イベントレポート

NEC PCとレノボ、グループ全体でゲーミングPCに本腰

~ゲーミングPCの共同タスクフォースを設立

レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 兼 NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長 デビット・ベネット氏

 レノボ・ジャパン株式会社およびNECパーソナルコンピュータ株式会社(以下NEC PC)の社長を務めるデビット・ベネット氏が、8月31日から9月5日(現地時間)にドイツ共和国ベルリン市で開催されているIFAの会場で本誌のインタビューに応じ、グループを挙げてゲーミングPCのビジネスに本腰を入れていくと明らかにした。

 その背景には日本でもeSportsが本格的に立ち上がる段階にあり、今後ゲーミングPCへの需要が増えていくだろうという予測がある。そうした中で、NECとレノボ・ジャパングループとしても、そうした市場に取り組んで行きたいという意向がある。今後、グループ内での検討を進めていくとのことで、将来的にはNEC PCブランドのゲーミングPCが市場に登場する可能性が高そうだ。

縮小傾向にあるPC市場の中でも2桁成長をしているカテゴリ

 縮小傾向にあるPC市場の中でも、成長しているカテゴリの製品は3つある。うち2つは2in1型デバイスと薄型ノートPCで、モバイルでかつ高いスペックのノートPCの市場はここ数年2桁成長を実現している。
 そして、もう1つの成長市場が、ゲーミングPCの市場だ。ゲーミングPCとは、AMDやNVIDIAの単体型GPU(dGPU)を搭載したデスクトップPCやノートPCなどになる。IFAの期間中にMicrosoftが行なった基調講演(記事:次期Windows 10大型アップデートは「October 2018 Update」に決定)では、MicrosoftのFY19(Microsoftの会計年度2019年、2018年7月~2019年6月期)における市場の予測では、ゲーミングPCが15%、薄型ノートPCが11%、2in1デバイスが17%の成長を遂げるとされており、今後もこの3つのセグメントのPCは成長を続けていくという。

 実際、dGPUの市場で65~70%と競合を圧倒する市場シェアを持つNVIDIAのゲーミング事業も毎年2桁成長を遂げている。NVIDIAが今年の3月に発表した、NVIDIAのFY18(NVIDIAの会計年度2018年、2017年2月~2018年1月期)におけるゲーミング事業は同じ時期の1年前に比べて36%と大幅に成長している。昨年(2017年)NVIDIAは純粋な新製品というと、「TITAN V」と呼ばれる、GV100を搭載したビデオカードぐらいしかリリースしていないのに、この数字だ。それだけ高速なビデオカードへのニーズは高まる一方だ。

 ゲーミングPC市場が成長を続けている背景には、グローバルにeSportsが盛り上がりを続けていることにある。eSportsのプレイヤーは少しでも性能が高いマシンでプレイしたいため、コンソールよりもゲーミングPCを好んでいる。そしてeSportsの競技人口は増え続けており、eSportsのプレイヤーに憧れているファンが、同じようにゲーミングPCを購入する……そういう好循環にあるため、ゲーミングPCの市場は成長を続けている。ゲーミングPC関連の企業が、みなプロのeSportsチームにスポンサードしているのはその裏返しといえる。

日本でもeSportsへの注目度が上がりつつある

 そうしたグローバルに盛り上がりを続けているゲーミングPC市場だが、これまで日本市場は“置いてけぼり感”が強かった。その理由としてよく言われているのは、海外に比べてゲームコンソールの市場が強力だという点だ。確かに日本国内にはゲームコンソールをグローバルに展開している大手3社(Microsoft、任天堂、ソニー)のうち、2社のお膝元ということもあり、ほかの市場に比べてゲームコンソールの人気が高いということは否定できないだろう。

 しかし、それも徐々に変わりつつある。その突破口となるのはグローバルと同じくeSportsだ。グローバルに比べると立ち上がりは遅かったものの、日本でもeSportsを注目を集めつつあり、弊誌のようなテック系のメディアだけでなく、一般のメディアでも取り上げられる機会が増えつつある。それと同時にプロのeSportsプレイヤーも増えつつあり、グローバルと同じような好循環が生まれつつある。

 こうした状況を反映して、ゲーミングPC市場も活性化しつつある。こうした市場を現在リードしているのは、マウスコンピューターなどのLOEM(Local OEM)と呼ばれる日本独自ブランドのPCメーカーや、Dell、HP、ASUSなどの外資系のPCメーカーだ。また、ゲーミングPCが、強力なdGPUが必要という事情もあり、自作PCも有望な選択肢で、新しいGPUがでると秋葉原で最初のロットが奪い合いになるのも既に見慣れた光景だ。

LenovoがIFAで展示したGeForce RTX 2080搭載のデスクトップPC。Legion T730と同じシャシーを採用していた
小型デスクトップ・ゲーミングPCとなるLegion C730
Legion Y730、15型(左)と17型(右)がラインナップされている

 Lenovoもすでにこうした市場に参入している。Lenovoはグローバルには「Legion」のブランドでゲーミングPCを販売しており、一部のデスクトップPCなどは日本でも販売開始しているが、フルラインナップを販売しているという状況ではない。

NEC PCとレノボ・ジャパン横断でゲーミングPCに関するタスクフォースを立ち上げ

 そうしたレノボ・ジャパンのゲーミングPC事業だが、今後は同グループを挙げてゲーミングPC事業に本腰を入れて取り組んでいくことになる。今年(2018年)の5月にレノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 兼 NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長に就任してNECレノボ・ジャパングループを率いているデビット・ベネット氏は「我々は私の最初のプロジェクトとして6月にレノボ・ジャパンとNEC PCに横断的にゲーミングPCのタスクフォースを立ち上げた。タスクフォースでは製品展開だけでなく、どのように市場に取り組んで行くかなどについて検討している」と述べ、NECレノボ・ジャパングループとしてゲーミングPC市場にこれまで以上に力を入れて取り組んで行くことになると説明した。

 同グループはこれまで、レノボとNEC PCという2つのブランドが存在する構造になっている。レノボはThinkシリーズのように企業向けの製品、そしてYogaBookのような革新的な製品という位置づけ、そしてNEC PCは国産ブランドとして安心感という位置づけだ。

 そうしたNECレノボ・ジャパングループとしてゲーミングPCのタスクフォースを作ったということは、現在Lenovoのブランドで展開しているLegionだけでなく、NEC PCブランドでのゲーミングPCという展開があり得ることを意味している。ベネット氏はNEC PCでのゲーミングPCでの独自ブランドや製品展開に関しては「ノーコメント」としたが、現状でLenovoとNEC PCがそれぞれ別のブランドで展開されていることを考えれば、NEC PCによるゲーミングPCの独自ブランドという展開は当然あってしかるべきだろう。

 重要なことは、NEC PCの場合は売り上げの多くが家電量販店などのリテールチャネルでの売り上げになっていることだ。つまり、今後そうした流通チャネルでNEC PCのゲーミングPCが大規模に販売されることになるわけで、その意味は小さくない。すでにLenovoとNEC PCは製品のプラットフォーム共有化を進めており、今後仮にNEC PCがゲーミングPCをリリースする場合には、LenovoのLegionをベースにしてデザインを変えた製品などの展開が考えられるだろう。

 レノボは「レインボーシックス シージ Pro League APAC Finals - in TOKYO」というeSports大会にスポンサードすることを決めるなど、eSportsへの投資を進めている。今回こうしたゲーミングに関するタスクフォースをグループ横断で立ち上げたことで、今後もそうした動きを加速することになると考えられ、今後もその動向には要注目だ。