笠原一輝のユビキタス情報局
6月5日発売の「Surface Book 3 13.5インチ」をレビュー
~外見的な違いは2カ所のみだが、内部構造は完全に新モデルに進化
2020年6月3日 11:00
Microsoftは5月6日に、新しいSurface Go 2、Surface Book 3 13.5インチ/15インチをそれぞれ発表した。すでにSurface Go 2は販売が開始されているが、Surface Book 3に関しては6月5日の販売が予定されている。
今回はその発売に先立って、13.5型ディスプレイを搭載した「Surface Book 3 13.5インチ」(SLK-00018、13.5型/Core i7-1065G7/メモリ 32GB/SSD 512GB/GeForce GTX 1650 Max-Q Design/Windows 10 Home/Office Home and Business 2019)を日本マイクロソフトより貸し出しいただいたので、それを利用してSurface Book 3 13.5インチのレビューをお届けしていきたい。
発表時の記事(Microsoft、第10世代Core+Quadro RTX搭載可能な「Surface Book 3」参照)でも触れたとおり、Surface Book 3はSurface Book 2の正常進化版になっており、強化点としてはCPUが第8世代Coreプロセッサ(開発コードネーム:Kaby Lake Refresh)から、第10世代Coreプロセッサ(開発コードネーム:Ice Lake)へと進化しているほか、Core i7モデルに搭載されている単体GPUがGeForce GTX 1050(2GB GDDR5、開発コードネーム:Pascal)からGeForce GTX 1650 Max-Q Design(4GB GDDR5、開発コードネーム:Turing)へと進化している点。これにより、性能が大きく強化されている。
また、細かいところでは、USBポートが従来製品ではすべてUSB 3.0(5Gbps)だったのに対して、Surface Book 3ではすべてUSB 3.1(10Gbps)へと強化されているほか、Wi-Fiに関しても従来モデルがWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)だったのに対して、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応へと進化している。
Surface Book 2とSurface Book 3の外見の違いは2カ所だけ、背面カメラ用マイクの有無とキーボードのFnキー刻印
Surface Bookは、数あるSurfaceブランドのモバイル製品のなかでもフラグシップ製品に位置づけられる製品。
最大の特徴は、13.5型ないしは15型のタブレットとキーボードドック部分に分離する脱着式の2in1になっていることだ。このため、通常のクラムシェル型ノートブックPCのように使うこともできるし、分離してやや大きめなタブレットとしても利用できる。また、こうした脱着式の2in1デバイスとしてはめずらしく、キーボードドック側に単体GPU(dGPU)が搭載されており、キーボードドックにドッキングした時だけdGPUが使えるというのも特徴だ。
また、そのタブレットとキーボードドックのドッキング、アンドックには、電磁方式のロック、アンロック機構が活用されている。キーボードドックのキーボードに用意されているスイッチを押すと、OSからパフォーマンスベースが論理的に切り離される作業が行なわれた後、ロックが電気的に解除されて切り離し可能な状態になる。ドッキング時には、タブレットが取りつけられたことが感知されると自動でロックが行なわれる。今回のSurface Book 3でもこうしたSurface Bookシリーズの基本的な仕組みは引き継がれている。
Surface Book | Surface Book2 | Surface Book3 | |
---|---|---|---|
ディスプレイ | 13.5型 | 13.5型/15型 | 13.5型/15型 |
CPU | 第6世代Core(Skylake) | 第7/8世代Core(Kaby Lake Refresh) | 第10世代Core(Ice Lake) |
GPU | GeForce 9xxM(Maxwell) | GeForce GTX 1060/1050(Pascal) | GeForce GTX 1660/1650 Max-Q Design(Turing) |
Surface Bookシリーズの最初の製品は、2015年10月に発表された初代Surface Book(詳細は別記事を参照)だ。初代Surface Bookは13.5型3,000×2,000ドットというアスペクト比3:2のディスプレイを採用し、CPUは第6世代Core(Skylake)を、GPUにはMaxwell世代のGeForce(名称非公開だが940M相当だと考えられている)を搭載する仕様だった。1年後には強化モデルとしてGPUをGeForce GTX 965Mに強化したパフォーマンスベースと呼ばれるキーボードドックが付属する後期モデルが追加された。
その2年後の2017年の10月に発表されたのが2代目となるSurface Book 2(早速Adobe MAX会場に展示された「Surface Book」の実機をチェック参照) だ。Surface Book 2では、13.5型に加えて、15型のディスプレイモデルが追加された。15型は3,240×2,160ドットと同じ3:2のアスペクト比だが解像度が少し高くなっている。
また、CPUとGPUも強化されており、従来はMini DisplayPortだったところが、USB Type-Cへと変更されていることが大きな違いと言える(DisplayPort Alt Modeに対応)。CPUは第8世代Coreに、GPUはPascal世代のGeForce GTX 1060(15型モデル)/1050(13.5型)へと強化された。
そのSurface Book 2の後継となるのが、今回発表されたSurface Book 3だ。Surface Book 3は基本的にはSurface Book 2のキープコンセプトの製品となる。後述するCPUやGPUの強化以外での変更はさほど多くない。とくに外見的な変更は皆無に近く、一所懸命目をこらして違いを探してみたのだが、見つけられたのは、
(1)タブレットの背面カメラ横の穴が2つから1つに減っている
(2)ファンクションキーの機能キーの配置が変わっている
程度であった。
Surface Book 2までは、背面カメラの横に2つの穴があり、1つはカメラがオンになっていることを示すライト、もう1つが背面カメラ用のマイクだった。新しいSurface Book 3ではカメラがオンになっていることを示すライトは引き続きあるものの、背面カメラ用のマイクはなくなっている。
ただし、前面に用意されているマイクはすでに遠方界(Far Field)マイクになっており、より広い範囲の音を拾えるようになっているので、とくにこれで問題ないと判断したのだろう。
もう1つの見た目の違いは、キーボードのファンクションキーの専用機能割り当ての配置が変更されている。たとえばSurface Book 2では輝度のアップがF1、ダウンがF2、コンテンツの再生がF3、ミュートがF4、ボリュームダウンがF5……となっていたが、Surface Book 3ではキーボードのバックアップライトがF1、ミュートがF2、ボリュームダウンがF3、ボリュームアップがF5……となっている。したがって、Surface Book 2とSurface Book 3を見分けるときにはキーボードのFnキーの配列ということになるだろう。
CPUとGPUは大幅に強化されており、メモリもLPDDR3からLPDDR4xに強化され帯域幅が向上
このように、外見の違いでは2カ所のみだが、内部構造は大きく進化しており、それによって使い勝手も向上している。以下の表はSurface Book 2 13.5インチ(以下Surface Book 2)とSurface Book 3 13.5インチ(以下Surface Book 3)をスペックの観点から比較したものだ。
製品名 | Surface Book 2 13.5インチ | Surface Book 3 13.5インチ |
---|---|---|
CPU | 第8世代Core i7-8650U/Core i5-8650U/第7世代Core i5-7300U | 第10世代 Core i7-1065G7/Core i5-1035G7 |
GPU | Intel HD 620(i5)/GeForce GTX 1050(2GB GDDR5) | Intel Iris Plus(i5)/GeForce GTX 1650 Max-Q Design(4GB GDDR5) |
メモリ | 8/16GB(LPDDR3) | 8/16/32GB(LPDDR4x) |
ストレージ | 256GB/512GB/1TB | 256GB/512GB/1TB |
ディスプレイ | 13.5型PixelSenseディスプレイ(3,200×2,000ドット、コントラスト比1,600:1) | 13.5型PixelSenseディスプレイ(3,200×2,000ドット、コントラスト比1,600:1) |
タッチ/ペン | タッチ対応/Surface Pen(MPP) | タッチ対応/Surface Pen(MPP) |
カメラ(Windows Hello対応有無) | 前面 : 500万画素(1080p、Hello対応)/背面 : 800万画素(1080p) | 前面 : 500万画素(1080p、Hello対応)/背面 : 800万画素(1080p) |
USB Type-A | 2(USB 3.0、5Gbps) | 2(USB 3.1、10Gbps) |
USB Type-C | 1(USB 3.0、5Gbps、USB PD 3.0対応) | 1(USB 3.1、10Gbps、USB PD 3.0対応) |
カードリーダ | フルサイズSDXC | フルサイズSDXC |
オーディオ | 3.5mmヘッドフォンジャック(4ピン),デュアルアレイマイク | 3.5mmヘッドフォンジャック(4ピン),デュアルアレイマイク |
その他ポート | Surface Connect(キーボードドック、タブレット側 | Surface Connect(キーボードドック、タブレット側 |
Wi-Fi | IEEE 802.11ac(Wi-Fi 5)-Marvell AVASTAR Wireless-AC | IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)-Intel Wi-Fi 6 AX201 160MHz |
Bluetooth | Bluetooth 4.1 | Bluetooth 5 |
キーボード | 日本語キーボード | 日本語キーボード |
ポインティングデバイス | 高精度タッチパッド | 高精度タッチパッド |
ACアダプタ | 44W/102W | 65W/102W |
バッテリ容量(デザイン容量) | 18Wh(タブレット側)/57.3Wh(パフォーマンスベース側) | 18Wh(タブレット側)/55Wh(パフォーマンスベース側) |
カラー | シルバー | シルバー |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 312×232×13~23 mm(i5)/312×232×15~23 mm(i7) | 312×232×13~23 mm(i5)/312×232×15~23 mm(i7) |
重量 | 1.534kg(i5)/1.642kg(i7) | 1.534kg(i5)/1.642kg(i7) |
Office | Office Premium(一般向け) | Office Home and Business 2019(一般向け) |
OS | Windows 10 Pro | Windows 10 Home(一般向け)/Windows 10 Pro(法人向け) |
見て明らかなように、多くの部分でSurface Book 3はSurface Book 2から強化が図られている。まずCPUは、10nmプロセスで製造される第10世代Coreに強化されている。上位モデル同士で比較するとCore i7-8650U(4コア、ベース1.9GHz、ターボ時最大4.2GHz)だったのが、Core i7-1065G7(4コア、ベース1.3GHz、ターボ時最大3.9GHz)へと強化されている。
ベースクロックが下がっているから、CPUの性能は低下しているように思えるかもしれない。しかし現代のノートPCはCPUに負荷がかかるようなシーンではほとんどはTurbo Boostで規定されているベースクロックよりも高いクロックで動き続けるので、それは性能にはあまり大きな影響は与えない。Ice Lake自体はCPUアーキテクチャ自体が改良されており、その分の上がり幅もあるのでCPU性能はむしろ上がっている。
また、CPUがLPDDR4xをサポートしたことにより、Surface Book 3のメモリもLPDDR3-1866からLPDDR4x-3733へと強化されている。Core i7-1065G7では内蔵されているGPUのエンジン数が64と強化されており、内蔵GPUの性能が大きく強化されているのだが、それに合わせてメモリの帯域幅へのインパクトも小さくない。メモリの帯域幅が単純に倍になるので、GPUの持つ性能を引き出すことが可能になっている。本製品をタブレット単体で使う場合にも、大きく描画性能が引き上げられているIce Lakeの内蔵GPUが使えるようになったことはSurface Book 3での大きな進化点だと言える。
キーボードドック側の単体GPUも強化されている。従来製品にはPascal世代のGeForce GTX 1050(2GB GDDR5)が搭載されていたのに対して、Surface Book 3ではTuring世代のGeForce GTX 1650 Max-Q Design(4GB GDDR5)が搭載されている。
Turing世代ではリアルタイムレイトレーシングを高速化するRTXシリーズもあるが、GeForce GTX 1650はGTXのままとなっている。これは、モバイルに対応できるような低消費電力を実現するために、リアルタイムレイトレーシング対応機能が削られているためだ。しかし、Turing世代のGPUの持つ高い描画能力などは継承しており、モバイルでも高い性能で3Dゲームなどを行なえるようになっている。とくにビデオメモリは従来製品の2GBから4GBに倍増しており性能向上が期待できる。
キーボードなどがUSBからSurface HotPlug経由の接続に変更されることでアンドックにかかる時間が短縮された
Surface Book 3では、従来のSurface Book 2での課題の1つだったタブレットの切り離しまでにかかる時間も短縮されている。Microsoftによれば切り離しにかかるまでの時間が3倍速くなっているという。たしかに横に並べて同時に切り離しを行なってみると、切り離せるようになる表示が出るまでの時間はSurface Book 3の方が速くなっていることがわかる。
Microsoftはどうやって高速化を実現したのかについて説明していないが、実機を確認してみたところ、従来USBで接続されていたキーボードやタッチパッドなどが、Surface Book 3ではUSB接続ではなくなっていることがわかった。Surface Book 3ではキーボード、タッチパッド、ドック側のファームウェアなどは「Surface Hot Plug」というデバイスにぶら下がるかたちになっている。
ここから先は筆者の推測だが、USBだと1つ1つデバイスを切り離すのに時間がかかるが、この仕組みにしておくとSurface HotPlugだけを切り離せばいいので、時間が短縮できる仕組みだと考えられる。それにより、Microsoftが言うところの「3倍速い」が実現できているのではないだろうか。
ただし、キーボードやタッチパッドがUSBではなくなっていることの弊害もある。UEFIファームウェア環境ではMicrosoftがドライバを組み込んでいるため問題ないが、WinRTでユーザーがカスタマイズした起動ディスクなどでは「Surface Hot Plug」のドライバを組み込んでおかないと、キーボードやタッチパッドが使えなくなる(別途USBの外付けキーボードなどをつなげば回避できるが)。今後Windowsのインストールディスクなどに標準でこのドライバが組み込まれていくことになるだろうから問題はないとは思うが、True Imageなどで独自のリカバリを作っているユーザーなどには注意が必要だ。
そうしたこともあり、Surface Book 2のキーボードドックとSurface Book 3のキーボードドックはコネクタの形状も含めて一緒だが互換性はない。使えそうだが使えないので注意が必要だ(なお、2つを見分けるにはファンクションキーの配列と、ヒンジ部分に書かれているモデル番号で見分けるしかない)。
なお、HWINFO64で確認したところ、Surface Book 2、Surface Book 3に採用されているディスプレイパネルはどちらも同じで、パナソニックのTDM13056だった。このため、Surface Book 2、Surface Book 3の表示品質などはまったく同等で差がなかった。
Surface Book 3のI/Oポートの配置は、Surface Book 2とまったく同じだ。タブレット側にはSurface Connectと3.5mmヘッドフォン(4ピン)だけがあり、キーボードドックの左側面にはUSBが2つ、SDXCカードスロットが1つ。右側面にはSurface ConnectとUSB Type-Cが1つずつとなっている。ただし、USB Type-AとUSB Type-Cは、従来がUSB 3.0だったのに対して、USB 3.1となっている。これにより、理論的な転送速度は倍になっており、とくにSSDなどをつなぐ時にはメリットがあるだろう。
Thunderbolt 3(最大40Gbps)に対応していないのは残念だが、Ice Lakeの場合はThunderbolt 3のコントローラはCPUに内蔵されているため、Surface Bookの構造(タブレット側にCPUがある)を考えると、致し方ないところだろう。
Wi-FiやBluetoothも最新のWi-Fi 6/Bluetooth 5対応になった。Surface Book 2ではMarvellのWi-Fi/BTコントローラが採用されていたが、Surface Book 3ではIntelのCNVi接続のAX201に変更されており、それによりWi-Fi 6(Gig+)に対応し、WPA3にも対応し、さらにBluetooth 5にも対応となったのだ。
ベンチマークでCPU、GPUともに性能向上を確認
それではベンチマークなどを利用して、Surface Book 2とSurface Book 3の性能を比較していこう。Surface Book 2はHNN-00012の型番を持つ「第8世代 Intel Core i7/メモリ16GB/1TB/NVIDIA GeForce GTX 1050/Office Premium」スペックモデルとなる。性能に関連するスペックは以下のとおりだ。
Surface Book 2(HNN-00012) | Surface Book 3(SLK-00018) | ||
---|---|---|---|
CPU | ブランド | Core i7-8650U | Core i7-1065G7 |
コア/スレッド | 4コア/8スレッド | 4コア/8スレッド | |
ベースクロック | 1.9GHz | 1.3GHz | |
ターボ時最大 | 4.2GHz | 3.9GHz | |
LLC | 8MB | 8MB | |
内蔵GPU | ブランド | Intel UHD Graphics 620 | Intel Iris Plus Graphics |
EU | 24 | 64 | |
ベースクロック | 300MHz | 300MHz | |
最大周波数 | 1.15GHz | 1.1GHz | |
単体GPU | ブランド | GeForce GTX 1050(GP107) | GeForce GTX 1650 Max-Q Design(TU117) |
GPUメモリ | 2GB GDDR5 | 4GB GDDR5 | |
CUDAコア | 640 | 1,024 | |
GPUベースクロック | 1,354MHz | 1020MHz | |
ブーストクロック | 1,493MHz | 1245MHz | |
メモリ | 種類 | LPDDR3 | LPDDR4x |
容量 | 16GB | 32GB | |
データレート | 1,866MHz | 3,733MHz | |
ストレージ | ブランド | Samsung MZFLW1T0HMLH-000MU | Hynix HFM512GDGTNG-87A0A |
コントローラ | NVMe/PCIe x4(8GT/s) | NVMe/PCIe x4(8GT/s) | |
容量 | 1TB | 512GB |
CPUに関してはシンプルにシングルスレッドとマルチスレッドの処理能力を計測できるCinebench R20を利用した。前述のとおり、Surface Book 3のCPUはCore i7-1065G7で、Surface Book 2に搭載されているCore i7-8650Uに比較するとベースクロックも、ターボ時最大もクロックは低下している。しかし、クロックは下がっても、アーキテクチャなどの改良とTurbo Boost機能を有効に使うことで、Core i7-1065G7はシングルスレッドでもマルチスレッドでもCore i7-8650Uを上回っている。
GPUに関して3DMarkを使って描画性能を測定した。Surface Book 2に搭載されているGeForce GTX 1050(GP107)、Surface Book 3に搭載されているGeForce GTX 1650 Max-Q Design(TU117)の違いは、GPUのアーキテクチャがPascalとTuringと世代が違うこと、そしてCUDAコアの数が前者は640基なのに対して後者は1,024基となっており増えていることが特徴になっている。
ただし、ベースクロックやブースト時のクロックはやや低めになっているという違いになる。そうしたことを反映してか、ベンチマークテストの3DMarkでは倍になったテストもあったが、わずかな向上にとどまるテストもあった。
TimeSpy、FireStrike Ultra、FireStrike Extremeに関してはSurface Book 2のGeForce GTX 1050ではビデオメモリが2GBしかなかったため実行できなかった。これに対してSurface Book 3ではビデオメモリが4GBと倍増されたこともあり、最後までベンチマークを完走させることができた。
また、Surface Book 2、Surface Book 3ともに単体GPUが搭載されているキーボードドックから切り離してIntelの内蔵GPUだけの状態でもテストをしてみた。多くのテストで2倍程度の描画性能を確認できたので、フルHDの解像度程度であれば、タブレット単体でゲームをするなどの使い方もありそうだ(もちろんゲームによるが)。
前面カメラは業界最高峰と言ってもいい画質
最後にテレワークで俄然注目が集まる前面カメラの画質について触れておきたい。最近気がついたのだが、電話会議をしていて、この人の画像綺麗だな、カメラ何を使っているのだろうと思ってPCを聞いてみると、Pro、Laptop、BookのSurfaceシリーズだと答えられることが多くなっていた。じつは、Surfaceの前面カメラは、標準で500万画素になっており、カメラの機能としては静止画の解像度としては4:3なら2,560×1,920ドット、16:9なら2,560×1,440ドットにまで設定できる仕様になっている。動画を撮影するときはフルHD(1,920×1,080ドット)までになるが、画素数が多いためか非常に鮮明な画像をキャプチャすることができる。
これに対して、DellやLenovoといったOEMメーカーのハイエンドPCでも、前面カメラの解像度はHDになっており、100万画素程度のセンサーを採用していることが多い。このため、カメラとして撮影できるのも静止画でも動画でも16:9で1,280×720ドットになっており、解像度の点でSurfaceは大きく上回っている。
ただ、実際にはZoomやTeamsなどは、大きくても720pやVGA(640×360ドット)などにリサイズして動画を相手に送るので、フルHDの解像度の動画を相手に配信しないので、結局のところは720pのカメラでも十分と言えるのだが、フルHDで撮影したものをVGAにリサイズするのと、HDで撮影したのをVGAにリサイズするのでは画質が違ってくるのは言うまでもなく、非常にクリアな映像を出力することができる。
以下の画像はSurface Book 3、Dell XPS 13(モデル9300)、LenovoのThinkPad X1 Yoga Gen 4(2019年モデル)の3つのPCで、前面カメラを利用して16:9でWindowsカメラアプリで撮影した時の静止画になる。
明らかにSurface Book 3は明るく、精細な画像をキャプチャできており、それについでDellのXPS 13はHDカメラにしてはかなり明るめに撮影が可能で、LenovoのThinkPad X1 Yoga Gen 4はやや暗めの画像になっている。これだけ明るい静止画が撮れるなら、動画にする場合も明るめに撮ることが可能になるので、VGAなどにリサイズされる電話会議用の動画品質としては高品質になることが期待できる。
今回Surface Book 3ではカメラなどは強化されてわけではなく、この特徴は以前からのSurfaceシリーズの特徴と言えるが、外部カメラを用意しなくても前面カメラだけでここまでの画像を撮影できるSurfaceシリーズなら、わざわざ一眼レフなどの外部カメラなどをUSBキャプチャ経由で接続したりということは必要ないだろう。この点は、Surface Bookのみならず、ほかのSurface(Pro、Pro X、Go、Laptopなど)でも同様(つまり同じように500万画素のインカメラを搭載している)で、インカメラの画質を何よりも重視しているというユーザーには注目ポイントと言える。
なお、マイクは遠方界(Far Field)マイクになっており、広い範囲をカバーできるデュアルアレイマイクになっている。Surface Go 2にも同じマイクが搭載されており、やはり広いレンジをサポートできるほか、キーボード音を低減するノイズ低減機能も用意されている。
以上のように、Surface Book 3は外見の違いはほとんどないほど従来のSurface Book 2と同じだが、CPU/GPUは大きく強化されており、キーボードドックの内部構造を見直すことで脱着にかかる時間も短くなっている。また、USB端子はすべて10GbpsのUSB 3.1に強化されているほか、ワイヤレスはWi-Fi 6に対応しているなど、内部構造は大きく進化している。そしてSurfaceシリーズの特徴と言って良い、高画質な前面カメラ、さらにはデュアルアレイの遠方界マイクなどテレワーク向けのPCとしてもかなり魅力的になっている。
CPU | dGPU | メモリ | ストレージ | ディスプレイ | Office | 一般向け価格(税別) |
---|---|---|---|---|---|---|
Core i5 | - | 8GB | 256GB | 13.5型 | Office Home and Business 2019 | 190,800円 |
Core i7 | GeForce GTX 1650 | 16GB | 256GB | 13.5型 | Office Home and Business 2019 | 238,800円 |
Core i7 | GeForce GTX 1650 | 32GB | 512GB | 13.5型 | Office Home and Business 2019 | 287,800円 |
Core i7 | GeForce GTX 1650 | 32GB | 1TB | 13.5型 | Office Home and Business 2019 | 310,800円 |
唯一の弱点は価格で、正直に言って決して安い部類の製品ではないことだが、今回のモデルから一般消費者向け製品のOSはWindows 10 Homeになったことでやや価格が下がり気味になっているのは、Windows 10 Proが必要ないユーザーにとってはうれしい点だとも言える。
かつ、CPUやGPUがモバイルノートPCとしてはかなりハイエンドな仕様になっていることも考えると、決してものすごく高いというわけではないと思う。その意味で、誰にもおすすめするような製品ではないことは従来と同じだが、つねに最速のCPUやGPUが必要という効率や生産性が最優先のビジネスパーソン、AdobeのCreative Cloudツールを使うのに強力なGPUが必要というクリエイター、そうしたユーザーにおすすめの製品と言えるだろう。