笠原一輝のユビキタス情報局

コンセプトはそのままに仕様強化された「Surface Go 2」と「Surface Book 3」

Surfaceシリーズのラインナップ、後列左からSurface Pro X、Surface Book 3、Surface Studio、Surface Laptop、Surface Go 2、手前左からSurface Earbuds、Surface Headphones 2

 Microsoftが新しいSurfaceファミリーの製品を発表した。今回発表されたのは2018年に発表されたSurface Goの後継となる「Surface Go 2」、同じく2018年に発表されたSurface Book 2の後継となる「Surface Book 3」の2製品。

 発表のハイライトや価格などに関しては別記事を参照していただくとして、本記事では発表されたSurface Go 2、Surface Book 2に関しての、詳細スペックなどから見えてくる詳細などに解説していきたい。

上位モデルのCPUはCore m3に強化され、性能が64%向上した新しいSurface Go 2

Surface Go 2

 Surface Go 2、Surface Book 3はいずれも従来のコンセプトを維持した製品で、基本的には従来製品の強化版という位置づけになっている。Surface Go 2の詳細スペックは以下のとおり。

【表1】Surface Go 2のスペック(米国モデル)
製品名Surface Go 2
CPU第8世代Core m3/Pentium Gold 4425Y
GPUIntel UHD Graphics 615
メモリ4GB/8GB
ストレージ64GB(eMMC)/128GB(SSD)
ディスプレイ10.5型 PixelSense Display(1,920×1,280ドット、220ppi、1,500:1)
タッチ/ペンタッチ/Microsoft Pen
カメラ(Windows Hello対応有無)500万画素(前面、Windows Hello対応)/800万画素(リア)
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2)1
カードリーダmicroSDXC
オーディオ3.5mm
その他ポートSurface Connect
Wi-FiIEEE 802.11ax
Bluetooth5.0
WANSnapdragon X16 LTE Modem
キーボード別売
ポインティングデバイス別売のキーボードにPrecision TouchPad
ACアダプタ24W
バッテリ未公表
カラーシルバー
サイズ(横×縦×高さ)245×175×8.3mm
重量544g(Wi-Fi)/553g(LTE)
OSWindows 10 Home(Sモード、一般モデル)/Windows 10 Pro(法人モデル)

 前モデルとなるSurface Goから大きく強化されているのは2点ある。1つはCPUで、従来Pentium Gold 4415Y(2コア、1.6GHz)だったのが、Pentium Gold 4425Y(2コア、1.7GHz)、ないしはSKUは不明ながら第8世代CoreのCore m3へと強化されている。

 Microsoftが配布している資料では第8世代Core m3としか書いていないのだが、事実上Amber LakeベースのCore m3-8100Yしかないのと、Pentium Gold 4415YがAmber Lakeの派生品であることを考えるとその可能性が高い。

 Core m3-8100Yだとすると、2コア/4スレッド、ベースクロックは1.1GHzだが、ターボ・ブーストが有効時には最大3.4GHzまでクロックを上げることが可能。キャッシュはPentium Goldの倍の4MBとなっており、その2つの点でPentium Gold 4415Yよりも大きな性能向上が期待できるだろう。MicrosoftはCore m3を選択した場合の性能向上を64%と説明しており、従来のSurface Goの性能に満足していなかったユーザーにとっては福音と言える。

 メモリは従来と同じように4GBないしは8GBとなっており、ストレージは64GBはeMMC、128GBはSSDという点も従来と同じだ。性能重視のユーザーはメモリ8GB/128GBとなる上位モデルを選択するのがいいだろう。

ディスプレイは0.5型分大きくなっているが、サイズは従来モデルと同じ

ディスプレイは10.5型へ0.5型分だけ大型化、外形は変わらず

 ディスプレイは10型から10.5型へと0.5型分だけ大きくなっている。解像度も1,800×1,200ドットから1,920×1,280ドットと向上しているので、画素密度は従来モデルが217ppiだったのに対して220ppiになっている。なお、ディスプレイサイズは大きくなっているが、本体のサイズは245×175×8.3mm(幅×奥行き×高さ)と従来モデルとまったく同じになっている。このため、キーボードは従来モデル用のものが使い回せるほか、ポッピーレッド(黄赤色)、アイスブルーという新色のタイプカバーキーボードも追加された。重量はWi-Fiモデルが544g、LTEモデルが553gとなっており、それぞれ従来モデルの522g、532gから20g程度増えている。

【5月8日訂正】記事初出時、解像度が同じとしておりましたが、正しくは向上しております。お詫びして訂正します。

別売りのキーボード

 マイクが強化されているのもSurface Go 2の特徴だ。従来の製品では一般的なシングルマイクだったが、今回のモデルでは遠方界(Far Field)をカバーできるデュアルアレイの「Studio Mic」へと強化されている。これにより、TeamsやZoomなどのオンライン会議ソフトを利用してオンライン会議を行なうとき、よりクリアな音声を実現できる。

 LTEモデムに関しては従来製品と同じQualcomm Snapdragon X16 LTE Modemが搭載されている。今回のモデルがどのバンドに対応しているかは公式のスペック表などには書かれていないが、同じモデムを搭載していることから、対応バンドも同じだと考えられるだろう。なお、従来モデルではバンド 1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/19/20/25/26/28/29/30/38/39/40/41/66に対応していた。

 OSは従来と同じように、一般消費者向けがWindows 10 Home(Sモード)、法人向けがWindows 10 Professionalとなっている点も同じだ。

【表2】日本向けのモデルと価格(税別)
CPUメモリストレージセルラー一般向け価格(税別)法人向け価格(税別)教育機関向け価格(税別)
Pentium Gold4GB64GB-59,800円52,800円47,800円
Pentium Gold8GB128GB-77,800円-65,800円
Core m34GB64GB--55,800円-
Core m38GB128GB--75,800円-
Core m38GB128GBLTE97,800円87,800円-
Core m38GB256GBLTE-97,800円-

 日本の一般消費者向けモデルはOffice Home and Business 2019のPIPC(PCプレインストール)版ライセンスが付属しており、その分米国のモデル(最廉価モデルで399ドル、42,294円)と比較してやや高めになっていることは従来モデル同様だ。

 Surface Book 3も同様だが、中小企業や個人事業主などで、ビジネス利用もできるMicrosoft 365 Personalや法人向けMicrosoft 365などを契約しているユーザーにとっては、必要のないPIPC版のライセンス料を払わないといけないというかたちになってしまっている。

 その場合にはPIPC版のOfficeライセンスがバンドルされておらず、OSのSKUもWindows 10 Proになっている法人向けモデルを検討してみるのがいいのだが、それにも課題がある。というのはSurfaceの法人向けモデルは量販店などでは販売されていないため、Microsoftが法人向けに展開しているリセラーやMicrosoft Storeの法人窓口などに申し込んで購入する必要がある。オンラインで簡単に買えない仕組みになっており、気軽に一般向けが合わないなら法人向けをどうぞとは言えない状況になっている。

 以前もこの課題は指摘したが、そのハードルは決して低くなく、ぜひとも日本マイクロソフトにはそのハードルを下げるような取り組み(たとえばMicrosoft StoreのWebサイトで個人事業主などに直販など)を期待したい。

第10世代Coreプロセッサ+Turing GPUに強化されたSurface Book 3

Surface Book 3

 Surface Book 3のスペックは以下のようになっている。

【表3】Surface Book 3のスペック
製品名Surface Book 3(13.5型)Surface Book 3(15型)
CPUCore i7-1065G7/Core i5-1035G7Core i7-1065G7
GPUIris Plus(i5モデル)/GeForce GTX 1650 with Max-Q Design 4GB GDDR5GeForce GTX 1660 Ti with Max-Q Design 6GB GDDR6/Quadro RTX 3000 with Max-Q Design 6GB GDDR6
メモリ8GB/16GB/32GB(LPDDR4x-3,733MHz)16GB/32GB(LPDDR4x-3,733MHz)
ストレージ256/512/1TB256/512/1TB/2TB
ディスプレイ13.5型PixelSense Display(3,000×2,000ドット、267ppi)15型PixelSense Display(3,240×2,160ドット、260ppi)
タッチ/ペンタッチ/Microsoft Penタッチ/Microsoft Pen
カメラ(Windows Hello対応有無)500万画素(前面、Windows Hello対応)/800万画素(背面)500万画素(前面、Windows Hello対応)/800万画素(背面)
USB-A2(USB 3.1 Gen2)2(USB 3.1 Gen2)
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2)1(USB 3.1 Gen2)1(USB 3.1 Gen2)
カードリーダSDカードSDカード
オーディオ3.5mm3.5mm
その他ポートSurface Connect(タレット/ベース)Surface Connect(タレット/ベース)
Wi-FiIEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)/Xbox Wireless内蔵
Bluetooth5.05.0
キーボードフルサイズ(1.55mmストローク)フルサイズ(1.55mmストローク)
ポインティングデバイスPrecision TouchPadPrecision TouchPad
ACアダプタ65W(i5モデル)/102W(i7モデル)127W
バッテリ15.5時間17.5時間
カラープラチナプラチナ
サイズ(横×縦×高さ)312×232×13~23mm(i5モデル)/312×232×15~23mm(i7モデル)343×251×15~23mm
重量1.534kg(i5モデル)/1.642kg(i7モデル)1.905kg
OSWindows 10 Home(一般向け)/Windows 10 Pro(法人向け)Windows 10 Home(一般向け)/Windows 10 Pro(法人向け)

 ディスプレイは13.5型が3,000×2,000ドット/267ppi、15型が3,240×2,160ドット/260ppiのPixelSense Displayとなっており、基本的なサイズと重量は13.5型も、15型も従来モデルと同等。電子式のロックでタブレットとパフォーマンスベースとよばれるキーボードドックに分離する仕組みもまったく同じになっている。

 外観で唯一の違いは、15型のモデルに利用されているACアダプタで、従来モデルでは13.5型も15型の102WのACアダプタが採用されていたが、Surface Book 3では13.5型はdGPUなしのCore i5モデルが65W、dGPUありのCore i7モデルが102W、そして15型のモデルは新しく提供されるようになった127WのSurface Conncet端子のACアダプタがバンドルされている。これに合わせて今回新しい周辺機器として127WのSurface Connect端子のACアダプタがオプションとして提供される(日本での価格は税別13,680円)。

 Surface Bookは、タブレット側にIntelのCPUが搭載されており、パフォーマンスベース側にNVIDIAのdGPUが搭載されドッキング時のみdGPUが利用できる。この仕組みはSurface Book 3でも同様だが、搭載されているCPUとdGPUは強化されている。

 CPUは従来モデルでは、第8世代Coreプロセッサ(Whiskey Lake)ないしは第7世代Coreプロセッサ(Kaby Lake-R)が搭載されていたが、今回のモデルでは開発コードネームIce Lakeで知られる10nmで製造される第10世代Coreプロセッサへと強化されている。13.5型がCore i7-1065G7ないしはCore i5-1035G7、15型がCore i7-1065G7を採用している。Ice Lakeでは第8世代Coreプロセッサなどに比較して、とくにGPUが大幅に強化されており、タブレットに分離して利用する場合でも高性能なGPUを利用することができる。

GPUはTuringアーキテクチャのGeForceとQuadro、Thunderbolt 3は構造から対応が難しかったか?

電子アンロックシステムを利用してタブレットとパフォーマンスドックに分離する

 パフォーマンスベースに内蔵されているGPUは13.5型がGeForce GTX 1650 with Max-Q Design/4GB GDDR5、15型がGeForce GTX 1660 Ti with Max-Q Design/6GB GDDR6、15型の法人向けの上位モデルがQuadro RTX 3000 with Max-Q Design /6GB GDDR6となる。3製品ともいずれもNVIDIAのTuringアーキテクチャベースとなっており、GeForceブランドの2製品はレイトレーシング機能は省略されている。NVIDIAが公開している3製品それぞれの公式スペックは以下のとおりだ。

【表4】GeForce GTX 1650、GeForce GTX 1660 Ti、Quadro RTX 3000のスペック
GeForce GTX 1650GeForce GTX 1660 TiQuadro RTX 3000
CUDAコア1,0241,5361,390
ベースクロック1,020~1,395MHz1,140~1,455MHz-
ブーストクロック1,245~1,560MHz1,335~1,590MHz-
メモリバス幅128bit192bit192bit
メモリ4GB GDDR56GB GDDR66GB GDDR6

 今回のSurface Book 3に搭載されているNVIDIAのGPUは、Max-Qという薄型ノートPC用の熱設計デザインを適用したモデルになる。Max-Qでは熱設計の方を優先して設計されるため、性能やクロック周波数という観点ではMax-Qなしに比べるとやや低下する傾向があるため、おそらく表4にあげたスペックよりはやや下げられている可能性は高い。このあたりがどうなっているかは、実際に実機で確認して見ないとなんとも言えないところだ。

Surface Dock 2

 今回のSurface Book 3用というわけではないが、新しいSurface Connect接続のドッキングステーションとしてSurface Dock 2も発表されている(Surface Connectを搭載しているほかのSurface製品でも利用可能)。新しいSurface Dock 2では、前面と背面に2つずつ、合計4つのUSB Type-Cが搭載されており、パフォーマンスベース側に用意されているUSB Type-C 1つと合わせて5つのUSB Type-Cを利用可能になる。Surface Dock 2ではMini DisplayPortがなくなり、USB Type-Cに置き換えられているため、DisplayPortやHDMI入力しかないディスプレイに接続する場合には、USB Type-CからDisplayPortへと変換するドングルやケーブルなどを利用する必要がある。

パフォーマンスドックに用意されているUSB Type-C、Thunderbolt 3には未対応

 なお、パフォーマンスベースに用意されているUSB Type-C端子に関してはなにも言及がないため、Thunderbolt 3には対応していないと考えられる。Ice Lake世代の第10世代Coreプロセッサは、CPUにThunderbolt 3のコントローラが内蔵されており、CPUから直接Thunderbolt 3の信号などが出ており、PHYを用意するだけで低コストでThunderbolt 3を実装できるだけに、今回のSurface Book 3ではThunderbolt 3に対応して欲しかったという向きもあるだろう。

 しかし、Surface Book 3は、タブレットとパフォーマンスベースに分離するという仕組みになっているため、タブレット上にあるCPUに内蔵されているThunderbolt 3コントローラは利用できない。このため、Surface Book 3の仕組みでThunderbolt 3を実装するには、パフォーマンスベースにThunderbolt 3の単体型コントローラを別途搭載する必要がある。これだと追加コストも大きくなるので、搭載が見送られたということではないだろうか。

【表5】日本でのSurface Book 3の価格(税別)
CPUdGPUメモリストレージディスプレイ一般向け価格(税別)法人向け価格(税別)
Core i5-8GB256GB13.5型190,800円188,800円
Core i7GeForce GTX 165016GB238,800円236,800円
GeForce GTX 165032GB512GB287,800円285,800円
1TB310,800円308,800円
GeForce GTX 1660 Ti16GB256GB15型265,800円263,800円
32GB512GB319,800円317,800円
1TB340,800円338,800円
Quadro RTX 3000512GB-382,800円
1TB-403,800円

 OSは従来と同じように、一般消費者向けがWindows 10 Home、法人向けがWindows 10 Proになる。一般消費者向けのモデルではOffice Home and Business 2019がバンドルされており、米国のモデルに比べてやや高めな価格設定になっている事情はSurface Go 2と同様だ。

 以上のように、発表されたSurface Go 2とSurface Book 3の詳細を見てきた。両製品とも冒頭で述べたようにコンセプトをそのままに性能を強化しており、従来製品を持っているユーザーが買い換える対象として、十分検討すべき選択肢といって良いのではないだろうか。