西川和久の不定期コラム
BMW Designworks協業のハイエンドゲーミングノート「ROG Strix SCAR 15」
2020年7月22日 11:05
ASUSは22日、ゲーミングデスクトップおよびノートPC「ROG」シリーズの新モデルを一斉に発表した。そのなかから少し早いタイミングでROG Strix SCAR 15を使う機会に恵まれたので、試用レポートをお届けしたい。
プロセッサ、GPU、ストレージなどを強化したROG Strix SCARシリーズ最新鋭モデル
ROG Strix SCARは、BMW Designworksと協業したデザインが特徴のシリーズ。前モデルに相当する「ROG Strix SCAR III」は、Core i7-9750H、GeForce RTX 2060、16GB DDR4-2666、512GB(PCI Express 3.0 x2接続)もしくは1TB(ハイブリッドHDD)という内容だった。
これだけでも十分速そうなのだが、今回発表のあった後継モデル「ROG Strix SCAR 15(G532LWS)」は、CPUに第10世代Core i9、メモリを32GBでDDR4-3200へ、GPUをGeForce RTX 2070 SUPERへ、そしてストレージはSSD 1TB×2のRAID 0(ストライピング)と、ルックスはそのまま、今風に、そして磨きをかけて登場した。おもな仕様は以下のとおり。
ASUS「ROG Strix SCAR 15(G532LWS)」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i9-10980HK(8コア16スレッド/2.4GHz~5.3GHz/キャッシュ 16MB/TDP 45W) |
メモリ | 32GB(DDR4-3200) |
ストレージ | M.2 NVMe PCIe SSD 1TB+1TB SSD(RAID 0) |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
ディスプレイ | 15.6型フルHD(1,920×1,080ドット)、非光沢、300Hz/3ms/sRGB 100%、HDMI(2.0b)/Type-C(DisplayPort) |
グラフィックス | GeForce RTX 2070 SUPER with 8GB GDDR6 VRAM |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6対応、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.1/Type-C、USB 3.0 Type-A×3、音声入出力 |
バッテリ駆動時間 | 約8時間 |
サイズ/重量 | 約360×275×21~24.9mm(幅×奥行き×高さ)/約2.35kg |
税別価格 | 327,091円 |
プロセッサは第10世代Comet LakeのCore i9-10980HK。8コア16スレッド、クロックは2.4GHzから最大5.3GHz。キャッシュは16MB、TDPは45W。メモリはDDR4-3200の32GB(16GB×2)。ストレージは1TBのSSDを2つでRAID 0(ストライピング)/2TBを構成し高速化を図っている。OSは64bit版Windows 10 Home。
ディスプレイは、15.6型非光沢のフル(1,920×1,080ドット)。300Hz/3ms、sRGB 100%とかなり高性能だ。外部出力用にHDMI(2.0b)とType-C(DisplayPort)を装備。
グラフィックスはTuringアーキテクチャのGeForce RTX 2070 SUPER with 8GB GDDR6 VRAM。メモリ速度14Gbps、CUDAコア2,560など強力なGPUとなる。
ネットワークは、Gigabit Ethernet、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.0。そのほかのインターフェイスは、USB 3.1/Type-C、USB 3.0 Type-A×3、音声入出力。一般的なWebカメラやSDカードスロットはない。
加えてRGBキーボードバックライトと、PCごとにペアリングができ、後述するARMOURY CRATEの設定を保存/復元、シャドウドライブなどを可能にする、ROG Keystone IIにも対応する。
サイズは約360×275×21~24.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.35kg。冒頭に書いたように、1世代前から、プロセッサ、GPU、ストレージなどの構成を変更(新しく)したモデルとなる。税別価格は327,091円。
なお、同時に発表されたROG Strix G15は、見た目はほぼ同じだが、Core i9選択肢なし、パネルが144Hz、DDR4-2933、RAID 0構成なし……など、ROG Strix SCAR 15の廉価版(と言ってもかなりのハイエンドだが)に相当する。
BMW Designworks Groupとのコラボレーションによる筐体は、基本マットブラックだが、表面にサイバー・テキストのパターンが描かれており、未来っぽい雰囲気を醸し出している。重量は約2.35kgと15.6型として考えると重いものの、内容を考慮すると逆に軽い気がしないでもない。
前面は今時としてはめずらしくWebカメラがなく、上左右はある程度狭額縁。天板のロゴはプログラマブルなイルミネーション。左側面にUSB Type-A×3、音声入出力。右側面に放熱用のスリットとROG Keystone用のへこみ。後ろ側面にGigabit Ethernet、HDMI、Type-C、電源入力を配置。付属のACアダプタは、サイズ約180×85×35mm(幅×奥行き×高さ)、重量847g、出力20V/14A。結構大きく重い。
15.6型のディスプレイは、明るさ、発色、コントラスト、視野角……すべて良好。非常に綺麗でゲームが映える。また非光沢なので眼にも優しい。300Hz対応なのでスムーズに描画される印象だ。
i1 Display Proを使い特性を測ったところ、まず標準の明るさ120cd/平方mは、最大から-4が132cd/平方m、-5が114cd/平方mとなった。したがって前者で計測している。黒色輝度は0.130cd/平方m。つまり、(目視可能かは別として)若干黒が浮く。リニアリティは、暗い色に少し山があるものの、ほぼリニア。ただし明るくなるほどR/G/Bが重ならなくなる。
キーボードはUS配列だ。プログラマブルなRGBバックライトを搭載している。主要キーのキーピッチは約19mm。いびつな並びもなく、打鍵感は、重くなく軽くなくしっかりしている上にクリック感もあり、さすがと言ったところ。タッチバッドは物理的な2ボタンタイプ。フットプリントがある分、パームレストも含め十分面積が確保されている。
ノイズや振動は、ARMOURY CRATEの動作モード、サイレントとパフォーマンスでは気にならないレベルだ。発熱は右側面のスリットおよび右奥角あたりに集中し、ほかの部分はほとんど熱を持たない。極薄ファン、アンチダストトンネル、広範囲をカバーするヒートパイプ、ヒートシンクフィンなどINTELLIGENT COOLINGと呼ばれる機構が効いているようだ。
サウンドは、両側面中央少し手前にスリットがあり、そこから音が出るため、一般的な裏にスピーカーがあるタイプよりクリアだ。ステレオ感も十分。ただし、もう少しパワーが欲しいところか。
CPU、GPU、ストレージ……すべてが超高性能
初期起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。ASUSグループがプリンストールとなる。デスクトップは壁紙の変更のみとシンプルだ。使用感は、この構成で遅いはずがなく、快適に動作する。余裕があればゲーミングだけでなくビジネス用途でも使いたい。
ストレージはSSD 1TB×2をRAID 0(ストライピング)で構成している。BIOSによると「INTEL SSDPEKNW010T8」を使用。仕様では順次読み出し(最大)1,800MB/s、順次書き込み(最大)1,800MB/s。CrystalDiskMarkだと2,927.251MB/s、2,778.315MB/s。倍とは行かないものの、単独での仕様をかなり上回り、RAID 0の特徴が見られる。C:ドライブのみの1パーティションで約1,888GB割り当てられ空き1.79TB。BitLockerで暗号化されている。
Wi-FiとBluetoothはIntel製、Gigabit EthernetはRealtek製。NVIDIAコントロールパネルよりGeForce RTX 2070 SUPERはCUDAコア2,560。メモリGDDR6 8GBなのがわかる。
おもなプリインストールのソフトウェアは、MyASUS、AURA Creator、GameVisual、ARMOURY CRATEなど。AURA Creatorは自分だけのイルミネーションを作るエディタ。GameVisualは、画面発色のコントロールだが、ARMOURY CRATEを起動すると「ARMOURY CRATEへ統合したので削除する」とのメッセージが出る。ARMOURY CRATEは、動作モード、ライティングの調整など、本機を集中的にコントロールできるソフトウェアだ。先に書いたROG Keystone IIのコントロールもここに含まれる。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。ARMOURY CRATEで動作モードをサイレント、パフォーマンス、ターボと設定できるので標準のパフォーマンスで測定。Sky Diverのみ3パターン掲載した。
結果はすべてにわたり高スコアだが、とくに3DMarkは圧巻だ。Fire Strikeの最後のシーンも30fpsを超えている。動作モードの違いは、36,477 / 43,405 / 45,755とそれなり差が出る。ただしターボは、ファンの音(シャーっという音)が結構うるさく、常用はしたくない感じだ。
PCMark 10/BATTERY/Modern Officeは6時間31分(キーボードバックライトオフ。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様上は最大8時間だが、テスト内容が重いので、妥当なところだろう。
ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2177 | |
PCMark 10 Score | 5,312 |
Essentials | 9,757 |
App Start-up Score | 12,618 |
Video Conferencing Score | 8,537 |
Web Browsing Score | 8,625 |
Productivity | 8,092 |
Spreadsheets Score | 9,828 |
Writing Score | 6,664 |
Digital Content Creation | 5,153 |
Photo Editing Score | 11,463 |
Rendering and Visualization Score | 3,013 |
Video Editting Score | 3,962 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 4,904 |
Creative Accelarated 3.0 | 4,685 |
Work Accelarated 2.0 | 6,358 |
Storage | 5,031 |
3DMark v2.12.6964 | |
Time Spy | 7,977 |
Fire Strike Ultra | 4,966 |
Fire Strike Extreme | 9,540 |
Fire Strike | 18,149 |
Sky Diver | 36,477 / 43,405 / 45,755 |
Cloud Gate | 45,899 |
Ice Storm Extreme | 137,040 |
Ice Storm | 129,595 |
CINEBENCH R20 | |
CPU | 3,610 pts(4位) |
CPU(Single Core) | 464 pts(2位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 2927.251 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 2778.315 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1086.107 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 402.611 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 385.420 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 399.058 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 51.283 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 121.070 MB/s |
以上のようにASUS「ROG Strix SCAR 15(G532LWS)」は、Core i9-10980HK、GeForce RTX 2070 SUPER、メモリ32GB、ストレージSSD 1TB×2のRAID 0、そして300Hz/3ms/sRGB 100%の15.6型フルHDパネルを搭載したゲーミングノートPCだ。ARMOURY CRATEを使った集中管理やプログラマブルなカラーイルミネーションもなかなかよくできている。
2基のSSDを使ったRAID 0は、片方が壊れると終わりなので(実際泣いた知人が何人か……)、怖いと言えば怖いが、それ以外、とくに気になる部分もなく、ゲーマーはもちろん、クリエイター系やパワーが欲しいビジネス系でも、とにかくノートPCで美しい画面に加え、CPU、GPU、ストレージ、すべてにハイパワーを求めているユーザーに使ってほしい1台だ。