西川和久の不定期コラム

2021年を振り返る。macOS Monterey/Windows 11ともに目玉機能が先送りになるめずらしい年

 今年(2021年)も早いもので残すところあと数日。毎年恒例の振り返る話で今年最後を締めくくりたい。筆者の関心事が中心なので世間のトレンドと違っていることもあるかとは思うが、最後までお付き合いいただければ幸いである。

2021年に扱ったもの

 今年本連載で扱った機器は計47で以下の通り。デスクトップPC、ノートPC、タブレット(2in1も含む)、スマホと、どれに偏ることもなく、まんべんなくご紹介した感じだ(7月末からのスマホ4連発は結構大変だった)。また、ボードコンピュータが1台もないめずらしい年にもなっている。

  • デスクトップPC×10
  • ノートPC×13
  • 分離型2in1/タブレット×10
  • スマートフォン×11
  • その他×3(WineskinServer、MIRACLE LINUX 8.4、UQ WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G L12)

 以下、印象に残ったものをいくつかピックアップした。個人的に購入したマシンを除き、試用して「お、これいいかも!?」と思ったのは以下の3つ。理由は順に、パネルが有機EL、高性能のわりに軽い、Snapdragon 7cなChromebookといったものだ。さらに、未来っぽいと感じた製品についても1つ紹介する。

有機ELが抜群に綺麗な13.3型軽量ノート「ASUS ZenBook 13 OLED」。バッテリも12時間超えと長持ち
Ryzen 7 5800U搭載で1kg切りの13.3型モバイルノート「HP Pavilion Aero 13-be
Snapdragon 7cを搭載したLTE対応の11型2in1 Chromebook!「HP Chromebook x2 11

 昨年(2020年)のまとめ記事でも「HP ZBook Create G7」で有機ELパネル搭載機を挙げているが、やはり今年もインパクトが強かった。

 手元のデバイスを眺めてみると、iPhone 13 Pro/Xperia 1 IIは有機EL、M1版12.9インチiPad ProはミニLED、Lenovo Tab P11 Proは有機ELディスプレイを搭載している。対してノートPCやデスクトップ用のディスプレイは普通の液晶パネルだ。サイズ的に仕方ない部分もあるが、モバイルデバイスの方がパネル性能がよく、何だか残念な感じがする。

 そんな中登場したのがASUS ZenBook 13 OLED。名前の通り13.3型の有機EL搭載ノートPCで、ぱっと見でその差が分かるほど表示が綺麗だ。24型以上の有機ELディスプレイが買いやすい価格になるのは何年後だろうか。

 ちょうどこの記事を書いている最中、「LG、着脱式キャリブレータ搭載のプロ向け4K有機ELディスプレイ」が発表となったものの、かなり高そうだ。今のメインディスプレイが「BenQ SW240」のため、24型1,920×1,200ドットでいいので、安価なモデルが欲しいところ。

 HP Pavilion Aero 13-beは、記事中にも書いたが、カートにまで入れて買う直前までいったノートPCだ。タイミングによるが、クーポンなどを使うと最上位モデルが10万円ちょっとで購入できる。

 プロセッサはZen 3のRyzen 7 5800U、パネルは非光沢の縦横比16:10でsRGB 100%をカバー。キーボードバックライト、ルックスなど筆者の好みの構成で重量も約957gと軽い。唯一残念なのは[Enter]キーの外側にキーがあることだった。ちょっと世代が古いとは言え、あり余ってるのもあり、今年は結局1台もノートPCを購入していない。

 最後はSnapdragon 7cを搭載しLTE対応のChromebookであるHP Chromebook x2 11。同じプロセッサを搭載したArm版WindowsノートPCもご紹介している。

 用途的には変わらないが、Windowsだともう少しパワーが欲しいところ。ただ、12月2日にSnapdragon 8cx Gen 3とSnapdragon 7c+ Gen 3が発表されたこともあり、もし買うならこちら待ちだろうか。

 余談になるが、現在手持ちでLTE対応なのはかなり古いSurface 3となる。早いタイミングでWindows 11のInsider Previewを入れたので、プロセッサのみ要件を満たしていないもののWindows 11で動作している。2019年あたりまでは外での打ち合わせなどで持ち歩いていたが、打ち合わせ自体が減ったので出番がなくなってしまった。

 今だと12インチMacBookか12.9インチiPad Proと、iPhone 13 Proとのテザリングの組み合わせだ。来年(2022年)は対面での打ち合わせが増えるのか、それともあまり変わらないのかで、現状維持か、新たに購入かを決めることになる。

 上記以外では、『ほぼスマホサイズでTiger Lake搭載! フィールドワーク向けのウェアラブルPC「dynaEdge DE200」』はインパクトがすごかった。スマホサイズより少し大きい程度の筐体に、Tiger LakeのCore i7-1160G7、メモリ16GB、SSD 512GBを搭載しており、さらに「インテリジェントビューア AR100」との組み合わせは何とも未来的だ。

 プロセッサのパワーや容量などは上がる一方なので、速度的な部分は時間が解決するだろうが、肝はディスプレイの部分だと思われる。これから非常に楽しみなカテゴリだ。

dynaEdge DE200(本体)
AR100

 もう1つ期待したい点としては、一時期絶滅危惧種だったハイエンドのAdnroidタブレットが復活してきたことだろう。

 安くて遅いAndroidタブレットは色々なモデルが出ているものの、後述する「Lenovo Tab P11 Pro」を購入した3月あたりまでは、国内外を合わせてもハイエンドモデルはほとんどない状態だった。

 それがここにきて在宅勤務の拡がりもあってか「Yoga Tab 13」を代表として、徐々にではあるもののハイエンドな機種が増え出した。今後OS自体のタブレット対応も進みそうなので期待したい。

気になった業界動向@2021年

 どちらもOSの話になるが、Windows 11のAndroidアプリ対応や、macOS MontereyのUniversal Controlがリリース後は使えず、来年に実装が先送りとなった。両機能はある意味で新OSの目玉的なものなので、ガッカリと言ったところ。

 前者のWindows 11のAndroidアプリ対応は、公式にはPCの地域を米国に設定し、米国のAmazon Appstoreからダウンロードしたものに限るなどの条件もあり、現在日本国内では試すことができない。

 ただ裏技的な方法があり、実は国内でも試すことが可能だ。肝は”Windows Subsystem for Androidをシステムに入れる”こと。これは正規の手順だと米国のAmazon Appstoreアプリインストール時、同時にインストールされる。だが、そもそも国内ではこれができないので、Windows Subsystem for Androidが入らない。

 従って、これさえ解決すれば、あとはapkでのサイドロードとなり、Microsoft純正のWSAToolsを使い、アプリのインストール、そして実行が可能となる(試す場合は自己責任でお願いしたい)。

 実際試したところ、Twitterはウィンドウのリサイズも含めOK、Instagramはウィンドウサイズは変わるものの縦横比固定、Facebookはインストールできずといった結果となった。またAnTuTu Benchmarkについては、アプリ自体は起動するものの、3DBenchを呼び出せず、結果的に測定不能といった感じだった。

 Instagramについては前から指摘しているが、iOS版も含めてアプリの作りが悪く、ChromebookのAndroid環境やスマホのデスクトップ環境でも全画面でしか動かなかったり、ウィンドウサイズの変更ができない。Android単一の環境ではなくなりつつあるので、そろそろ改善してほしい。

日本国内でAndroidアプリ動作中。Windows Subsystem for Androidさえ入ればあとは何とかなる。左からInstagram、Twitter、WSATools、Android用サブシステム設定(開発者モードをオン)。後日調べてみると、Google Playをインストールする方法もあるようだ

 Universal Controlは、Macなどのキーボード/マウスをiPadなどと共有できる機能だ。筆者の場合、これ目当てで12.9インチiPad Pro用のMagic Keyboardを買わずに待っていたが、現在のパブリックベータでも未だに使えない。これも有効にする裏技があるものの、試したところ、手元の環境では上手く動かなかった。

 メインのM1 Mac miniは、Universal Controlが機能するようになったら、macOSをBigSurからMontereyへアップデートしようと思っていたが、さすがに待ちきれず12.1が出たタイミングでインストールした。とは言え筆者の場合、純正アプリで使うのは、FinderのほかにSafariぐらいしかなく、アップデートしても何が変わったのか分からないほど変化がない。

 変わった点をあえて言えば、少し動作が軽くなった感じがするのと、PHPがシステム非搭載になり、brewでインストールしたことぐらいだ。

 そしてやはり触れておくべきはArmプロセッサの快進撃だろう。AppleのM1系のみらなず、遅いと言われていたMediaTekもDimensity 9000を発表し、Qualcommに追いつけ追い越せ状態だ。用途をPCに限定するとまだまだといった感じはあるものの、来年はIntel、AMD、Armによる三つ巴の戦いが見れそうだ。

 少し方向性は違うが、Arm関連としては、ミドル/ローエンドスマホの性能アップがはっきりと表れた年でもあった。カメラ性能を優先すると、どうしてもハイエンドに寄ってしまうが、それ以外の普段使いならもうハイエンドである必要はどこにもなさそうだ。この流れで来年はどんなスマホが出てくるか、今から楽しみにしている。

趣味@2021年

 昨年メインマシンやディスプレイなど主要どころをほぼすべて買い替えたので、今年はほとんど買っていない。大物としては、FUJIFILM X-S10(XC15-45mmレンズキット)+XC35mm F2、iPhone 13 Pro、12.9インチiPad Pro(2021モデル)などがある。

 ただしApple系はiPhone 12 Pro Max、11インチiPad Pro+Magic Keyboardを売って購入しているため、大きな出費にはなっていない。ほかも含めて購入したのは以下の通り。

FUJIFILM X-S10(XC15-45mmレンズキット)+XC35mm F2

 まず金額的に一番かかったカメラ。これまでNikon D7000/D800E、SIGMA sd Quattroを使っていたが、どれも大きく重かった(SIGMAはレンズが重い)。その結果、本格的な撮影以外は使わなくなり、ほとんどがスマホに変わってしまった。

 しかし、いくらスマホの写りがよくなったとは言え、もの足らないのも事実。コンパクトなカメラが欲しいなと思い購入した次第だ。同種のカメラは色々あったが、人を撮ることが多く「肌色ならFUJIFILMでしょ!」とこれに決めた。

FUJIFILM X-S10の作例。この写真のみXC35mm F2
キットレンズのXC15-45mmで撮影
最後の夜景はスマホの作例でもよく使っている場所だが、やはり写りが全然違う

 用途的にはレンズキットのXC15-45mmで十分なのだが、個人的にメインの35mm単焦点が欲しくなり、後から追加購入した。RAWは使わずJPEGのみでの使用だが、写りもよく持ち運びも楽で非常に気に入っている。

 バッテリがコンパクトで大丈夫か? と思ったので、追加で1つ購入したが、主にEVFを使用し、半日で結構な枚数撮影しても切れることはなかった。あとは35mm判換算で85mm相当の56mmが欲しいところか。

M1版12.9インチiPad ProとLenovo Tab P11 Pro

 タブレットはLenovo Tab P11 ProとM1版の12.9インチiPad Proを購入した。後者に関しては記事があるので興味のある人は参考にしていただきたい。

 先に購入したLenovo Tab P11 Proは、11.5型2,560×1,600ドット有機EL/Snapdragon 730G/6GB/128GBのミドルレンジAndroidタブレットだ。購入時はAndroid 10だったが、今は11になっている。購入理由はわりと単純で、Instagramや後述するGoogleフォトの編集をスマホより大きい画面で見たかった、ただそれだけだ。

 それなら11インチiPad Proでいいのでは? となりそうだが、InstagramアプリはiPadOSだと×2サイズにしないと全画面にならず不細工なのだ。また、Googleフォトは当時Google Oneユーザー向けの編集機能がiOS/iPadOS版では使えなかった。従ってこれらを満たすにはAndroidタブレットが必要だった。

 実際使ってみると画面が綺麗で速度的にも問題なし。お気に入りの1台となったが、どういうわけか、今年未明からFacebookアプリがダークモードにならなくなった。設定から選べず、OSが11になっても変わらない。

 Instagramアプリ同様、またしてもMeta社だ。macOS版のMessangerアプリも最近UIをリニューアルしたが、IMEの変換確定時にEnterを押すと、そのまま送信されるようになってしまった。先日アップデートがあったものの変わらず。同社が絡むとろくなことにならない。

 最近になりiOS/iPadOS版のGoogleフォトがOneユーザー向け機能対応となり、これが理由でAndroidタブレットはあまり使わなくなってしまった。今年購入した中で出番が減った唯一のデバイスとなる。

SENNHEISER MOMENTUM Freeとaiwa BA-TRX20

 BluetoothイヤフォンのSENNHEISER MOMENTUM Freeと、aptX LL対応Bluetooth送受信機のaiwa BA-TRX20は、先に後者を購入した。最近深夜にドラマなどを観るようになり、スピーカーで大きめの音は出せないので、イヤフォンで聞いた方がいいかなと思ったからだ。機能的には受信機にもなるが、TVの光デジタル出力に接続し、送信用として使っている。

 当初は手持ちのaptX対応イヤフォンを使っていて、さほど遅延も気にならなかったが、試しにとaptX LL対応のイヤフォンSENNHEISER MOMENTUM Freeを購入した。どちらも安く、そのわりに効果抜群なのでお勧めだ。

Audioengine A2+

 Audioengine A2+は、3.5mmステレオミニ、USB、RCA入力に対応したアクティブスピーカー。これまではUSB DAC/デジタルアンプ/パッシブスピーカーを使っていたものの、デスクトップ周りをシンプルにしたくて購入した。

 このスピーカーはUSB DAC内蔵なのでPCからUSBケーブル1本で接続可能。価格なりの音だが、少し指向性が強く、写真のように傾けてスピーカーをなるべく耳側に向けないとバランス的に高域が足らない感じとなる。

Keychron K2

 昨年クラウドファンディングでKeychron K1を買って失敗したと書いたが、今年はKeychron K2をリベンジで購入した。キースイッチは茶軸で、RGBバックライトを内蔵。K1で指摘したキートップもへこんでおり、現在メインのキーボードとなっている。

 メインキーボードを交換したのは10年以上ぶりだろうか。ただチルト用の足がなく入力しにくいので、あとからゴム足を購入し、傾斜を付けて使用中だ。

 リンクを貼ろうと調べたところ、どうやらV2となり、コンパクト化とともに足付きになったようだ。ただ、Enterキーの外側にキーがあり、ここは残念なところ。

キーボード付き13.3型モバイルディスプレイ

 キーボード付き13.3型モバイルディスプレイ(タッチ対応)は、本連載にも何度か登場しているが、一見ノートPCに見える製品。デスクトップPC系のセットアップはこれ1つあればOKなので非常に重宝している。

JOBY BEAMO×2
Android向け専用アプリ

 JOBY BEAMO(JB01579)は、小型のLED照明。ご覧のように手の平に乗るサイズで連結して数を増やすこともできる。またBluetoothを使いスマホからオン/オフ、調光などのコントロールも可能だ。

 ただ仕様上のバッテリはそれなりに持つが、連続使用だと10~15分で自動的にオフになってしまうので、交互に使って継続して撮影可能なように2つ購入した。合計で約2万円ほどになってしまうので、3つ4つ買うなら、ほかの照明を考えた方がよいだろう。

 明るさ的には1燈で室内ポートレートであれば、35mm座り全身でISO 1000、f/2.8、シャッタースピード1/100といった感じだ。昔と違ってISO 1000程度は十分実用範囲で、コンパクトさをいかして屋外でも使えるため、便利なLED照明だ。

 iPhone 13 ProおよびUQ WiMAX Speed Wi-Fi HOME 5G L12に関しては、記事があるのでそちらを参考にしていただきたい。TP-Link Archer AX50は、仕事場は基本有線LANで、Wi-Fiはスマホやタブレット用のため、Wi-Fi 5でもさほど困っておらず、システムがすべて止めて入れ替えるのも面倒なので、ずっと放置していた。気が付けば7年も使い続けており(笑)、さすがにWi-Fi 6対応ルーターへ交換した。

 さて、ここまではハードウェアの話だが、今年ソフトウェア的に変わったのは、ポートレート写真などの処理系だ。これまではRAWで撮って現像、Photoshopで必要に応じて調整していたが、今年はPhotoshopをまったく使わなくなってしまった。これはX-S10での撮影がJPEGのみになったこともある。

 代わりにメインとなったのがGoogleフォトとSNOWなど盛り系アプリ。撮影後、JPEGでGoogleフォトへ転送し、基本的な調整とボケ、加えてOneユーザー向け機能のポートレートライトで影消し、そしてSNOWでちょい盛りといった感じとなる。

左から写真アプリ(iOSオリジナル)、Googleフォトのポートレートライト、SNOWのビューティ→肌補正→なめらか/テカリ消し/ほうれい線/キラ目/くまなどを調整。輪郭は変えない。すべてiPadOSでも動作する(SNOWは全画面のみ)

 SNOWなど盛り系アプリは、顔の輪郭や目の大きさなどは触らず(さすがにカメラマン的にこれはない)、肌のスムージング、テカリ消し、ほうれい線、キャッチライト強調、目の下のクマといった部分に使う。これらはPhotoshopでも可能だが、全部対応するにはかなり面倒だ。一方盛り系アプリでは、それがスライダー操作だけで処理できる。これほど楽なことはない。

 同じことがPCでできるPortraitPro Studioも持っており、プリセットもできるものの、高機能な分、工数がかかるため、結局使わなくなってしまった。

PortraitPro Studio。RAW現像や一般的な調整はもちろん、ライティングや顔を認識しての輪郭調整やメイク、ボケなどにも対応している。一応日本語メニューにもなるが、妙な翻訳なので英語で使うのが吉
モデル:村井瑞稀NET-AGE

 iPadOS版のPhotoshopもRAW対応したり、徐々に機能アップしているので、そろそろ写真系だけならiPad Proでもいけそうな感じだ。このあたりも来年楽しみな部分だ。


 以上、今年2021年の出来事などを思いつくまま書いてみた。個人的に一番大きいのは、最後に書いたポートレート系のワークフローが大きく変わったことだろうか。ハードウェアに関しては、ここまでそろってしまったので、来年は何を買うのやら……!?。