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「USB Type-C」と「Thunderbolt」って同じもの?よく分かる最新コネクタ解説

Thunderbolt 3ケーブル(左)とThunderbolt 4ケーブル(右)。いずれもコネクタはUSB Type-Cと同一形状だ

 USB Type-Cは難解さゆえ、アレルギーを持っている人は多い。以下の関連記事で紹介した「USB 3.xのGen表記」の分かりにくさも相当なものだが、それでも速度まわりの話に終始しており、データ転送から給電、映像出力までカバーするUSB Type-C全体ともなると、その分かりにくさはケタ違いだ。USB Type-C周りの話題はなるべく避けて通っている人も、少なくないのではないだろうか。

 その中でも、USB Type-Cを使ったデータ伝送規格「Thunderbolt」が「よく分からん」という人は多いはずだ。USB Type-Cに関連した「なるほど分からんランキング」なるものがあったとすれば、給電規格の「USB PD」、映像表示の「DisplayPort Alternate Mode」、そしてこのデータ伝送の「Thunderbolt」が、ベスト3を占めるのではないかと思う。

 こうした規格を把握するには、策定時のみ存在した古い仕様だったり、細かい例外をいったん除外して考えるのが手っ取り早い。製品の開発などに直接携わらないユーザー側であればなおさらだ。

 本稿もその方針に則り、ThunderboltとUSB Type-Cの違いを、アウトラインを中心に紹介する。詳しい方から見るとツッコミを入れたくなる箇所はあるだろうがご容赦いただきたい。

【編集部注】同じテーマの最新記事をこちらに掲載しています。

ThunderboltはUSB Type-Cと一体何が違う?最新規格で違いをチェックしてみた

コネクタを統一すれば分かりやすくなるわけではない

 Thunderboltは、外付けドライブやディスプレイとの接続に用いる規格として2011年に登場した。MacBook Proに採用されたのが始まりだが、最新バージョンである「Thunderbolt 4」はIntelの第11世代Coreプロセッサ(コードネーム:Tiger Lake)に統合されている。つまりCPU側でサポートするようになったので、今後はWindowsでも一般的になっていくはずだ。

WindowsでもThunderboltに対応したUSB Type-Cポートを備えたPCは増えつつある。これはマウスコンピューターの14型モバイルノート「MousePro-NB420H
一番右にあるUSB Type-CポートがThunderbolt 4対応だ

 もともと別のコネクタ形状だったThunderboltだが、2015年に登場した「Thunderbolt 3」でコネクタにUSB Type-Cを採用したことで話がややこしくなった。

 理由は簡単、USB Type-Cと見た目に区別が付かないからだ。作る側からすると共通の部材が使えてコストを下げられる利点はあるだろうが、使う側からすると実際に試すまで挙動が分からないのでたまったものではない。

Thunderbolt 3ケーブルのコネクタ。稲妻マークに数字の「3」を組み合わせて規格を表している。現行のThunderbolt 4は数字が「4」になる
左がThunderbolt 3ケーブル、右がUSB Type-Cケーブル。どちらもコネクタ形状はUSB Type-Cなので混乱する

 ここで仮に「USB Type-Cはデータ転送と給電、Thunderbolt 3は映像信号伝送」などと役割がはっきり分担されていれば、(便利か否かはともかく)分かりやすかったかもしれないが、実際は守備範囲が被っている上、どちらかが完全な上位互換というわけでもない。対応非対応以外に「対応しているが速度が遅い」といったこともある。

 またケーブルについても、USB Type-Cケーブル自体、USB 2.0だったり3.xだったりとバラバラで転送速度などの差があるところに、Thunderbolt 3はケーブルの長さによって挙動が異なるというややこしい特性がある。

 「コネクタを統一すれば分かりやすくなるわけではない」のをはっきり知らしめたのは、Thunderbolt 3の(というよりもUSB Type-Cの)功績と言っていいだろう。

 しかし昨年(2020年)、Thunderbolt 3の後継であるThunderbolt 4が登場したことで、こうした混乱はようやく「過去のもの」と言えるようになった。というのもThunderbolt 4では、現行のUSB Type-Cでできることが全部できるようになっているからだ。このあと詳しく紹介する。

Thunderbolt 4ケーブルは「全部入り」のUSB Type-Cケーブル

 USBについても、従来のUSB 3.x系列から、その上位版であるUSB4へと進化している。USB4はThunderbolt 3と互換性があることをアピールしているが、ではそのThunderbolt 3の上位版であるThunderbolt 4とはどこが異なるのだろうか。

Intelが「Thunderbolt 4」の説明会で用いた資料。Thunderbolt 3は、USB4のcompatible(互換性あり)とされている。compliant(準拠)よりも弱い表現であることに注意

 これについては、以下の比較表を見てもらえば分かりやすいだろう。

USB4とThunderbolt 4ケーブルの違い
USB4ケーブルとThunderbolt 4ケーブルの比較。細かい注釈は省いているが、これだけでも何が違うか理解してもらえるはずだ

 USB4は、転送速度は20Gbpsと40Gbpsの2種類があるほか、USB PDも、最大100W(5A対応)の場合もあれば最大60W(3A対応)の場合もある。さらに映像信号はひとまず1画面に出力できれば、解像度についての規定はない。つまり仕様に幅があり、最低限のスペックを満たしていれば、USB4を名乗れてしまう。

 こうしたことから「USB4ケーブル」を名乗っていても、仕様はどれも同じではない。転送速度だけは「20」、「40」などとコネクタ部に明記されているが、それ以外は外観で判断する方法はなく、パッケージなどを参照するしかない。

USB4ケーブル。転送速度が20Gbps対応なのか40Gbps対応なのかは、コネクタ部に書かれた数字を見ればすぐ分かる。ただしそれ以外の詳細な仕様は、外観からは分からない
パッケージには詳細なスペックが書かれているが、ケーブル側には記載がないため、取り出した瞬間に分からなくなる。写真はエレコムの「USB4-CC5P08BK

 これに対してThunderbolt 4は、転送速度40Gbps、USB PDは最大100W、映像信号は4K解像度の2画面出力と、USB4の最上位にあたるスペックを備えている。つまりUSB4の規格の範囲で考えうる最上級のスペックを持ったケーブルが、Thunderbolt 4ケーブルということになるわけだ。

左がThunderbolt 4ケーブル、右がUSB4ケーブル。Thunderbolt 4ケーブルは「USB4ケーブルの最上級品」とみなすことができる
Intelが「Thunderbolt 4」の説明会で用いた資料。Thunderbolt 4ケーブルは、USB Type-Cケーブル全てを置き換えられるとしている

一家に1本? Thunderbolt 4ケーブル

 従って、Thunderbolt 4ケーブルが1本あれば、現行のUSB Type-Cケーブルでできる、あらゆることができてしまう。正確には1つだけ「USB 3.2 Gen 2x2での転送をサポートしている場合とそうでない場合がある」という例外はあるのだが、これが問題になるのはかなりのレアケースだ。

 それゆえThunderbolt 4ケーブルを常備しておくと、トラブルの切り分けに非常に重宝する。もし手持ちのUSB Type-Cケーブルでデバイスを接続して上手く動作しなかった時に、Thunderbolt 4ケーブルに交換して動作すればケーブルが原因だろうし、そうでなければデバイス側の不具合である可能性が高いからだ。

 「一家に1本」という表現がよいかはともかく、1本持っておくと何かと重宝するので、個人的におすすめしておきたい。

Thunderbolt 4ケーブルは「全部入りのUSB Type-Cケーブル」にあたり、1本持っておくと重宝する。ちなみに本記事で使っているのは、Cable Mattersの「107032-BLK-0.8m
Thunderbolt 4ケーブルがあれば、2台の4Kディスプレイとの接続、USB PD経由での最大100Wの充電など、万能と言っていい使い方ができる
現行のiPad ProのUSB Type-CポートはThunderbolt 3/USB4対応なので、Thunderbolt 4ケーブルがあればどちらの規格にもフル対応できる

 言い換えれば、身の回りのUSB Type-Cケーブルを全部Thunderbolt 4ケーブルに置き換えれば、USB Type-Cにまつわる問題はほぼ解決するわけだが、現実的には難しいと言わざるを得ない。

 理由はコストで、Thunderbolt 4ケーブルは安いものでも3千円前後、長いタイプは1万円弱と高価なので、充電だけにしか使わない用途にまでThunderbolt 4ケーブルを使っていると、かなりの出費を強いられることになる。

 また(Thunderbolt 4ケーブルに限ったことではないが)、一般的にグレードの高いケーブルはシールド性能を強化していることからケーブルが硬く太く、取り回しに難があることも多い。

 今や百円均一ショップですら両端USB Type-Cケーブルを扱っている時代である。安価なケーブルで済ませられる部分はそちらで済ませるというのが、現実的な対処法だろう。

Thunderbolt 4に用いられるアイコン、ロゴ。認証テストをパスしていない製品は、これらロゴが使われていないため、避けた方が無難だ

余談:Appleの「USB-C」とは。そしてThunderboltとIEEE 1394の浅からぬ因縁

 というわけで「Thunderbolt 4ケーブルは1本持っとくとイイっすよ」というのが本稿の結論なのだが、最後にUSB 3.x Gen表記の記事と同じく、余談を2つほど紹介しよう。いずれも本題からは逸れた話なので、興味のない人はここで読み終えてもらっても構わない。

 1つはAppleがUSB Type-Cの呼び名として用いている「USB-C」という表記だ。本来ならば表記の揺れがあるのはあまり好ましくないが、「USB Type-C」と長ったらしく書くよりはコンパクトで分かりやすいせいか、最近では他社でもこの表記を用いているケースがあり、言い換え可能な表記として事実上定着しつつある。

 どちらかと言うとUSB関連の表記でややこしいのは、従来のUSB Standard Aを「USB Type-A」と書く人が後を絶たないことだ。USB Type-Cと並べて書いた時に見栄えがいいのはその通りだが、正確には正しくない。こうした表記の揺れを併発しにくいという意味では、前述の「USB-C」という表記は確かに合理的な面はある。

iPad Proの仕様ページより。Appleは一貫してUSB Type-Cを「USB-C」と呼称しているが、意味は同じだ

 もう1つ、Thunderboltはかつての「IEEE 1394」と浅からぬ縁があるというのもおもしろい。かつて高速インターフェイスとして登場したIEEE 1394(FireWire)は、最終的にUSB 2.0に敗れる形でフェードアウトしていったわけだが、それを推進していたAppleがIntelと組んで新たに策定したのが、ほかならぬThunderboltである。

 ThunderboltはもともとLightPeakというコードネームで開発されていた規格がベースで、IEEE 1394が発展したものではないが、それまでMacBook Proに搭載されていたFireWire 800(IEEE 1394b)ポートが2011~12年にかけてThunderboltポートへと入れ替わっていった経緯もあり、ユーザーの側からすると「Thunderboltに取って代わられた」印象は強い。実際、FireWireへの変換アダプタも存在していたりする。

今なお現役で販売されているApple「Thunderbolt - FireWireアダプタ」。なお、ここで言うThunderboltは「Thunderbolt 3」以降で採用されたUSB Type-Cではなく、Mini DisplayPortと同じ20ピン

 何はともあれ、かつてUSB 2.0に敗れ去ったIEEE 1394に代わって登場したThunderboltが、今やUSBと同じ形状の物理コネクタを採用し、USBの最上位のスペックを備えている(この表現もやや語弊があるだろうが)のは、ちょっとした因縁を感じさせておもしろい。

 今後、ThunderboltやUSBの新しい規格が登場した時は、こうした経緯も踏まえると、ニュースを興味深く読めるはずだ。