福田昭のセミコン業界最前線

Intelが創業50周年の記念サイトを開設、歴史的な出来事や社員のメッセージなどを掲載

Intelの創業50周年を記念するWebサイトのトップページをキャプチャした画像

7月18日に創業50周年を迎えるIntel

 今年(2018年)の7月18日に、Intelは創業50周年を迎える。7月18日の50周年記念日に先立ち、Intelは創業以降の半世紀を振り返る記念サイト「Intel Celebrates 50 Years of Innovation」を開設した。

 なお日本語版の50周年記念サイト「インテルの50年にわたる技術革新」もオープンされた。ただし日本語版はフルコンテンツではなく、日本語に翻訳されたコンテンツだけを掲載した簡易版となっているので、本格的にコンテンツを閲覧したい読者には、英語版をおすすめする。

 記念サイト「Intel Celebrates 50 Years of Innovation」は報道機関向けの「プレスキット(Press Kit)」の形式を採っているものの、誰でも閲覧できる。記念サイトのトップページは、創業50周年に関連してIntelが作成した「50周年記念コンテンツ」の目次となっている。6月3日の時点では、以下のようなコンテンツが掲載されていることを確認した。

  • 序文
  • 50周年を祝う動画(動画投稿サイト「YouTube」にアップロードされたもの)
  • 50周年記念行事に関連したニュースリリースのヘッドライン
  • 創業以降の歴史を語るストーリーのヘッドライン(Intel at 50 Story Series)
  • 創業以降の歴史を彩る記念的な画像集(Histric Photos)
  • Intelの社員が自分とIntelの関わりをコメントするコンテンツのヘッドライン(People of Intel)
  • PCの技術革新をまとめた1枚の画像(A History of PC Innovation)
  • 最新の半導体工場の生産ラインを紹介する動画と画像(Manufacturing)
PCの技術革新をまとめた画像(「A History of PC Innovation」)。日本語版のプレスキットから抜粋したもの

1,500機を超えるドローンを飛ばす「光の祭典」を開催へ

 50周年記念の祝賀事業としては、1,500機を超えるドローンを編隊で飛行させる光のショーを開催することを4月30日に発表済みである。

 Intelは「Shooting Star」と呼ぶフルカラーLED(発光ダイオード)内蔵のクアッドコプターを開発している。韓国で開催された平昌冬季オリンピックの開会式(2018年2月9日)では、1,218機と数多くの「Shooting Star」を編隊飛行させて光の点滅によるショーをデモンストレーションした。なおIntelによると、このイベントで編隊飛行させたドローンの機数は、ドローンの編隊飛行としては世界最多だという。

 そして50周年の祝賀事業として、さらに数多くの1,500機を超えるLED内蔵ドローンを編隊飛行させて光のショーを開催することを計画中である。開催期日は今年の夏で、Intelの従業員とその家族がショーの会場に招待される。

平昌冬季オリンピックの開会式で披露された、Intelのドローン「Shooting Star」の編隊飛行による光の祭典
IntelのLED内蔵ドローン「Shooting Star」の外観。底面に発光部と投影用レンズを備えているようだ
ドローン「Shooting Star」のおもな仕様

創業以降の多彩なエピソードで半世紀の歴史を振り返る

 記念サイト「Intel Celebrates 50 Years of Innovation」でもっとも注目すべきコンテンツは、「Intel at 50 Story Series」と名づけられた、Intelの創業以来のさまざまな出来事を振り返るショートストーリーだろう。半世紀の歴史を彩る数多くのエピソードを、今年いっぱいをかけて増やしていくようだ。

 6月3日現在、このコーナーには以下のようなタイトルで合計9本のショートストーリーが掲載されている。年代としては1965年から1980年ころまでをカバーする。掲載日順に、タイトルをご紹介しよう。

  • ムーアの法則(5月14日付けで掲載)
  • Intel初の製品、スタチックメモリ(SRAM)「3101」(5月14日付けで掲載)
  • 初めてMOS技術で大量生産するとともに、初めてシリコンゲートを採用したメモリ(SRAM)「1101」(5月17日付けで掲載)
  • マレーシアのペナン工場(組み立て工場)における火災と復旧(5月22日付けで掲載)
  • 紫外線消去型EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)(5月22日付けで掲載)
  • バニースーツ(クリーンルーム用無塵作業服)(5月24日付けで掲載)
  • 「8080」マイクロプロセッサ(5月24日付けで掲載)
  • 「MCS-48」ファミリ(5月29日付けで掲載)
  • 「8086」と「Operation Crush(粉砕作戦)」(5月31日付けで掲載)
50周年記念コンテンツ「Intel at 50 Story Series」に掲載済みのテーマを年代順に配列したもの(2018年6月3日現在)
初めてMOS技術で大量生産するとともに、初めてシリコンゲートを採用したメモリ(SRAM)「1101」の外観。セラミックのDIP(Dual In-line Package)にシリコンダイを封止した
「1101」のシリコンダイ写真。記憶容量は256bit
紫外線消去型EPROM「1702」の外観。シリコンダイの表面に紫外線を照射できるように、パッケージの中央に石英ガラスをはめ込んでいる
紫外線消去型EPROM「1702」のシリコンダイ写真。記憶容量は2,048bit(2Kbit)
「8080」マイクロプロセッサのシリコンダイ写真。初めての本格的な8bitマイクロプロセッサとして、PCの黎明期をもたらした

 これらのタイトルを一見して興味深いのは、世界初のマイクロプロセッサ「4004」の発明(1971年)と、世界初のダイナミックメモリ(DRAM)「1103」の開発(1970年)を省いていることだ。今のところ、おおむね年代順にエピソードを掲載しているだけに、これらの偉業を扱っていないことは気になる。

 もっとも「4004」の発明に関してはIntelはこれまでに何度も公式サイトで取り上げてきた。いまさら、とでも言うべきテーマなのかもしれない。一方、DRAMを扱っていない理由は、判然としない。ひょっとしたら今後、DRAMを扱うストーリーが掲載されるのかもしれない。

 また全体の本数が何本になるのかは、Webサイトには明記されていないようだ。「Intel at 50」というタグ名からは、掲載されるストーリーの数は合計で「50本」になりそうな雰囲気が感じられる。

創業以降の歴史をたどる写真集「Histric Photos」

 続いて「創業以降の歴史を彩る記念的な写真集(Histric Photos)」の概要をご紹介しよう。

トップページの「Histric Photos」。スライドショー形式で写真を閲覧できる

 最初にご紹介するのは、1970年の写真である。Intelが初めての自社ビルを米国カリフォルニア州サンタクララに着工したときの式典で撮影されたものだ。1970年4月21日のことである。Intelは、1968年7月の創業時点ではサンタクララにほど近い、マウンテンビューにリースで本社の建物を借りていた。そして現在も本社のあるサンタクララに自社ビル(SC1)を建て、本社を移転した。なおSC1はすぐに手狭になり、Intelは自社ビルの第2棟(SC2)を建てて本社オフィスを拡張している。

初めての自社ビル(SC1)をサンタクララに着工したときの式典。鍬入れをしているのがRobert Noyce氏、その右にGordon Moore氏が写っている。1970年4月21日に撮影されたもの
カリフォルニア州サンタクララの本社ビル(SC1)。1970年代初期に撮影されたもの。左側の駐車場に止まっているクルマの列が時代を感じさせる

 続いて、Intelの1970年代における「悪夢」とも言える工場火災の写真を紹介する。Intelは1972年に初めての海外工場をマレーシアのペナン州に設けた。パッケージの組み立て工程を担当する工場である。1970年代の初期には、約1,000名の従業員がこの工場に勤務していた。

 この工場に火災が発生したのは、1975年5月1日の午前9時過ぎだとされる。照明の電気系統で漏電が発生したことが、火災の原因らしい。炎はまたたく間に工場全体に広がった。火災が発生してわずか1時間足らずで、残っているのはカフェテリアだけという惨憺たる状態になったという。ただし幸いなことに、火災によるケガ人や死者などは出なかった。

 また復旧はすばやかった。工場マネージャーを中心とする復旧チームの不休に近い働きによって、1976年の初めには、生産を再開することができた。火災が発生してから工場の再開まで、1年とかからなかったことになる。

Intelにとって初めての海外工場であるマレーシアのペナン工場で発生した火災の様子

 このコーナーから最後にご紹介するのは、Intelのマイクロプロセッサ「Pentium(ペンティアム)」の写真である。1992年にIntelが発表した「Pentium」プロセッサの名称は、Intel社内で名称に関するコンテストを実施した結果、生まれた。なお、「80586」という俗称(「80486」の次世代のプロセッサだったので)はすぐさま、却下された。

 「Pentium」は、ギリシア語で「5」を意味する「penta」に由来しており、Intelの第5世代マイクロプロセッサという意味も込められた。外部のブランディング企業が「penta」から、「Pentium」というブランド名を作り出した。そしてコンテストでは類似の名称を提案した18名の従業員に、賞金200ドルが贈られた。

Pentiumプロセッサの外観
Pentiumプロセッサの宣伝ポスター

Intel社員が自分とIntelの関わりをコメント

 このほか興味深いのは、「People of Intel」というコーナーだろう。ここには2つのコンテンツがある1つは「Intel Timeline」と呼ぶ、Intelの歴史を概観できるコンテンツである。スクロール形式で写真を閲覧するコンテンツで、上が創業期、下が現在という時系列となっている。

「Intel Timeline」のトップ画像。左下にRobert Noyce氏、左上にGordon Moore氏が写っている

 興味深いのはもう1つのコンテンツ「My Intel Story(私とインテル)」である。Intel現社員と元社員が、Intelと自分の関わりについてコメントしているようだ。試しに数えたところ、合計で170名近い現社員や元社員などのコメントが収録されていることがわかった。

 もう少し詳しくこのコンテンツを調べたところ、「3つの設問のなかで1つを選んで回答した内容」を投稿するサイトであることがわかった。投稿は基本的に誰でもできるが、投稿した内容をIntelが編集・転載することや報道機関が利用することなどを認めなければならない。

 投稿者の属性は4種類あり、「Intelの現社員」、「Intelの元社員」、「Intelの顧客」、「その他」のいずれかを選ぶ形式になっている。投稿内容はテキストと画像1点(JPEG形式あるいはPNG形式、最大サイズ6MB)である。

 3つの設問は、以下のようなもの((注)原文は英文であり、日本語化にあたっては意訳している)である。

  • あなたの生活や仕事、あるいは、あなたの属するコミュニティなどがIntelとの関わりによって良かったと思う出来事とはなんでしょうか。そしてどの度合いはどの程度でしょうか。
  • 過去50年間にIntelがこの世界に寄与したなかで、あなたがもっとも誇らしく感じることとは。そしてその理由とは。
  • 今から50年先を想像したときにあなたが考える、Intelがもたらすであろうもっともすばらしいイノベーションとはなんでしょうか。

 最初の設問は「現在」、次の設問は「過去」、最後の設問は「未来」に関するものだ。その答えを集めることで、Intelの過去、現在、未来を描き出そうという意図が、設問からは感じられる。

「My Intel Story」の投稿例。Intelの現社員が同社の空手クラブ(松濤館流空手)で初めて黒帯(初段)を取得した思い出を述べている

 Intelの50周年記念サイトでは、技術開発やビジネス、マーケティングなどのエピソードを追加していくとともに、現社員や元社員などによるメッセージの投稿が増えていくと思われる。今年はしばらくの間、同サイトの更新状況をウオッチしていきたい。