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ThunderboltはUSB Type-Cと一体何が違う?最新規格で違いをチェックしてみた
2024年11月1日 06:16
USBを分かりにくくしている要因の1つに、Thunderboltの存在がある。なにせデータの転送、電力の供給、さらに映像信号の伝送が可能な規格という点においては、現行のUSB4とまったく同じ。さらにポートについても、同じUSB Type-Cを使用すると来ているからだ。
事実、ノートPCやタブレットの購入を検討していて、USB Type-Cポートの隣にThunderbolt対応であることを示す稲妻マークがあったとして、それがない場合と比べて何が違うのか?なければ困るのか?と、首をひねることもしばしばだ。
今回はこうしたUSB4と、Thunderbolt 3/4/5の違いについて、主にThunderbolt側からの視点を中心に紹介していく。
まずはざっと各規格を比較
Thunderboltは、2024年秋の段階では、最新のMac mini(M4 Pro)など、最新の「Thunderbolt 5」に対応した製品もちらほらリリースされ始めているが、もっとも普及しているのは1つ前の規格である「Thunderbolt 4」だ。これらをUSB4と比較したのが以下の表になる。
なおこの表では「転送速度」、「給電能力」および「映像出力」の3つに項目を絞っており、そのほかの相違点、具体的にはスリープからの復帰の可否やハブ機能のサポート、および利用するケーブル長の制限、アクセサリへの給電能力などの差異は省略している。予めご了承いただきたい。
Thunderbolt 5 | USB4 Version 2.0 | Thunderbolt 4 | USB4 | Thunderbolt 3 | |
---|---|---|---|---|---|
登場年 | 2023年 | 2022年 | 2020年 | 2019年 | 2015年 |
転送速度 | 最大:120Gbps(帯域幅ブースト、下りは40Gbpsに) 最小:80Gbps(双方向) | 最大:120Gbps(帯域幅ブースト、下りは40Gbpsに) 最大:80Gbps(双方向) 最小:20Gbps | 40Gbps | 最大:40Gbps 最小:20Gbps | 40Gbps |
最小データ | PCIe:64Gbps USB 3.2 Gen 2x2(20Gbps/10Gbps) | ? | PCIe:32Gbps USB 3.2 Gen 2(10Gbps) | PCIe:- USB 3.2 Gen 2(10Gbps) | PCIe:16Gbps USB 3.2 Gen 2(10Gbps) |
映像出力 | 8K×2台(3:1 Display Stream Compression) 6K×2台 4K×3台 | 4K×1台 | 8K×1台 4K×2台 | 4K×1台 | 4K×1台 |
給電能力 | 最大(使用可能):240W 最小:140W | 最大:100W (USB PD EPR対応時最大:240W)最小:なし | 最大(使用可能):140W 最小:100W | 最大:100W (USB PD EPR対応時最大:240W) 最小:なし | 最大:100W 最小:なし |
「USB Type-Cを使うけれどもUSBとは異なる規格」ということで、USBと並び立つライバルのように言われるThunderboltだが、各規格が登場した時系列で見ていくと、ライバルというよりも、USBと歩みを共にしている規格であることが分かる(インテルはUSB-IFのボードメンバーなので当然とも言えるが)。
具体的には、2014年にUSB Type-Cが登場してまもなくThunderbolt 3が登場(2015年)し、それらの規格がUSBフォーラムに丸ごと寄付されたことでUSB4が登場(2019年)。その一部がフィードバックされる形で、機能が酷似したThunderbolt 4が登場している(2020年)。
その後、より高速化されたUSB4 Version 2.0が発表(2022年)されると、翌年にはやはり高速化を果たしたThunderbolt 5が登場(2023年)している。どちらも高速化に用いているのはPAM3という技術で、4レーンのうち3レーンを送信に割り当てることで最大120Gbpsまで対応する点も共通だ。USB4がそもそもThunderbolt 3ベースであることも含め、ライバルというよりも、同じ技術を用いて歩調を合わせて進化してきたイメージが強い。
ユーザーの側からすると、それならば規格は2つもなくていいじゃん、ということになるわけだが、USB-IFの参加企業/団体が仕様を策定しているUSBに対して、インテル主導で推し進められているThunderboltは要求される最小スペックが高いほか、認証の取得が必須であるなどの違いがある。次の章から詳しく見ていく。
「Thunderboltだと最良のパフォーマンスが得られる」理由とは
上記のように「USB4はだいたいThunderbolt 4」、「USB4 Version 2.0はだいたいThunderbolt 5」と見なして差し支えないのだが、USBとThunderboltの大きな違いの1つに、Thunderboltは最小スペックの要求が高いことが挙げられる。
たとえば転送速度は、USB4の40Gbpsというのはあくまでも“最大値”であるため、デバイス、周辺機器、ケーブルのいずれもが「USB4対応」であっても、それらをつないで実際に転送してみると低いスペックに揃えられてしまい、最大40Gbpsに到底及ばないといったことが起こり得る。
しかしThunderboltは、転送速度についてはThunderbolt 4は40Gbps、Thunderbolt 5が80Gbps(ブースト時は120Gbps)と、最小スペック=最大値なので、わざわざ確認する必要がない。「Thunderboltにしておけば最良のパフォーマンスが得られる」と言われる所以だ。
Thunderboltは認証が必須
また、Thunderboltは、“自称”でも差し支えないUSB4と違って認証が必須であり、結果として前述のスペックでの動作も保証される。高いスペックで確実に動作させたい場合、これは大きな利点となりうる。ただしそのぶんコストが上乗せになるため、実売価格は高くなる場合が多い。
つまり認証を取得していなければ、どれだけ高スペックでもThunderbolt対応を名乗ることはできない……のだが、特にケーブルに関しては、試しにAmazonで検索すると、稲妻の形状をしたThunderboltアイコンがないか、あっても微妙に本物とは異なるデザインの“自称”Thunderbolt対応製品が多数ヒットする。正規認証品がわざわざ偽物風のデザインにする利点は皆無なので、これらは“偽物”ということになる。
これらは実際にThunderbolt対応製品として“使える場合もある”と考えられるが、一部のスペックは満たしていてもほかの機能がないといった落とし穴がある可能性は否定できず、手を出すべきではない。スペックに信頼が置けないThunderbolt対応製品は、もはやThunderboltではないからだ(実際そうなのだが)。
ちなみにIntelのライバルであるAMDや、USBインターフェイスチップで有名な台湾ASMediaは、現時点でThunderbolt対応製品をラインナップしていない。Intelに尋ねたところ「サードパーティーのチップでもThunderboltの認証は取得可能」とのことで、門前払いをしているわけではないようだが、“Thunderboltの基準を満たしていながら認証を取得していないためThunderbolt対応を名乗れない製品”は、少なからず存在すると見てよいだろう。
もっとも、Thunderboltの認証を取得した製品は、Intel製のソフトウェアが利用できるようになるケースがある。
具体的には、Thunderbolt 4/5対応PC同士をケーブルで接続して超高速データ転送が行なえる「Thunderbolt共有(Thunderbolt Share)」がそれだ。仮にハード的にThunderboltの基準を満たしていても、認証を取得していなければ、これらの動作は保証されないことになる。
Thunderboltは進化が速すぎる?
規格の説明は以上なのだが、ユーザーの側から見たThunderboltのイメージの1つに、進化が速いせいで導入に踏み切りにくいというのもあるだろう。
これまでの例でいくと、Thunderbolt 3がようやく普及し始めたと思ったらThunderbolt 4が発表になり、Thunderbolt 4対応製品をあちこちで見かけるようになった途端にThunderbolt 5が発表されるといった具合に、買おうと考え始めた時点ですでに次世代の規格が発表されていて、購入意欲にブレーキがかかってしまうというわけだ。
実際には前述のように、Thunderbolt 3の規格が策定されたのが2015年、Thunderbolt 4が2020年、Thunderbolt 5が2023年と十分な間隔は空いてはいるのだが、実際には新しい規格が登場してからそれを採用したデバイスが登場するまでにプラス何年、さらに普及するのにプラス何年もかかるので、常時追いつかれる格好になっているというわけだ。
対応チップが現役である限り、旧規格のデバイスがすぐになくなるわけではないので、気にせず買ってしまっても何ら支障はないのだが、安心して買える信頼感という意味では、ユーザー視点の欠落は感じなくもない。Thunderboltの特徴が認知され、さらに広く普及するには、ユーザーが安心して買える分かりやすいロードマップも、必要と言えるのかもしれない。