山田祥平のRe:config.sys

USB4の高速ポートをどう使う

 USBの高速化がもたらす恩恵はPC利用の様々なシーンで役にたつ。それでもやはり分かりやすいのはファイルの転送だし、実際、頻繁に利用する。複雑怪奇なUSB規格が君臨しているが、いろんな規格のストレージデバイス、そしてケーブルを使ってその実態を体感してみた。

遅すぎて付き合いきれないクラウドストレージ

 誰かとデータを共有したり、あるいは、バックアップのためにファイルをコピーしたりといった用途にもクラウドが使われるようになってきているが、その気軽さではやはりUSBメモリに勝るものはない。世間一般では、USBというと規格の名前ではなくUSBメモリを指すくらいの勢いだ。

 今回は、そのコピー作業を少しでも素早くするために、高速SSDを調達して色々な場合を試してみた。テストに使った各デバイスについてはウエスタンデジタル合同会社と日本サムスン販売特約店であるITGマーケティング株式会社にお願いして調達した。また、PCについては、レノボのThinkPad X1 Nanoを使用した。このPCは本体左側面に2つのType-Cポートを装備、両ポートともにThunderbolt 4対応だ。Type-Aポートがないというのも潔い。これからはこれが当たり前になるだろう。

 作業としては、大量のファイルを誰かからもらうという想定で、外付けSSDから内蔵SSDに対してファイルをコピーしてみた。用意したのは、様々なファイルが混在するごちゃまぜ状態のフォルダで、その内容はファイル数が1,732個でフォルダ数が175個だ。総容量は28.3GBある。

 まず、「サンディスク エクストリーム プロ ポータブルSSD V2」の2TB版を使ってテストしてみた。このSSDはUSB 3.2 Gen2×2対応で最大2mからの落下保護や、IP55の防水防塵といった特徴のある頼もしい製品だ。変な理由でケーブルがボトルネックにならないように接続にはThunderbolt 4ケーブルを使って試している。

 結果は約2分30秒程度でコピーが完了。実力としては200MB/sくらいだ。製品仕様としてはシーケンシャル読み取り、書き込みが2,000MB/sとなっているし、CristalDiskMarkでテストしてもシーケンシャルでは1,000MB/sを超える結果が得られるが、ベンチマークと実用域でのテストは違う。

 興味深いのは、Gen1ケーブルでの接続でも同じくらいのパフォーマンスが得られた点だ。このSSDではどんなケーブルを使ってもそれなりのスピードでコピーができる。また同じ内容のフォルダをSSD内でコピーした場合も2分10秒程度と実に高速だ。読み込みに加えて書き込みについても健闘している。まるで魔法のようなデバイスだ。想像にすぎないが、Gen1ケーブルは、ベストエフォートでこの結果を叩きだしたのかもしれない。

Thunderbolt 4ケーブルでサンディスク エクストリーム プロ ポータブルSSD V2を接続したときの計測結果。Gen1ケーブル、Gen2ケーブル、どちらでも同程度の結果が得られた。

 試しにクラウドストレージのOneDriveに対しても同じ内容をアップロードしてみたが、常用している光回線インターネットでほぼ40分間かかった。

 ノートPCのUSBポートに接続した外付けSSDで200MB/s超のデータ転送ができるのは、1TBの容量のファイルコピーに1.5時間程度かかる目安だ。PC作業における数十分、1時間超えという単位の待ち時間は果たして長いのか短いのか。

もっと高速なSSDで試す

 SSDが高速になれば時間は短くなるのだろうかと、次に試したのはUSB4エンクロージャ「Orico M2V01-C4」に格納したサムスン製の「SSD 980 PRO」(M.2/NVMe)だ。これ以上高速な外付けストレージを望むのはなかなか難しい。2TB版をUSB4で超高速SSDを使って読み書きしてみたが、これはケーブルの種類によって異なる結果となった。SSDそのものの仕様としてはシーケンシャルで7,000MB/sを誇り、USB4接続されたエンクロージャーが提供できる帯域を大きく上回る。

Gen 1ケーブル。ほぼ15Gbpsで読める
Gen2ケーブル。ほぼ15GbpsだがGen1よりちょっと速い
Thunderbolt 4ケーブル。22Gbpsを超えた
Thunderbolt 3 ケーブル。Thunderbolt 4とほぼ同等

 先のごちゃまぜファイルフォルダのコピーの結果は2分30秒程度で、期待に反して約200MB/sだった。またSSD内コピーでは3分ちょっとと少し時間がかかった。この値はUSB 3.2 Gen2×2接続のサンディスク エクストリーム プロ ポータブルSSD V2とほぼ同等だ。

 ベンチマークでは高速だが、実用という点ではそんなに大きく変わらないことが分かる。もちろん大容量の動画ファイル1つを一気にコピーというようなケースでは結果は異なってくるだろう。高速ストレージは低速ストレージを兼ねるが、コストとの兼ね合いもあるし、堅牢性などの付加価値を見出したい場合もある。購入時にはそのあたりを考慮して製品を選びたい。

USB4とThunderbolt 4の関係

 Thunderbolt 4は、IntelによるUSB4の名称だ。ただ、USB4でのオプション仕様がThunderbolt 4では必須となっている。現時点ではThunderbolt 4ケーブルを使うことで、Thunderbolt 3を包含したUSB4のすべての機能を堪能できることが保証されると考えていい。

 Thunderboltの実力をみるために、Thunderbolt 3のみに対応したSSDを使って試してみた。製品はサムスンのPortable SSD X5だ。この製品の対応インターフェイスはThunderbolt 3のみで、USBには対応していない。ケーブルの素性とその影響をチェックするには都合がいい。

Gen 1ケーブル
Gen2ケーブル
Thunderbolt 4ケーブル
Thunderbolt 3 ケーブル

 やはり興味深い結果が出た。Thunderboltに対応していないUSB Gen1、Gen2ケーブルでもそれなりの結果を出していることが分かった。もちろんThunderbolt 3、Thunderbolt 4ケーブルを使えばより高速にはなるが、非対応のケーブルでThunderbolt転送ができるのはおもしろい。

 どうしてこういうことが起こるのかというと、Thunderbolt 4(USB4)では、eMarkerでThunderbolt非対応を検出すると、それがパッシブケーブルの場合、USB Highest Speed fieldの値を参照し、それがUSB4 Gen3なら、USB4 Gen3のThunderbolt 3ケーブルだと見なされるからだ。また、Gen1、Gen2ケーブルなら、双方共にGen2パフォーマンスのThunderbolt 3ケーブルだと見なされる。つまり、ケーブルの仕様によって速度は制限されるが、Alternate ModeによるThunderbolt 3での接続はできる。それがUSB4の仕様だ。

 つまり、Thunderbolt 3ケーブルがなくても、Gen1、Gen2ケーブルで代用ができることになる。Gen1ケーブルがGen2ケーブル扱いされてThunderbolt 3ケーブルとしても使えるというのは、なんだかお得感が満載だ。これならThunderbolt 3ケーブルはいらないと思ってしまいそうだが、さすがにパフォーマンスが落ちていることがテスト結果から読み取れる。それでも使えないよりはいいし、余計なトラブルに陥らないためにはThunderbolt 4ケーブルを使うのが吉だ。

 テスト結果ではGen1ケーブルとGen2ケーブルの違いがほとんどないが、これは単なる偶然なのか、よほど素性のいいGen1ケーブルなのだろう。実はこのケーブル、4年前に購入した「Amazonベーシック USBケーブル 1.8m(タイプC - 3.1Gen1タイプC) ホワイト」で、今見るとけっこうな値段がする。

今回は、SSDの接続に際してWindowsデフォルトのクイック取り外しを有効にしたままで測定している。書き込みキャッシュを無効にして「安全な取り外し」を使わなくても切断できる仕組みだ。これを高パフォーマンスモードに切り替えて、ウィンドウズとデバイスの書き込みキャッシュを有効にすれば、書き込み性能はグンと向上し、デバイスの秘められた実力を知ることができるはずだが、怖くてできない……