西川和久の不定期コラム

ついに登場したUniversal Control!キーボード、マウス、トラックパッドをMacやiPadで共有可能に

 macOS Montereyの発表時、いろいろな機能が紹介されたが、その中で筆者が興味を持ったの「Universal Control」(ユニバーサルコントロール)だ。しかしリリース日の2021年10月26日時点では実装されず、首を長くして待っていたところ、2022年3月15日に搭載したmacOS 12.3がやっと公開された。短期間の試用であるがレポートをお届けしたい。

Universal Controlとは!?

 macOSとiPadOSの組み合わせで初めに思い浮かぶのはSidecarだろうか。簡単に言えばiPad(Pro)をモニター化する機能だ。ミラーリング/拡張、どちらにも対応している(ただし縦位置はなぜか非対応)。

 作動要件は同一Apple IDでiCloudにサインインしている必要があるものの、これは手元でApple製デバイスを使っているのであれば普通の状態。特に難しい要件ではない。一般的にワイヤレス接続での使用が多いと思われるがUSB接続でも作動する。iPad(Pro)を充電しつつであれば反応もよく、USB接続の方が有利だろう。

 さらにmacOS MontereyからiPadOSだけでなくほかのmacOSへも接続可能になり、例えばMac miniのセカンドモニターにMacBook Airのパネルを使うことも可能だ。この場合、当然、MacBook Air側のmacOSは操作できなくなるが、サーバー的には使えるので、sshで接続してコマンドラインレベルの処理などはできる。

 いずれにしても別途モニターを用意することなく、手元にあるiPad(Pro)やほかのMacをモニター替わりに使える機能だ。ただこれが主な用途になってしまうとただの高価なモニターになってしまうので要注意と言ったところか。

システム環境設定 > ディスプレイ > ディスプレイを追加 > ミラーリングまたは拡張
拡張で画面全体をキャプチャ。 iPad Pro側がセカンドモニタへ

 対してUniversal Controlは、キーボード、マウス、トラックパッドを共有する機能だ。作動要件は先のSidecarと同じだが、macOS 12.3以上、iPadOS 15.4以上となる(iOSは未対応)。また共有だけでなく、テキストのコピペはもちろん、ファイルのドラッグ&ドロップにも対応しており、より有機的にそれぞれのデバイスを結びつけることも可能だ。

 Sidecarの場合はモニターが増えるだけなので、作動するアプリはmacOS用となるが、Universal Controlの場合は、macOSかiPadOSかそのデバイス用アプリを使うことになる。これはある意味重要で、SidecarはiPad(Pro)を外すとそれまで動いていたアプリは(macOS用なので)消え、iPadOSの世界になるが、Universal Controlの場合は、外しても全く同じアプリが残ったまま。単独で持ち出しても同じ状態で処理を継続できる。

 設定などは後述するが、仕掛け的にはサーバーとクライアントの区別はなく、例えばMac miniで設定すると、接続したMacBook 12でも同じ設定が自動的に行なわれ、双方のキーボードやマウスが使用できる。

設定

 設定自体は簡単だ。iPadOS側は、設定 > 一般 > AirPlayとHandoff > Handoffとカーソルとキーボードをオンへ。macOS側は、システム環境設定 > ディスプレイにユニバーサルコントロールが追加されており、初期状態では全てのチェックがオフになっているのでオンにする。

 あとは、ディスプレイを追加を見ると、“キーボードとマウスをリンク”と“ミラーリングまたは拡張”と2グループに別れているので、前者の中から接続するデバイスを選ぶ。これで準備完了だ。後者は従来のSidecarなのだが、Sidecarという表記はなくなっている。

iPadOS側は設定 > 一般 > AirPlayとHandoff > HandoffとカーソルとキーボードをONへ
システム環境設定 > ディスプレイ > ユニバーサルコントロール
システム環境設定 > ディスプレイ > ディスプレイを追加
MacBook 12のキーボードとトラックパッドがiPad Proでも使えるように
メニューバーでもON/OFFできる

 接続するデバイスを選ぶと、メインモニターの絵の横に、そのデバイスの画面が出るので、上下左右、位置に合わせてドラッグ&ドロップで配置(左右の場合は位置を自動認識するようだが、上下は手での調整が必要となる)。これで物理的なレイアウトにあったマウスポインタの移動が可能となる。

 試したところ、マウスポインタおよびキー入力もスムーズにでき、物理的にHIDを接続した状態と変わらない。またテキストのコピペや(アプリにもよるが)ファイルのドラッグ&ドロップもOK。なかなか魅力的な環境となる。

 ただ、たまにマウスポインタの動きがギクシャクすることがる。こんな時はいったん接続を切ったり、ユニバーサルコントロールのチェックをオフしてオンにするなどをすると直るのだが、これで戻るという確かな手順は現時点では分からない。ユニバーサルコントロールのパネルにある項目が[ベータ版]となっているのも、この辺りが関係してそうだ。

 接続しているデバイスがスリープや再起動、画面ロックした場合、復帰するには、まずログインパネルもしくは認証画面になるが、この時点で共有しているキーボードやマウスが使えるのでとくに問題ない。

 従って後述する、Mac miniへMacBook 12を接続し、MacBook 12のキーボードとトラックパッドをメインで使う時は、画面ロックの場合、いったんMac mini側のマウスか何かを触りログインパネルを表示(少し面倒だがこれをしないとログインパネルが出ない)、以降はパスワード入力も含めMacBook 12側のキーボードで操作できる。

 次にドラッグ&ドロップがどの程度できるか簡単に調べた結果は以下の通り。対象は主に画像ファイル。

アプリ名macOS→iPadOSiPadOS→macOS
写真アプリ
Googleフォト××
ファイル
Photoshop××
Safari(Facebook)×
Facebook××
メール(写真添付)×

 ×は、そもそも画像をドラッグできないもの、ドラッグはできるがドロップできないものとなる。

 予想はしていたが、やはり完全ではない。これはiPadOSアプリの対応が必要なので仕方ないところ。写真なら写真アプリへ、テキストなどそのほかの場合はファイルアプリを経由するのが無難だろう。テキストのコピペはmacOS→iPadOS、iPadOS→macOS共に問題なく可能。こちらはシームレスに作動する。

 一連の動きなどはWWDC 2021の映像にあるので興味のある方は合わせてご覧頂きたい。

WWDC 2021 ― June 7 | Apple(1時間23分辺りから)

いろいろ試してみた

 手元にあるMacとiPadで対応機種は、M1版Mac mini、MacBook Pro 16@2019、MacBook 12@2017、そしてM1版iPad Pro 12.9。残念ながらMacBook 13@2012やMac mini@2011ではmacOS Montereyが動かないので使用できない。iPad(Pro)もiPadOS 15.4対応機種が必要となる。

 まずは一番コンパクトなMacBook 12とiPad Pro 12.9の組み合わせ。横に並べると後者の方が画面が大きく、ちょっとアンバランスな感じとなる。iPad Pro側は横位置でも縦位置でも対応。Sidecarはなぜか横位置だけなので、縦位置が使えると、macOSと動くアプリが違うとは言え、それだけでも便利だ。

MacBook 12へiPad Pro 12.9を接続
縦位置でもOK

 次はMac miniへiPad Pro 12.9を接続。当初はモニターの右側で縦置きにしていたが、キーボードとの視線がズレ、入力しにくいため、メインモニターを少し上げて、iPad Proを下に横位置で置くようにレイアウトを変更した。これなら視線はズレないので入力もしやすくなる。この時、Dockが下にあると、マウスポインタが下へ移動する度に反応するので左へ位置を変更。現在、この状態が一番使いやすいのでそのまま運用中だ。

当初はメインモニタの右横へ縦位置で置いていたが、キーボードとの視線があわないので……
メインモニターを少し上げ、下に横位置で配置。これで操作しやすくなった

 話は少し逸れるが、筆者は同じ理由(視線がズレる)でマルチモニターが苦手。パネル同志をある程度くっつければそうでもないのだろうが、メインモニターに遮光フードがある関係でそうにも行かず。これまでは3面の仮想デスクトップを使用していた。1:メールやスケジュール、メッセンジャーなど業務系、2:開発系、3:執筆&画像系……といった感じだ。

 そこにこのUniversal Controlが加わったことにより、1:業務系がiPad Pro側に移った。つまり仮想デスクトップが2面に。とは言え、メールで長くてややこしいのを書く時は、Web版のGmailをMac側で開けてしまうのだが……。

 MacBook系はもともとトラックパッド搭載なので問題ないが、Mac miniなどデスクトップ系の場合、Magic Trackpadがあると、3本指で上にスワイプ=Mission Control的、左右にスワイプ=アプリケーション切り替えなど、3本指系のジェスチャがiPad Pro側でも使えて便利だ。これが理由で、Mac miniにはMagic Mouse 2のみ接続していたが、昔使っていた初代Magic TrackpadをChrome OS Flexから外して接続した(後でMagic Trackpad 2を購入予定。やはり新タイプの黒だろうか!?)。

3本指系のジェスチャがiPad Pro側でも使えるため、デスクトップ系にはMagic Trackpadがほしいところ
3本指で上にスワイプするとiPad Pro側はMission Control的な表示となる

 と、ここまで試して、そう言えばとiPad Pro 12.9を外しMacBook 12を接続、同じくモニターの下へ置いてみた(Mac mini側のキーボードとMagic Trackpadはいったん退避)。これだと動くアプリはmacOS用とMac miniと同じ、キーボードとトラックパッドはMacBook 12のを使うことになり、これはこれで便利(特に先に書いたトラックパッド)。

 ただMacBook 12のストロークが浅くペタペタしたキーボードがあまり好みではなく、たまにならいいが、メインで使うには難しく、元(iPad Pro)へ戻してしまった。サイズ的にはちょうどいいだけに残念。M1版のMacBook 13やAirならありではないだろうか。

MacBook 12をiPad Pro 12.9の替わりに置けば、Mac miniをMacBook 12のキーボードとトラックパッドで操作可能
システム環境設定 > ディスプレイ > ディスプレイを追加はこんな感じに

 最後は実用的とは言えないが、Mac miniへMacBook 12、iPad Pro 12.9、MacBook Pro 16全てを接続してみた。しかし、4つ目のMacBook Pro 16は接続できなかった。従って最大3つまでのようだ。この時、全キーボード、ラックパッドは、それぞれのデバイスで利用可能だ。

Mac miniへMacBook 12、iPad Pro 12.9、MacBook Pro 16と順に接続したところ、4つ目のMacBook Pro 16でエラーとなった。最大3つまで

 最後に余談になるが、iOS/iPhoneもUniversal Controlに対応すれば便利なのに……っと思った方も多いと思う。筆者も最初はそうだった。Apple的に対応しなかった理由はいろいろあるだろうが、1つは画面との距離だ。

 MacBookなどノートの場合は、画面の位置が比較的近いのでそこへiPhoneを並べても実用レベルだろうが、Mac miniやiMacなどデスクトップの場合は、画面から距離が離れている。そこへ同程度の距離でiPhoneを置いても文字が小さくて読みにくくなるのだ。個人差もあるだろうが、実際iPad Pro 12.9でも手元で使う時より文字を大きめに設定している(Safariで115~125%)。

 そこで次の手として考えられるのはGalaxyとWindowsの組み合わせで、スマホ同期アプリを使った時のようにmacOS上の画面へiOSの画面をマッピングする方法だ。ウィンドウサイズをある程度可変にしておけば文字サイズの問題もなくなり、macOS側のキーボード入力やマウスの操作などが使えるためwith Macの時は便利ではないだろうか。次のmacOS 13にこの機能が入るかどうかは、WWDC 2022のお楽しみと言ったところか(外れたらごめんなさい)。

 さらにこの手の機能はWindowsにも標準で欲しいところ(USB接続だが市販で「500-USB070」というのがあり、実際購入して使ってみたがイマイチだった)。ノートPC、デスクトップPC、タブレットなどの組み合わせが便利になるのでぜひMicrosoftにはお願いしたい。


 以上のようにUniversal Controlは、キーボード、マウス、トラックパッドをMacやiPad(Pro)で共有可能に加え、テキストのコピペはもちろん、限定的だがファイルのドラッグ&ドロップにも対応。最大3台を一塊のシステムのように使える便利な機能だ。対応しているMacとiPad(Pro)、もしくはもう1台Macがあれば試せるのでSidecarとはまた違った使い勝手を楽しんで欲しい。