山田祥平のRe:config.sys

Type-C、ややこしいのはポートの仕様

 Type-Cはプラグ形状の規格であって、USBやThunderboltなどの規格ではない。それは分かっているが、それでもややこしいのは事実だ。今使っているパソコンにType-Cポートがあるのなら、そのポートがどのような規格に準拠しているのかを確認しておこう。

USB3シリーズとそのGen

 今、一般的に使われているUSBの規格は表現が複雑になりすぎてややこしいことで有名だ。だが、両端がType-Cのケーブルを使う場合は、かなりすっきりする。前回、ケーブルのeMarker情報をテプラのラベルに印刷して装着する話を書いたが、そこまで細かく分類して明示しなくてもなんとかなるかもしれない。

 まず、両端がType-Cである限り、

  • Power Delivery(PD):3A(60W)、5A(100W)
  • データ伝送:無印、Gen 1、Gen 2

のうちどれかだ。両端がType-Cである限り、2レーン使用の×2対応は既定と考えていい。

 混乱のもとは、USB 3.xシリーズがそのバージョンによって、同じ仕様が別の名称で呼ばれていることだ。

  • USB 3.0
  • USB 3.1 Gen 1
  • USB 3.2 Gen 1

の3種類は5Gbpsで同じものだし、

  • USB 3.1 Gen 2
  • USB 3.2 Gen 2

は10Gbpsで同じものだ。

 つまり、バージョンに関わらず、Gen 1は5Gbps、Gen 2は10Gbpsという認識でいい。例外はGenが付かず無印のままのUSB 3.0だけだが、それでもGen 1相当だ。

 そういう意味では両端Type-Cケーブルに限っては「USB3シリーズ対応」と十把一絡げでとらえても大丈夫だ。なお、「USB」と「4」の間にスペースを入れない「USB4」は公式な表記だが「USB3」の表記、「USB3シリーズ」の呼称は便宜的に今作ったものなのであしからず……。

 もうUSB3シリーズ以降のUSB規格は3.0、3.1、3.2、4、そして×2を忘れ、USB Gen 1、Gen 2、Gen 3で区別すればいい。これですっきりした。

高速ケーブルと低速ケーブルを使い分ける

 ところがUSBはこれから、USB4シリーズが新しい当たり前になる。せっかくすっきりしたのにまたややこしくなる。なぜなら、Thunderbolt 3規格が包含されたからだ。

 Thunderbolt 3は20Gbpsが標準で40Gbpsがオプションとされていた。でも、USBの20GbpsはGen 2×2なので「USB3シリーズ対応」ならケーブルは影響しない。ややこしいのはUSB4で追加されたGen 3による20Gbpsとその×2による40Gbpsだ。

 なお、Thunderbolt 3が扱える帯域は40Gbpsだが、それは映像用との総計帯域で、データ転送に使えるのはGen 2×2とほぼ同等の20Gbpsだし、Thunderbolt 3ネイティブの20Gbps転送が使われる場面はほぼないと考えてもよさそうだ。

 そんなわけで、Thunderbolt 3をUSB4が包含したことで分かりやすくなるかと思ったら、そうは問屋がおろさなかった。Thunderbolt 4が登場してUSB4を包含したからだ。

 ただ、少なくとも現時点では、Thunderbolt 4とUSB4は同一の規格だ。Thunderbolt 4は、Intelブランドの「スーパーUSB4」のことで、USB4でオプション扱いとなっているThunderboltネイティブの40Gbps、4K×2画面出力、PCIe伝送32Gbps、PD 5A対応が必須となっているに過ぎない。

 こうした要素を考慮すると、両端がType-Cのケーブルは、

  • USB 2.0ケーブル
  • Thunderbolt 4ケーブル

のどちらかだと思い込んでいればいい。つまり、低速ケーブルと、高速ケーブルのどちらかというわけだ。

 USB 2.0ケーブルには3A対応のものと5A対応のものがあるし、Thunderbolt 3のオプション扱いの機能が使えない可能性があるUSB4ケーブルもある。これらの違いに悩むよりも、ケーブルは低速と高速の2種類と考え、単品で購入するならどちらかを選ぶようにするのが賢明だ。USB4ケーブルを選ぶと、きっとあとで悩むことになる。

 本当は、全ての両端Type-CケーブルをThunderbolt 4ケーブルだけにすればいいのだが、高速ケーブルは太くて固くて取り回しにくいという難点がある。

 ちょっとスマホやパソコンを充電する時に使うケーブルにThunderbolt 4ケーブルはオーバースペックだ。3A対応のUSB 2.0ケーブルはバリエーションも豊富だし、色や長さもよりどりみどりで楽しい。100均に並ぶ両端Type-Cケーブルも、そのほとんどが3A対応のUSB 2.0ケーブルで、PD 60Wでの充電に使える。

ポートの方がややこしい

 ケーブルについて理解したら、さらに自分の使っているPC本体のType-Cポートを確認しておこう。実は、見かけではさっぱり分からないのはポートの仕様だ。これはケーブル以上に分からない。

 市場にあるPCで、Type-Cポートを備えるものはたくさんある。複数のポートを備えるものもあるし、その複数のポートが異なる仕様になっているものもある。自分のPCのType-Cポートの実力を知るには、カタログスペックを確認するしかない。見かけだけでは判別できないのだ。

 これはスマホのようなデバイスでも同じことが言える。例えば、もうすぐ発売されるGoogle Pixel 5a (5G)では、その技術仕様として「USB Type-C 3.1 Gen 1」と記載されている。

 今、手元にあるノートPCのType-Cポートについて各社サイトの製品ページを確認すると、

と記載されている(おおむね各社の表現に準拠)。

 どの製品も第11世代Core搭載の最新機で、2つのThunderbolt 4対応ポートを持っている。FCCLのLIFEBOOKだけがThunderbolt 4対応を見送って、USB3.2(Gen 2)となっている。634gという世界最軽量の実現のため、電力的に難しかったという話も聞いた。

 だが、両ポートともにUSB Power Delivery対応、DisplayPort Alt Mode対応を但し書きしている。そして実際にやってみるとDisplayPort Alt Modeによる4K 2画面出力もできる。

 FCCLの過去機種をちょっと遡ってみる。

となっていた。

 2つのType-Cポートがあるが、それぞれUSB 3.2 Gen 1とGen 2で、Gen 1側はDisplay Port Alt Modeによる映像出力ができなかった。

 このように、各社各様にType-Cポートが実装されてはいるが、製品ごとにその仕様は異なることがあり、それはカタログスペックをよく確認してみないと分からない。

 これらの仕様に合わせ、そのスペックに併せたケーブルを使えばいいというのは分かる。でも、それはややこしいし考えたくない。ならば、Thunderbolt 4ケーブルを選んでおこう。悩むことがなくなる。充電だけなら、よほど負荷の高い作業を延々と続けるのでない限り3A対応のUSB 2.0ケーブルで十分だ。価格も安いし、バリエーションも豊富だ。

 Type-Cケーブルは二通り。低速ケーブルと高速ケーブルしかない。それでいい。