西川和久の不定期コラム

16型16:10でテンキーレスなRyzen搭載ノートPC「Inspiron 16」

Inspiron 16

 Windowsの世界では15.6型以上のノートPCはテンキー付きが多い。筆者はテンキー不要派なのだが、対応モデルは数えるほどもない。そんな中、16型16:10でテンキーなし、しかもキーボードバックライトありと、ドストライクな製品となるデル「Inspiron 16」が登場したのでご紹介したい。

16型液晶とRyzen 7搭載で10万円を切るハイコストパフォーマンス機

 ノートPCには色々なサイズがあるものの、15.6型以上になると、どちらかと言えば持ち運び目的よりデスクトップPC代わりの用途が多いのではないだろうか。また、企業用途ではどうしても表計算ソフトでの作業が多くなる関係もあり、大型になるとテンキー付きのものが多く用いられる。

 筆者の場合、普段あまり電卓的な計算をしないのと、テンキーがあるとタッチパッドが画面の中央より左に寄ってしまい使いにくいため、あまり好きではない。

 逆に16型ノートでテンキーなしの場合にメリットがあるのはスピーカーの位置だ。通常だと本体の裏面だったり側面だったりに配置するが、テンキーレスの場合、キーボードの左右に余白ができ、その部分にスピーカーが入る。当然この位置だと間接音より直接音が主となるため、音もクリアになり、サウンド面で期待できる。

 一昨年(2020年)16型ノートを買うときに、Windowsマシンも含め何機種か候補になったが、結局MacBook Pro 16になったのもこれらが理由だ。光沢ありのパネルだけは妥協した。

 ただし大型ディスプレイ搭載ノートPCは、構成にもよるが、どうしても価格が高くなりがちだ。ところが今回ご紹介するInspiron 16は、下位のRyzen 5 5625U/メモリ8GB/SSD 256GB/Officeなしだと6万6,975円と、とんでもなくコストパフォーマンスが高いモデルとなる。なお、手元に届いたのは最上位のRyzen 7 5825U/メモリ16GB/SSD 512GB搭載モデルで、主な仕様は以下の通り。

【表】Inspiron 16の主な仕様
プロセッサRyzen 7 5825U(8コア16スレッド/2.0~4.5GHz/キャッシュ512KB、4MB、16MB/TDP 15W)
メモリ16GB/3,200MHz、8GB×2 DDR4 SDRAM(オンボード)
ストレージSSD 512GB(M.2 PCIe NVMe SSD)
OSWindows 11 Home
ディスプレイ16型1,920×1,200ドット、非光沢、輝度250cd/平方m
グラフィックスRadeon Graphics(8コア)
ネットワークWi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 3.1 Type-C(DisplayPort対応)、USB 3.0×2、HDMI 1.4、フルHD Webカメラ、SDカードスロット、バックライト付きキーボード、3.5mmジャック、指紋認証リーダー
バッテリ4セルバッテリ、54WHr
サイズ356.78×251.9×15.67~18.3mm(幅×奥行き×高さ)
重量1.87kg~
カラーバリエーションプラチナシルバー
その他Microsoft Office Home & Business 2021
価格9万1,615円(Officeなし)/11万1,096円(Officeあり)
※ともに23%オフクーポン適用時

 プロセッサはRyzen 7 5825U。Zen 3(Barcelo)で8コア16スレッド、クロックは2GHzから最大4.5GHz、キャッシュは512KB、4MB、16MB。TDPは15Wとなる。2022年1月リリースの最新のものだ。

 2021年9月にZen 3を搭載した「HP Pavilion Aero 13-be」をご紹介したが、こちらはRyzen 7 5800U(8コア16スレッド/1.9~4.3GHz/キャッシュ4MB、16MB/TDP 15W)で、同じZen 3でも1世代前のCezanneとなる。後半のベンチマークテストでスコアを併記したので参考にしてほしい。

 メモリは16GB/3,200MHz、8GB×2 DDR4 SDRAM(オンボード)、ストレージはSSD 512GB(M.2 PCIe NVMe SSD)。OSはWindows 11 Homeを搭載する。

 グラフィックスはCPU内蔵のRadeon Graphics(8コア)。外部出力用にHDMI 1.4とUSB Type-C(DisplayPort)を装備している。パネルは非光沢の16型1,920×1,200ドット(縦横比16:10)で、最大輝度は250cd/平方mとなる。

 ネットワークはWi-Fi 6、Bluetooth 5.2で、有線LANは非搭載。インターフェイスはUSB 3.1 Type-C、USB 3.0×2、フルHDカメラ、SDカードスロット、バックライト付きキーボード、3.5mmジャック、指紋認証リーダーを備える。

 容量54Whの4セルバッテリを内蔵し、サイズは356.78×251.9×15.67~18.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量1.87kgから。

パネル中央上にWebカメラ。フチは結構狭い
筐体のカラーはプラチナシルバー。メタリックでシンプルにまとまっている
左側面。電源コネクタ、HDMI、USB 3.0、USB 3.1 Type-C
右側面。3.5mmジャック、USB 3.0、SDカードスロット

 カラーバリエーションはプラチナシルバーと一部モデルでペブルグリーンを用意。Microsoft Office Home & Business 2021付きで価格は15万2,280円。ただし、執筆時点では23%オフクーポンがあり、適用すると販売価格11万1,096円と、構成を考えると激安になる。Officeなし版は9万1,615円とさらに安い。

 なお下位のRyzen 5 5625U/メモリ8GB/SSD 256GB/Officeなしが6万6,975円、中位のRyzen 7 5825U/メモリ8GB/SSD 512GB/Officeなしが8万4,685円と、ハイエンドなプロセッサを搭載しつつの16型としては破格値とも言える。

 参考までに同じ構成で14型のInspiron 14は、小型の分さらに安いのかと思い調べたところ、順に6万5,435円/8万3,145円/9万75円(ともにOfficeなし)と、いくらも変わらない。つまりパネルサイズで欲しい方を選べばよいことになる。

裏面。手前左右にゴム足。後ろはパネルの下部が足替わりになる
USB 3.0のコネクタからかなり薄いのが分かる。パネルの下が足替わりになり、キーボードが手前に傾く仕掛けになっている
重量は実測で1,822g
ACアダプタはサイズ約105×45×30mm(同)、重量240g、出力19.5V/3.34A/65W

 筐体のカラーはプラチナシルバー。ご覧のようにメタリックかつシンプルで、安っぽさもない。重量は実測で1,822g。16型として軽い方ではないだろうか。厚みもUSB 3.0のコネクタがギリギリ収まる程度と薄い。

 前面はパネル中央上にWebカメラを備え、フチは結構狭い。左側面に電源コネクタ、HDMI、USB 3.0、USB 3.1 Type-C。右側面に3.5mmジャック、USB 3.0、SDカードスロットを配置。付属のACアダプタはサイズ約105×45×30mm(同)、重量240g、出力19.5V/3.34A/65Wとなる。

 16型のディスプレイは、非光沢で目に優しく、コントラスト、発色、視野角も良好。輝度は最近のノートPCとしては低めだが、室内用途であれば十分明るい。また、アスペクト比も16:10と扱いやすい。

 i1 Display Proを使い特性を測定したところ、最大輝度は268cd/平方m。これからも分かるように、最大輝度はやはりあまり明るくない。写真を観るのに適していると言われる明るさ120cd/平方mだ。Windowsの輝度設定の最大値から輝度を-5した値が133cd/平方m、-6が104cd/平方mとなったため、前者の値で計測した。黒色輝度は0.097cd/平方m。リニアリティはこのクラスのノートPC用のパネルとしてはそろっているが、補正前は黄色が強かった。

測定結果1。白色点と黒色輝度
測定結果2。R・G・Bのリニアリティ

 キーボードはテンキーなしのJIS配列、そしてオフ+2段階のバックライト付きだ。主要キーのキーピッチは実測で約19mm。ただし、Enterキーが「む」キーと隣接していたり、電源ボタン兼指紋認証センサーの横にDelキーがあったりと少し残念な部分もある。

 後者に関しては電源ボタンは深く押し込む必要があるので、Delキーと間違ってちょっと押す程度では反応しない。従ってトラブルになることはなさそうだ。

 打鍵感は少し柔らかい感じだがクリック感もしっかりあり、ストロークも気持ち深めと、個人的には好みの範囲だ。加えて、少し手前に傾いているので入力しやすい。タッチパッドはボタンのないプレート式。16型なのでフットプリントも十分あり、パームレストも含め面積は広い。

キーボードはテンキーなしのJIS配列。左右にスピーカーを配置。タッチパッドはボタンのないプレート式
キーピッチは実測で約19mm。おおむね良好だがEnterキーが「む」キーと隣接していたり、電源ボタン兼指紋認証センサーの横にDelキーがあったりと少し残念な部分もある
キーボードバックライト。オフ+2段階の調整が可能

 Webカメラは軽く試したところ、フルHDということもあり解像感が高く、発色もなかなかよい。Web会議で十分役立ちそうだ。なお音声入力に関しては、デュアルマイクを内蔵し、AIによって背景のノイズを低減する機能がある。

 ノイズと発熱は試用した範囲では特に気にならなかった。ベンチマークテストなど負荷をかけたとき、主にキーボード左上のスペースが少し暖かくなる程度だった。

 サウンドは、キーボード左右にスピーカーがあるため、机など下の素材にまったく影響されず、耳に直接音が届く。かまぼこレンジでノートPCの音なのだが、最大時ではうるさいほどのパワーがあり、特別音質にこだわらなければ十分楽しめる。

 以上のように、気になるとすれば一部のキー配置が挙げられるが、ほかは非常に上手くまとめた1台に仕上がっている。加えて驚きの価格で、筆者もちょっと欲しかったりする。

Ryzen 7 5800Uと比較して若干の性能アップ

 初期起動時のデスクトップは壁紙のみの変更とシンプル。Ryzen 7/メモリ16GB/SSDなので、ストレスはまったくなく快適に操作可能だ。起動はデルのロゴが出るまで少しかかるものの、その後は速い。スリープから復帰は瞬時だ。

 ストレージはM.2 PCIe NVMe SSDで512GBの「OM3PDP3-AD NVMe KDI 512GB」。Cドライブのみの1パーティションで約461GBが割り当てられており、空き容量は422GBだった。BitLockerで暗号化されている。また、Wi-FiおよびBluetoothはMediaTek製となる。

起動時のデスクトップ。壁紙のみの変更とシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはM.2 PCIe NVMe SSDで512GBの「OM3PDP3-AD NVMe KDI 512GB」。Wi-FiおよびBluetoothはMediaTek製
ストレージはCドライブのみの1パーティションで約461GBが割り当てられており、BitLockerで暗号化されている
AMD Radeon Software

 主なインストール済みのソフトウェアは、「Dell CinemaColor」、「Dell Customer Connect」、「Dell Digital Delivery」、「Dell Mobile Connect」、「Dell Update」、「MaxxAudioPro」、「McAfee Personal Security」、「My Dell」、「SupportAssist」など。主に同社のユーティリティとなる。

My Dell
SupportAssist
Dell CinemaColor
MaxxAudioPro

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Officeで実施した。Ryzen 7 5800Uと比較すると一部劣っているスコアもあるが、おおむね気持ち上回っている感じだ。BarceloはCezanneのリフレッシュ版というのも頷ける。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeの結果は8時間55分(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。16型で輝度も高かったのでもっと短いと思っていたが、意外と長かった。主に室内用途だろうから、これだけ持てば十分だろう。

【表】ベンチマーク結果
Inspiron 16 HP Pavilion Aero 13-be(参考)
PCMark 10 v2.1.2532(Pavilion Aero 13-beはv2.1.2523)
PCMark 10 Score5,9135,806
Essentials9,93310,018
App Start-up Score13,08113,674
Video Conferencing Score8,4938,401
Web Browsing Score8,8238,754
Productivity9,3019,244
Spreadsheets Score11,85911,490
Writing Score7,2967,438
Digital Content Creation6,0725,736
Photo Editing Score8,9888,708
Rendering and Visualization Score6,0615,474
Video Editting Score4,1113,960
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelerated 3.04,7414,547
Creative Accelerated 3.04,6144,400
Work Accelerated 2.05,7215,618
Storage4,9914,855
3DMark v2.22.7336(Pavilion Aero 13-beはv2.19.7216)
Time Spy1,283-
Fire Strike Ultra674704
Fire Strike Extreme1,4421,429
Fire Strike3,2113,182
Sky Diver12,21811,548
Cloud Gate22,75021,998
Ice Storm Extreme106,015107,830
Ice Storm144,629144,028
Cinebench R23
CPU9,376pts8,006pts
CPU(Single Core)1,462pts1,391pts
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2,543.642MB/s2,240.367MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1,213.211MB/s1,160.967MB/s
4K Q8T8 ランダムリード812.565MB/s624.287MB/s
4K Q8T8 ランダムライト383.954MB/s488.729MB/s
4K Q32T1 ランダムリード305.887MB/s389.370MB/s
4K Q32T1 ランダムライト390.296MB/s324.551MB/s
4K Q1T1 ランダムリード39.205MB/s53.484MB/s
4K Q1T1 ランダムライト123.219MB/s125.047MB/s

 以上のようにInspiron 16は、16型パネル/Ryzen 7 5825U/メモリ16GB/SSD 512GBを搭載した大型ノートPCだ。非光沢で画面のアスペクト比16:10、テンキーなし、キーボードバックライト搭載など、筆者の好みともバッチリ合っている。しかもOfficeなしだと10万円を切る超ハイコストパフォーマンスにまとまっている上、下位モデルならさらに安い。

 試用した範囲で気になる部分があるとすれば一部のキーの配列ぐらいだろう。だが、これも慣れの問題でどうにでもなる。16型でテンキーなし、そしてハイパワーなノートPCを安価にゲットしたいユーザーにお勧めできる1台だ。