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Adobe、Surfaceの発表会でWindows版Frescoの提供意向を表明

~Arm版Windowsでのクリエイター向けツールに関してもできるだけ早く対応予定

Adobe FrescoがWindowsプラットフォームに

 Microsoftがニューヨークで10月2日(現地時間)で行なったSurfaceに関する記者会見に、AdobeのCreative Cloud担当副社長 兼 CPO(最高製品責任者)のスコット・ベルスキー氏が登壇し、同社がこれまでiPad版のみを提供してきた「Fresco」を、Windows版にも提供する計画があることを明らかにし、「Surface Pro X」で実際にデモした。

 Frescoは、ドローとペイントの機能を兼ね備えたアプリで、Photoshop向けに作成したブラシをそのまま読み込むことができるため、Photoshopを利用してイラストを作成しているクリエイターから支持を集めている。これまではiPad向けのみ提供されてきたが、Windows版が提供されるようになれば、ペンが使えるWindowsデバイスを利用しているクリエイターにとって新しい選択肢となりそうだ。

 また、ベルスキー氏は「クリエイター系ツールをSurface Pro Xに対応させたい」と述べ、Surface Pro Xなどで課題となっている、Creative Cloudのアプリケーションでx64版のみしか提供されていないものを対応させる可能性を示唆した。

これまでiPad版のみとして提供されてきたFrescoを、Windowsにも提供とAdobe

Adobe Creative Cloud担当副社長 兼 CPO(最高製品責任者) スコット・ベルスキー氏

 ベルスキー氏は、基調講演でSurface Pro Xのプレゼンテーションの途中にゲストとして呼ばれ、これまで同社がiPadファミリ向けにだけ提供されてきたFrescoのWindows版の存在を明らかにした。

 Adobeは最新のソフトウェアでは、1つのソースコードから複数のプラットフォームに向けてソフトウェアを展開できるソフトウェア開発環境を採用しており、それらの仕組みを利用してiOS版、Android版、Windows版、macOS版と、クロスプラットフォームでアプリケーションを提供している。

 Lightroom CC、Premiere Rush CCなどがその代表例で、Frescoもそうした新しいソフトウェア開発環境を利用して開発していると見られている(余談だが、そうした新しいソフトウェア開発環境で開発されているソフトウェアはアイコンの角が丸くなっている)。

 このため、FrescoがiPad版だけでなく、ほかのプラットフォームにも展開されることは時間の問題と考えられていたが、そのなかでもWindows版がiPad版の次になったのは、Windowsでペン採用デバイスが増えていることが背景にあると想像できる。というのも、Frescoはデジタイザペンを利用してイラストを描くためのツールとされているので、ペンのサポートが重要だからだ。

 Surface Pro Xでは新しい世代のMPP(Microsoft Pen Protocol)ペンが導入されており、4,096段階の筆圧検知や傾き検知など、これまでの世代のMPPペンで対応してきた機能に加えて、レイテンシ(遅延)がさらに削減されており、書き味が改善されている。このためFrescoにも最適だとデモされた。

Windows版Frescoのデモ

 実際、ベルスキー氏は、イラストレーターをステージに呼び、油彩ブラシを使ってイラストを描かせ、それをブレンドさせたりした。また、新しいMPPペンを逆さまにして消しゴムツールにして使ったり、筆圧検知の機能を利用して筆圧の強弱により線の濃淡を表現したり、傾き検知の機能を利用して薄くするなどのデモを行なった。

x64のみのCreative CloudアプリのArm版提供可能性を示唆

Surface Pro Xの登場がCreative CloudのArm版Windowsへの対応を促すか?

 ベルスキー氏はFrescoのWindows版について「割とすぐに提供する予定だ」と述べ、新しいSurfaceの提供時期からそう遠くない期間で提供すると説明した。また、「AdobeはMicrosoftと協力してAcrobatのSurface Pro Xへの最適化を進めている。クリエイター系のツールに関してもできるだけ早くSurface Pro Xで使えるようにしていきたい」とも述べた。

 ベルスキー氏が「クリエイター系ツールをSurface Pro Xに対応させたい」と発言したは、現在のAdobeがクリエイター向けに提供しているCreative Cloudには、64bit(x64)版しかないことを改善していきたいという意味だと理解できる。

 というのも、Surface Pro Xが採用しているArm版Windows 10は、Win32アプリを動かすバイナリトランスレーションの機能は32bit版のアプリケーションにしか有効ではない。ところが、Creative CloudのアプリケーションのなかにはPremiereのように64bit版のみが提供されているアプリケーションがあり、それらはSurface Pro Xでは利用できないという課題が残っているのだ。

 したがって、ベルスキー氏の言う対応させたいというのは、AdobeがArm64ネイティブなPremiereなどを提供していきたいという意味だと考えられ、Surface Pro Xを検討しているユーザーにとっては良いニュースだと言える。

 なお、Adobeは11月の上旬にCreative Cloud関連の年次イベント「Adobe MAX」をロサンゼルスで開催する計画であり、FrescoのWindows版の提供や、Arm64への対応などについてそこで明らかになる可能性が高い。