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M2 MacBook AirはM1版からどう進化したのか? M2とM1で徹底比較

Apple「MacBook Air (M2, 2022)」(16万4,800円~)

 Appleは「M2」を搭載し、筐体も一新した「MacBook Air (M2, 2022)」を6月6日に発表、7月8日に予約を開始し、7月15日に販売をスタートした。価格は16万4,800円から。

 M2はM1よりも消費電力あたりのパフォーマンスをさらに高めていると謳われており、今回のMacBook Airも従来モデルと同様にファンレスのノートPCとして開発されている。前機種と比べてどのくらいパフォーマンスが向上しているのか気になるところだ。ちょうど筆者はM1搭載MacBook Airを利用しているので、前モデルのユーザー目線も交えて、実機レビューをお届けしよう。

今回はミッドナイト、10コアGPU搭載M2、8GBメモリ、512GBストレージの「MLY43J/A」を借用した

 なお、動画版もYouTubeに公開しているので、こちらもご覧いただきたい。

M2搭載だけでなく、アップグレードは多岐に渡る

 「MacBook Air (M2, 2022)」(以下M2 MBA)は、OSに「macOS Monterey バ-ジョン12.4」、SoCに「M2」を採用。メモリは8GB/16GB/24GB、ストレージは256GB/512GB/1TB/2TBのSSDを搭載している。

 ディスプレイは13.6型IPS液晶(2,560×1,664ドット)を採用。オーディオ機能はDolby Atmos対応の4スピーカー、3アレイマイクを搭載している。

 インターフェイスはMagSafe 3充電ポート×1、Thunderbolt 3×2、3.5mmヘッドフォンジャックを装備。ワイヤレス通信はWi-Fi 6、Bluetooth 5.0をサポートしている。

 本体サイズは304.1×215×11.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.24kg。52.6Whのバッテリを内蔵しており、バッテリ駆動時間は最大15時間のワイヤレスインターネット、最大18時間のApple TVアプリのムービー再生と謳われている。

 下記に前モデル「MacBook Air (M1, 2020)」(以下M1 MBA)とのスペック比較を掲載したが、主な差分はプロセッサの処理能力向上、最大メモリ容量の増量、ディスプレイ輝度の向上、4スピーカー化に合わせてDolby Atmos&空間オーディオへの対応、MagSafe 3充電ポートの追加、Webカメラの高解像度化(1080p)、バッテリ増量、薄型化&軽量化、カラバリの増加……と多岐に渡る。

【表1】「MacBook Air (M2, 2022)」と「MacBook Air (M1, 2020)」のスペック
MacBook Air (M2, 2022)MacBook Air (M1, 2020)
OS※発売時macOS Monterey バ-ジョン12.4macOS Big Sur バ-ジョン11.0
SoCM2
8コアCPU(高性能コア×4、高効率コア×4)
8コアまたは10コアGPU
16コアNeural Engine
M1より50%高い100GB/sのメモリ帯域幅
M1
8コアCPU(高性能コア×4、高効率コア×4)
7コアまたは8コアGPU
16コアNeural Engine
メモリ8GB/16GB/24GBユニファイドメモリ(LPDDR5)8GB/16GBユニファイドメモリ(LPDDR4)
ストレージ256GB/512GB/1TB/2TB SSD
ディスプレイ13.6型IPS液晶(2,560×1,664ドット、224ppi、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)13.3型IPS液晶(2,560×1,600ドット、227ppi、16:10、光沢、400cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)
オーディオ4スピーカー(Dolby Atmos、空間オーディオ対応)、3アレイマイクステレオスピーカー、3アレイマイク
通信Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0
WWAN
インターフェイスMagSafe 3充電ポート×1、Thunderbolt 3×2(充電、DisplayPort)、3.5mmヘッドフォンジャック(ハイインピーダンスヘッドフォン対応)Thunderbolt 3×2(充電、DisplayPort、Thunderbolt接続時最大40Gb/s、USB 4接続時最大40Gb/s、USB 3.1 Gen 2接続時最大10Gb/s)、3.5mmヘッドフォンジャック
カメラWebカメラ(1080p)Webカメラ(720p)
バッテリ容量52.6Wh49.9Wh
バッテリ駆動時間最大15時間のワイヤレスインターネット、最大18時間のApple TVアプリのムービー再生
バッテリ充電時間
本体サイズ
(幅×奥行き×高さ)
304.1×215×11.3mm304.1×212.4×4.1~16.1mm
重量約1.24kg約1.29kg
セキュリティTouch ID(指紋認証センサー一体型電源ボタン)
同梱品30W USB-C電源アダプタ、USB-C充電ケーブル(2m)
カラーシルバー、スターライト、スペースグレイ、ミッドナイトシルバー、スペースグレイ、ゴールド
このカラーはミッドナイト。このほかにシルバー、スターライト、スペースグレイが用意されている
底面は完全にフラットな構造。筐体には100%再生アルミニウムが使用されている
ディスプレイは13.6型IPS液晶(2,560×1,664ドット、224ppi、光沢、500cd/平方m、色域P3、タッチ非対応、スタイラス非対応)を採用。Webカメラ(1080p)はノッチ(切り欠き)部に内蔵
キーボードは日本語(JIS)、英語(US)などから選べる
本体前面(上)と本体背面(下)
右側面には3.5mmヘッドフォンジャック(ハイインピーダンスヘッドフォン対応)、左側面にはMagSafe 3充電ポート×1、Thunderbolt 3×2を用意
パッケージ表面
パッケージ裏面
パッケージには本体、デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ、USB-C - MagSafe 3ケーブル(2 m)、説明書類、ロゴシールが同梱
8コアGPU搭載M2 MBAには30W USB-C電源アダプタ、10コアGPU搭載M2 MBAにはデュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタが同梱される。これは後者だ
デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタの型番は「A2571」。仕様は入力100-240V~1.0A、出力20V 1.75A、15V 2.33A、9V 3A、5V 3A、容量35W
本体の実測重量は1225.5g

シリーズ最薄筐体は自分のモノにしたくなる魅力を備えている

 サイズ/重量は、M2 MBAが304.1×215×11.3mm(幅×奥行き×高さ)/約1.24kg、M1 MBAが304.1×212.4×4.1~16.1mm(同)/約1.29kg。

 重量については両方を持ち比べてみてもどちらが重いか体感しづらいが、トータルでの薄さという点ではM2 MBAに軍配が上がる。真横から見るとM2 MBAのほうが圧倒的にスマート。薄いバッグなどに収納する際にもかさばらない。M2 MBAのシリーズ最薄筐体は、一度手に取ってみると自分のモノにしたくなる魅力を備えている。

上がM2 MBAで高さは11.3mm、下がM1 MBAで高さは4.1~16.1mm

 画面サイズはM2 MBAが13.6型(実測290×188.5mm)、M1 MBAが13.3型(同288.5×178.5mm)。数値的にはあまり違いを感じないかもしれないが、横に並べてみると一回り大きく感じる。筐体の横幅はそのままだが、奥行きを2.6mm伸ばし、狭額縁仕様とすることで、わずかではあるが画面を拡大している。

 大きなノッチ(切り欠き)はいかがなものかと思わないでもないが、大画面化は目の疲れの低減に直結する。うれしい進化だ。

左がM2 MBAで13.6型(実測290×188.5mm)、右がM1 MBAで13.3型(同288.5×178.5mm)

 M2 MBAのキーピッチは実測19.2mm前後、キーストロークは実測1.1mm前後で、キーストロークはM1 MBAよりほんのわずかに浅くなっている印象を受ける。

 キーボードにどんな改良が加えられているのかAppleは公表していないが、新旧モデルを打ち比べてみると、M2 MBAのほうが打鍵音は低めで、また底打ちしたときのショックもやわらかくなっているように感じた。シザー構造のキーという点では変更はないが、材質の見直しなどによりフィーリングが改善されている可能性がある。

左がM2 MBA、右がM1 MBA。M2 MBAのほうがタッチパッドは広くなっているほか、1列目のキートップの奥行きが長くなっている。特にescキーはふたまわり以上大きい
キーピッチは実測19.2mm前後
キーストロークは実測1.1mm前後
キーボードバックライトは環境光が暗いと自動的に点灯する
タッチパッドの面積は実測128×80mm

 M2 MBAの13.6型IPS液晶は輝度が500cd/平方m、色域がP3と謳われている。カラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で実測したところ、sRGBカバー率は99.9%、Adobe RGBカバー率は87.3%、DCI-P3カバー率は97.1%という値が出た。DCI-P3カバー率は100%に届かなかったものの、ノートPCのディスプレイとして十分広色域だ。色調整に活用できるクオリティーを備えていると言える。

実測したsRGBカバー率は99.9%、sRGB比は131.8%
実測したAdobe RGBカバー率は87.3%、Adobe RGB比は97.7%
実測したDCI-P3カバー率は97.1%、DCI-P3比は97.1%
環境光センサーにより周囲の光に合わせて輝度や色を調整する「True Toneテクノロジー」を搭載。異なる環境でも見え方を統一してくれる
広視野角は謳われていないがほぼ真横からでも画面になにが映っているのか判別できる

 スピーカーは、M1 MBAはキーボード左右に内蔵されていたが、M2 MBAはキーボード奥のヒンジ部に移動された。筆者が聞き比べたところM2 MBAのほうがメリハリはあるように感じられたが、M1 MBAのほうが臨場感は勝っているという印象を受けた。

 M2 MBAはDolby Atmos、空間オーディオ対応の4スピーカーシステムということでスペック上は有利なはずだが、何度聞いても印象は変わらなかった。

 ただし、両者の音の違いは好みの範疇だ。M2 MBAのサウンドは13型ノートPCのなかで上位に入ることは間違いない。

4スピーカーは左右のキーボード奥に内蔵されている
ヒンジをディスプレイ側から覗くとスピーカーの開口部が見える
YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生した際の音圧レベルは最大79.8dB(50cmの距離で測定)

 1080pのWebカメラはAppleがチューニングしているだけに、室内灯下で撮影しても明るく、自然な発色で撮影できる。今秋リリース予定の「macOS Ventura」ではiPhoneをWebカメラとして使う「連携カメラ」機能が提供されるが、ライブ配信するならともかく、Web会議用途であれば標準のWebカメラで十二分だ。

Webカメラ(1080p)は使用中に緑色のランプが点灯する。プライバシーシャッターは非搭載
「Photo Booth」で撮影。室内灯下でも明るく、自然な発色で撮影できている

CPU性能は順当な結果、バッテリ駆動時間は驚異の19時間超え

 M2については以下の関連記事で詳しく解説されているが、第2世代の5ナノメートルプロセスで製造され、M1より25%多い200億個のトランジスタで構成。CPU性能は18%、GPU性能は35%、Neural Engineは40%高速化され、メモリ帯域幅は50%高い100GB/sを実現していると謳われている。

 今回は、M2 MBAとM1 MBAでベンチマークを実施し、どのぐらいのパフォーマンスアップを果たしているのかチェックする。

 ただし、M2 MBAは10コアGPU搭載M2、8GBメモリ、512GBストレージ、M1 MBAは8コアGPU搭載M1、16GBメモリ、1TBストレージと、メモリおよびストレージ容量を揃えることができなかった。その点を加味してベンチマーク結果をご覧いただきたい。

 まずCPU性能については、「Cinebench R23.200」のCPU(Multi Core)においてM2 MBAが8,595、M1 MBAが7,541、「Geekbench 5.4.2」のMulti-Core Score(Apple Sillicon)においてM2 MBAが8,924、M1 MBAが7,615となった。つまりM2 MBAはCinebench R23で約1.14倍、Geekbench 5.4.2で約1.17倍のスコアを記録したわけだ。Geekbench 5.4.2ではスペック通りのパフォーマンスを発揮したことになる。

【グラフ1】Cinebench R23.200
Cinebench R23.200を連続10分実行した際のM2 MBAの底面の最大温度は40.2℃
Cinebench R23.200を連続10分実行した際のM1 MBAの底面の最大温度は38.0℃
消費電力はアイドル時で平均9.41W、Cinebench R23.200実行時で平均31.01W
【グラフ2】Geekbench 5.4.2(CPU)

 GPU性能については、Geekbench 5.4.2のCompute(Metal)においてM2 MBAが30150、M1 MBAが20,829となった。つまりM2 MBAは約1.45倍のスコアを記録したことになる。また「GFXBench Metal」ではテスト項目によってその差は異なるが、平均で約1.16倍、最大で約1.61倍のスコアを記録している。M2のGPU性能は35%の高速化とされているが、テスト項目によってはそれ以上のパフォーマンスを発揮したわけだ。

【グラフ3】Geekbench 5.4.2(Compute)
【グラフ4】GFXBench Metal

 一方、不可解な結果に終わったのがストレージベンチマーク。M2 MBAはM1 MBAに対して、リード性能はほぼ同等だが、ライト性能は「Blackmagic Disk Speed Test」で約71%、「AmorphousDiskMark 4.0」で約76%のスコアに留まった。容量、もしくは出荷時期によって性能の異なるストレージが使われている可能性がある。

【グラフ5】Blackmagic Disk Speed Test
【グラフ6】AmorphousDiskMark 4.0

 実際のアプリでは「Adobe Lightroom Classic」、「Adobe Premiere Pro」、「iMovie」で高負荷な処理にかかる時間を計測したが、LightroomではM2 MBAが1.45倍の時間がかかり、Premiereではほぼ同等、そしてiMovieではM2 MBAが約半分の時間で処理を終えた。

【グラフ7】Adobe Lighrroom Classicで100枚のRAW画像を現像
【グラフ8】Adobe Premiere Proで実時間5分の4K動画を書き出し
【グラフ9】iMovieで実時間5分の4K動画を書き出し

 また3Dアクションゲーム「Rise of the Tomb Raider」ではM2 MBAが約1.63倍の総合スコアを記録している。Lightroom、Premiereではメモリ容量の差が処理時間に影響を与えた可能性がある。

【グラフ10】Rise of the Tomb Raider

 驚かされたのがバッテリ駆動時間。ディスプレイの明るさ6/16、音量6/16でYouTube動画を連続再生したところ、M2 MBAは19時間39分(1,179分)、M1 MBAは16時間41分(1,001分)と大きな開きがあったのだ。

 ちなみにM1 MBAはバッテリ情報の状態表示で最大容量が100%となっており、まったくと言っていいほどへたっていない。両機種のスペック上のバッテリ駆動時間は同じだが、M2のほうが省電力性能は高い可能性がある。

【グラフ11】YouTube動画を連続再生した動作時間

非常に物欲がそそられるM2 MBAだが、悩ましいのが価格

 フルモデルチェンジしたM2 MBAはハードウェアデザインが魅力的。楔形から一新し、天面、底面ともにフラットで、なおかつ薄い筐体は機能美を体現しているかのようだ。

 ベンチマークはアプリによってパフォーマンス向上の度合いが大きく異なっていたが、Apple謹製のiMovieでは2分の1の所要時間で処理を終えていた。今回奮わなかったベンチマーク、実アプリもM2への最適化が進めば、結果が大きく変わるかもしれない。

 さて、非常に物欲がそそられるM2 MBAだが、悩ましいのが価格。円安が主な要因なのでAppleに責はないが、M1 MBAが最安10万4,800円で購入できていたところ、M2 MBAは最安16万4,800円だ。

 また10コアGPU、24GBメモリ、2TB SSDという最上位構成だと34万8,800円とかなり高価だ。いまの時代の最新Airはエントリー向けというよりも、薄型軽量のモビリティーを追求したProと並びうる位置づけのマシンと捉えるべきなのだろう。

なお、M1 MBAも継続販売されている。価格は改定されてしまっているが、できるだけ安価にMacBookをほしい方はこちらを検討してほしい。

【表2】「MacBook Air (M2, 2022)」と「MacBook Air (M1, 2020)」の価格
発売時価格発売時価格改定価格
MacBook Air (M2, 2022)※8コアGPUMacBook Air (M2, 2022)※10コアGPUMacBook Air (M1, 2020)※7コアGPU
メモリ 8GB
SSD 256GB
16万4,800円20万8,800円10万4,800円13万4,800円
メモリ16GB
SSD 2TB
30万4,800円32万800円20万4,800円27万4,800円
メモリ24GB
SSD 2TB
33万2,800円34万8,800円