西川和久の不定期コラム

Core i5-7200Uと同レベルの性能!? N100搭載ミニPC!「CHUWI LarkBox X」

LarkBox X

 CHUWIは5月末、Intel Processor N100を搭載したミニPC、「LarkBox X」の販売予告をサイトに掲載。価格は何と2万6,900円! 一足早く試作機を触る機会に恵まれたので試用レポートをお届けしたい。

N100/12GB/512GBが2万6,900円のミニPC!

 既にAlder Lake-Nについていろいろ情報は出ているが、ざっくり第12世代から採用されたPコア(Performanceコア)/Eコア(Efficientコア)のEコアだけで構成したプロセッサとなる。このEコアは電力効率をあげるためのものだが、単体でもSkylakeと同じレベルのパフォーマンスと言われている。

 後半のベンチマークテストでは一部、昔の記事から(さらに1世代新しいKaby Lakeだが)Core i5-7200Uのスコアを引っ張り出しているので参考にしてほしい。結論から先に書けば、本当に同レベルだったので少し驚いている。

 さて今回ご紹介するCHUWI「LarkBox X」は、そのN100を搭載したミニPCで価格は2万6,900円。140円換算で2万7,860円という激安PCだ。これでSkylake並みのパフォーマンスなら何も文句はない(手元にはThinkPadも含めこの世代のものが何台もある)。主な仕様は以下の通り。

CHUWI「LarkBox X」の仕様
プロセッサIntel Processor N100(4コア/4スレッド/クロック最大3.4GHz/キャッシュ 6MB/TDP 6W)
メモリ12GB(LPDDR5オンボード/増設不可)
ストレージ512GB PCIE SSD
OSWindows 11 Home(22H2)
グラフィックスIntel Core UHD Graphics(24units)/HDMI×1(4K@60Hz)、DisplayPort×1(4K@60Hz)、Type-C(4K@60Hz)×1
ネットワーク2.5GbE、GbE、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(DP Altモード対応/PD非対応)、USB 3.0×4、音声入出力
サイズ/重量173×158×73mm(幅×奥行き×高さ/ACアダプタ含まず)/460g
価格2万6,900円

 プロセッサはIntel Processor N100。先に書いた通りAlder Lake-Nとなる。いくつかSKUがあり、性能的には真ん中辺りだろうか。4コア/4スレッド、クロックは最大3.4GHz。キャッシュは6MB、TDPは6W。

 メモリはLPDDR5で12GB。オンボードで増設できないのは少し痛いものの、8GBを越えているので、通常用途であれば特に困ることはないだろう。SSDは512GB SSD。M.2タイプだ。内部はそれなりに空間があるのだが、さらにM.2や2.5インチHDD/SSDをマウントできる構造にはなっていない。

 OSはWindows 11 Home。22H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し評価している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel Core UHD Graphics(24EU)。外部出力用としてHDMI×1(4K@60Hz)、DisplayPort×1(4K@60Hz)、Type-C(4K@60Hz)×1の3ポート。もちろん同時出力可能だ。

 ネットワークは2.5GbE、GbE、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1 Type-C(DP Altモード対応/PD非対応)、USB 3.0×4、音声入出力。価格の割に、先の画面出力、2.5GbE、Wi-Fi 6など、結構頑張った構成になっているのは嬉しい限り。

 サイズ173×158×73mm(ACアダプタ含まず)、重量460g。以下に写真を掲載しているがACアダプタもかなり小さい。そして何度も書いているが価格は2万6,900円。Windowsのライセンス費、部品代など全て引いて、同社の儲けはあるのか心配になる。

前面。USB Type-A×2、USB Type-C、3.5mmジャック、電源ボタン
背面。電源入力、2.5Gigabit Ethernet、Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI、Type-A×2
裏面とiPhone 13 Pro。コンパクトなのが分かる。四隅のゴム足(中にネジ)
ACアダプタのサイズは約70×40×30mm、重量141g、出力12V/3A。HDMIケーブルなどの付属品はない
内部とパネル。四隅のネジを外すと簡単に内部へアクセスできる
内部(アップ)。メモリはオンボードなので増設できない。M.2 SSDが1つ。交換するならここだろうか
BIOS / Main。BIOSは通常の起動時[DELや[ESC]キーでは呼び出せない。詳細は本文に
BIOS / Securty
重量は実測で381g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。前面にあるType-CからType-C/Type-Cケーブル1本で接続OK

 筐体はオールプラスティック。上半分が白、下半分が黒。そして重量が381g。質感、持ち上げた時の重量ともに、おもちゃのようで「本当に動くのか?」と思ってしまうほど。少しチープさはあるものの、そこは据え置きタイプなので特に問題ないだろう。ACアダプタと合わせてもたった522g。鞄に入れて持ち運ぶのもOKだ。

 前面にUSB Type-A×2、USB Type-C、3.5mmジャック、電源ボタン。背面に電源入力、2.5Gigabit Ethernet、Gigabit Ethernet、DisplayPort、HDMI、USB Type-A×2を配置。上には通気用のメッシュ、下は四隅にゴム足とその中にネジがある。

 内部へのアクセスはこのネジ4つを外せば簡単にパネルが開く。ただメモリは固定で増設できないこともあり、SSDの交換程度となる。またこのタイプでよくある2.5インチSSD/HDDのマウンタなどはない。スペースがある割に……だが、この辺りはコストダウンが若干影響しているかもしれない。

 付属のACアダプタはサイズ約70×40×30mm、重量141g、出力12V/3A。ノートPCも含めPC用としては小型だ。出力もたった36W。ここはEコアベースのAlder Lake-Nならではと言ったところか。またほかのミニPCでよくあるHDMIケーブルなどは付属しない。

 さてBIOS画面の呼び出してあるが、通常の起動時[DEL]/[ESC]キーでは呼び出せない。手順は、Windows起動後、設定→システム→回復→今直ぐ再起動、再起動しブルーバックの画面に変わり、トラブルシューティング→詳細オプション→UEFIファームウェアの設定→再起動でやっとBIOSの画面となる。ほかのOSへ入れ替えない限りBIOSを触ることもないとは思うものの、個人的には少し残念な部分だ。

 ノイズや発熱は小さいファンがあるにはあるが、ベンチマークテストなどの高負荷時に耳を近づけても音もしなければ熱もほぼ出ていない。ここもEコアベースの強みだろうか。

 このように質感こそ少しおもちゃっぽいものの、内容はれっきとしたPCでノイズも発熱もほぼないよくできたマシンとなっている。

本当にSkylake/第6世代のパフォーマンスが出るAlder Lake-N

 初期起動時、アプリの追加、壁紙の変更などはなくWidnows 11標準のまま。動きも手元にあるThinkPad@i5-7300Uとあまり変わらない感じだ。これなら普通の用途であれば問題なくこなせるだろう。参考までにGoogle Octane@Edgeは42,120。このクラスでこれとは逆に驚くスコアとなる。

 ストレージは512GB SSDの「AirDisk 512GB」。詳細は不明だがシーケンシャルリード
/ライトともに500MB/sなので速くはない。個人的にはここだけ乗せ替えて使いたいところ。C:ドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられ空き443GB。

 2.5GbEはRealtek Gaming 2.5GbE、GbEも同じくRealtek。Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX101、BluetoothもIntel製だ。

初期起動時のデスクトップ。アプリの追加、壁紙の変更などはなくWidnows 11標準のまま
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージは512GB SSDの「AirDisk 512GB」。2.5GbEはRealtek Gaming 2.5GbE、GbEも同じくRealtek。Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX101、BluetoothもIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMarkを使用した。また古い原稿からEコアと同等とされるSkylake(Kaby Lakeだが)、Intel Core i5-7200U(2コア4スレッド、クロック 2.5GHz/3.1GHz、キャッシュ 3MB、TDP 15W)搭載ASUS「ZenBook UX310UQ」のベンチマーク結果を引っ張り出し、PCMark 8と3DMarkのみ該当部分へ併記した。

 ベンチマーソフトのバージョンも異なるためあくまでも参考値として見てほしいが、確かにほぼ同じだ。7年違うとこうなるのか……というところ。バッテリ駆動も長持ちしそうなので、パネル、キーボード、外観などはミドル~ハイエンド並で中はN100というノートPCが欲しいものの、儲からないので大手はやらなそうだ……。

PCMark 10 v2.1.2600
PCMark 10 Score3,077
Essentials7,026
App Start-up Score8,725
Video Conferencing Score5,940
Web Browsing Score6,693
Productivity4,515
Spreadsheets Score4,276
Writing Score4,768
Digital Content Creation2,494
Photo Editing Score2,960
Rendering and Visualization Score1,606
Video Editting Score3,264
PCMark 8 v2.8.704
機種LarkBox XZenBook UX310UQ
Home Accelarated 3.03,1373,054
Creative Accelarated 3.0N/A未計測
Work Accelarated 2.02,553未計測
Storage4,908未計測
3DMark v2.26.8098
機種LarkBox XZenBook UX310UQ
Time Spy374未計測
Fire Strike Ultra285未計測
Fire Strike Extreme554未計測
Fire Strike1,1581,395
Sky Diver4,2155,333
Cloud Gate7,3986,482
Ice Storm Extreme37,289未計測
Ice Storm56,55951,840
Cinebench R23
CPU2,976
CPU(Single Core)920
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード562.131 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト519.648 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード362.645 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト283.582 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード299.516 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト245.700 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード24.013 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト84.953 MB/s

 以上のようにCHUWI「LarkBox X」は、Intel Processor N100/12GB/512GBを搭載したミニPCだ。価格はOS込みでたった2万6,900円。これで昔のAtomのように遅いならそれはそれなのだが、パフォーマンスは噂通りSkylakeの(Kaby Lakeだが)Core i5-7200Uと同レベル。文句の付けようのない内容となっている。

 この原稿を読んで「お!」っと思った方や、Alder Lake-Nって結局どうなの!? と思っている方に是非使ってほしい1台だ。