX 3060、Core i7-12700KF+GeForce RTX 3060と比較すると、Core i7-12700KF+GeForce RTX 3060の22638と比較してやや劣っているが匹敵するスコア(21097)をたたき出している。

 この差は何かと言うと、熱設計(分かりやすくと言うと、ファンやヒートシンクの大きさ)の仕様の違いだ。ベース電力が125Wで、ターボ時最大電力が241WというスペックのデスクトップPC版に比べると、Core i9-12900HXはベース電力が55W、ターボ時最大電力が145Wになる。結局のところ、現在のCPUの性能はターボブースト時どれだけ上のクロックで粘れるかで決まってくるので、その意味ではこの差が出るのは当然と言える。

 逆に言えば、熱設計の仕様ではデスクトップPCに比べると不利なハズのCore i9-12900HXはかなり頑張っていると言える。ノートPCではdGPUに回している放熱の余裕を、GPUを使っていない時にはCPUに回すなどが可能なので、そのあたりをMSIのシステムは上手に使っていると考えることができるだろう。

 なお、Appleの現時点での最上位であるM1 Max(10CPU/32GPU、以下同)との比較で言うと、Core i9-12900HXの21097に対して、M1 Maxは12379であり、Core i9-12900HXの方が約70%上回っている。もちろん、M1 Maxの方はもっと低消費電力であり電力効率に優れていることは、そのシャシーから見ても明らかなのだが、ピーク時の性能ではCore i9-12900HXの方が圧倒的と言えるだろう。

【グラフ2】GFXbench

 GFXbenchはGPUの性能を比較するベンチマークテストで、Windowsだけでなく、macOS、Android、iOSなどクロスプラットホームをサポートしており、モバイル機器(ノートPCやタブレット、スマートフォン)のGPU性能を比較するのに適したベンチマークテストになっており、こちらも筆者の連載でモバイル機器向けのSoCに内蔵されているGPUなどを比較するときに通常利用しているものだ。なお、このテストではCPUの性能も若干影響するが、主にスコアに影響するのはGPUの方になる、GPU名が書いていないときは内蔵GPUの性能を示しており、「+**」でGPU名が書いてある場合には外付けGPUの性能を示していると考えてほしい。

 結論から言えば、Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Tiの組み合わせは、デスクトップPCのCore i9-12900K+GeForce RTX 3060、Core i7-12700KF+GeForce RTX 3060という組み合わせをいずれも上回っている。シンプルに言えば、これはノートPC用のGeForce RTX 3080 TiがGA103というコードネームのダイでCUDAコア数が7,242、GeForce RTX 3060がGA106というダイで3,584と半分程度になっていることが影響しているだろう。スコアが半分になっていないのは、こちらも熱設計が影響していると考えることができる。

 もちろん、デスクトップPC側のGPUを、3070/3080/3090などにすれば、もっとスコアが上がると考えることができるので、これでMSIのシステムがデスクトップPCよりも速いなどとは言えないが、少なくともGeForce RTX 3060のデスクトップは上回っているということはできるだろう。

 M1 Maxとの比較では、本連載でもたびたび指摘しているように、Mシリーズの特徴といえる高いGPU性能を反映して、デスクトップPC版のGeForce RTX 3060(GA106)を上回っている。ノートPCのあの筐体サイズでここまでの性能を実現しているのは本当に素晴らしいことだが、それでもCore i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Tiの組み合わせはピーク性能としては上回っている。

【グラフ3】Procyon/Photo Editing
【グラフ4】Procyon/Video Editing

 UL BenchmarksのProcyonは、複数のベンチマークスイート(Office、Photo、Video、Battery)から構成されているベンチアークで、ユニークなのはOffice、Photo、VideoではそれぞれMicrosoft 365、Adobe Creative Cloud(PhotoはPhotoshopとLightroom Classic、VideoはPremiere Pro)の実アプリケーションを利用してバッチ処理を行なうことで、その処理にかかった時間を計測して、スコアを出すという仕組みになっていることだ。

 このため、そうした実アプリケーションを利用した時にユーザーが得られる性能を公正に導き出すものとして最近注目を集めているベンチマークテストだ。今回はモバイルワークステーション向けともされている第12世代Core HXの製品特性を考えてこのテストを追加で行なうことにした。

 なお、比較対象としたのは、Surface Pro 8(Core i7-1185G7、16GB)という、現時点でのSurfaceシリーズのメインストリーム向けという、ビジネスユーザーが一般的に使っていると考えられるPCを基準にした。参考としてCore i9-12900K+GeForce RTX 3060、Core i7-12700KF+GeForce RTX 3060という自作デスクトップPCも追加している。

 結果から見ると、ビジネス向けのノートPCと、第12世代Core HXを搭載したシステムの差は非常に大きいということができる。写真編集のProcyon/Photo Editingでは約2.1倍、動画編集のProcyon/Video Editingでは約3.76倍という結果になった。これが何を意味するのかと言えば、たとえば動画編集では3.76倍速ければ、エンコードや編集がそれだけ早く終わることを意味する。そうした動画を編集するユーザーが個人事業主であれば、処理が早く終われば、ほかの仕事をして稼ぎを増やすことができるだろうし、企業で働いているのであれば企業にとってはより多くの仕事をしてもらえることを意味する。その報酬や賃金を計算してみれば、10万円や20万円の上乗せなど、すぐに取り返すことができるレベルの差と言える。

 なお、デスクトップPCとの比較でも、写真編集ではほぼ同等、動画ではCore i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Tiが上回っている。これは写真編集ではGPUの影響はそれほどではないが、動画では非常に大きいと考えることができる。その意味では、仮に第12世代Core HXを搭載したシステムを検討しているならGeForce RTX 3080 TiなどできるだけGPUが強力なものが搭載されている製品を購入した方が良いということを意味していると言える。

性能も超ど級だけど価格も超ど級……スペースに余裕がないなら選択する価値がありのデスクトップリプレースメント

 以上のような結果から、Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Tiを搭載したMSIのMSI Titan GT77 12UHSは、第12世代+GeForce RTX 3060という組み合わせのデスクトップPCを性能で同等だったり、上回ったりしており、特に実ベンチマークであるProcyon/Photo Editing,Procyon/Video Editingで同等か動画編集では上回る性能を実現していることは注目に値すると思う。

 もちろんお値段は決してお安くない。日本では今回テストに利用したTitan GT77 12UHSが販売されていないので、ほぼ同じスペック(CPU、メモリ、ストレージなど)で、ディスプレイが4K/144HzになっているMSI Titan GT77 12Uの値段で見るしかないのだが、MSIの公式通販サイトでの価格は64万9,800円(税込)になっている。

 それに対して自作PCで、Core i9-12900K、GeForce RTX 3060、メモリ64GB、2TBストレージというデスクトップPCを作れば、30万円弱~強ぐらいだろう。GeForce RTX 3060をGeForce RTX 3080 Tiにでもすれば、+6~7万円ということでそれでも40万円越えぐらいだろう。その意味では、スペースに余裕があるのならデスクトップPCを作るなり、PCメーカーから購入する方がコストパフォーマンスは高いのは明らかだ。

 しかし、日本オフィスや家庭にはスペースに余裕があるところではないことを考えれば、こうしたデスクトップリプレースメントの価値はあると言える。そこをどう評価するか次第だろう。

 最後に、AppleのM1 Maxを搭載した16インチMacBook Proとの比較についても触れておきたい。性能に関しては、Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 TiがCPUもGPUも上回っていることは事実で、ピーク性能を何より重視するというユーザーであれば、Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Tiの組み合わせだろう。

 ただし、その反面どうしても電力効率や熱設計の大袈裟さ(つまり筐体が大きく厚くなる)の観点ではM1 Maxの方に優位があるのは明らかだろう。その何よりの証拠は厚さと重量で、M1 Maxを搭載している16インチMacBook Proは厚さ16.8mm/2.1kg~というスペックであるのに対して、MSI Titan GT77 12Uは23mm/3.3kgとなっている。16.8型MacBook Proはなんとか持って行けるけど、MSI Titan GT77 12Uの方はかなり気合い入れないと持って行けない、ということはできるだろう。

 なお、スペックを合わせてみると価格はそんなに大きく変わらない。MSI Titan GT77 12Uは既に述べた通り64万9,800円だが、16インチMacBook Proも64GBメモリ、2TBストレージにスペックを合わせると59万800円になり、価格差は約6万円となる。それで薄くて軽くてそれなりの性能をとるか、薄くも軽くないけどピーク性能は優れている製品をとるか、そしてWindowsとmacOSどちらを選ぶかという、目的と普段使うOSによってチョイスが変わってくるということができるのではないだろうか。