西川和久の不定期コラム

2万円ちょっとで買える、Intel N100搭載の薄型ミニPC

CHUWI HeroBox 2023

 CHUWIは8月22日、Intel N100を搭載しミニD-Sub15ピンにも対応した薄型ミニPC、HeroBox 2023の販売を開始した。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

同じN100を搭載したLarkBox Xとの違いは!?

 同社のIntel N100搭載ミニPCと言えば、少し前に「LarkBox X」をご紹介している。そして今回もN100搭載ミニPC。何が違うのかが気になるところ。

 HeroBox 2023とLarkBox X、主要部分で比較すると、メモリ8GB vs 12GB、ストレージ256GB vs 512GB、映像出力はHDMI/ミニD-Sub15ピン vs HDMI/DisplayPort/USBType-C、ネットワークはGbE vs 2.5GbE+GbE、サイズ187.6×138.3×37.3mm vs 173×158×73mm、価格 2万5,900円 vs 2万6,900円。HeroBox 2023は1,000円安いだけで、随分スペックダウンする印象だ。

 用途にもよるが、魅力があるとすれば薄型でミニD-Sub15ピンがあるところだろうか。正直個人的には2モデル存在する意味が? であるものの、何か同社の考え方があるのだろう。

 なお、このHeroBox 2023は2020年にGemini LakeのCeleron N4100/8GB/128GB/Windows 10を搭載して2万5,999円で販売されてたモデル「HeroBox」 の2023年版に相当する。このモデルはファンレスだったが。本機は残念ながらファンありとなる。主な仕様は以下の通り。

CHUWI「HeroBox 2023」の仕様
プロセッサIntel N100(4コア/4スレッド/クロック最大3.4GHz/キャッシュ 6MB/TDP 6W)
メモリ8GB(LPDDR5)
ストレージSSD 256GB+SATA 2.5インチSSD/HDD(空き)
OSWindows 11 Home(22H2)
グラフィックスIntel Core UHD Graphics(24units)/HDMI 2.0、ミニD-Sub15ピン
ネットワークGbE×1、Wi-Fi 6(11ax)、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 3.0 Type-C×1、USB 3.0 Type-A×2、USB2.0 Type-A×2、3.5mmジャック、microSDカードリーダ
サイズ/重量187.6×138.3×37.3mm(幅×奥行き×高さ)、505g
価格2万5,900円

 プロセッサはIntel N100。4コア4スレッド、クロックは最大3.4GHz、キャッシュは6MB、TDP 6W。第12世代のEコア(Efficientコア)だけで構成され、Skylake並のパフォーマンスがあり、しかも安いと最近人気のプロセッサだ。

 メモリはLPDDR5の8GB。オンボードなので増設はできない。ストレージはSSD 256GB。増設用としてSATA 2.5インチSSD/HDDをパネルの裏に一基搭載可能だ。OSはWindows 11 Home。22H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し、評価している。

 グラフィックスはIntel Core UHD Graphics(24EU)。映像出力用にHDMI 2.0とミニD-Sub15ピンを装備する。後者は今時としてちょっと珍しい。

 ネットワークはGbE×1、Wi-Fi 6(11ax)、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0 Type-C×1、USB 3.0 Type-A×2、USB 2.0 Type-A×2、3.5mmジャック、microSDカードリーダ。microSDカードリーダ対応はありがたいものの、3.5mmジャックが背面にあるのでイヤホンを使う時は少し不便かもしれない。

 サイズ187.6×138.3×37.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量505g。価格は2万5,900円。冒頭にも書いたが、同じN100搭載ミニPCであれば価格差を考えても筆者なら12GB/512GB/Type-C(DP Altモード対応)のLarkBox Xを選択する。

 旧モデルのようにファンレスなら、ある意味強力な理由になったのだが……。この辺りは各々の用途や考え方もあるだろうか。

前面。USB Type-C、USB Type-A×2、microSDカードリーダ、電源ボタン。かなり薄いのが分かる
背面。RESET、電源入力、ミニD-Sub15ピン、HDMI、GbE、USB Type-A×2、3.5mmジャック
裏面とiPhone 13 Pro。薄い分、フットプリントは広めだ
旧モデルとの2ショット。本機(左)とGemini Lake搭載の旧モデル(右)。アクセントカラーにオレンジを使っている以外、裏も含めほぼ同じ
付属品ACアダプタ(サイズ約70×42×30mm、重量139g、出力12V/3A)、VESAマウント用アタッチメント、各種ネジ
BIOS / Main。ちなみにBIOSは起動時に「F2」で入る
BIOS / Advanced
重量は実測で502g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。Type-Cからの映像出力がないので、Type-AとHDMIケーブル2本必要

 筐体はプラスチックなつや消し黒。高級感はないものの価格を考えると妥当なところか。少しWi-Fiルーターっぽい雰囲気だ。旧モデルとの2ショットからも分かるように、アクセントカラーもなくなり黒一色。重量は実測で502g。ACアダプタと合わせても650g未満、加えて薄いこともあり、カバンに入れ楽々持ち運ぶことも容易だ。

 前面はUSB Type-C、USB Type-A×2、microSDカードリーダ、電源ボタン。背面はRESET、電源入力、ミニD-Sub15ピン、HDMI、Ethernet、USB Type-A×2、3.5mmジャックを配置。裏は中央にVESAマウンタ用の凹み、4つのゴム足とその内側にネジが6つ(内1つはシールあり)。USB Type-Cは念のため、写真のキーボード付きモバイルモニターで確認したところ、仕様通り映像信号は出ていなかった。

 付属品はACアダプタ(サイズ約70×42×30mm、重量139g、出力12V/3A)、VESAマウント用アタッチメント、各種ネジ。Alder Lake-Nの特徴としてEコアベースなので消費電力が少なく、ACアダプタのサイズがコンパクトで済む。

 なおBIOS画面のは[DEL]でなく[F2]となっている。LarkBox Xでは、Windowsの設定からUEFIを呼び出すと言った少し変わった方法だったが、この辺り、少なくとも同一メーカー内で統一できないのだろうか。

 増設用SATA 2.5インチSSD/HDDへのアクセスは、ゴム足の内側にあるネジ6本ほ外せば可能だ。ただし、内1本の上にシールが貼ってあり、これを剥がすと保証対象外になるため自己責任で。このため今回は既にシールを剥がしてある旧モデルでの写真となっている。

旧モデル内部とパネル。ネジ1つにシールが貼ってあるため、同じ構造だと思われる旧モデル(シール処理済み)でパネルを外したところ。SATA 2.5インチSSD/HDDを一基増設できる

 ノイズは試用した範囲では特に気にならなかったが、発熱は通常用途でも筐体が結構熱を持つ。左側のスリットで吸気、右側のスリットで排気。LarkBox Xでは発熱もあまりなかったため、薄型にしている分、無理をしている部分なのだろう。

 このように筐体自体は薄型なので、発熱がLarkBox Xよりあるが、ほかの部分はうまくまとまっており、N100の魅力を十分引き出している(LarkBox Xが出来すぎという話もある)。

パフォーマンス自体はLarkBox Xと変わらずSkylake(Kaby Lake)並み!

 初期起動時のデスクトップはWindows標準のまま。後述するベンチマークテストの結果からも分かるようにSkylake並の速度なので、感覚的には少し古い第6~7世代のノートPCを触っているのと変わらない雰囲気だろうか。

 256GB SSDは「AirDisk 256GB SSD」。ベンチマークテストの結果を見ると、NVMeではないようだ。この点は安価なモデルだけに仕方ないところ。C:ドライブのみの1パーティションで約236GBが割り当てられ空き214GB。GbEはRealtek、WI-FiはIntel WI-Fi 6 AX101、BluetoothもIntel製だ。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11標準
デバイスマネージャ/主要なデバイス。256GB SSDは「AirDisk 256GB SSD」。GbEはRealtek、WI-FiはIntel WI-Fi 6 AX101、BluetoothもIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約236GBが割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。

 同じN100搭載のLarkBox Xと比較してみたが、多少の凸凹はあるものの、見事なほど同じ。つまりSkylake(Kaby Lake)並のパフォーマンスを叩き出す。この価格でこのパフォーマンスなら文句なしだろう。参考までにGoogle Octane 2.0のスコアは47,010。サイトを徘徊するにしても十分なスコアだ。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2636
PCMark 10 Score3,065
Essentials7,090
App Start-up Score8,980
Video Conferencing Score5,988
Web Browsing Score6,630
Productivity4,423
Spreadsheets Score4,297
Writing Score4,554
Digital Content Creation2,494
Photo Editing Score2,965
Rendering and Visualization Score1,599
Video Editting Score3,275
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.03,124
Creative Accelarated 3.0N/A
Work Accelarated 2.02,551
Storage4,925
3DMark v2.27.8160
Time Spy375
Fire Strike Ultra285
Fire Strike Extreme554
Fire Strike1,158
Sky Diver4,173
Cloud Gate7,147
Ice Storm Extreme33,557
Ice Storm47,265
Cinebench R23
CPU2,879(12位)
CPU(Single Core)925(9位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード562.228 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト520.154 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード228.554 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト276.579 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード228.386 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト243.685 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード21.499 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト72.641 MB/s

 以上のようにCHUWI「HeroBox 2023」は、N100/8GB/256GBを搭載したミニPCだ。価格も約2.5万円と、完全に衝動買いできる範囲。「気付いたらポッチってた」読者の方も多いのではないだろうか。

 ただ、同じプロセッサを搭載したLarkBox Xより気持ち安価なだけで、メモリとストレージの容量が減り、メリットと言えば、薄型とミニD-Sub15ピンがあること。ここをどう評価するかで本機の見方が別れそうだ。