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「ふるさと納税」に初めてチャレンジ!仕組みから手順まで教えます

総務省のふるさと納税ポータルサイト

 ここ数年、SNSでのやり取りやTVのCMなどでよく目にするのが「ふるさと納税」だ。漠然とした情報だと、全国どこの自治体でも応援することができて、寄付をして返礼品がもらえるという。特に返礼品の話題はよく耳にするが、実際のところ、オトクなのか、どうなのかもよく分からない。

 また「納税」ということで、企業に勤めるサラリーマンのように、会社側に所得税などの処理を任せている人たちには無縁なのでは?という疑問もよく耳にする。加えて確定申告を行なっている人たちの手間などは、どうなるのだろうか?

 今回はこうした疑問の声に応えるべく、ふるさと納税初心者である筆者が実際に調査し、なおかつ申請してみた結果についてまとめていきたい。

ふるさと納税は単なる納税ではなく「寄付」

 簡単に言ってしまうと、ふるさと納税とは、全国の応援したい地域(生まれ故郷、お世話になった地域など)に対して自由に「寄付」することだ。「納税」と書かれているが、正確には寄付のようだ。

 ふるさと納税の制度を利用して寄付を行なうことで、寄付を受けた自治体からは、そのお礼として「返礼品」が送られてくるのは周知の通りだが、加えて寄付をしたという証明書類「寄付金受領証明書」も一緒に届く。税金が関係するのはむしろこちらの「寄付金受領証明書」の方で、こちらを使って手続きを行なうことで、前述の寄付金のうち2,000円を超える部分について、所得税の還付と住民税の控除が受けられる仕組みなのだ。

 つまり、寄付した金額の一部が、自身が住んでいる自治体に支払う税金の一部から控除になるので、間接的に地方に納税したような形になることからふるさと納税というネーミングとなっているようだ。

そもそものふるさと納税のポイント。それは「ふるさと納税をすると下限2,000円以外は控除される」ということ。年収に応じて、控除額の上限は変わる。そのため、「所得税ならびに今住んでいる自治体の住民税などが控除される」が「払う税金が減るわけではない」点に注意。図は総務省より
そのままだと寄付者がただ2,000円分損をすることになるので、自治体が寄付額相応の返礼品を用意する。寄付者は返礼品をもらえて初めて「その分お得になる」。もちろん、納得できる場合は「返礼品なしでふるさと納税をする」こともできる

 前述の2,000円というのは、寄付金控除の適用下限額だ。これについては自己負担となるので、寄付金のうち、最低2,000円は寄付者が負担する必要がある。なお、この2,000円は年間の寄付に対する負担額となるため、2回目以降、または複数の自治体に寄付する場合であっても、1年以内であれば最初に払った2,000円のみで済む。なお、自治体への「寄付」という形のため、控除額を気にしないのであれば、いくらでも寄付をすることが可能だ。

 自治体によっては「寄付金の使い道」についてこちらで選ぶこともできる。税金が上がっても、何に使われるか分からない、なんて愚痴を飲みの席などで耳にする場面もあるが、こちらで用途を選べるというのはちょっと嬉しい。

「ふるさと納税」はいつでも受付OK!ただし、返礼品の受付が終了することも

 ふるさと納税の受付期間や制限は特になく、通年でいつでも寄付が可能だ。ただし、寄付金が実際の税金から控除されるタイミングは決まっている。住民税については翌年度分で、所得税は当該年だ。

 たとえば2025年内に寄付をした場合、住民税の場合は2026年分の住民税から控除される。2026年6月頃に「住民税決定通知書」が送付されてくるので、ここで寄付が控除されているかが確認できるのだ。所得税については2025年の分から還付される。

実際の控除額の計算方法について。所得税は納税を行なった年、住民税は翌年から控除される。ワンストップ特例申請を利用する場合は住民税からの控除のみとなる点には注意が必要。

 このような区切りもあるため、3月末を1つの区切りとして受付終了する返礼品なども多い。また、人気の返礼品については、受付終了前になくなってしまう例もあるため、この辺りは返礼品の情報をこまめにチェックするしかないようだ。

会社員の人も「ふるさと納税」できる!「ワンストップ特例制度」の申請を忘れずに!

 ふるさと納税の利用には原則として確定申告が必要だ。ただし、「ワンストップ特例制度」があり、企業に勤めていて年末調整のみで確定申告を行なわない会社員の場合は、これを申請しておくことで、確定申告は不要だ。ただ、ワンストップ特例制度の申請をしたあと、医療費控除を受けるためなどなんらかの理由で確定申告をする場合は、ワンストップ特例制度の申請が無効になるため、ふるさと納税の確定申告も必要となる。また、この制度を利用するためには、寄付先を5自治体以下に絞る必要がある点には注意が必要だ。

ワンストップ特例制度を使わない場合、確定申告に必要な寄付を証明する書類が発行されるので、それをもって翌年の3月15日までに確定申告をする
ワンストップ特例を申請する場合は自動的に翌年度の住民税から控除される

 控除には上限額が設定されているが、上限額の設定は本人の収入やほかの控除によって異なる。独身か、共働きの配偶者がいるか、専業主婦の配偶者がいるか、などで控除上限額が変化する。ふるさと納税の控除については個人住民税/所得割の2割までという制限もある。

 ふるさと納税の寄付金控除額のうち、所得税の税率分が最大40%、住民税からは基本控除が10%分でこれが最大30%まで、特例控除が90%-所得税率分だが、これが住民税所得割額の2割より大きくなる場合は、住民税所得割額の20%が控除額となる。これら全てを合計しても寄付金内の控除額を越えない場合、残りは個人負担額となる。

 この辺りの計算については、後述の総務省ホームページから「寄付金控除額の計算シミュレーション」のExcelシートが配布されているので、こちらを使ってみるのもいいだろう。

 この辺りは総務省のホームページが詳しいので、こちらでいくらまで控除対象になるかをチェックするのがいいだろう。

総務省のホームページにある「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」より抜粋

返礼品に設定された寄付金と実際の価格の差異はどこから来るのか?

 「ふるさと納税によって寄付した金額が控除額上限内に収まれば、実質2,000円で返礼品がもらえる」という仕組みが分かったところで、返礼品をチェックし始めることだろう。

 しかしそこに提示されている金額がやたら不自然な物も目に入る。特にPC関連の製品をチェックしていると、ざっくりした価格相場が脳内にあるため、明らかに定価よりも高額な価格が設定されているのが目に入るだろう。

 これについては、寄付金はあくまでも「寄付」であり、返礼品を「買う」わけではないという点を意識する必要がある。なぜなら返礼品は自治体が用意する“お礼の品”だが、ここにもう1つのルールがあり、「返礼品は品物の価格に送料を上乗せした価格が寄付金の3割以内になる必要がある」というものだ。

 つまり、ふるさと納税のサイトなどに提示された返礼品の価格はあくまでも「寄付金」であって、返礼品の「価格」ではないということだ。加えて、返礼品を自治体がいくらで購入したかも重要になるので、Amazonなどの割引価格と比較した場合、自治体は定価でメーカーから購入している場合がほとんどなので、ベースの設定がかなり高額になっていることが多い。

 たとえば、愛知県日進市の返礼品にあったバッファローの外付けHDDを例に見てみると、容量4TBの「HD-LE-B」シリーズが対象になっており、寄付金額は7万4,000円だ。一方でHD-LE-Bシリーズの4TBに該当するのは「HD-LE4U3-BB」で、価格は税込2万1,890円である。

 何も知らずにこうして価格を並べるだけだと「5万円以上高額に設定されている」ように見えるが、寄付金額の3割相当は2万2,200円だ。HDDの定価とほとんど変わらないので、返礼品の価格としては問題がないことが分かる。

さとふるでの愛知県日進市の返礼品であるHD-LE4U3-BBは7万4,000円。実売価格は2万1,890円なので寄付額の約3割に相当する。年収次第だが、控除額が7万4,000円に収まれば、実質2,000円で製品が入手できる、という計算

 ここからは余談となるが、返礼品については、各社が運営するポータルサイトを使わないとチェックできないが、こうしたポータルサイトは寄付金の一部を寄付金受領証の発送業務委託などの手数料に当てており、その金額は約2割ほど。たとえば前述のHDDの例で言うと、ポータルサイトは手数料として1万4,800円を愛知県日進市から得ており、市としては3万7,000円、寄付金の約50%が手元に残る計算となっている。

 この辺りは市区町村によって異なるのかもしれないが、少なくとも前述の愛知県日進市のホームページにあるふるさと納税に関するページをチェックしても、ふるさと納税についてはポータルサイトを利用するように記載されている

 こうしたポータルサイトは、サイトごとにポイントなどの仕組みを用意しているので、どのポータルサイトがお得かについては、各自で調べたりしてみるといいだろう。なお、このポイントの仕組みについても、2025年10月から禁止になるようなので、今後はどのような施策になっていくのか、注目が集まっている。

中古のiPad Airの全額控除で1,300万円以上の年収が必要

 では、具体的にどのくらいの金額を寄付すればどの程度の品が入手でき、どのぐらい控除されるのだろうか。

 先述の「税金の控除について」のページには、「寄付金控除額の計算シミュレーション」のExcelシートが配布されているほか、どのくらいの年収に対してどのくらいの金額が控除の対象になるのか、家族構成も踏まえて、簡単な目安の金額の一覧表も掲載されている。ただ、この目安一覧は住宅ローン控除や医療費控除など、ほかの控除を受けていない給与所得者のケースとなっている。

 たとえば、独身または共働き(配偶者控除を適用していない)を想定して話を進めるが、年収600万円での控除額の上限は7万7,000円となっているので、前述のバッファローの4TB HDD(寄付金7万4,000円)や、スマートロックのQrio Lock(寄付金7万円)などを選ぶと全額が控除されるため、実質2,000円でこれらの返礼品が入手できることになる。

 「10.9インチiPad Air」などは人気の商品だが、中古再生品で寄付金額は31万円となっている。これに対して全額が控除されるくらいの年収となると、年収は1,300万円以上が必要(控除額上限32万6,000円)だ。仮に年収600万円の場合、23万3,000円(31万円-7万7,700円)+初回の場合は2,000円分は控除されないので、その分の「寄付」は自己負担となる。

10.9インチiPad Airは31万円の寄付が必要。年収1,300万円なら控除額内に収まるが、年収600万円ならオーバーだ

簡単に「返礼品」が手元に届く「Amazonふるさと納税」を試す!

 ふるさと納税の仕組みについてある程度話したところで、いよいよ実際にふるさと納税にトライしてみよう。今回は「Amazonふるさと納税」を使って、Amazon限定の返礼品をゲットしてみることにする。

【Amazonふるさと納税】

 「Amazonふるさと納税」の仕組みは非常にシンプルで、通常のAmazonでの買い物と同様にカートに商品、ならぬ返礼品を入れて、買い物と同様に手続きを完了するだけだ。通常の買い物と異なるのは、注文確定画面だ。

 確定後に「ワンストップ特例申請と税務関連情報について」のアンケートに入力する必要がある。ここでアンケートに答えておかないと、ワンストップ特例申請が利用できない点には注意が必要だ。

 今回は神奈川県川崎市の返礼品を選択したが、アンケートでは、市への寄付金の使い道の要望が選択できたほか、ワンストップ特例申請をオンラインで行なう、または申請書を自分でダウンロードする、住民票の住所にワンストップ特例申請書を郵送してもらう、などの選択肢が表示された。

 今回はオンラインで行なう、または特性申請書を自分でダウンロードする選択をチョイス。これについては、すぐにWebサイトから該当のPDFをダウンロードしておいたので、ワンストップ特例申請を行なう場合はこの書類に記載して申し込みを行なえばOKだ。

「Amazonふるさと納税」の返礼品ページ。見た目はいつものAmazonのサイトと同じだが、寄付先情報など異なる記載も各所に見られる。今回試した返礼品はAnkerのモバイルバッテリで、寄付金は1万2,000円だ
注文確定画面には通常の買い物と異なり、アンケートへの誘導テキストとリンクが記載されている
このような専用のアンケート入力フォームが用意されている
川崎市のホームページではオンラインでの申請手順のほか、郵送で申請する際に使用するPDFも用意されている

 あとは返礼品を待つのみ……と思いきや、なんと今回はAmazon側に在庫のある返礼品だったこともあり、なんと「寄付」の手続きをした日の夜に返礼品が筆者の手元に到着した。

 ただ、筆者の場合はワンストップ特例を利用しておらず確定申告をしているのだが、税金控除に必要な書類が何も含まれていなかった。そこで「Amazonふるさと納税」のサイトにある「はじめてガイド」をチェックしてみたところ、税金控除に必要な「寄付金受領証明書」については後日、寄付先の自治体から直接郵送で送られて来るようだ。

 また、返礼品の到着と同時くらいにメールでの案内も到着しており、そこに記載の問い合わせ先に連絡して確認してみたところ、「寄付金受領証明書」は混雑時でなければ、大体寄付から2週間くらいで送付されてくると案内された。自治体が直接返礼品を発送する場合は、「寄付金受領証明書」と返礼品がセットで送られてくるようだが、「Amazonふるさと納税」の場合は、多少のラグがあるようなので〆切ギリギリなどで利用する際には注意が必要だ。

無事に手元に届いた返礼品。どこからどう見ても普通のAnker製モバイルバッテリだ
箱の背面には「川崎限定モデル」の文字が書かれている
Amazon経由(マーケットプレイスの扱い)で川崎市からメッセージが到着した。ここで寄付控除の手続きについてや、ワンストップ申請書送付のスケジュールなどについても説明してくれる。また、問い合わせ先も記載があるので、電話などで気軽に確認することも可能だ

仕組みを知って興味が増した「ふるさと納税」

 以上、「ふるさと納税」について、非常にざっくりとした、本当に初心者が気になる情報を中心に簡単なところや、実際に自分でも利用してみた模様を簡単にレポートしてみた。

 自身の年収に応じて控除額の上限が変化したり、ややこしい話も多い「ふるさと納税」だが、一方で会社員の人でも手軽に利用できる「ワンストップ特例制度」の仕組みなど、意外と広範な人たちにとってメリットのある仕組みだったことが理解できた。返礼品として手に入れたデバイスの寄付金が全額、または一部が控除されるため、うまく活用すればいい節税手段の1つになりそうだ。

 なお、ポータルサイトごとの違いや、よりオトクな返礼品がどのあたりかなど、調べていくと興味が尽きない「ふるさと納税」なので、興味がある人は各社が運営するポータルサイトをチェックしたり、総務省のふるさと納税ポータルサイトの様子などを確認してみてはいかがだろうか。

 今から色々チェックしたり、実際に寄付を行なった場合は、来年度以降の住民税や所得税からの控除となるので、来年度の節税に備えて今からふるさと納税のポータルサイトなどをチェックして、気になる返礼品を早めにゲットしてしまうのもいいだろう。筆者も来年度に向けて今から節税に挑んでいきたい。