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地上最速の16コアCPU+RTX 3080 Ti搭載ノート「ROG Strix SCAR 17 SE」を試してみた
2022年7月21日 11:00
ASUSの「ROG Strix SCAR 17 Special Edition(2022)」(以下Strix SCAR 17 SE)は、CPUに最上位のCore i9-12950HX、GPUに最上位のGeForce RTX 3080 Ti Laptop(16GB)を搭載した17.3型のゲーミングノートだ。5月に台湾で発表され、このたび日本でも発売となった。価格は54万9,800円となっている。
今回、この地上最速とも言えるノートを、いち早く試す機会を得たので、レビューをお届けしよう。
これ以上のスペックはありません!早速その性能を見る
Strix SCAR 17 SEは、2022年6月時点で世界最高となるノート向けCPUのCore i9-12950HX、世界最速GPUとなるGeForce RTX 3080 Ti Laptopを採用し、32GB大容量メモリ、そして2TB×2のRAID 0による大容量SSDのシステムドライブを組み合わせた、モンスタースペックのゲーミングノートだ。表にまとめると下記の通りになる。
【表】Strix SCAR 17 SEの主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i9-12950HX(16コア/24スレッド) |
メモリ | 32GB DDR5-4800 |
GPU | GeForce RTX 3080 Ti Laptop(ビデオメモリ16GB、TGP 150W) |
ストレージ | 2TB SSD×2(RAID 0) |
液晶 | 1,920×1,080ドット/360Hz表示対応17.3型 |
OS | Windows 11 Home |
インターフェイス | Thunderbolt 4、USB 3.1 Type-C、USB 3.0×2、2.5Gigabit Ethernet、HDMI |
無線 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 |
バッテリ | 4セル/90Wh |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 395×282.1×23.4~28.3mm |
重量 | 約3.0kg |
単純にスペックの数字からも凄さがひしひしと伝わってくると思うが、これなら多くのデスクトップをも凌駕する性能だということは容易に想像できるだろう。というわけで早速だがこの性能を検証していきたい。
その前に予め紹介しておかなければならないのが、本機のプロファイルごとの電力製現地、Strix SCAR 17 SEは「Armoury Crate」というソフトウェアがあり、性能プロファイルを切り替えられる。切り替えた際のCPUとGPUの電力上限は、それぞれ以下のようになっている。
プロファイル | サイレント | パフォーマンス | Turbo |
---|---|---|---|
CPU PL1電力制限 | 65W | 85W | 160W |
CPU PL2電力制限 | 90W | 115W | 160W |
GPU | 60W | 130W | 165W? |
つまり、CPUに関してはサイレントの状態でもデスクトップ向けCPUの通常版とほぼ同等であるのだ。さすがは「デスクトップPCのパッケージをそのままノート向けにした」だけのことはある。一方GPUはサイレント時は大きく制約され、パフォーマンス時は電力性能比のスイートスポット、Turbo時は上限を狙った設定であることが伺える。
つまり、本機はプロファイルを切り替えることで騒音や電力、性能のバランスを変化させることができる、というわけだ。このためベンチマークもそれぞれのプロファイルで実施している。各モード設定に加え、Turbo時にGPUと内蔵ディスプレイを直結させることで性能を最大化するMUXスイッチを有効にした場合のスコアも掲載する。
実施したベンチマークは「PCMark 10」、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「Tom Clancy's: Rainbow Six Siege(Vulkanモード)」、「Tomb Raider(2013)」、「Grand Theft Auto V」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Cinebench R23」。
結果は「圧巻」の一言。Turbo時のベンチマークスコアは、筆者が過去にテストしたデスクトップ向けのGeForce RTX 3070 Tiをも凌駕し、3080に迫る勢いだ。ちなみに本機のビデオメモリは16GBと、デスクトップ向けの3070 Tiはもとより、3080 Tiよりも4GB多い。ゲームタイトルや処理によっては、3070 Tiを上回る性能が期待できるだろう。
これだけハイスペックでも驚きの静音性
ベンチマークしていて、本機が大変素晴らしいと思ったのは騒音の抑制だった。ゲーミングノートと言うと「うるさい」イメージがあると思うが、本機はその常識を覆すほどだった。もちろん、ディスクリートGPU非搭載のノートと比べるとやはり騒音はするし、同スペックのデスクトップならもっと静音だろうが、このスペックを考慮するとかなり優秀なのだ。
まず驚くべきなのはアイドル時で、無音だ。本製品には「0dBテクノロジー」が搭載されており、低負荷時はファンが回転せず、パッシブ冷却となる。Webブラウジングや動画鑑賞時は、ファンが回らないのだ。今回の試作機では若干の電源的なノイズが聞こえたが、周囲が静かで耳を近づけなければ分からない程度。まさかゲーミングノートがパッシブ冷却で動作できるとは思わなかったので、試用当初は本当に大丈夫かと心配してしまった。
少しCPU負荷がかかる処理を行なっても、回転数が一気に上がってしまうようなこともない。排気口に手を当ててみると、本機は監視できるCPU温度に関わらず一定の熱を排出している印象だ。CPUとヒートシンクの接合に液体金属を用いて、ベイパーチャンバーで熱を全体的に拡散できていて、熱がきちんとヒートシンクへと移動している効果がきちんと現れているのだと思われる。
サイレントモード時で高負荷をかけると、ファンが回り出し始めるが、その騒音はGPU非搭載のオフィス向け薄型ノートPCの高負荷時よりも静かといった印象。ちなみにこのモードを設定すると、ゲームにおいて60fpsというフレームレートを上限基準として動作させている模様。このあたりはGeForceドライバと連動しているようだ。
パフォーマンスモードではこのフレームレート制限は解除され、360Hz液晶の性能を引き出せるようになる。ほとんどのゲームはこのモード下で快適にプレイできる。騒音のほとんどは風切り音であり、モーターの軸音などはない。2~3m離れていればだいぶ小さくなり、深夜でもそれほど気にならなくなる。Turboモードでは、風切り音はより大きくなるものの、それでもモーターの軸音はしない。部屋を隔ててドアを閉めてしまえば聞こえないレベルだ。
レビュワーズガイドによると、本製品に用いられているファンは「アークエアフローファン」と呼ばれ、最薄部が0.1mmで、先端に向かって厚みが増えるブレードになっている。これにより空気速度が増しても乱流を抑えることが可能になり、静音動作につながっているという。
先のベンチマーク結果と組み合わせると、やはりというかなんというか、ASUSが用意しているパフォーマンスモードが、静音性と性能のバランスが取れたベストな設定だ。このモードでは騒音が40dBを超えることがなく、ほとんどのゲームにおいて十分な性能が得られ、軽量タイトルでは360Hz液晶も活かせる。これまで騒音が理由で、深夜の時間帯にゲーミングノートでゲームをすることをためらっていたユーザーにとって、本機を手にする価値は十分にあると思う。
大胆不敵なデザイン。トランスルーセントな筐体に隠されたメッセージも
50万円を超えるPCだけあって、デザインにもこだわっている。天板はアルミニウム製で、スラッシュによって右上と左下に分断、片方には細かい文様が入っている。
実は、本製品のパッケージには紫外線ライトが付属している。天板の下半分に照射した際だけに見えるインクの隠しメッセージがあり、ここに紫外線ライトを当てるとそのメッセージが浮かび上がる。このメッセージは、Steamで公開されているCitadelゲーム「Scar Runner」に深く関係しており、このゲームを通して、ASUSの製品の特徴が学べるのだ。内容については、購入者だけのお楽しみとしてもらいたい。
一方本機を開くと、キーボード面もまたスラッシュで分断されたデザインとなっていることに気づく。右側はトランスルーセントとなっており、内部(といってもキーボードフレーム程度だが)が覗けるのだ。
さらに、ディスプレイヒンジ後部はやや出っ張っているが、ここの部分は付属のパーツで3種類のデザインから選ぶことができる。デザイン面では、他社のゲーミングPCでも類を見ないユニークなデザインとなっており、本製品ならではの所有欲を高めてくれる。
となると、必然的に筐体の大半は非金属となるわけだが、決して安っぽくはない点がまたASUS製品の良いところ。特にパームレスト面はサラサラした素材で、触っていてとても気持ちいいし、CPU/GPU負荷によって熱くなることもなければ、電源投入前に太腿の上において「冷たッ」と感じようなこともない。剛性も高く、50万円超えのマシンとしては納得の質感である。
デザイン面に話しを少し戻すと、RGB LEDによるイルミネーションがとにかく派手なのも特徴。キーごとのRGB LEDはもちろんだが、天板のRGOロゴや、キーボード手前の本体側面/底面にRGB LEDバーが入っており、液晶の下部にもアンダーグロウのRGB LEDが仕組まれているなど、ゲーム中の雰囲気を盛り上げてくれる。
電源オンの時はもちろんだが、サスペンド時ですら、各所が赤色LEDでフラッシュする演出もある。とにかく落ち着いていられない! 早く電源つけてバリバリゲームで遊んでくれ! と主張するようなコンセプトは筆者の好みだ。50万円もするマシンだから、減価償却はしっかりするように、ということだろう。
キーボード、タッチパッドは操作感良好。インターフェイスも十分
そのほかのインターフェイスの使い勝手について見ていこう。キーボードは19mmのキーピッチが確保されていて、テンキーもつくタイプ。W/A/S/DのWにドットがついてすぐに位置が分かる点や、4つずつブロックに分かれているファンクションキー、逆T字型のカーソルキーなど、配列へのこだわりも見られる。ストロークは適度にある一方で、どちらかと言えばソフトタッチな仕上がり。高速でタイピングしても騒音が抑えられており、好感が持てる。
タッチパッドはボタン一体型タイプで、面積は広く取られている。滑りはよく、不満に感じることはない。
液晶は17.3型で最大360Hz駆動に対応しており、ゲームのみならず普段の作業でも画面がスルスル動くため気持ちいい。発色や視野角、応答速度ともに問題はなく、ハイレベルだ。あわよくば、このスペックならWQHD/240Hzや4K/120Hzパネルも選択できるようにしてほしかったのだが、ここは“最速パネル”への開発チームの強いこだわりが垣間見える。
インターフェイスは、背面にThunderbolt 4、USB 3.1 Type-C(DP Alt Mode、およびUSB PD給電対応)、HDMI出力、2.5Gigabit Ethernetを搭載。左側面にUSB 3.0×2、音声入出力。このほか、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1を内蔵する。汎用的なノートPCとして見ると、指紋センサーやIRカメラによる生体認証がない点や、Webカメラを備えていない点はマイナス要素になるかもしれない。
電源は350WのACアダプタ。確かにACアダプタとしてはサイズが大きい方だが、350W供給できるタイプとして考えるとかなり小さいほうだ。バッテリは90Whで、サイレントモードに設定し、PCMark 10のModern Officeで計測したところ6時間は動作した。17.3型液晶を備えたゲーミングノートとしては驚くべきバッテリ寿命と言える。
本機ならではの特徴として「Keystone」の採用が挙げられる。これは独自のIDを持つデバイスで、隠しドライブを解除するのに使ったり、Armoury Crateで設定したプロファイルを保存しておき、接続すると即座にそのプロファイルを読み込んだりできる。他社製品にはない機能で、活用できるユーザーならこれも面白いだろう。
世界最強を目指すゲーマーたちへ
ROG Strix SCAR 17 Special Edition(2022)を純粋なゲーミングノートとして見た場合、死角や弱点がほとんど見当たらない。ノートPCとしては至高のCPUとGPUを搭載し、デスクトップPCに肉薄する性能、ゲーミング環境を最大限に盛り上げてくれるデザイン、遊びココロをくすぐるギミック、ユーザーの好みに合わせて豊富に用意されたカスタマイズ性を備えつつ、ゲーミングPCとして常用できるだけの静音性、家中どこでもすぐ移動できるだけの可搬性を兼ね備えている。
快適にPCゲームを遊びたい、でもデスクトップPCを置く場所がない、もしくは置きたくないというミニマリスト志向のゲーマーはもちろんのこと、道具にはあまり選別やセットアップの手間暇をかけたくない、あるいはいつでもどこでも練習できるような環境を用意し、とにかく練習時間を増やしたいといった、世界最強を目指すゲーマーたちに、本製品を強くおすすめしたい。