特集

Amazonの安いThunderbolt 4/USB4ケーブルは大丈夫なのか?ケーブル10種で4K×2同時出力・100W充電・データ転送を試してみた

Thunderbolt 4ケーブルとその比較対象、計10本のケーブルを今回は検証する。具体的な型番は後述

 Thunderbolt 4ケーブルは、現行のUSB Type-Cケーブルで考えられる最上級のスペックを備えており、1本持っておけばあらゆる用途に対応できる(以下の関連記事を参照)。またUSB4ケーブルも、仕様に幅はあるものの、そのスペックはThunderbolt 4ケーブルと同等であることが多く、こちらも汎用性は高い。

 AmazonではこうしたThunderbolt 4ケーブルやUSB4ケーブルが多数販売されているが、正式な認証ロゴを用いていない製品も多く、価格差もかなりある。中には認証ロゴに見せかけて酷似した独自のロゴを使っている製品もあるほか、USB4を「USB4.0」と表記するなど、規格名を間違えている製品もあり、正しい仕様を満たしているのかは気になるところだ。

 今回は、Amazonで購入可能なThunderbolt 4ケーブル、およびUSB4ケーブルについて「USB PDでの5A以上での充電」「4Kディスプレイ×2台への同時出力」を始めとしたスペックをきちんと実現しているか、実際に検証を行なってみた。

Thunderbolt 4ケーブルなど計10本のケーブルでテストを実施

 今回テストした製品は以下の通りで、Amazonで「Thunderbolt 4対応」、もしくは「USB4対応」という記述のあるケーブルを、それぞれ3製品ずつチョイスしている。いずれも認証ロゴが入ったメーカー品に加えて、独自デザインのロゴを使った製品や、タイトルにメーカー名の記載がない実質ノーブランド製品を加えている。

 なおUSB4ケーブルはスペックに幅があるため「100W対応」および「40Gbps対応」と記載された、Thunderbolt 4同等の製品のみをピックアップしている。また比較用に、Apple純正品も含めたThunderbolt 3ケーブル×3製品、および10Gbpsに対応したUSB 3.1(USB 3.2 Gen 2 ※PC WatchでのUSB規格の表記についてはこちらを参照)ケーブル×1製品も併せて対象に加えており、トータルでは10本ということになる。

Thunderbolt 4ケーブルは3種類。左から、Cable Matters、OWC、BODAM
Thunderbolt 3ケーブルは3種類。左から、Apple、TREBLEET、CABLETIME
USB4ケーブルは3種類。左から、エレコム、Cable Matters、Atlas。このほかUSB 3.1ケーブル1種類を加えた計10本でテストを行なった
【表1】検証するケーブル一覧
番号メーカー型番種別速度電力長さAmazon価格
(記事掲載時点)
認証済み備考
A-1Cable Matters ‎107032-BLK-0.8mThunderbolt 440Gbps100W(5A)0.8m2,799円TB4 詳細(英文)
A-2OWC OWCCBLTB4C0.8MThunderbolt 440Gbps100W(5A)0.8m5,500円TB4 詳細(英文)
A-3BODAM 4041-9104Thunderbolt 440Gbps100W(5A)1m2,999円--
B-1Apple MQ4H2FE/AThunderbolt 340Gbps100W(5A)0.8m4,749円TB3 詳細(英文)
B-2TREBLEET ‎TBCB-2Thunderbolt 320Gbps100W(5A)0.5m1,799円-Amazonでの長さ記載は2.0m
B-3CABLETIME CT-C160-U31-TB3Thunderbolt 340Gbps100W(5A)0.5m1,999円--
C-1エレコム USB4-CC5P08BKUSB440Gbps100W(5A)0.8m3,882円USB4 40TID(Test ID): 4303
C-2Cable Matters 201304-BLK-0.8mUSB440Gbps100W(5A)0.8m2,299円USB4 40TID不明
C-3Atlas ‎USB4-01USB440Gbps100W(5A)1m1,999円--
D-1RAMPOW ‎RAD18USB 3.1
(USB 3.2 Gen2)
10Gbps60W(3A)1m818円--

 今回使用したケーブルのメーカー、型番の一覧。長さは原則として0.8mもしくは1.0mをチョイスしている。価格の比較にあたっては、長さが同じでないことに注意されたい

テストその1:USB PDで5Aの供給は行なえるか

 まずはUSB PDにおける5Aの供給に対応しているかをチェックする。一般的なUSB Type-Cケーブルは3Aまでの対応で、供給できる電力は60Wが上限だが、Thunderbolt 4ケーブルは5Aに対応しており、電力も100Wまで供給できる。

 確認する方法は簡単で、60Wを超えるUSB PD充電器、例えば最大65WのUSB PD充電器をノートPCに接続し、ユーティリティできちんと65Wと認識されるかを見ればよい。ケーブルが3A対応だと60Wと表示されるので、一目瞭然というわけだ。

 今回は、後述するディスプレイ検証に用いるAnkerのThunderbolt 4ドック「Anker PowerExpand 5-in-1 Thunderbolt 4 Mini Dock」が、最大85WのUSB PD充電に対応することから、これを用いて実験を行なった。

今回試用したのは最大85WのUSB PD充電に対応したAnkerの「Anker PowerExpand 5-in-1 Thunderbolt 4 Mini Dock
ノートPCはこの実験のみ、レノボのユーティリティを用いる関係で、Thunderbolt 3ポートを搭載したレノボ「ThinkPad X1 Carbon(2019)」を使用している

 結果は以下の通りで、もともと3Aである【D-1】(RAMPOW ‎RAD18)のみが60W、ほかが85Wという結果になった。どれも完全に予想通りで、スペックを詐称しているケーブルはないようだ。

【表2】USB PDの検証結果
番号メーカー型番種別予想実際
A-1Cable Matters ‎107032-BLK-0.8mThunderbolt 485W85W
A-2OWC OWCCBLTB4C0.8MThunderbolt 485W85W
A-3BODAM 4041-9104Thunderbolt 485W85W
B-1Apple MQ4H2FE/AThunderbolt 385W85W
B-2TREBLEET ‎TBCB-2Thunderbolt 385W85W
B-3CABLETIME CT-C160-U31-TB3Thunderbolt 385W85W
C-1エレコム USB4-CC5P08BKUSB485W85W
C-2Cable Matters 201304-BLK-0.8mUSB485W85W
C-3Atlas ‎USB4-01USB485W85W
D-1RAMPOW ‎RAD18USB 3.1
(USB 3.2 Gen2)
60W60W
5A対応であれば、ユーティリティ上で60Wを超える電源として認識されるが、3Aでは「60W」止まりとなる。この性質を用いれば、ケーブルの5A/3A対応を簡単に見分けられる

テストその2:外部ディスプレイ2台への4K/60Hzの同時出力は可能か

 続いて、外部ディスプレイ2台への、4K/60Hzの同時出力が可能かをチェックする。この検証の意図としては、Thunderbolt 3の規格までは4K/60Hz×2および8K/60Hzでの出力に対応しておらず、その違いを出せているかを確認するためだ(参考記事)。

 今回使用したノートPCに備わっているThunderbolt 4ポートに、ハブとなるThunderbolt 4ドックを接続し、その先に2台の4Kディスプレイを接続。ケーブルを取り替えつつ、4K解像度(3,840×2,160ドット)/60Hzの2台同時出力が維持できるかをチェックした。

ノートPCはThunderbolt 4ポートを搭載したマウスコンピューターの「MousePro-NB420H」を、Thunderbolt 4のDockは先の実験でも用いたAnkerの「Anker PowerExpand 5-in-1 Thunderbolt 4 Mini Dock」を使用している
接続方法。①はノートPCに、②と③はディスプレイに接続された状態で、①の部分に使用しているケーブルを交換しながら検証した
4Kディスプレイの1台目はGMKの14型「KD1」。こちらはUSB Type-Cで直接接続している
4Kディスプレイの2台目はマウスコンピューターの28型「ProLite B2875UHSU-1B」。USB Type-Cポートは非搭載のため、変換アダプタを用いてDisplayPortをUSB Type-C接続で使用している

 結論は以下の通りで、【D-1】(RAMPOW ‎RAD18)を除いてはどのケーブルも4K/60Hzでの出力が行なえた。こちらもスペックから予想できる通りの結果で、Thunderbolt 3ケーブルについてもThunderbolt 4/USB4ケーブルと変わらない結果が得られている。ただ今回はAnkerのドックでしか試していないので、そのほかの機種でも同じように出力できるかは不明だ。

【表3】4K×2での映像出力の検証結果
番号メーカー型番種別予想実際
A-1Cable Matters ‎107032-BLK-0.8mThunderbolt 4
A-2OWC OWCCBLTB4C0.8MThunderbolt 4
A-3BODAM 4041-9104Thunderbolt 4
B-1Apple MQ4H2FE/AThunderbolt 3
B-2TREBLEET ‎TBCB-2Thunderbolt 3
B-3CABLETIME CT-C160-U31-TB3Thunderbolt 3
C-1エレコム USB4-CC5P08BKUSB4
C-2Cable Matters 201304-BLK-0.8mUSB4
C-3Atlas ‎USB4-01USB4
D-1RAMPOW ‎RAD18USB 3.1
(USB 3.2 Gen2)
不可不可

 ちなみに【D-1】(RAMPOW ‎RAD18)については、最初に接続した1台のみ4K/60Hzで出力されるが、2台目は認識されず、1台目のケーブルを抜くと2台目が認識されるといった具合で、ケーブルがボトルネックになって認識できていないことが分かる。

 なおこれらはノートPCとドックを繋ぐケーブルの話で、分岐先であるドックとディスプレイの間に使用した場合は、【D-1】(RAMPOW ‎RAD18)のケーブルでも問題なく表示できた。もし実際にこのような接続を行なうにあたり、やむを得ずロースペックなケーブルを混在させる場合は、分岐先に使用すると上手くいくかもしれない。

接続した状態のディスプレイの状態。(2)(3)いずれも4Kで接続されている
どちらのディスプレイも4K/60Hzで接続されていることが分かる
ちなみにスクリーンショットを撮るとこのようになる
【D-1】(RAMPOW ‎RAD18)のケーブルで接続した状態。1台しか認識されていない

テストその3:転送速度をチェック

 最後はデータ転送速度だ。Thunderbolt 4ポートに外付SSDを接続し、CrystalDiskMarkを使って転送速度をチェックする実験である。

 もっとも現時点では、転送速度最大40Gbpsを謳う市販のSSDケースは、Thunderbolt 3コントローラを用いた製品ばかりで、USB4もしくはThunderbolt 4コントローラを採用したSSDケースはまだ(筆者の知る限り)存在しない。

 そうした事情に加え、今回は機材の関係もあり、最大10GbpsのUSB 3.1に対応した外付NVMe SSDケースを用いて読み書きを行ない、ケーブルが足を引っ張ることがないかのみをチェックする。実験としてはやや低めのハードルなので、あくまでも参考程度にみてほしい。

サンワサプライのUSB 3.1対応SSDケース「USB-CVNVM1」にM.2 PCIe/NVMe SSDを組み込んで使用している。コントローラはAsmediaの「ASM2362」

 結果は以下の通りで、どのケーブルを使った場合も、速度はシーケンシャルリードで1GBをわずかに超えている。最大10Gbps対応の【B-2】‎TREBLEET TBCB-2、最大10Gbps対応の【D-1】(RAMPOW ‎RAD18)も含めて転送速度は横並びで、ケーブルが足を引っ張ることはなく、USB 3.1で実現し得る最大の転送速度が出ていると見てよさそうだ。

【表4】転送速度の検証結果
番号メーカー型番種別実際
A-1Cable Matters ‎107032-BLK-0.8mThunderbolt 41054.75MB/s
A-2OWC OWCCBLTB4C0.8MThunderbolt 41,056.92MB/s
A-3BODAM 4041-9104Thunderbolt 41,054.68MB/s
B-1Apple MQ4H2FE/AThunderbolt 31,054.15MB/s
B-2TREBLEET ‎TBCB-2Thunderbolt 31,054.61MB/s
B-3CABLETIME CT-C160-U31-TB3Thunderbolt 31,054.96MB/s
C-1エレコム USB4-CC5P08BKUSB41,055.95MB/s
C-2Cable Matters 201304-BLK-0.8mUSB41057.48MB/s
C-3Atlas ‎USB4-01USB41,054.66MB/s
D-1RAMPOW ‎RAD18USB 3.1
(USB 3.2 Gen2)
1,054.04MB/s

 なお実際に約10GBのファイルをSSDからノートPCへとコピーすると、実効速度は約700MB/sとなる。わずか十数秒で約10GBのファイルがコピーできてしまう。今後、USB4もしくはThunderbolt 4コントローラを採用したSSDケースが登場すれば、さらなる高速化は期待できるが、現状でも十分カルチャーショックという人も多いのではないだろうか。

どのケーブルもシーケンシャルリードで1,000MB/s超の速度を叩き出している。ケーブルによる速度の違いは誤差レベル
ちなみにUSB 2.0ケーブルに取り替えると、このように速度は劇的に低下する
実際に約10GBのファイルをSSDからノートPCへとコピーしている様子。実効速度は約700MB/sで、約10GBのファイルコピーが約十数秒で完了する

認証ロゴのある製品をおすすめする理由

 今回のテストでは、認証ロゴのあるものからないものまで、また著名メーカーのものからそうでないものまで、様々な製品をピックアップして実験を行なった。これは予想外の挙動をする製品が混じっていることを期待してのチョイスだったが、結果的にはまったく波乱のない(レビューとしてはあまり面白みのない)ものとなった。

 まず結論として言えるのは、Thunderbolt 4ケーブル、およびUSB4ケーブル(の40Gbps/100W対応製品)は万能であるということだ。これらがあれば、現行のあらゆる用途に対応できるので、なにかと重宝するのは間違いない。

 一方、認証ロゴのない製品のうち【A-3】(BODAM 4041-9104)と【C-3】(‎Atlas USB4-01)はコネクタのカバー部分が異常に大きかったり、【B-3】(CABLETIME CT-C160-U31-TB3)と【C-3】(‎同)はケーブルが硬くしなやかさに欠けるなど、性能以外で減点要素が多い。【B-2】(TREBLEET ‎TBCB-2)のように、Amazonに載っている写真と外観が異なるだけでなく、長さまで違っている(サイト上では2mと記載があるが、実際は0.5m)製品もあったほどだ。

 その点、認証ロゴがある製品は、いずれもコネクタのカバーは小ぶりで、ケーブルもしなやかで取り回しに優れている。価格についても、セール時には大幅に値引きされるなど、コスト面でのデメリットは実はそれほどない。

 今回の実験では認証ロゴの有無による性能の違いはたまたま出なかったが、実際に選ぶにあたっては信頼性を重視して認証ロゴがある品をチョイスすることを、個人的にはおすすめしたい。