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Snapdragon 888搭載でコンパクトな「Xperia 5 III」の使い勝手を細かくチェック!
2021年10月14日 06:55
ソニーは、最新プレミアムスマートフォン「Xperia 5 III」を、国内の一部通信事業者から、11月中旬以降に発売すると発表した。現時点で発売を予定している通信事業者は、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3事業者。なお、この原稿を執筆している段階では発売日、価格ともに未発表となっている。
今回、発売前にいち早くXperia 5 IIIの評価機(NTTドコモ版)を試用する機会を得たので、ハード面を中心に紹介する。なお、今回は発売前の評価機ということもあり、SIMを装着できず、ベンチマークテストなどのアプリが利用できない状態での評価だったことはご了承願いたい。
デザインコンセプトは従来モデルとほぼ同等
ではまず、Xperia 5 IIIの外観から見ていこう。
Xperia 5 IIIの筐体は、側面にメタルフレーム、ディスプレイ面および背面に強化ガラスを採用している。強化ガラスは、米Corningの「Gorilla Glass 6」となる。
前面は4辺狭額縁仕様ではあるが、上下は左右に比べてやや広めのベゼルが存在する。それでも上下のベゼル幅は十分に狭められており、ベセルが極端に太いとは感じない。加えて、前面カメラは上部ベゼル部に配置しているため、ディスプレイには切り欠きやパンチホールがなく、ディスプレイ全体に映像を表示する場合でも、そういった部分が邪魔になることはない。
本体のデザインコンセプトは、Xperia 1 IIIやXperia 5 IIと同等だ。側面はなだらかな曲面で、前面及び背面はフラットな一枚板といった印象で、近年のXperiaらしいデザインとなっている。背面の左上角付近に、レンズを縦に並べた背面カメラを搭載している点も同様だ。手に持った印象も、ゴツゴツとした感触がなく、持ちやすいと感じる。
カラーは、グリーン、ピンク、フロストシルバー、フロストブラックの4色を用意し、フロストシルバーとフロストブラックは日本限定カラーとなる。このうちグリーンとピンクはメタルフレーム、背面ガラスともに光沢仕上げとなっているのに対し、フロストシルバーとフロストブラックはメタルフレーム、背面ガラスともにつや消し仕上げとなっている。グリーンとピンクは、光沢感が強く華やかな見た目だが、背面などやや指紋の痕が残りやすい印象。それに対しフロストシルバーとフロストブラックは落ち着いた上質な見た目で、指紋の痕も目立ちにくい。
個人的には、光沢仕上げのグリーンとピンクのほうが華やかな印象で好みだが、フロストシルバーとフロストブラックも上質な印象で、実際には甲乙付けがたい。そのため、購入を考えている場合には、販売店などの展示機でその質感を確認することをお勧めする。
なお、NTTドコモとauでは4色全てが発売されるのに対し、ソフトバンクはピンク以外の3色のみの発売となる。主な仕様は、表1にまとめたおおりだ。
Xperia 5 IIIの主な仕様 | |
---|---|
SoC | Snaodragon 888 5G |
メモリ | 8GB |
内蔵ストレージ | 128GB |
外部ストレージ | microSD |
ディスプレイ | 6.1型有機EL、FHD+(1,080×2,520ドット)、アスペクト比21:9、HDR、リフレッシュレート最大120Hz |
リアカメラ | 超広角:16mm/F2.2、1/2.6型1,200万画素、デュアルPDAF 広角:24mm/F1.7、光学手ブレ補正、1/1.7型1,200万画素、デュアルPDAF 望遠:70mm/F2.3、105mm/F2.8可変式望遠、光学手ブレ補正、1/2.9型1,200万画素、デュアルPDAF |
フロントカメラ | 800万画素 |
5Gネットワーク | Sub-6 |
オーディオ | フロントステレオスピーカー「フルステージステレオスピーカー」、3.5mmオーディオジャック Dolby Atmos対応、ハイレゾ音源/DSEE Ultimate対応/360 Reality Audioスピーカー再生/360 Spatial Sound |
防水・防塵 | IP65/68 |
生体認証機能 | 電源ボタン一体型指紋センサー |
NFC/FeliCa | 搭載、おサイフケータイ対応 |
外部ポート | USB Type-C、3.5mmオーディオジャック |
バッテリ容量 | 4,500mAh |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 68×157×8.2mm |
重量 | 168g |
カラー | フロストブラック、フロストグレー、グリーン、ピンク |
本体サイズは68×157×8.2mm(幅×奥行き×高さ)となっている。従来モデルのXperia 5 IIとの比較では、0.2mm厚くなっているのに対し、奥行きは1mm短くなっている。とはいえ、実際に手に持ってもその違いを認識できないほどの違いと言える。
また、上位モデルのXperia 1 IIIとの比較では、幅が3mm、奥行きが8mmそれぞれ短くなっているので、横に並べるとXperia 5 IIIがかなり小さく感じる。実際に手に持ってみてもXperia 1 IIIのように手に余るという印象がなく、Xperia 5 IIIの方が圧倒的に持ちやすい。もちろん、ポケットなどに入れてもかさばる印象が少ないため、このコンパクトさはかなり魅力的だ。
重量は、公称168gで、実機の実測では168.9gだった。重量はXperia 5 IIより5g重くなっているが、こちらも手に持って違いが分かるほどではなかった。ただ、Xperia 1 IIIより20g軽く、こちらは十分に違いが実感できる。
Xperia 5 II同様の6.1型フルHD+有機ELディスプレイを採用
Xperia 5 IIIのディスプレイは、アスペクト比21:9、フルHD+(1,080×2,520ドット)表示、HDR表示対応の6.1型有機ディスプレイを採用している。リフレッシュレートは最大120Hzに対応。また、フレーム間に黒の画像を差し込むことで240Hz相当の残像低減技術を採用している点や、240Hzのタッチサンプリングレート対応タッチパネルも引き続き搭載しており、ディスプレイ関連の仕様は従来モデルのXperia 5 IIと同等だ。
リフレッシュレートは設定メニューで切り替えるようになっているが、120Hzに設定するとスクロール時の画面のにじみが大幅に軽減され、非常に見やすくなる。ただし、消費電力は増えるため、その点はトレードオフとなる。
このほか、ソニーの大画面テレビ「ブラビア」シリーズで培った高画質化エンジン「X1 for mobile」や、標準品質(SDR)の映像をHDR相当に変換して表示する「HDRリマスター」、ソニーのマスターモニター同様のHDR、BT.2020、10bitカラーの映像データの色調を忠実に表示する「クリエイターモード」なども引き続き搭載している。
表示される映像のクオリティは、さすがのひと言だ。発色は非常に鮮やかで、明暗部が潰れることもない。HDR対応の映像を表示すると、本来の発色や明暗を再現して表示できていることが実感できる。
また、表示機能としては、USBポート経由で映像を入力して表示する、外部モニター機能も引き続き搭載。USB Video Class対応のアダプタを利用することで、デジタルカメラなどのモニターとして利用可能となる。実際に、手持ちのデジタル一眼カメラのHDMI出力からの映像も、USB Video Class対応の変換アダプタ経由でXperia 5 IIIのディスプレイに表示できた。
背面カメラの仕様は、3D iToFセンサーの有無以外はXperia 1 IIIと同等
背面カメラは、超広角、広角、望遠の3眼仕様となっている。超広角レンズは16mm/F2.2で、1/2.6型 1,200万画素デュアルピクセルセンサーとの組み合わせ。広角レンズは24mm/F2.2で1/1.7型 1,200万画素デュアルピクセルセンサーとの組み合わせで、光学式手ブレ補正に対応。望遠レンズは、焦点距離を70mmと105mm(いずれも35mm換算)に切り替えて利用できる屈曲光学系の可変式望遠レンズで光学式手ブレ補正にも対応し、1/2.9型 1,200万画素デュアルピクセルセンサーとの組み合わせとなる。合わせて、全レンズがZEISS銘で、T*コーティングが施されている。
これらレンズと撮像素子の組み合わせは、Xperia 1 IIIと全く同じだ。ただし、Xperia 5 IIIの背面カメラでは、Xperia 1 IIIの背面カメラにある深度計測用の3D iToFセンサーが省かれている。そのため、Xperia 1 IIIの背面カメラと全く同じ仕様というわけではないが、搭載しているものについての仕様は同じとなっている。
前面カメラは800万画素センサー採用で、こちらもXperia 1 IIIと同じだ。
撮影機能も、Xperia 1 IIIとほぼ同等だ。カメラアプリは、Xperia 1 IIIやXperi5 II同様に「Photography Pro」を採用。プログラムオートやシャッタースピード優先、マニュアルモードなどの高度な撮影機能を用意するだけでなく、Android標準のカメラアプリ同等に撮影できるベーシックモードが用意されるため、高度な機能を意識することなく気軽な撮影も可能。
ズーム調節はレンズごととなり、全領域を通したシームレスなズームは行なえない。超広角レンズは0.7~1倍、広角レンズは1~2.9倍、望遠レンズは2.9~4.4倍と4.4~12.5倍の範囲でズーム調節が可能となる。この点もXperia 1 IIIと同じで、レンズ交換式カメラのように、レンズを交換しながら撮影することを意識した仕様となっている。ただ、利便性という点では全領域のズームが行なえた方がいいと感じる。そのため、例えばPhotography Proのベーシックモードに限り全領域でシームレスなズーム調節ができるようにするなどの対応を期待したい。
動画撮影用アプリ「Cinema Pro」も引き続き搭載しており、こちらもプロ向けカメラ同等の高度な動画撮影が行なえるのはもちろん、4K HDR 120fpsのスローモーション撮影なども行なえる。
また、リアルタイム瞳AFや最大秒間20コマのノイズ低減AF/AE追従高速連写、最大毎秒60回のAF/AE演算、AI超解像ズーム、動画撮影時に高い手ブレ補正効果を発揮するFlawlessEye対応ハイブリッド手ブレ補正機能なども搭載している。
なお、人やペット、任意の物体などタップした被写体をAIで認識し追い続ける「オブジェクトトラッキング」機能も搭載しているが、こちらは3D iToFセンサーがないことで、Xperia 1 IIIで用意されている「リアルタイムトラッキング」と比べて精度が異なっているという。ただ、実際に試した限りでは、動く物体をタップするとしっかり追いかけてくれたので、大きく機能が劣ることはないと考えて良さそうだ。
実際に写真を撮影してみると、いずれのレンズでも高品質な写真が撮影できると感じる。近年は、AI処理によって色を盛るなどして鮮やかな色合いを表現したり、暗い場所でも非常に明るく撮影できるスマートフォンが多くなっている。それらに比べると、Xperia 5 IIIの写真は、明るい場所や暗い場所でも、必要以上に色を盛ったり明るく補正することがなく、どちらかというと目で見た場合に近いナチュラルな色合いや明るさを再現するという印象だ。メリハリの強い写真が好みのスマートフォンユーザーからすると、やや物足りなく感じるかもしれない。ただこのあたりは、αシリーズの考え方が色濃く反映されていると感じる部分で、個人的には盛りすぎの写真が撮影できるスマートフォンよりも好印象だ。
動画撮影についても、本体をラフに持って撮影しても、ブレを抑えた動画が撮影できた。これなら、スタビライザーがなくても申し分ないクオリティの動画が撮影できそうだ。なお、動画撮影時の発熱については、今回は撮影時の気温がそれほど高くなかったこともあってか、10分程度の連続撮影では本体が多少温かくはなっても、発熱の警告が出て撮影できなくなることはなかった。
充実したサウンド機能を搭載
サウンド機能も、Xperia 1 IIIに搭載される機能の多くが踏襲されている。
3.5mmオーディオジャックの用意やハイレゾオーディオ対応、標準音質のサウンドをハイレゾ相当に高音質化する「DSEE Ultimate」などは、従来モデルから引き続き搭載。そのうえで、前面ステレオスピーカーがXperia 1 IIIで搭載された「フルステージステレオスピーカー」に進化している。
Xperia 5 IIIのフルステージステレオスピーカーは、Xperia 1 IIIのものとは異なり、従来スピーカから40%音圧を向上したものとはなっていない。ただ、フロントステレオスピーカを利用した立体音響再生を可能とするソニー独自技術「360 Reality Audio」に対応するとともに、ステレオ音源を立体的に再生する「360 Spatial Sound」機能なども搭載。実際にスピーカーだけで音楽を再生してみても、音に包み込まれるような臨場感のあるサウンドを楽しめる点は、かなり魅力的に感じる。なによりスピーカーの音質がかなり良く、外付けのスピーカーを用意しなくても十分高音質に音楽を楽しめると感じる。
また、3.5mmオーディオジャックは従来モデルと比較して音圧が40%高められている。筆者は高音質な有線ヘッドフォンを持っていないため実際に違いを確認できなかったが、有線ヘッドフォンを使う場合も従来よりも迫力のあるサウンドを楽しめそうだ。
基本スペックもXperia 1 IIIに匹敵
Xperia 5 IIIでは、Xperia 1 IIIとほぼ同等の基本スペックを搭載する点も特徴となっている。
SoCはSnapdragon 888 5Gと、現時点でQualcomm最強SoCを採用。RAMは8GB、内蔵ストレージは128GBと、いずれもXperia 1 IIIより少なくなっているが、必要十分の容量を搭載。ストレージについては、最大1TBのmicroSDカードが利用できるため、写真や動画を多く撮影する場合にはmicroSDカードを増設することで容量不足を解消できる。
ポート類は、下部側面にUSB Type-C、左側面にnano SIM×1とmicroSD×1のトレイ、上部側面に3.5mmオーディオジャックをそれぞれ用意。物理ボタンは、右側面に集約されており、上からボリュームボタン、指紋認証センサー一体型電源ボタン、Googleアシスタントキー、シャッターボタンを用意。
このうち、GoogleアシスタントキーはGoogleアシスタントを呼び出すことのみに利用でき、その他のアプリ呼び出しなどを割り当てられない点は残念。なお、電源ボタンとGoogleアシスタントキーは本体側面から奥まった位置に配置されているため、側面を挟んで装着するジンバルなどを装着しても、ボタンが誤動作することはない。
モバイル通信は5G対応だが、Sub 6のみ対応でミリ波には非対応。とはいえ、ミリ波が利用できる場所はまだかなり限られるため、非対応でもそこまで不利とはならないだろう。5G通信時の速度は、下り最大4.2Gbps、上り最大218Mbpsとなる。
無線LANはWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応で、BluetoohはBluetooth 5.2準拠。NFC/おサイフケータイ機能も、もちろん搭載している。
防水・防塵仕様は、IPX5/IPX8準拠の防水性能と、IP6X準拠の防塵性能を備える。生体認証機能は、先に紹介しているように電源ボタン一体型の指紋認証センサーを搭載する。
このほかの付加機能としては、FMラジオ機能を搭載。フルセグ/ワンセグ機能は非搭載となる。
内蔵バッテリは、容量が4,500mAhとXperia 1 IIIと同じ大容量バッテリを搭載。高性能SoCを採用していることを考えると、この大容量バッテリの搭載は嬉しい。合わせて、バッテリは3年間劣化しにくい長寿命仕様となり、30分で約50%の容量を充電できる急速充電機能も備えている。ただし、ワイヤレス充電機能が非搭載となっている点は残念だ。
ところで、今回はベンチマークテストは行なえなかったが、Xperia 5 IIIで撮影した5分ほどの4K動画を、ディスプレイ輝度50%で1時間30分の間連続再生した場合のバッテリの減りを検証してみた。すると、約16%の容量が消費された。今回の試用機ではSIM非装着だったため、実際の利用環境とは大きく異なるものの、動画再生の用途であれば申し分ない長時間駆動が可能と考えて良さそうだ。
持ちやすい高性能スマートフォンとして魅力
今回は、一部制限のある評価機を試用したため、性能や機能をフルに確認できたわけではないが、それでもXperia 1 IIIに近い機能や性能を十分に実感できた。それでいて、Xperia 1 IIIよりひとまわり小さく、持ちやすい筐体を実現している点は、従来モデル同様に大きな魅力となるはずだ。
この原稿を執筆している時点では、販売価格は未発表だが、おそらく従来モデルであるXperia 5 II登場時とそう大きく変わらない価格になると思われる。プレミアムモデルということもあり、それなりに高価な価格設定になるとは思うが、それでもXperia 1 IIIよりは安価になるはずだ。そのため、フラッグシップ相当の高性能で比較的コンパクトなスマートフォンが欲しい人にお勧めしたい。