イベントレポート
Acronis、2022年版新「Cyber Protect Home Office」を提供開始。ブースではOWCの新Thunderbolt 4ドックが参考展示
2022年9月7日 09:29
9月上旬にドイツ共和国ベルリン市にあるベルリン・メッセにおいて、デジタル家電や白物家電などを中心とした展示会IFA 2022が開催された。
そのIFAに出展していたのが、データ保護のソリューションを提供するAcronisだ。Acronisはこれまでバックアップツール「True Image Home」を提供するバックアップツールを提供するソフトウェア・ベンダーとして知られてきたが、現在ランサムウェア対策などを含めたデータ保護の総合ツールベンダに進化している。そのTrue Image Homeの後継となる「Cyber Protect Home Office」は、最近マイナーアップデートが加えられて最新版へと進化している。
また、同社ブースでは、同社のパートナー企業となる米国の周辺機器ベンダ「OWC」が製品を展示しており、今後OWCが発売される予定の新しいThunderbolt 4ドッキングステーションなどが展示された。
データバックアップからTrue Image Homeから統合的なデータ保護をセットにしたCyber Protect Home Officeへと進化
Acronisは、PC Watchに読者にとってはTrue Image Homeという名称のバックアップツールを提供してきたソフトウェア・ベンダーという認識をお持ちの方が多いと思う。True Image Homeの特徴はイメージバックアップと呼ばれる、Windows OSのパーティションやストレージ全体、あるいはフォルダ単位などさまざまなレベルでのバックアップを柔軟にとることが可能になっていること。
同時に、Windows PE(Windows Preinstall Environment)というWindows OSのサブセットとそこにインストールできるTrue Imageのアプリケーションによる起動ディスクを作成でき、仮にWindows OSが起動しない環境であっても確実にバックアップからリカバリーすることができることにある。
Acronisは近年ビジネス向けのソリューションも充実させてきており、そうしたTrue Image Homeの技術を元に、エンタープライズのオンプレミスのサーバーやクラウドのバックアップを行なうツールを充実させている。
そして特に重視しているのが、ランサムウェアのようなユーザーのデータを奪い取るマルウェアへの対策だ。日本でも、製造業の大企業がターゲットになって、操業が止まってしまったというニュースを時々見かけるようになった。そうした企業でもバックアップをとっていなかった訳ではなかっただろうが、それでも支障が出たということはバックアップもランサムウェアにやられてしまった可能性が高いということだろう。つまり、今やバックアップとランサムウェア対策というのは切っても切れない関係にあるのだ。
このため、AcronisではそのTrue Image Homeとクラウドストレージ(1TBないしは512GBなど)、そしてランサムウェア対策をセットにして「Cyber Protect Home Office」をサブスクリプション(1年ないしは月額)形式で提供しており、日本でもボックス型(中にPOSAカードが入っている形)ないしはWebでの契約などの形で提供されている。今回の同社ブースでは、今年のアップデートに合わせて一新された欧米向けのボックスなどが公開された。
Acronisによれば、先日行なわれたアップデート(ビルド40107、8月30日公開)でいくつかの改良が加えられたという。一番大きなものはインストール時に、インストールするモジュールを選べるようになったことだ。
以前のバージョンではバックアップ機能(つまり従来のTrue Image Home相当の機能)だけが欲しいユーザーにとっては必要のないセキュリティ機能も強制的にインストールされてしまっていた(インストール後に機能を無効にすることは可能だった)。しかし、今後はバックアップのみをインストールして、ランサムウェア対策、リアルタイムマルウェア対策はオプションとしてインストールできるようになる(インストール時にカスタムインストールを選択するとこれが可能になる)。
また、バックアップ周りの強化としては、スタンドアローンのクラウドストレージ用ツール「Cloud Backup Download Tool」が提供開始したことが挙げられる。
前述の通り、Cyber Protect Home Officeはサブスクリプションのプランによるが、1TBないしは512GBのクラウドストレージの利用権がついてくる。従来はCyber Protect Home Officeのメインアプリケーションからバックアップと復元を行なうようになっていたのだが、今年のバージョンからCloud Backup Download Toolというスタンドアローンのアプリケーションが用意され、それを利用してAcronisのクラウドストレージにアップロードおよびダウンローができるようになり、自由度が上がっている。
OWCが電源と2.5Gigabit Ethernetを内蔵した新Thunderbolt 4ドックを参考公開
Acronisブースだが、米国の周辺機器ベンダーであるOWCが同居しており、OWCの周辺機器を展示していた。最初てっきりAcronisとOWCの間に資本関係があるのかと思って確認したが、そういうことではなく、データをバックアップする外部ストレージベンダーという側面を持つOWCとパートナーとしてやっている関係で、今回のような共同出展になったという。
OWCの担当者が見せてくれたのが、同社がまもなく出荷を開始する計画の次世代のThunderbolt 4ドックだ。OWCはThunderbolt 4の登場時にはほかのベンダーに先駆けて出荷したことなどが記憶に新しいところだ。
新しいThunderbolt 4ドック(Thunderbolt Go Dock)の特徴は、電源を内蔵していること。一般的なThunderbolt 4ドックは、OWCの製品もそうであるように、電源はACアダプタの形式になっている。Thunderbolt 4ドックではドック自身が数十W、さらにPCに65~100W近くの電力をUSB Type-C(USB PD)経由で供給する必要があるため、150W~200WのACアダプタが付属しているのが一般的だ。それが机の上で邪魔とか、机の裏に隠しておくとしてもスペースをとって邪魔というのがThunderbolt 4ドックユーザーの共通の悩みではないだろうか。
それに対してこのThunderbolt Go Dockは、ACアダプタ相当の機能は本体に内蔵。本体には眼鏡型の端子だけが用意されており、必要な長さの電源ケーブルでコンセントにつなぐだけで利用できるのでケーブル周りをスッキリさせることができる。
また、Ethernetも一般的なThunderbolt 4ドックでは1Gbpsのイーサネットポートが内蔵されているのが一般的だが、2.5Gigabit Ethernetを搭載していることも見逃せない利点と言える(筆者の知る限り、これまでThunderbolt 4ドックで2.5Gigabit Ethernetを搭載しているのはCalDigit TS4だけだった)。
担当によれば、今後Thunderbolt Go Dockは準備が整い次第出荷したいということだった。OWC製品は日本でも代理店経由で販売されており、日本で販売されるかはまだわからないが、ぜひとも日本でも販売して欲しいものだ。