笠原一輝のユビキタス情報局
明日発売のSurface Go 2実機をいち早くレビュー
2020年5月11日 11:00
Microsoftは5月7日(米国時間)に、Surface Goの後継として「Surface Go 2」、Surface Book 2の後継として「Surface Book 3」を発表したのは既報のとおり。日本ではそれぞれ5月12日、6月5日から販売開始される予定だ。
今回、日本マイクロソフトよりSurface Go 2の製品貸し出しを受けたので、それを利用してSurface Goとの比較などのレビューをお届けしていきたい。今回利用したのは「STQ-00012」(Pentium Gold 4425Y/メモリ 8GB/SSD 128GB/Wi-Fi/Windows 10 Home Sモード/Office Home and Business 2019)で、一般消費者向けの中位モデルとなる。
正常進化したSurface Go 2、外形は変わらず、重量はやや増加
Surface Go 2とSurface Goのスペックを表にすると、以下のようになる。
製品名 | Surface Go | Surface Go 2 |
---|---|---|
CPU | Pentium Gold 4415Y | 第8世代Core m3-8100Y/Pentium Gold 4425Y |
GPU | Intel UHD Graphics 615 | Intel UHD Graphics 615 |
メモリ | 4GB/8GB | 4GB/8GB |
ストレージ | 64GB(eMMC)/128GB(SSD) | 64GB(eMMC)/128GB(SSD)/256GB(SSD) |
ディスプレイ | 10型 PixelSense Display(1,800×1,200ドット、217ppi、1,500:1) | 10.5型 PixelSense Display(1,920×1,280ドット、220ppi、1,500:1) |
タッチ/ペン | タッチ/Surface Pen(MPP) | タッチ/Surface Pen(MPP) |
カメラ(Windows Hello対応有無) | 500万画素(前面、Windows Hello対応)/800万画素(背面) | 500万画素(前面、Windows Hello対応)/800万画素(背面) |
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2) | 1(USB 3.0) | 1(USB 3.0) |
カードリーダ | microSDXC | microSDXC |
オーディオ | 3.5mm | 3.5mm |
その他ポート | Surface Connect | Surface Connect |
Wi-Fi | IEEE 802.11ac(Qualcomm Atheros QCA6174A) | IEEE 802.11ax(Intel AX200、WPA3対応) |
Bluetooth | BT 4.1 | BT5.0 |
WAN | Snapdragon X16 LTE Modem | Snapdragon X16 LTE Modem |
キーボード | 別売 | 別売 |
ポインティングデバイス | 別売のキーボードにPrecision TouchPad | 別売のキーボードにPrecision TouchPad |
ACアダプタ | 24W | 24W |
バッテリ容量 | 26.1Wh | 26.8Wh |
カラー | シルバー | シルバー |
サイズ(横×縦×高さ) | 245×175×8.3mm | 245×175×8.3mm |
重量 | 522g(Wi-Fi)/532g(LTE) | 544g(Wi-Fi)/553g(LTE) |
OS | Windows 10 Home(Sモード、一般モデル)/Windows 10 Pro(法人モデル) | Windows 10 Home(Sモード、一般モデル)/Windows 10 Pro(法人モデル) |
外形はまったく同じサイズとなっており、従来のSurface Go向けにオプションとして発売されてきた「Surface Goタイプカバーキーボード」のプラチナ(Alcantara)、ブラックがそのまま利用できるだけでなく、新しく発売されるアイスブルー(Alcantara)、ポピーレッド(Alcantara)も用意され、全4色のキーボードが選択できるようになる。これで4色のタイプカバーキーボードが用意されているSurface Proシリーズとキーボードのラインナップで同等になったことになる。重量は、Wi-Fiモデルで22g、LTEモデルで21g増加している。
実際に手元にあったSurface Goタイプカバーキーボード(ブラック)をSurface Go 2で使ってみたが、何の問題もなく利用することができた。ただし、Surface Go用として販売されてきたブラックとアイスブルー(Alcantara)を比較してみると、ファンクションキーの機能(オーディオのボリュームなどを調整するキー)の配置が違っている。
オプションのSurface ペン(こちらはSurface Proシリーズと共通)も同じようにプラチナ、ブラック、アイスブルー、ポピーレッドの4色がすでに販売されており、キーボードと色合わせで選択できる。ペンは本体の左側面にマグネットで固定することが可能で、バッテリは従来とおり単6電池となる。
ACアダプタも従来モデルと同じSurface Connect用のACアダプタで24W出力なのも変わっていない。Surface Connectの仕様は、上位モデルとなるSurface Proシリーズと同様になっており、Surface Connect端子のドック(Surface Dockおよび今回同時に発表されたSurface Dock 2)を利用可能だ。
バッテリ容量は従来モデルの26.1Whとほぼ同じ26.8Whだ。そのため劇的にバッテリ駆動時間が延びたり、短くなったりもないだろう。メーカーの公称でも、従来モデルは9時間(ビデオ再生時)に対して、本製品では10時間となっている。Surface Go 2の10時間というのはより細かな省電力ができるCore m3を採用した効果だろうから、実質的にはほぼ同じだと考えておいてよいだろう。
本体の左側に用意されている端子は、前述のSurface Connectの他は、USB Type-C、3.5mmオーディオと3つで、左側にはなにもない。なお、LTEモデルの場合にはNano SIMカードスロットが本体左側に用意される。キックスタンドを開けたところに、microSDXCカードスロットが用意されており、microSDXCカードを読み書きすることができる。
デュアルアレイの遠方界マイクに進化し、録音できる音声もよりクリアーになっている
Surface Goではシングルアレイのマイクだったのが、Surface Go 2ではデュアルアレイの遠方界(Far Field)マイクに強化されている。Surface GoではUWPのツール「Realtek Audio Console」でノイズ低減のオン、オフが設定でき、キーボード音などのノイズを低減できる。本製品でもRealtek製のコントローラを採用しているので、同じ仕組みでノイズキャンセリングの仕組みが入っていると考えられるが、Surface Go 2には標準でインストールされていなかった。
そこで、マイクのプロパティでオーディオ機能拡張(ノイズ低減はオーディオ拡張機能の一種)をオフにして音声を録音したときと、オンにして音声を録音したときにはオンにして録音してみた。同様にSurface GoでもRealtek Audio Consoleでノイズ低減をオン、オフした。
できるだけ同じ力でキーボードを押してノイズを発生させているが、完全に同じというわけではない。従って参考程度ということで聞き比べてほしい。録音に利用したソフトウェアはWindows標準のボイスレコーダーで、録音環境は筆者宅の仕事部屋ということで、完全に外部ノイズを遮断できている環境ではないこともお断わりしておく。
・(1)Surface Go シングルアレイマイク(ノイズ低減オフ)
・(2) Surface Go シングルアレイマイク(ノイズ低減オン)
・(3)Surface Go 2デュアルアレイマイク(ノイズ低減オフ)
・(4) Surface Go 2デュアルアレイマイク(ノイズ低減オン)
・(5)Surface Go(ノイズ低減オフ、キーボードノイズなし)
・(6)Surface Go 2(ノイズ低減オフ、キーボードノイズなし)
聞いて頂ければわかるように、どちらのデバイスもノイズ低減でキーボードのノイズはある程度低減されている。ただし、正直に言ってキーボードのノイズが完全に消えるほどではなかった(だから低減なのだろう)。従って、マイクのノイズ低減はオフにしてZoomのようなオンライン会議ソフトウェア側のノイズキャンセリング機能を使った方がいいかもしれない。
しかし、ノイズ低減をオフにした場合同士(5と6の比較)で比較した場合、Surface Goではややこもったような音になっているが、Surface Go 2ではよりクリアに録音できている。これはマイクがデュアルアレイになった効果と考えることができるだろう。
なお、外部マイクの端子は他のSurfaceシリーズと同じように4ピン仕様だ。
0.5型大きくなったディスプレイ
外見上の最大の違いはディスプレイだ。Surface Goでは10型(1,800×1,200ドット/217ppi)であったのに対して、Surface Go 2では10.5型(1,920×1,280ドット/220ppi)へと進化している。同じ底面積でありながら、ディスプレイサイズが0.5型分だけ大きくなっているので、その分額縁(ベゼル)は小さくなっている。
両製品のディスプレイ表示部分、額縁を図ってみると、以下のようになっていた。
Surface Go | Surface Go 2 | |
---|---|---|
額縁(上) | 17 | 14 |
額縁(下) | 17 | 14 |
額縁(左) | 17 | 12 |
額縁(右) | 17 | 12 |
ディスプレイ(縦) | 141 | 148 |
ディスプレイ(横) | 211 | 222 |
Surface Goでは上下方向が約17mm、左右方向も約17mmだったのに対して、Surface Go 2では上下方向が約14mm、左右方向が約12mmとなっている。これによりディスプレイも縦方向に約7mm、横方向に約11mm大きくなっている(縮小サイズと計算が合わないのはミリ以下は表示できない定規で測っているため)。解像度的には横に120ドット、縦に80ドット大きくなっているので、Excelなどのアプリでより広く表示できる。
ディスプレイパネルはHWinfo64で調べたところ、従来モデルではシャープの「LQ100P1JX51」というパネルが採用されていたが、Surface Go 2ではBOEの「NV105WAM-N31」というパネルに変更となった。8bitカラーで、HDRにはビデオストリーミングのみに対応となっている点は変わらない。
率直に言ってその表示品質には従来モデルと顕著な違いはない。新しいモデルの方が、横が広く、画面が大きい、それが2つの違いだと言っていいだろう。
Amber Lake-YのCore m3-8100YとPentium Gold 4425Yへ進化、Wi-FiはWi-Fi 6/WPA3対応に
外見上の違いはこれまで述べてきたように、Studio Micとディスプレイのサイズだが、内部の違いとしては新しい世代のCPUが採用されている。従来のSurface Goに採用されていたPentium Gold 4415Yは、開発コードネームKaby Lake-Yとなる製品で、第7世代Coreと同じ世代に属する低価格向けCPUとなっていた。
今回の製品に採用されているCore m3-8100YとPentium Gold 4425Y採用されているのは、開発コードネーム「Amber Lake-Y」でIntelの14nmで製造されるCPUになる。Coreプロセッサの世代で言うと第8世代になる(Amber Lakeの詳細は別記事「Whiskey LakeとAmber Lakeの正体」を参照)。
Amber Lake-YはCPUのTDPの枠がKaby Lake-Yの4.5Wから5Wに拡張されており、その拡張された分だけ性能が向上する(ただしPentiumやCeleronなどは6Wで変わらず)。
同時期に発表されたUシリーズ(TDP 15W)の第8世代Core製品となる開発コードネーム「Whiskey Lake」がICHの世代がICL-ICHという新しい世代のICHへと進化しているのに対して、Amber Lakeは従来のSKL-ICHに留まっており、USB 3.1 Gen2(10Gbps)などの新しい機能には対応していない。
このため、じつに細かなことだが、本製品のUSB Type-C、USBの世代としては最大速度5GbpsのUSB 3.0端子となる。
加えてAmber Lakeに採用されているSKL-PCHは、ICL-PCH以降で採用されているWi-Fiコントローラ(MAC)の統合も行なわれていない。このため、RFを搭載するだけでWi-Fiを実装するCNViとよばれる専用のインターフェイスが利用できないため、別途Wi-Fiコントローラ(MAC+RF)をモジュールとして搭載する必要がある。
従来のSurface Goは「Qualcomm Atheros QCA6174A」というIEEE802.11acとBluetooth 4.1に対応したWi-Fi/BTコンボモジュールが採用されていたが、新製品ではそれがIntel AX200というIEEE802.11axとBluetooth 5に対応しているWi-Fi/BTコンボモジュールに変更されている。標準でWi-Fi 6に対応し、WPA3にも対応していることもメリットの1つとしてあげられる(IntelのWi-FiモジュールはIntel Wireless-AC 9265以降でWPA3に対応)。
Pentium Gold-4425Yは100MHzクロックが向上
すでに述べたとおりAmber Lake-Y世代のCPUとして本製品には2つのCPUの選択肢がある。1つがCore m3-8100Y、もう1つがPentium Gold-4425Yだ。従来製品に搭載されていたPentium Gold-4415Yも含めてスペックをまとめると以下のようになる
Core m3-8100Y | Pentium Gold 4425Y | Pentium Gold 4415Y | |
---|---|---|---|
開発コードネーム | Amber Lake-Y | Amber Lake-Y | Kaby Lake-Y |
CPUコア(スレッド) | 2(4) | 2(4) | 2(4) |
Turbo Boost対応 | 対応 | - | - |
ベース周波数 | 1.1GHz | 1.7GHz | 1.6GHz |
最大周波数 | 3.7GHz | - | - |
L3キャッシュ | 4MB | 2MB | 2MB |
ICH | SKL-ICH | SKL-ICH | SKL-ICH |
TDP | 5W | 6W | 6W |
Core m3とPentium Goldとの大きな違いは、Turbo Boost機能に対応しているかどうかだ。Core m3はTurbo Boostに対応しており、シングルコア時に最大で3.7GHzに達することになる。ベースクロックは1.1GHzとPentium Goldに比べて低くなっているため、一見すると性能が下がっているのではと思うかもしれないが、実際にはTurbo Boostに対応したCPUは、クロックはシステムの温度に応じてベースクロックよりも大きく引き上げられて動作する(この事情に関しては以前の記事(「なぜ同じCPUでも性能差が出るのか? 新VAIO TruePerformanceが教えてくれるノートPC設計の難しさ」をご参照いただきたい)。
したがって、Core m3-8100Yを選ぶとTurbo Boostの分だけ性能が向上する。Microsoftは従来のSurface Goと比較して64%と表現している。今回入手した製品が残念ながらPentium Gold 4425Yだったので、Core m3でどれだけあがるかはわからないのだが、Pentium Gold 4415Yとのベンチマークデータをグラフ1に示しておく。
Pentium Gold 4415YとPentium Gold 4425YはCPUのアーキテクチャは同等で、キャッシュの容量なども同じ。従って違いはクロックが0.1GHz上がっているだけになる。
CPUは向上し、ディスプレイが大きく高解像度になっているのに値下げ
値段に関しては、一般向けには3つのモデルが用意されていることは変わらない。
Surface Go 2 | Surface Go | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日本での型番 | CPU | メモリ | ストレージ | セルラー | 発表時の市場想定価格 | 日本での型番 | CPU | メモリ | ストレージ | セルラー | 発表時の市場想定価格 | |
STV-00012 | Pentium Gold | 4GB | 64GB | - | 59,800円 | 下位モデル | MHN-00017 | Pentium Gold | 4GB | 64GB | - | 64,800円 |
STQ-00012 | Pentium Gold | 8GB | 128GB | - | 77,800円 | 中位モデル | MCZ-00032 | Pentium Gold | 8GB | 128GB | - | 82,800円 |
TFZ-00011 | Core m3 | 8GB | 128GB | LTE | 97,800円 | 上位モデル | KAZ-00032 | Core m3 | 8GB | 128GB | LTE | 90,800円 |
最下位モデルが4GB/64GB eMMC、中位モデルが8GB/128GB SSD、上位モデルが8GB/128GB/LTEありとなる。この表で見てわかるように、下位モデルの2つ、従来と同じPentium Goldを搭載したモデルは値段が5千円ほど引き下げられている。米国での価格である最下位モデルが399ドル(1ドル=106円換算で、42,294円)に比べると高く感じるかもしれないが、それは従来モデル同様、日本では商用利用も可能なOffice Home and Business 2019のバンドルライセンスがバンドルされているからだ。
2台まで使えるOffice Home & Business 2019の永続型ライセンスは34,804円(税別)であることを考えると、そのPCでしか使えないとはいえ、Office Home & Business 2019がついててこの値段は決して高いわけではない(むしろ安いと言ってもいい)。現時点でもOfficeのPIPCライセンスのリテール市場でのバンドル率は90%を軽く超えている日本市場では、一般向けの製品がPIPC付きなのは大多数を優先するという観点からは当然の選択だ。
ただ、Microsoft 365 Personal(Office 365 Soloの後継)や法人向けMicrosoft 365を契約している個人ユーザーにとっては、必要のないPIPCライセンスのOfficeとセットでしか買えないという問題は依然として残る。ぜひとも日本マイクロソフトには、そうしたユーザーを救う意味でもPIPCライセンスがないバージョンをWeb限定で売るとか、法人向けのSurface Goを個人でも買えるようにするかどちらかの施策をお願いしたいところだ(個人事業主は事業をしていることを証明する書類=例えば確定申告の写しなどがあれば法人向けのチャネルで法人向け製品を購入できる)。
以上のように、Surface Go 2は、従来モデルに比べるとディスプレイが大きくなり解像度があがり、マイクがデュアルアレイに進化し、CPUがAmber Lake-Y世代へと進化しCore m3も選択可能になるなど性能が強化され、Wi-Fi/BTモジュールがWi-Fi 6/BT5世代になるなど進化している。
一方でCPUがPentium Goldのモデルであれば、価格は5千円安価になり、コストパフォーマンスは高まっている。Core m3+LTEは従来のモデルに比べると7千円のアップになっているが、CPUがCore m3に強化されていることを考えれば妥当な価格だろう。その意味ではコンセプトは踏襲しつつ、各部が強化され、コストパフォーマンスは従来モデルよりも上がっている、それが今回のSurface Go 2の妥当な評価だ。