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AIでリアルな水彩/油彩表現。プロ向けイラストアプリ「Adobe Fresco」
2019年8月12日 22:01
Adobeは、タブレット端末向けドローイングアプリ「Adobe Fresco」を、2019年後半に正式公開する。具体的な提供形態などは未定だが、Creative Cloudの契約ユーザー向けに提供される見込み。
Adobe Frescoは、「Adobe MAX 2018」で“Project Gemini”として発表されたアプリケーションで、絵を書くための「ドローイング」アプリとしてタブレット端末向けに開発されている。
正式版の公開に先駆けてメディア向けに行なわれた説明会で、同社マーケティング本部 Creative Cloud執行役員の古村秀幸氏は、モバイルOS向けのアプリとして「Photoshop Sketch」や「Illustrator Draw」などを提供してきたが、無償公開アプリということもあり、機能の不足などからプロのイラストレーター達にツールとして選ばれるまでには至っていないと説明。今回のFrescoは、プロのニーズも満たした本格的なドローイングアプリを目指して開発されてきたと語った。
開発コンセプトはタッチとペン操作、タブレット端末に最適化したシンプルで使いやすいUIと、プロの求める機能性を備えたアプリケーションで、プロのニーズも満たしつつ、それ以外の人にも簡単に使ってもらえるものを目指しているとした。
特徴の1つは、詳細な質感などを描画できる“ラスター”ペンと、拡縮や変形が自在な“ベクター”ペンの両方を使える点。1つのアプリ内でラスターとベクターを使い分けられるため、ラフスケッチから色塗り、完成までカバーできるとする。
ペン機能では「ライブブラシ」として水彩と油彩のペンが用意され、水彩特有の色が滲んでいく様子や、油彩の立体的な質感、混色の様子などの計算に同社のAI「Adobe Sensei」が活用されており、リアルな描写が可能となっている。
Creative Cloudアプリの枠組みを活かし、Photoshopとの連携も考慮されており、豊富に存在するPhotoshopブラシをFrescoで読み込んで使うことも可能。クラウドサーバー経由で描いた作品をPhotoshopにインポート(PSD形式)することもでき、デスクトップPhotoshopアプリを使った高度な編集作業もスムーズに行なえる。
Frescoは、まずiPad向けアプリとしてリリースされ、その後はWindowsなどペン入力に対応するそのほかのプラットフォームにも展開される予定。Adobeによれば、すでにSurface対応を進めているとしており、ペン機能のあるChrome OSデバイス「Pixelbook」なども対応を検討しているという。
古村氏は、開発には国内外のプロクリエイターが初期から関わっていると紹介し、プロのニーズに応えた操作性と機能を目指しているとアピールした。
Adobe Creative Residentでもあるイラストレーター 福田愛子さんは、本アプリについて、キャンバスの模様も再現されていたり、デジタルイラストレーションながら筆跡を残したアナログな風合いが出せるとアプリを紹介。その上で、油彩の背景の上にペン入れをするなど、アナログではできない描画も可能な点を評価していた。