西川和久の不定期コラム

Ryzen 7 5800U搭載で1kg切りの13.3型モバイルノート「HP Pavilion Aero 13-be」

HP Pavilion Aero 13-be

 日本HPは7月15日、1kgを切る13.3型のモバイルノートを発表、現在販売中だ。編集部から最上位のRyzen 7 5800U/16GB/512GBモデルが送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

Ryzen 7 5800U、13.3型16:10、キーボードバックライトありで約957g!

 今回ご紹介するHP Pavilion Aero 13-beは、構成の違いで3タイプに分かれる。順にRyzen 5 5600U/8GBメモリ/256GB SSD/11万4,400円、Ryzen 5 5600U/16GBメモリ/512GB SSD/13万6,400円、Ryzen 7 5800U/16GBメモリ/512GB SSD/16万3,900円(このモデルのみ10 Pro)。パネルやインターフェイスなど主要部分は同じ仕様となる。

 定価は高めだが、サイトで確認するとかなり割り引かれており、順に9万3,000円/10万7,000円/12万3,000円(税込)と、購入し易くなっている。

 RyzenプロセッサのSKU(偶数番)からわかるように、Zen 3アーキテクチャ採用となる。特にRyzen 7 5800Uは以前、「「Ryzen 7 5800U」はApple M1を上回る性能で、Intel並みの長時間駆動を実現」、という記事が載り、M1搭載Mac miniを所有している筆者として気になっていたプロセッサだ。今回やっと搭載PCを触ることができたので、後半ではその真相を確認してみたい。

 手元に届いたのはRyzen 7 5800U/16GBメモリ/512GB SSDの最上位モデルだ。主な仕様は以下の通り。

HP「HP Pavilion Aero 13-be」の仕様
プロセッサRyzen 7 5800U (8コア16スレッド/1.9~4.3GHz/キャッシュ 4MB, 16MB//TDP 15W)
メモリ16GB/3,200MHz、DDR4 SDRAM(オンボード)
ストレージSSD 512GB(PCIe NVMe M.2)
OSWindows 10 Pro(64bit) ※Windows 11へ無料アップグレード対象製品
ディスプレイ13.3型フルHD(1,920×1,200ドット)、IPS式、非光沢、輝度400cd/平方m、色域sRGB 100%
グラフィックスRadeon Graphics(8コア)、HDMI 2.0/Type-C
ネットワークWi-Fi 6対応、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB Type-C×1、USB Type-A×2、92万画素Webカメラ、バックライト付きキーボード、3.5mmジャック
バッテリ駆動時間10時間30分
サイズ/重量298×209×16.9~18.9mm(幅×奥行き×高さ)/約957g
カラーバリエーションセラミックホワイト、ピンクベージュ(各モデル共通)
税込価格16万3,900円(サイトでの割引価格12万3,000円)

 プロセッサはRyzen 7 5800U。Zen 3アーキテクチャで8コア16スレッド。クロックは1.9から最大4.3GHz。キャッシュ L2/4MB、L3/16MB。TDPは15WだがConfigurable TDP(cTDP)は10から25W。この範囲での熱設計が可能となる。

 メモリはオンボードで16GB/3,200MHz DDR4 SDRAM。PCMark 10のSystem Informationでは8GB×2となっていた。ストレージはPCIe NVMe M.2の512GB。OSはこのモデルのみWindows 10 Proを搭載している(ほかのモデルは10 Home)。ビルド20H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応、評価した。また公式にWindows 11へ無料アップグレード対象製品を謳っている。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon Graphics(8コア)。外部出力用にHDMI 2.0とType-Cを装備している。ディスプレイは13.3型IPS式フルHD(1,920×1,200ドット)で非光沢。アスペクト比は16:10。輝度400cd/平方m、色域sRGB 100%の特徴を持つ。

 ネットワークはWi-Fi 6対応、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスはUSB Type-C(USB PD/DisplayPort 1.4映像出力対応)×1、USB Type-A×2、92万画素Webカメラ、3.5mmジャック。キーボードバックライトも搭載している。有線LANがないのはいいとして、SDカード非対応なのが残念なところか。

 サイズ298×209×16.9~18.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約957g。バッテリ駆動時間は最大10時間30分。税込価格は16万3,900円だが、サイトでの割引価格は12万3,000円となる。また時々出るクーポンと併用すると10万円ちょっとで購入することが可能。筆者はこのタイミングで購入しかけた経緯がある(笑)。

前面。パネル中央上にWebカメラ。フチはかなり狭い
斜め後ろから。セラミックホワイト。中央にHPのロゴ
左。HDMI、Type-A、Type-C、3.5mmジャック
右。電源入力、Type-A。高さが足らず下の部分が少し開く。Ethernetではたまに見かけるがType-Aでこの機構は珍しい(左側も同様)
キーボードはアイソレーションタイプの日本語キーボード。[Enter]キーの外側にキーがあるのは好みが分かれそうだ
キーピッチは実測で約18mm
裏。前後に1本バーのゴム足。手前左右のスリットにスピーカー
横から。かなり薄いのがわかる。パネルを傾けると下の部分が足替わりとなり、気持ちキーボードが前に傾く
重量は実測で977g
ACアダプタはサイズ約87×48×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量199g、出力19.5V/3.33A/65W
キーボードバックライトはオフ+2段階のバックライト

 手元に届いたのはセラミックホワイト。写真からもわかるようにスリムでシンプル。同社らしいデザインだ。重量は実測で977g。仕様より少し重いものの、それでも軽く、片手で楽々持ち上がる。なかなか魅力的な筐体だ。

 前面はパネル中央上にWebカメラ。フチはかなり狭い。左側面にHDMI、Type-A、Type-C、3.5mmジャック。右側面に電源入力、Type-A。左右共にType-Aは高さが足らず下の部分が少し開く。Ethernetではたまに見かけるがType-Aでこの機構は珍しい。裏は前後に1本バーのゴム足。手前左右のスリットにスピーカーを配置。パネルを傾けると、下の部分が足になり、キーボードが若干手前に傾く。

 付属のACアダプタはサイズ約87×48×28mm(幅×奥行き×高さ)、重量199g、出力19.5V/3.33A/65W。専用の電源入力になるが、Type-Cで手持ちのPD 65Wアダプタからでも充電可能だった。

 13.3型のディスプレイは、非光沢で目が疲れにくく、明るさ、コントラスト、発色、視野角も良好。sRGB 100%だけあって色域も広めだ。パネルの傾きは左右側面の写真が最大。

 i1 Display Proを使い特性を測定したところ最大輝度は430cd/平方m。これからもわかるように、最大輝度はかなり明るい。写真を観るのに適していると言われる明るさ120cd/平方mは、最大から-5が149cd/平方m、-6が106cd/平方m。従って前者で計測。黒色輝度は0.090cd/平方m。リニアリティはこのクラスのノートPC用のパネルとしては揃っている方だろう。

測定結果1/白色点と黒色輝度
測定結果2/R・G・Bのリニアリティ

 キーボードはアイソレーションタイプの日本語キーボード。主要キーのキーピッチは実測で約18mm。若干深めのストロークでクリック感もあり、個人的には好きなタイプ。ただし、[Enter]キーの外側にキーがあるのは好みが分かれそうだ。OFF+2段階のバックライトを搭載しているため、薄暗い場所でも快適に入力できる。

 発熱はベンチマークテストなどで負荷をかけると、キーボードの上の部分が熱を持つ。とは言え、下には全く降りてこないので気になることはない。

 サウンドはスピーカーが下にあるため机などに反射するタイプだ。従って持ち上げると手前に音が回らず音量が下がる。B&O Playデュアルスピーカーをうたっているだけあって、さすがにこのクラスの割には鳴りっぷりが良い。

 Webカメラは約92万画素なので、解像感はイマイチだが色乗りは割と良い。画面4分の1サイズ程度でビデオ会議するなら問題なさそうな感じだ。

 このように13.3型モバイルノートとして、全体的になかなか魅力的にまとまっている。唯一、[Enter]キーの外側にキーがあるのが個人的には残念な部分か。

Apple M1には少し劣るがモバイル用途としては十分なパフォーマンス!

 初期起動時、デスクトップは壁紙の変更のみ。スタートメニュー左下のグループが追加された部分となる。Zen 3、メモリ16GB、NVMe SSDということもあり、何をしてもサクサク動き快適だ。

 ストレージはMicronのSSD 512GB(PCIe NVMe M.2)の「MTFDHBA512QFD」。仕様によるとシーケンシャルリード/ライトはそれぞれ2,200MB/s、1,070MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもほぼそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約476GBが割り当てられ空き436GB。BitLockerで暗号化されている。

 Wi-Fiは「Realtek RTL8852AE WiFi 6 802.11ax PCIe Adapter」、BluetoothもRealtek製だ。Windows 11に必要なTPM 2.0もある。

起動時のデスクトップ。壁紙の変更のみ。スタートメニュー左下のグループが追加された部分
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはMicronのSSD 512GB(PCIe NVMe M.2)の「MTFDHBA512QFD」。Wi-Fiは「Realtek RTL8852AE WiFi 6 802.11ax PCIe Adapter」、BluetoothもRealtek製
ストレージのパーティションはC:ドライブのみの1パーティションで約476GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化
Radeon Software

 主なプリインストールのソフトウェアは、「B&O Audio Control」、「Express VPN」、「HP Audio Switch」、「HP Documentation」、「HP PC Hardware Diagnostics Windows」、「HP Privacy Settings」、「HP Quick Drop」、「HP Smart」、「HP Event Utility」、「HPサポートアシスタント」、「LastPass」、「McAfee」、「myHP」、「OMEN Gaming Hub」など。主に同社のツール系となる。

myHP(1/2)
myHP(2/2)
OMEN Gaming Hub
B&O Audio Control

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。

 以前掲載したASUSIntel Core i7-1165G7@「ZenBook 13 OLED」とPCMark 10を比較すると、Web Browsing、Writing、Video Edittingが若干劣っているものの、ほかは高いスコアを叩き出している。ただ3DMarkに関してはTime Spyは途中で落ちスコア不明、Fire Strike UltraとFire Strike Extremeに限ってかなり低いスコアになった。この辺りはIntel Xe Graphicsの方が強力なのだろう。

 PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは10時間19分(キーボードバックライトOFF。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様上の最大10時間30分なので、ほぼそのままの結果となった。最近のこのクラスとしては標準的だ。

PCMark 10 v2.1.2523
PCMark 10 Score5,806
Essentials10,018
App Start-up Score13,674
Video Conferencing Score8,401
Web Browsing Score8,754
Productivity9,244
Spreadsheets Score11,490
Writing Score7,438
Digital Content Creation5,736
Photo Editing Score8,708
Rendering and Visualization Score5,474
Video Editting Score3,960
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,547
Creative Accelarated 3.04,400
Work Accelarated 2.05,618
Storage4,855
3DMark v2.19.7216
Time Spyn/a
Fire Strike Ultra704
Fire Strike Extreme1,429
Fire Strike3,182
Sky Diver11,548
Cloud Gate21,998
Ice Storm Extreme107,830
Ice Storm144,028
CINEBENCH R23
CPU8,006 pts(7位)
CPU(Single Core)1,391 pts(2位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2,240.367 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1,160.967 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード624.287 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト488.729 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード389.370 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト324.551 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード53.484 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト125.047 MB/s

 さて、冒頭に書いたM1 vs Ryzen 7 5800U。共通で作動するGeekbench 5で確認した。結果は以下の通り。

Geekbench 5
Single-CoreMulti-CoreOpenCL
Mac mini@M11,7107,50319,526
本機@Ryzen 7 5800U1,4365,87015,534

 Single-CoreとOpenCLは、下回っているもののいい勝負、Multi-CoreはM1の方が圧倒的に上。本機との比較に限ってはM1の方がハイパフォーマンスとなった。ただし、Ryzen 7 5800UはConfigurable TDP(cTDP)で10~25Wの熱設計が可能なため、少し低めになってる可能性もあるが、それを差し引いても……と言うところだろう。噂のM1Xではさらに上を行くと思われる。

 今、手元にある1kg前後のノートPCはMacBook 12@2017/Core i5-7Y54/8GB/512GB。これからWindows 11がリリースされることもあり、Windows、Mac問わず後釜をどうするか!? 重量やバッテリ駆動時間/パフォーマンス優先で考え中だ。とは言え、ここ1年以上外での打ち合わせなどが激減してることもあり焦る必要もなく、未だ見ぬ製品にも期待したい。


 以上のようにHP「HP Pavilion Aero 13-be」は、Zen 3のRyzen 5/7を搭載した13.3型モバイルノートだ。パフォーマンスはベンチマークテストをご覧の通りなかなかのもの。重量1kg未満、パネル非光沢の16:10でsRGB 100%、キーボードバックライト搭載など、筆者の個人的な好みにもバッチリ合う。予算や用途に応じて3タイプ選べるのもポイントが高い。

 SDカードリーダ未搭載、[Enter]キーの外側にキーがあるなど、気になる部分もあるにはあるが、1kg未満でそれなりのパフォーマンスのモバイルノートが欲しいユーザーにお勧めの1台だ。