西川和久の不定期コラム

USB4が2つもあるRyzen 7搭載ミニPC!Beelink「SER7」

Beelink「SER7」

 Beelinkは8月23日から9月6日まで、Ryzen 7搭載ミニPCのSER7をプリセール中だ。一足早く実機を触る機会に恵まれたので試用レポートをお届けしたい。

Ryzen 7 7840HS搭載でUSB4が2つ!

 ここのところCHUWIやMINISFORUMばかり続いたが久々にBeelinkの登場だ。去年(2022年)の11月Beelink「GTR6 6900HX」以来となるだろうか。

 同社ミニPCのラインナップ的には、「GTR」、「SEI」、「SER」、「EQ」と4つに分かれており、ざっくりGTRがハイエンド、SEIとSERはミドルレンジ、末尾IがIntelプロセッサ、末尾RがRyzenプロセッサ搭載機。EQはローエンドとなる。

 今回ご紹介するSER7は、SER5 PRO 5700U、SER5 MAX 5800H、SER6 Max 7735HS、SER6 Max 6900HX、SER5 5560U、SER7 7840HSとSERモデル6つの中では最上位となる。特徴としては少し変わった電源コネクタ、USB4が2つ……と言ったところか。主な仕様は以下の通り。

Beelink「SER7」の仕様
プロセッサRyzen 7 7840HS(8コア/16スレッド/クロック最大3.8GHz(ブーストクロック最大5.1GHz)/キャッシュ 512KB(L1)、8MB(L2)、16MB(L3)/TDP 35-54W)
メモリ16GB✕2(DDR5-5600)、SO-DIMM✕2、最大64GB
ストレージM.2 2280 1TB✕1(空き1)
OSWindows 11 Pro(22H2)
グラフィックスRadeon 780M(12コア)/USB4×2、HDMI 2.1、DisplayPort
ネットワーク2.5GbE✕1、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB4×2、USB 3.2 Type-C、USB 3.1、USB 2.0×2、3.5mmジャック
サイズ/重量126×113×49.3mm、実測で649g
価格729.00ドル(120ドルオフクーポンあり)

 プロセッサはRyzen 7 7840HS。8コア16スレッド、クロックは3.8GHzから最大5.1GHz。キャッシュは512KB(L1)、8MB(L2)、16MB(L3)、TDPは35-54W。4nmプロセスで製造され、今年4月30日リリースと、比較的新しいSKUとなる。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 780M(12コア)。外部出力用にUSB4×2、HDMI 2.1、DisplayPortと4つものポートを備える。

 メモリは16GB✕2の32GB。DDR5-5600 SO-DIMM✕2で最大64GBまで対応する。ストレージはM.2 2280 1TBを1基。もう1基内蔵可能だ。OSはWindows 11 Pro。22H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価している。

 ネットワークは、2.5GbE✕1、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。その他のインターフェイスはUSB4×2、USB 3.2 Type-C、USB 3.1、USB 2.0×2、3.5mmジャック。先にも書いたがこのクラスでUSB4×2は結構珍しい。また写真を掲載したように、マグネット式の電源コネクタを採用している。

 サイズは126×113×49.3mm(幅✕奥行き✕高さ)、重量は実測で649g。カラーバリエーションはGreen、Obsidian Black、Orange、Space Greyの4種類だが、現在購入可能なのは、GreenとSpace Greyになっている。

 価格は729ドル。円安なので約10万円。120ドルオフクーポンがあるので、実質9万円ちょっと…と言ったところか。しかしこの構成でこの価格なら納得感があるのではないだろうか。

前面。リセット、3.5mmジャック、Type-C、Type-A、電源ボタン
背面は2.5Gigabit Ethernet、USB 2.0✕2、DisplayPort、USB4×2、HDMI、3.5mmジャック、電源コネクタ用の凹み
裏面とiPhone 13 Pro。左右に長いゴム足。4隅にネジ。上の黒い部分が電源コネクタ(キャップあり)
電源コネクタ(アップ)。黒いキャップを外し、このコネクタを挿す。Magnetic Power Supplyなので、結構がっちり止まり簡単には外れない。キャップをなくしそうなのが心配か
付属品。ACアダプタ(サイズ約70✕70✕30mm、重量273g、出力19V/5.26A)、HDMIケーブル2本、VESAマウンタ用金具、ネジ
BIOS / Main。[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で649g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4なのでType-Cケーブル1本で接続できる

 手元に届いたのはSpace Grey。筐体は金属製で質感もよく、割とずっしりしている。重量は実測で649g。とは言え、ACアダプタと合わせても1kgを切るので持ち運びは容易だ。

 前面はリセット、3.5mmジャック、USB 3.2 Type-C、USB 3.1、電源ボタン。背面は2.5Gigabit Ethernet、USB 2.0✕2、DisplayPort、USB4×2、HDMI、3.5mmジャックを配置。裏の写真からも分かるように、電源コネクタがマグネット式で裏から止める関係で、その分、リアにスペースが空き、多くのコネクタが搭載可能になっている。

 裏は電源コネクタ、左右に1本バーのゴム足、四隅にネジ。電源コネクタは本体未使用時、ゴム製のキャップが付いているが、使用時は外し、電源コネクタを接続する。背面にスペースができ、いいアイディアなのだが、このキャップはなくしそうでちょっと不安だったりする。

 付属品はACアダプタ(サイズ約70×70×30mm、重量273g、出力19V/5.26A)、HDMIケーブル2本、VESAマウンタ用金具、ネジ。BIOSは[DEL]キーで表示する。

 内部へのアクセスは、四隅のネジを外すだけと簡単だ。開けるとM.2 2280 SSDを1基搭載可能になっている。同社の製品ページによると、このファンのある黒いパネルを外すとM.2 2280 SSDとメモリがある。

 さらにネジ4つ外すと一応見れるのだが、予想通り電源コネクタのケーブルなどが付いており完全に外すのは少し厄介そうだったので、写真のような状態までとした。

裏パネルを外したところ。ネジ4本外すと簡単に内部にアクセスできる
内部アップ。M.2 2280を1つ装着可能
ファンのある黒いパネルを開けたところ。上にメモリスロット、下にM.2 2280 SSDが見える

 ノイズと発熱については、試用した範囲では特に気にならなかった。高性能の冷却システムを搭載しているのだろう。

 同社のミニPCは、いつも思うのだが、数あるミニPCの中でも完成度が高い。冒頭に書いたように久々なのだが、余計にそう思ってしまった。

ミニPCとしてはトップクラスのパフォーマンス!

 初期起動時のデスクトップはWindows 11標準。構成が構成なだけに何をしても非常に快適だ。一般的な用途であれば、もはや大きいデスクトップPCは不要ではと思えるほどだ。

ストレージは1TB M.2 2280 SSDのCrucial「CT1000P3PSSD8」。仕様によるとシーケンシャルリード5,000MB/s、シーケンシャルライト 3,600MB/s。CrystalDiskMarkの結果もそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられ空き886GB。さすがにこれだけ空きがあると、何をするにしても安心だ。

 2.5Gigabit Ethernetは「Intel Ethernet Controller I225-V」、Wi-Fiは「Intel Wi-Fi 6 AX200」、BluetoothもIntel製と、全てIntelになっている。これならWindows以外のOSで使うときも問題ないだろう。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11標準
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージは1TB M.2 2280 SSDのCrucial「CT1000P3PSSD8」。2.5GbEは「Intel Ethernet Controller I225-V」、Wi-Fiは「Intel Wi-Fi 6 AX200」、BluetoothもIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約930GBが割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。

 冒頭で少し触れたRyzen 9 6900HX搭載の「GTR6 6900HX」とスコアを比較したところ、同等かそれ以上。特に3DMarkは結構な差だ。

 プロセッサの世代が違うと、古いRyzen 9より新しいRyzen 7の方が速いという結果となった。当時でもかなり速いと評価しているが、本機はそれを上回るパフォーマンスを叩き出す。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2636
PCMark 10 Score7,281
Essentials10,903
App Start-up Score15,083
Video Conferencing Score8,549
Web Browsing Score10,054
Productivity10,380
Spreadsheets Score13,218
Writing Score8,152
Digital Content Creation9,256
Photo Editing Score13,132
Rendering and Visualization Score9,790
Video Editting Score6,170
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.05,543
Creative Accelarated 3.0N/A
Work Accelarated 2.05,615
Storage5,069
3DMark v2.27.8160
Time Spy3,256
Fire Strike Ultra2,199
Fire Strike Extreme3,850
Fire Strike7,434
Sky Diver26,765
Cloud Gate39,075
Ice Storm Extreme147,344
Ice Storm205,040
Cinebench R23
CPU15,275(4位)
CPU(Single Core)1,787(1位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード5174.829 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト3613.213 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1432.590 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト2626.928 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード685.652 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト393.683 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード47.014 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト116.527 MB/s

 以上のようにBeelink「SER7」は、Ryzen 7 7840HS/32GB/1TBを搭載したミニPCだ。ベンチマークテストの結果からも分かるように、このクラスとしてはかなりのハイパフォーマンスを叩き出す。加えて少し変わった電源コネクタやUSB4が2つなど、他社には見られない特徴も備える。

 円安が進んでおり、729ドルだとほぼ10万円となってしまうのは残念だが、それでもこれだけの構成であればある意味安い。欠点らしい欠点もなく、RyzenなミニPCでハイパワー、大容量を求めているユーザーにお勧めしたい逸品と言えよう。