Hothotレビュー
ハイスペックで小型/静音なレノボ製ゲーミングPC「Legion C730」
~天板シースルー&LED、便利な持ち手付きオリジナルケースを採用
2019年4月1日 11:00
レノボ・ジャパン株式会社のゲーミングPCブランド「Legion」に、容積19リットルのコンパクトさを売りにする「Legion C730」がラインナップされている。
小さなゲーミングPCは日本の住環境にも合っており、需要は高い。小さなゲーミングPCは冷却性能が不安だという人もいると思うが、冷却用のパーツも質が向上しており、コンパクトなケースでもうまく排熱できて騒音も少なくなってきている。
また、オンボードデバイスの多様化・高性能化や、USBなどの外部拡張機能が充実したことで、大きなケースが要らないことも増えている。
それだけに、単に小型のゲーミングPCがほしいだけならば、探してみると意外とあちこちで売られている。そのなかにあって、「Legion C730」はどこを向いた製品なのか。性能のチェックと使用感を交えてお伝えしていく。
コンパクトサイズでも最新ゲームに不足のない構成
Legion C730のスペックは下記のとおり。
【表1】Legion C730(90JH003SJM)のスペック ※3月時点 | |
---|---|
CPU | Core i9-9900K(8コア/16スレッド、3.6~5GHz) |
GPU | GeForce RTX 2080(GDDR6 8GB) |
チップセット | Intel Z370 |
メモリ | DDR4-2666 32GB |
ストレージ | NVMe M.2 SSD 512GB、HDD 1TB |
光学ドライブ | - |
電源 | 500W 80PLUS Bronze |
OS | Windows 10 Home |
USB | USB 3.0×6、USB 2.0×2 |
映像出力 | DisplayPort×3、HDMI、USB Type-C |
無線通信 | IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2 |
有線LAN | Gigabit Ethernet |
その他 | 音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約238×358×305mm |
重量 | 約11kg |
直販価格 | 294,840円 |
CPUはCore i9-9900K、GPUはGeForce RTX 2080、メインメモリは32GB、ストレージはM.2 NVMeの512GB SSDと2TB HDDを搭載。コンパクトでも最新ゲームを遊ぶのに不足のない構成を詰め込んでいる。
見た目で特徴的なのは、天板がアクリルパネルでシースルーになっていることと、持ち手が付いていること。デスクトップPCは設置したら基本的には動かさないで使うものだが、本機は持ち運ぶことを考慮。LANパーティへの持ち込みや、VRのデモ機として使うなどといった需要を見込んでいる。前面下部にUSB 3.0×2とヘッドフォン端子、マイク端子があるので、VRヘッドセットの接続にも困らない。
本体サイズは、238×358×305mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約11kg。一般的なタワー型ケースに比べると、高さはないが幅はむしろ広めで、置き場に必要なスペース(フットプリント)はあまり変わらないという点は頭に入れておきたい。また11kgという重量はデスクトップPCとしては標準的で軽くはない。持ち手のおかげでかなり持ち運びやすくは感じるが、運搬時や設置場所にはそれなりに注意が必要だ。
端子は前面のほか、背面にGigabit Ethernet、USB 3.0×4、USB 2.0×2、ライン出力。USB 3.1 Type-Cはないのかと思いきや、DisplayPort Alternative Mode対応のものがビデオカード部にある。ほかにDisplayPort×3、HDMI×1が用意されている。
CPUが高負荷時には静音寄りに安定化
まずは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていこう。利用したのは、「3DMark v2.8.6546」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」。
本機にインストールされているソフト「Lenovo Vantage」のなかにある「Legion Edge」にて、CPUのオーバークロック機能が用意されている。機能がオフのときはCPUの最高クロックがおよそ4.7GHzだったのに対し、オンにするとおよそ5.1GHzまで伸びる。ベンチマークテストの結果にも影響をおよぼすはずなので、同機能をオン時とオフ時のスコアを併記する。
【表2】ベンチマークスコア | ||
---|---|---|
オーバークロック | オフ | オン |
「3DMark v2.8.6546 - Time Spy」 | ||
Score | 10,138 | 10,066 |
Graphics score | 10,001 | 9,960 |
CPU test | 10,993 | 10,717 |
「3DMark v2.8.6546 - Port Royal」 | ||
Score | 5,660 | 5,710 |
「3DMark v2.8.6546 - Fire Strike」 | ||
Score | 21,634 | 21,763 |
Graphics score | 24,127 | 23,908 |
Physics score | 24,454 | 25,561 |
Combined score | 11,108 | 11,480 |
「3DMark v2.8.6546 - Night Raid」 | ||
Score | 58,986 | 59,189 |
Graphics score | 115,437 | 116,294 |
CPU score | 15,642 | 15,648 |
「3DMark v2.8.6546 - Sky Diver」 | ||
Score | 52,879 | 52,825 |
Graphics score | 81,206 | 81,777 |
Physics score | 21,674 | 21,218 |
Combined score | 36,304 | 37,180 |
「3DMark v2.8.6546 - Cloud Gate」 | ||
Score | 55,616 | 56,044 |
Graphics score | 133,982 | 134,808 |
Physics score | 18,252 | 18,406 |
「3DMark v2.8.6546 - Ice Storm Extreme」 | ||
Score | 189,704 | 198,742 |
Graphics score | 394,675 | 399,593 |
Physics score | 67,326 | 72,028 |
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」 | ||
Score | 11,628 | 11,925 |
Average frame rate | 253.50fps | 259.97fps |
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」 | ||
Score | 8,558 | 8,522 |
Average frame rate | 186.57fps | 185.78fps |
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」 | ||
Score | 3,251 | 3,245 |
Average frame rate | 70.88fps | 70,73fps |
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質) | ||
3,840×2,160ドット | 4,304 | 4,208 |
1,920×1,080ドット | 9,625 | 9,312 |
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(最高品質) | ||
3,840×2,160ドット | 7,810 | 7,660 |
1,920×1,080ドット | 19,170 | 19,516 |
「World of Tanks enCore」(超高) | ||
1,920×1,080ドット | 32,357 | 32,266 |
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6) | ||
1,920×1,080ドット | 123,905 | 126,237 |
「CINEBENCH R20」 | ||
CPU | 4,322cb | 4,469cb |
CPU(Single Core) | 507cb | 498cb |
結果はスペックどおりに高い性能を見せている。「VRMark」でもっとも高負荷な「Blue Room」で平均70fpsを超えており、現状のVRゲームであればまず問題ない。4Kゲーミングについても、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」で「普通」の評価となっており、多くのゲームでさほど画質を落とさずに楽しめるだろう。
オーバークロック機能については、CPUの性能が影響しにくいグラフィックス系のテストにおいてはほぼ変わらず、CPUのベンチマークテストでは5%程度の向上が見られるものもある。ただ、なかにはスコアがやや落ちるものもあるので、原因を検証してみた。
CPUの温度はオーバークロック機能オフ時は75℃くらいまで上がるのに対し、オン時は85℃くらいまで上がるのが確認できた。CPUに対する高負荷が続くとCPUクロックが低下し、オフ時はおよそ4.4GHz、オン時はおよそ4.5GHzで安定していた。
ファンは最高クロックになった後、数秒だけ高回転してすぐ低回転に落ち着く。CPUがあらかじめ設定された温度を超えると、ファンを高回転させるとともにCPUクロックを落として熱を逃がし、再びファンの回転数を落として安定させているようだ。
CPUクーラーのファンをもっと回せば高いクロックを維持できそうだが、どうやら本機は静音を重視した冷却設定のようだ。またファンの設定を操作するツールは用意されていなかった。
オーバークロック機能をオンにしていると、最高クロックがおよそ5.1GHzほどに上がる分、CPUの温度が急激に上昇して、4.5GHzの安定クロックへすぐに移行してしまう。オフの時は最高クロックが4.7GHzと低い分、CPU温度の上昇も緩やかで、安定クロックの4.4GHzに移行するまでに数秒から数十秒程度の猶予がある。
このため、短時間のベンチマークテストではオフのほうがいい結果になる可能性がある。高負荷が長時間になれば、100MHz程度の差とはいえオンのほうが高性能なのは確かだ。
ストレージの性能は「CrystalDiskMark 6.0.2」で計測した。SSDはSamsung製「MZVLB512HAJQ」、HDDはSeagate製「ST2000DM008」が採用されていた。SSDはシーケンシャルリードで3,300MB/s超えの高性能、HDDもリード・ライトとも200MB/sを超えており、ゲームのリアルタイム録画等には十分耐え得る性能になっている。
3分割された直線的なエアフローで静音仕上げ
続いて使用感をお伝えする。
設置に関しては持ち手があるおかげで簡単。外見は正面右側にロゴがあり、ほかは丸い吸気口がたくさん空けられている。サイドパネルは左右とも穴のない1枚板。背面も端子以外に目立つものはない。全体の色はブラックで統一されている。総じてPCっぽさはなく、豪華なツールボックスかなにかに見えなくもない。電源が入っていないときはかなり地味な印象だ。
電源を入れると、前面ロゴの“O”の文字が白く光るとともに、天面も光る。天板はシースルーになっており、光ると内部が透けてよく見える。ただ見えるパーツはビデオカードくらいしかなく、透けて見える部分が光ること自体が演出となっている。確かに薄いメッシュから覗く光はSFチックでおもしろい。
ちなみに天面の光り方はプリインストールされているソフトで調整が可能。明るさや色、点滅やウェーブなどの光り方も変えられるほか、CPUの負荷や温度によって色を変えるというモードも用意されている。
エアフローについては、製品情報によると、CPUとビデオカードをべつべつに冷却するようになっているという。上から透けて見えるデザインや、筐体の横幅が広いことを考えると、「CPUとビデオカードはマザーボードをはさんで表裏になるのか?」と思ったのだが、そんなことはなく同じ側に装着されていた。
では実際はどうなっているのかというと、ビデオカードがケース上部にあり、ケース内部を前から後ろまでふさぐほどの長さで収まっている。また側ビデオカードと面パネルもかなり近い。ビデオカード自体がケース内部の仕切りとなっている状態だ。ビデオカードの冷却はブロワーファン式で、上部から吸気してケース後方から直接排気する。
CPUはトップフロー型のCPUクーラーが取り付けられたオーソドックスなかたち。これにケース前方の吸気ファンと、ケース後方の排気ファンが回り、直線的なエアフローを作っている。サイドパネルに穴はなく、底面にはCPU付近にメッシュがあるものの、あまりエアフローに寄与するようには見えない。
マザーボードの裏側はストレージと電源が収められている。こちらはケースファンこそないものの、前方のメッシュから吸気して、電源のファンで後方へと排気する。CPUがある部分に比べるとエアフローは弱いが、CPUやビデオカードとはマザーボードで完全に仕切られている空間で、ほかに大きな発熱源もないので十分だ。
ケース全体で見ると、エアフローを3つにきっちりと分け、それぞれが直線的で無駄のない流れになっているのがわかる。とくにオーバークロック機能を有するCPU部分は、ビデオカードの発熱の影響を受けないようにするだけでなく、ケースファンも含めて手厚く冷却されている。
騒音については、アイドル時からケースファンなど複数のファンが回るため、動いているのははっきりわかる。ただゲームなどの音が出てしまえばまぎれる程度の小さな音量だ。高負荷時には、CPUの温度が上がったときに一瞬だけファンが高回転するものの、しばらくするとかなり小さな音で安定する。また、GPUへの負荷ではあまり騒音が大きくならない。コンパクトなPCにも関わらず、高負荷時の騒音の小ささは特筆すべきレベルだ。
本機はゲーミングPCとしては、ことさら性能を追求するのではなく、安定動作と静音性を求める方向だと感じる。ケースが小型なのでオーバークロックは難しいとしても、高負荷時でも騒音を極力を減らしているのは、ヘッドフォンではなくスピーカーで音を出したいゲーマーにはありがたい。独特な形状と可搬性も考慮すると、ほかにはないおもしろいポジションにいる1台だと思う。