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4つのダイヤルがついたStream Deck +は何ができるのか?

Elgato「Stream Deck +」

 配信者の定番デバイスとして名高い「Stream Deck」の新モデルとして、ダイヤル式操作ノブが付いた「Stream Deck +」が発売された。今まではボタンだけだったStream Deckに、ダイヤルがついたことでどういう使い方が可能になったのか、見てみよう。

8ボタン+4ダイヤル+タッチパネルの構成

 Stream Deckは、液晶がついたマクロボタンの集合体だ。たとえば、キーのショートカットはもとより、OBSで特定のシーンに切り替えたり、BGMや効果音を鳴らしたりといったことができる。OBSなど一部のアプリではプラグインが用意されているので、アプリがバックグラウンドになっていても操作できるのがキモだ。

Stream Deckアプリで各種機能をボタンやダイヤルに割り当て可能。なお、ダイヤルに割り当てられるのは「ダイヤル」タブに表示されるもののみとなる

 また、メーカーや有志が膨大な数のプラグインを公開しており、配信に限らずゲームでもクリエイティブアプリでも、さまざまな活用ができる。

 新発売されたStream Deck +は、8個のマクロボタンと、横長のタッチパネル、そして4つのダイヤルを装備している。マクロボタンの機能は従来のStream Deckとまったく同じだが、ほんの少しだけボタンが大きくなっている。

 その下にある横長の液晶には、ダイヤルに割り当てられた機能のアイコンや、現在の設定値が表示される。表示だけでなく、タップ操作も可能だ。加えて、スワイプ操作で前後のページに移動もできる。

 ノーマルのStream Deckはボタンが15個。それに対して、Stream Deck +は約半分の8個しかない。ただ、従来のStream Deckでは、複数のページを作ったとき、1つか2つのボタンをページめくり用に割り当てる必要がある。それに対して、Stream Deck +では、ボタン操作ではなく液晶パネルのスワイプでページ遷移できるので、8個のボタンを常時フルに使えるので、実質のボタン数の差は少し少なくなる。

左から初代Stream Deck、Stream Deck +、Stream Deck XL
ボタンは過去のStream Deckシリーズよりわずかに大きい
上段にボタン8個を装備
その下に液晶タッチパネル

回転と押し込み操作が可能

 目玉となるダイヤルだが、これは左右にいくらでも回転できる。回す際に適度なクリック感がある。また、押し込む操作もできる。これによって、便利になるのが音量の調節だ。これまでにもサードパーティプラグインで、各アプリの音量を調節できるものもあったが、まずメインボタンを1回押すと、アクティブなアプリのリストがStream Deckに表示され、それとセットになっている+と-ボタンで10/100ずつとか5/100ずつとか調整するという、ちょっと面倒で大雑把なものだった。

下段にダイヤルを4つ装備。回転と押し込みができる

 これに対して、Stream Deck +では、すばやくかつ正確に音量を調節できる。また、押し込むことでミュートのオンオフ切り替えもできる。Stream Deck +の発売に合わせて公開されたStream Deckアプリの最新版には「Volume Controller」という機能が追加された。この機能をいずれかのダイヤルに割り当て、音量変更したいアプリを指定しておけば、わざわざゲームの設定画面を開いて調節ということをやらなくても、瞬時に変更できるといった具合だ。

 他のElgato製品と連動できるのも強みだ。たとえば照明の「Key Light」シリーズを使っている場合、ダイヤル操作で色温度や明るさを調節でき、押し込みでオンオフできる。また、Webカメラの「Face Cam」を持っているなら、ISO感度や色温度などのパラメータ調節のほか、拡大縮小もできる。

ダイヤルに左から、Key Light(輝度)、OBS音声出力(音量)、Chrome(音量)、Face Cam(ISO感度)を割り当てたところ
音量系はダイヤル押し込みだけでなく、液晶タッチでもミュート操作ができる。Key Lightもオンオフできる

ダイヤルスタックで1つのダイヤルに複数機能を集約

 こういった、音量や色温度、明るさなどのパラメータ調節はボタンよりもダイヤルの方が圧倒的に操作しやすい。そうすると、4つのダイヤルでは足りなくなってくる。もちろん、ページを複数作って、切り替えてもいいのだが、「ダイヤルスタック」という便利な機能が用意されている。

 これは、ダイヤルを押す度に機能を切り替えるというものだ。たとえば4つのアプリの音量を適宜調節したい場合、まず、ダイヤルのどれかにダイヤルスタックを割り当て、その中に、Volume Controllerを4個追加する。これで、ダイヤルを押す度に、アプリ1→アプリ2→アプリ3というように、順次音量を変えたいアプリが切り替わる。

ダイヤルスタックを割り当てると、ダイヤルを押すごとに、機能を切り替えられる

 こうすると、ボタンを押し込んでのミュートができないのだが、それについては、液晶パネル側のタッチ操作でできる。ちなみに、Face Camの場合は、ダイヤルの左右回転でISO感度やホワイトバランスを調節し、パネルタップでそれらをオートに変更でき、Key Lightでは、左右回転で輝度と色温度を調節し、パネルタップではオンオフを実行できる。うまくできてるなと感心する。

 このように、1つダイヤルに機能やデバイスをまとめておいて、押し込みで切り替えると、無駄にページを増やさなくても済むようになる。

Stream Deckシリーズで初めてWave Linkに対応

 もう1つ大きな機能が、「Wave Link」への対応だ。Wave Linkは元々、Elgatoのマイクやオーディオインターフェイス製品に付属していたアプリだ。詳細については下記の記事で詳しく説明しているので、そちらもあわせて読んでいただきたいが、これを使うことで、ゲーム、チャット、BGMなどを個別に音量調節できる。しかも、自分に聞こえる音量と、配信に流れる音量を分けて設定することもできる。

Wave Link

 非常に強力で柔軟なアプリで、このためにElgatoのマイク製品を買ってもいいと言えるほどだが、Stream Deck +の登場により、同社製マイク以外のユーザーもこのアプリを利用できるようになった。今までは、Wave Linkの音量調節はマウス操作でやっていたものを、Stream Deck +ならハードウェアでできる。

 また、Discordのチャット音量がちょっと大きい、あるいは小さいといった場合に、ゲーム画面を中断して、Discordをフォアグラウンドに呼び出すことなく、Stream Deck +でさっと操作できる。

Wave Linkで設定した各仮想オーディオチャネルをダイヤルに割り当てできる

 そう、この各種アプリにネイティブ対応しているのがStream Deckシリーズのメリットなのだ。ゲーム配信をしている際に、たとえばDiscordでチャット音を調整といったことをやると、ゲームがいったんバックグラウンドに移る。その際、ゲームによっては、配信上で画面が消えたり、音声が消えるものがある。そもそも、そういった操作が煩わしいのだが、Stream Deckならゲーム画面から切り替えることなくできるのが大きい。

クリエイティブ系アプリ向けのサードパーティプラグインも登場

 ダイヤル操作というと、クリエイティブ系アプリで、拡大縮小や回転、タイムラインのスクロールなどの操作を手軽にやりたいというニーズも多いだろう。筆者が調べた中では、SideshowfxがStream Deck +向けにPhotoshop、Premiere、DaVinci Resolve、Cubase Pro用にプロファイルパッケージを有償(34.99ドル)で発売している。

 クリエイターの人で、右手はマウス、左手はキーボードのショートカット操作というかたちで作業する人も多いが、Stream Deck +とこれらプロファイルパッケージを組み合わせると、左手のStream Deck +でショートカット操作はボタンで、拡大縮小や回転、スクロール操作はダイヤルで行ない、生産性を上げることができるだろう。

 また、Stream Deckシリーズのプラグイン作者として有名なBarRaider氏が、OBS Toolsのベータ版を無償公開しており、OBSの音量入出力をダイレクトに調節できる。

どういったユーザー向け?

 Stream Deck +の主な機能を紹介した。本製品はどういったユーザーにお勧めだろうか? Stream Deckには数多くのプラグインがあるほか、BitfocusのCompanionアプリを使うと、Blackmagic DesignのATEMシリーズと連動できたりするため、特に32ボタンあるSream Deck XLなどは大手プロダクションなどでも採用されているデバイスだ。そういったユーザーにはボタン8個はちょっと物足りないだろう。ただ、ダイヤル操作は重宝するだろうから、既存のStream Deackと併用する形になるだろう。

 一方、個人配信用途であれば、ボタン数は8個と、ノーマルのStream Deckよりだいぶ少ないが、これでやりたいことはほぼできるだろうし、ボタンが足りなくなったらページを追加すればいい話だ。初めて買うStream Deckとして本製品を選んでもいいだろう。また、Elgato製品、特にKey Lightを持っているユーザーにもお勧めだ。

 クリエイティブ系アプリのユーザーも、対応ソフトはまだ少ないようだが、デバイスの人気度から考えて、先に紹介したもの以外にも対応するプラグインが登場するのは時間の問題で、幅広く活用できるだろう。