西川和久の不定期コラム

RyzenとOLED搭載で薄くて軽いモバイルノート、レノボ「YOGA Slim 760 Carbon」

YOGA Slim 760 Carbon

 レノボは2021年12月14日、Zen 3世代のRyzenと14型OLED(有機EL)を採用したスリムなノートPC「YOGA Slim 760 Carbon」を発表し、同月17日より販売を開始した。編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

十分な性能に加え14型OLEDを搭載

 同社のYOGA Slimシリーズをみると、似た製品名を持つPCとして「Yoga Slim 750i Carbon」がある。この機種は第11世代Core i5/i7、13.3型2,560×1,600ドット(16:10)IPS液晶を搭載し、1kgを切るノートPCだ。おそらく後続機も出ると思われる。

 これはこれで魅力的だが、今回ご紹介する「YOGA Slim 760 Carbon」はこの製品ラインの新型に相当する。一番の違いはプロセッサとディスプレイで、特に後者についてはYOGA Slimシリーズ初のOLEDを採用し、IPS液晶ディスプレイとは別次元の発色を誇る。主な仕様は以下の通り。

【表】YOGA Slim 760 Carbonの仕様
プロセッサRyzen 7 5800U(8コア/16スレッド、1.9~4.4GHz、キャッシュL2 4MB/L3 16MB、TDP 15W、cTDP 10~25W)
メモリ16GB/LPDDR4X-4266(オンボード)
ストレージSSD 512GB(M.2 PCIe NVMe)
OSWindows 11 Home(バージョン21H2)
ディスプレイ14型OLED 2,880×1,800ドット(16:10)、光沢、画面占有率91%、リフレッシュレート90Hz、高輝度400nit、10点タッチ対応(量販店モデルのみ)
グラフィックスRadeon Graphics(8コア)、DisplayPort(USB Type-C)/HDMI(付属のドック使用)
ネットワークWi-Fi 6対応、Bluetooth 5.1
インターフェイスUSB 3.1 Type-C×2(DisplayPort、USB PD対応)、USB 3.0 Type-C、720p/Windows Hello対応Webカメラ、3.5mmジャック
バッテリおよび駆動時間4セルリチウムポリマー、最大14時間(直販モデル)/最大11.6時間(量販店モデル)
サイズ/重量313×214.5×14.9mm(幅×奥行き×高さ)/約1.1kg
カラーバリエーションクラウドグレー
その他USB Type-C to ミニD-Sub15ピン/HDMI/USB Type-A変換ドック、キーボードバックライト、MIL-STD-810H準拠
税込価格21万7,470円(eクーポン適用時15万3,186円)

 プロセッサはZen 3世代のRyzen 7 5800Uを搭載。8コア/16スレッドでクロックは1.9~4.4GHz、キャッシュはL2 4MB/L3 16MBで、TDPは15W、cTDPは10~25Wとなり、モバイル向けUシリーズとしては最上位となる。以前ご紹介した「HP Pavilion Aero 13-be」以来の搭載マシンだ。

 メモリはオンボードで16GB/LPDDR4X-4266、ストレージは512GBのM.2 PCIe NVMe SSDを搭載。OSはWindows 11 Homeで、バージョンは21H2だったため、この範囲でアップデートを適用し評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のRadeon Graphics(8コア)で、外部出力用は本体のDisplayPort(USB Type-C)と、付属のドックを経由したHDMIに対応している。ディスプレイは光沢ありの14型OLED 2,880×1,800ドット(16:10)を装備。画面占有率91%、リフレッシュレート90Hz、高輝度400nitで、さらに量販店モデルは10点タッチ対応となっている。

 ネットワークはWi-Fi 6、Bluetooth 5.1に対応し、有線LANは非搭載。インターフェイスは、USB 3.1 Type-C×2(DisplayPort、USB PD対応)、USB 3.0 Type-C、720p/Windows Hello対応カメラ、3.5mmジャックを備える。

 Webカメラは電子的なプライバシーシャッターを装備し、キーボードはバックライトを内蔵。SDカードスロットがないのが残念な点だ。そのほか、USB Type-C to ミニD-Sub15ピン/HDMI/USB Type-A変換ドックが付属する。

 サイズは313×214.5×14.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.1kg。MIL-STD-810Hに準拠し、カラーバリエーションはクラウドグレーのみ。4セルリチウムポリマーを内蔵し、駆動時間は最大11.6時間となる。

 直販サイトで21万7,470円だが、eクーポン適用時で15万3,186円となる。先に触れたHP Pavilion Aero 13-beがタイミングによっては10万円ちょっととなるので、パネルサイズが違うものの、その価格差の多くはOLEDの採用によるものだろう。

 なお下位モデルとしてRyzen 5 5600U(6コア/12スレッド、2.3〜4.2GHz)/8GBメモリ構成のものも用意されている(19万5,470円/eクーポン適応時14万1,632円)。

パネル中央上にWebカメラ。シャッター付きだが電子式なのでスライドカバーのようなものはない。画面占有率91%だけあって上左右の縁はかなり狭い
3.5mmジャックのサイズ感から分かるようにかなりスリム
天板。艶なしシルバーでシンプル
底面。手前左右に2つ、後ろに1本のゴム足。左右にはスリットがある
左側面。USB Type-C×2、3.5mmジャック。ヒンジは180度開く
右側面。電源ボタン、Webカメラシャッタースイッチ、USB Type-C

 筐体はライトなシルバーのクラウドグレーを採用。シンプルなデザインでなかなかカッコいい。14型で重量が実測で1,089gと、1kgを少し超えているが、それでも十分軽く片手で楽々持ち上がる。また3.5mmジャックとの比較から分かるようにかなりスリムなのも特徴。MIL-STD-810H準拠なので強度の心配も無用だ。

 前面はディスプレイ上部中央にWebカメラを装備。プライバシーシャッター付きだが電子式なので、レンズを覆うカバーのようなものはない。

 左側面にUSB Type-C×2、3.5mmジャック、右側面に電源ボタン、Webカメラシャッタースイッチ、USB Type-Cを配置。Webカメラシャッタースイッチは、カメラアプリを起動したままオフにすると、カメラがないとの表示が表れるので、電子的に接続を切っているものと思われる。

 底面は左右手前に2つ、後ろに1本のゴム足を装備。左右にはスリットがある。

重量は実測で1,089g
ACアダプタのサイズは約55×55×28mm(同)、重量は175gで、出力が5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/3.25A(65W)。付属のドックは、USB Type-C(PC接続用)、HDMI、ミニD-Sub15ピン、Type-Aを備える。

 付属のACアダプタはPower Delivery対応でサイズが約55×55×28mm、重量が175g。出力は5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/3.25A(65W)となる。

 付属のドックはUSB Type-C接続で、HDMI、ミニD-Sub15ピン、USB Type-Aの3ポートが増設できる。重量は実測で38g。

 14型OLEDディスプレイは画面占有率91%だけあって上左右の縁がかなり狭い。ヒンジは180度開くことができる。明るさ、コントラスト、視野角、発色などはすべて良好で、さすがと言ったところ。これを見てしまうと、もう普通の液晶パネル搭載ノートPCには戻れない感じだ。

 i1 Display Proを使い特性を測定したところ。最大輝度は368cd/平方mと明るい。写真を観るのに適していると言われる明るさ120cd/平方mは、最大から-3が156cd/平方m、-4が113cd/平方m。従って前者で計測した。

 黒色輝度はOLEDなので0cd/m2と真っ黒。リニアリティは少し凸凹があるものの、このクラスのノートPC用パネルとしてはかなりそろっている方だろう。なお、手元に届いたのは量販店モデルで10点タッチ対応だった。もちろん普通に操作でき、これはこれであれば便利だ。

測定結果1。白色点と黒色輝度
測定結果2。R・G・Bのリニアリティ

 キーボードはテンキーなしのアイソレーションタイプで、オフ/オートに加え、2段階の明るさ調整が可能なバックライトを搭載している。打鍵感はそれなりのストロークとクリック感があり、個人的には好みだ。

 ただ個人差もあるだろうが、キートップがシルバーというのは少し見づらい。主要キーのキーピッチは約18mm。「¥」や「Backspace」、「Enter」キーの周囲が窮屈なのが残念なところ。

 タッチパッドは物理的なボタンのない1枚プレート型だ。パームレストも含め十分面積が確保され扱いやすい。

テンキーなしのアイレーションタイプ。ただし、Enterキーの周囲など一部が窮屈な配置。左右にスピーカーを備え、タッチパッドは1枚プレート型
キーピッチは実測で約18mm
オフ/オートに加え、2段階の明るさが選べるキーボードバックライト

 振動やノイズは試用している範囲ではまったく気にならなかった。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード上のスペースが若干暖かくなる程度でこちらも問題ない。

 サウンドはキーボードの左右にスピーカーあるため、音が直接耳に届き非常にクリアに聞こえる。裏にスピーカーがないため、設置場所に左右されず均一な音となり聴きやすかった。

 Webカメラは軽く試したところ一般的なクオリティだ。少しホワイトバランスがふらつくのが気になったが、画質に拘らないWeb会議なら大丈夫だろう。この辺りは安価なスマホのフロントカメラの方が映りがよいこともあり、本機に限らず全般的にそろそろ何とかしてほしい点だ。

 余談になるが、筆者が個人的に今年欲しいノートPCは、性能的にCore i5/i7やZen 3(Apple M1でもよい)クラスを搭載し、ディスプレイサイズが13.3~14型、かつアスペクト比16:10より縦が長いもので、できればOLEDを採用している機種。さらに重量1kg切り(数十g超であれば許容範囲)、キーボードバックライトありといった点も条件なのだが、年始早々いきなり本機がヒットした。まだ1月なので早々購入とはならないものの、候補の1台となった。

ビジネス用途としては十分な性能に加え12時間超えのバッテリ駆動

 初期起動時、デスクトップは壁紙の変更のみとシンプル。扉の写真からも分かるようにOLEDらしく綺麗な発色だ。ノートPCとしてはハイエンドな構成なので、何をしてもスムーズに動作する。

 ストレージはSSD 512GBの「WDC PC SN730 SDBPNTY-512G-1101」。仕様によると、シーケンシャルリードが3,400MB/s、同ライトが2,700MB/sとなっており、CrystalDiskMarkのスコアもほぼそのまま出ている。

 Cドライブのみの1パーティションで、約475GB割り当てられており、空き容量は425GBだった。またBitLockerで暗号化されている。Wi-FiとBluetoothはRealtek製で、WebカメラはWindows Hello対応のため、IRも搭載している。

起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみとシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはSSD 512GBの「WDC PC SN730 SDBPNTY-512G-1101」。Wi-FiとBluetoothはRealtek製
ストレージのパーティション。Cドライブのみの1パーティションで約475GB割り当てられている。BitLockerで暗号化済み

 主なプリインストール済のソフトウェアは、「Dolby Access」、「Lenovo Hotkeys」、「Lenovo Vantage」、「Lenovo Voice」、「Lenovo Welcome」、「Realtek Audio Console」、「Smart Microphone Settings」、「マカフィーリブセーフ」。加えて、量販店モデルおよび一部直販モデルでは「Microsoft Office Home & Business 2021」も搭載する。

 Lenovo Hotkeysは、サーマル・モードや画面のリフレッシュレートの切り替えなどが可能。Lenovo Vantageは同社お馴染みの統合システムツールで、Lenovo Voiceはリアルタイムの翻訳ツールだ。有償サービスなので試していないが、翻訳の音声でAyumi/Haruka/Ichiroと選べるのがちょっとおもしろい。

 Smart Microphone Settingsは、Private/Shared/Environmental Modeと3つの選択が可能で、用途に応じて切り替えが可能だ。ただし、表記は英語となる。

Lenovo Vantage/ダッシュボード
Lenovo Vantage/デバイス
Lenovo Vantage/システムアップデート
Lenovo Vantage/マイ・セキュリティー
Lenovo Hotkeys
Lenovo Voice

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Officeを実施した。

 cTDPの設定は不明だが、以前ご紹介したHP Pavilion Aero 13-beと変わらないスコアになっている。ストレージがより速い分、関係するスコアが若干のアップしているが、いずれにしてもビジネス用途としては十分な性能だ。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは12時間45分(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)と、仕様上は最大11.6時間なのに超えてしまった。レアケースだが12時間超えと長い分には何も問題ない。このサイズ/性能でこれだけ持てば文句なしと言ったところだ。

【表】ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2532
PCMark 10 Score5.534
Essentials9,991
App Start-up Score13,505
Video Conferencing Score8,378
Web Browsing Score8,816
Productivity8,233
Spreadsheets Score11,789
Writing Score5,750
Digital Content Creation5,592
Photo Editing Score8,491
Rendering and Visualization Score5,493
Video Editting Score3,750
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,243
Creative Accelarated 3.04,300
Work Accelarated 2.05,226
Storage5,029
3DMark v2.22.7334
Time Spy1,334
Fire Strike Ultra825
Fire Strike Extreme1,626
Fire Strike3,604
Sky Diver12,680
Cloud Gate22,425
Ice Storm Extreme104,034
Ice Storm131,044
Cinebench R23
CPU8,316 pts(7位)
CPU(Single Core)1,436 pts(2位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード3389.881MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト2702.901MB/s
4K Q8T8 ランダムリード1223.380MB/s
4K Q8T8 ランダムライト495.527MB/s
4K Q32T1 ランダムリード418.368MB/s
4K Q32T1 ランダムライト539.021MB/s
4K Q1T1 ランダムリード42.472MB/s
4K Q1T1 ランダムライト122.482MB/s

 以上のように「YOGA Slim 760 Carbon」は、Ryzen 7 5800U、メモリ16GB、SSD 512GB、そして14型OLED 2,880×1,800ドットのパネルを搭載したモバイルノートPCだ。重量も1kgちょっとと構成のわりに軽い。本体にUSB Type-AやSDカードスロットがないため使い辛い面もあると思うが、逆にUSB Type-Cを3基備えているのはある意味魅力的だろう。

 一部のキーピッチが狭いのは気になるものの、とにかくハイパワーでバッテリ駆動時間が長く、そしてOLEDの14型ノートPCが欲しいユーザーにお勧めできる1台と言えよう。