笠原一輝のユビキタス情報局

第11世代Core、32GBメモリとLTEが選択可。バッテリも17%増えたSurface Pro 7+。ただし販路は法人か教育向け

32GBのメモリが搭載されたSurface Pro 7+(出典:同社のYouTube動画より筆者キャプチャ、以下同)

 Microsoftは1月11日に報道発表を行ない、新しいSurface Proシリーズの製品として「Surface Pro 7+」を発表した。製品名がSurface Pro 7にプラスがついたかたちだけになるため、外観は大きく変わっていないが、じつは5つの強化点があり、内部は大きく変わっている。

 それは、CPUが第11世代Coreプロセッサに強化されたこと、さらにはメモリが最大32GBになったこと、8GB/16GBのモデルにはLTE-Aに対応したセルラーモデムが用意されていること、さらには内蔵ストレージがSurface Pro Xと同じようにリムーバブルな形状になっていること、内蔵バッテリの容量が増やされており、駆動時間が大きく伸びている点だ。

 ただし、販路は法人向けおよび教育向けにかぎられており、企業向けの販路や教育向けの販路でのみ購入することができる。このため、一般消費者向けの販路(小売店や一般的な通販)などでは販売されず、入手性はよくない。

Surface Pro 7の改良版となるSurface Pro 7+ではCPU、メモリ、ストレージがそれぞれ強化

カラーはプラチナとブラック

 今回発表されたSurface Pro 7+は、その名前が示しているとおり、Surfaceシリーズの中でも一番の売れ筋モデルであるSurface Proシリーズのこれまでの最新製品「Surface Pro 7」の改良版となる。Surface Pro 7からの強化点は大きく言って5つある。

【表1】Surface Pro 7とSurface Pro 7+の違い(Microsoft社の資料などより筆者作成)
製品名Surface Pro 7Surface Pro 7+
CPUCore i7-1065G7/i5-1035G4/i3-1005G1Core i7-1165G7/i5-1135G7/i3-1115G4
GPUIris Plus(G7/G4)/UHD(G1) GraphicsIris Xe(i7/i5)/UHD(i3) Graphics
メモリ4/8/16GB(LPDDR4X)8/16/32GB(LPDDR4X)
ストレージ128/256/512GB/1TB128/256(LTE),512GB/1TB(Wi-Fi)
ディスプレイ12.3型2,736×1,824(277ppi、3:2)
タッチ/ペン10点マルチタッチ/ペン(4,096段階)
カメラ(Windows Hello対応有無)F:500万画素(顔認証対応)/R:800万画素
USB-A11(USB 3.2 Gen2)
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2)11(USB 3.2 Gen2)
カードリーダmicroSDXC
オーディオ3.5mmイヤフォン
Wi-FiIEEE802.11ax
BluetoothBluetooth 5
WAN-Snapdragon X20 LTEモデム
対応LTEバンド-1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/19/20/25/26/28/29/30/38/39/40/41/66
指紋認証オプションの指紋認証キーボードにあり
キーボードオプション(従来のSF Pro互換)
ポインティングデバイスオプション(タイプカバーキーボードに搭載)
ACアダプター65W(Surface Connect)/1時間で80%充電
バッテリ公称10.5時間(43Wh)公称15時間(Wi-Fi)/公称13.5時間(50.4Wh)
カラープラチナ、マットブラック
サイズ(横×縦×高さ)292×201×8.5mm
重量790g(i7)/776g(i5)/775g(i3)796g(i5/LTE)/784g(i7/Wi-Fi)/770g(i5/i3/Wi-Fi)
OSWindows 10 Home/ProWindows 10 Pro
ターゲット市場一般消費者/企業/教育ー/企業/教育

 最大の強化点はCPUが第10世代Core(Ice Lake)から第11世代Core(Tiger Lake)に強化されていること。採用されているのはi7がCore i7-1165G7、i5がCore i5-1135G7、i3がCore i3-1115G4となる。Microsoftの表現を借りるのであれば「性能は従来世代と比べて2倍」という性能強化が実現されている。

i7モデルはファンによる冷却
i5とi3モデルはファンレス

 2つめの大きな強化はメモリだ。従来のSurface Pro 7ではメモリは最上位モデルでも16GBまでになっていた。今回のSurface Pro 7+ではCore i7を搭載した最上位モデルでは32GBとなり、ハイエンドユーザーにとってうれしいところだ(4GBのモデルがなくなったことも歓迎したい)。

 近年ではアプリケーションが積極的にメモリを使うようになっており、Webブラウザでは多くのタブを開くと軽く数GBを消費することもよくある。そこにAdobeのCreative Cloudのアプリケーションなどを開いたりすると、16GBの壁はあっという間にくる。メモリが足りなくなると、ストレージへのスワップが発生して極端にPCが遅くなるので、32GBが選べるというのはうれしい改良点といえる。

Surface Pro Xのストレージと同じリムーバブル構造

 そして、ストレージはSurface Pro Xと同じようなリムーバブル形状に変更された。具体的にはM.2 2230のSSDが採用されており、容量が128GB、256GB、512GB、1TBの容量のモデルが用意されている。

【表2】日本で販売されるSurface Pro 7+のSKU構成
CPUメモリストレージセルラー
Core i3-1115G48GB128GB-
Core i5-1135G78GB128GBLTE-A
Core i5-1135G716GB256GBLTE-A
Core i7-1165G732GB1TB

 リムーバブル形状になったメリットは、保証が切れた後にユーザーが交換したりできること、企業などで修理に出すときなどに情報漏洩を防ぐため、ストレージを取り外して修理に出すなどが考えられる。従来のSurface Proシリーズでは、接着剤で固定されたディスプレイを外さないとストレージを交換できない構造だったため、事実上ユーザーが交換するのは難しかった。

 ただし、M.2 2230のSSDは、自作で一般的に使われる2280サイズのモジュールとは異なり、一般の流通ルートではあまり販売されていないため、入手性はあまりよくない。今後Surface Proのような数が出る製品で採用されたことは、サードパーティから交換用のSSDが発売される可能性があるとは考えられるので、そういう選択肢が増えたのに期待したい。今後発売されるSurface Proシリーズも、交換可能になっていくのだろう。

LTEモデムはCat.13に対応して下り最大1.2GbpsのSnapdragon X20 LTE modem、バッテリー容量は17%アップ

左側の白い缶蓋がついているのがSnapdragon X20 LTE modem

 そして、Surface Pro 7+ではこれまで用意されてこなかったセルラーモデム対応版が用意された。Surface Pro(数字がつかないが第5世代でPro 5に相当するモデル)にはLTE版は用意されていたが、Surface Pro 6/7にはLTE版はなかった。Surface Pro 7+の登場でようやく再度のLTE対応になる。

 搭載されているセルラーモデムはQualcommのSnapdragon X20 LTE modem。スペック上はLTE-AのCat.13に対応しており、キャリアグリゲーション(複数の帯域を束ねて通信する方式)を活用すると、下り最大1.2Gbpsで通信できる。対応バンドは1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/19/20/25/26/28/29/30/38/39/40/41/66とじつに幅広く、au/KDDIが1.5GHz帯で利用しているバンド11に対応していないのが気になる程度だ。auのプラチナバンドであるバンド18/26にはもちろん対応しているので、au/KDDIのユーザーでも大きな問題はないだろう。なお、SIMカードスロットはNano SIMで、eSIMにも対応している。

バッテリ容量

 また、従来モデルではバッテリ容量が43Whだったが、今回のモデルではバッテリの容量が50.4Whになったことが明らかにされており、容量が約17%も増えている。容量の増加と、省電力機構などの強化などにより、公称の駆動時間は同じWi-Fiモデルで比較すると、10.5時間から15時間に増えている。従来の10時間でも十分オールデーバッテリと言えたが、新モデルでは15時間だから、本当に朝から晩まで使うことができるといえるだろう。

ただし、販路は一般企業向けと教育向けに限る、近いうちにSurface Pro 8の計画があることの裏返しか?

 ただ、1つだけ大きな課題もある。それはSurface Pro 7+は販路が一般企業向けと教育向けだけにかぎられており、一般消費者向けのモデルは用意されないことだ。米国ではMicrosoftの直販でSOHOや個人事業主などにも販売しているのでこのことは大きな問題ではないが、日本ではMicrosoftの直販でこの企業向けモデルを個人事業主には販売していないので、ビジネスユーザーだけど法人ではない個人事業主や企業に勤めているが、ビジネスに使うパソコンは自分で購入しているビジネスパーソンなどは購入できない。

 個人事業主の場合で、確定申告を行なっており、確定申告の控えなどがある場合には、Amazonがビジネスユーザー向けに展開している「Amazonビジネス」に確定申告の控えなどを提出すれば登録可能で、AmazonのMicrosoftストアから法人向けのモデルを購入できるが、あくまで例外的な扱いになっている。日本マイクロソフトとしては法人モデルは、法人にしか販売しないというのが建前になっているのだ。この点は以前から本連載でも指摘しているとおりで、個人として買おうとしているビジネスパーソンや個人事業主にも販売する方法を日本マイクロソフトには、ぜひ検討してほしいと思う。

 ただ、これまでSurfaceシリーズはいずれも個人向け、法人向けを用意してきた。その意味では今回のSurface Pro 7+が法人/教育向けのみというのは例外的な措置だ。ということは、おそらく今年どこかのタイミングでSurface Pro 8なり、第11世代Coreを搭載した新モデルが用意される計画があるため、今回のSurface Pro 7+は暫定的に法人向けとして投入されたというのが筆者の見立てだが、いかがだろうか……。

 いずれにせよ、LTE内蔵のSurface Pro 7+や、メモリ32GB+ストレージ1TBという組み合わせは法人ユーザーだけでなく、ハイエンドの個人ユーザーにも魅力的な選択肢であることは間違いない。その意味で、ぜひ日本マイクロソフトさんには何らかの善処(個人でも法人向けモデルが買える仕組みなど)を期待したいところだ。