Hothotレビュー

さよならデスクトップ。300Hzの高性能環境を実現するゲーミングノート「ROG Strix SCAR 17」

最新・最高のゲーミング環境をコンパクトに

ROG Strix SCAR 17(型番: G733QS-R9XR3080EC3)

 ASUSが1月に発表した17.3型の最新ゲーミングノート「ROG Strix SCAR 17(型番: G733QS-R9XR3080EC3)」の検証機が届けられたので、早速レビューをお届けしたい。

 本機は2月中旬~下旬に発売予定で、価格は32万9,800円。ハイエンドの製品を並べるROGブランドのノートパソコンということで、今回も最新世代のCPUとGPUをいち早く搭載したモデルとなっている。

 「処理能力の高いパーツを詰め込んだハイエンドパソコンです」というのはROGシリーズでは当たり前。本機では、CPUにASUS独自のオーバークロックがかけられるほか、リフレッシュレート300Hzの液晶パネル、光学式スイッチ採用のキーボード、6本のヒートパイプや液体金属グリスなどによる冷却機構、CPUに5フェーズ、GPUに7フェーズの電源回路などなど、特別な仕掛けが満載されている。

最先端のハイスペックノートだが、仕様に特殊な部分も

 まずは「ROG Strix SCAR 17」のスペックを確認しよう。

【表1】ROG Strix SCAR 17(型番: G733QS-R9XR3080EC3)のスペック
CPURyzen 9 5900HX(8コア/16スレッド、3.3~4.6GHz)
GPUGeForce RTX 3080(16GB)
メモリ32GB DDR4-3200(16GB×2)
SSD2TB(1TB×2 RAID 0、M.2 NVMe PCIe 3.0)
光学ドライブなし
ディスプレイ17.3型非光沢液晶(300Hz)
解像度1,920×1,080ドット
OSWindows 10 Home
汎用ポートUSB 3.1 Type-C、USB 3.0×3
カードスロットなし
映像出力HDMI、USB 3.1 Type-C
無線機能Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1
有線LANGigabit Ethernet
その他音声入出力など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)395×282.1×23.4~27.5mm
重量約2.75kg
価格32万9,800円

【22時追記】今回の試用機はSSDがRAID 0構成になっていますが、製品版ではRAIDが使われておりません。そのため、ベンチマークのスコア等が製品版とは異なりますのでご注意ください。

 CPUは最新のZen 3アーキテクチャを採用したRyzen 9 5900HX。ノートパソコン向けでありながら、8コア16スレッド、ベースクロックで3.3GHzという、デスクトップ顔負けのスペックを有している。さらにGPUはGeForce RTX 3080でビデオメモリは16GB、メインメモリは32GB、ストレージはNVMe SSD 1TB×2と、最新かつ破格のハイスペックが並ぶ。

 ディスプレイは解像度こそフルHDながら、リフレッシュレートは300Hzと超高速。ディスプレイサイズも17.3型と大きめで、高リフレッシュレートでの快適なゲームプレイを実現できる。

 これらのスペックからして、筐体は相当なビッグサイズになると想像してしまうが、重量約2.75kg、厚さ23.4~27.5mmと、かなりコンパクトに収まっている。あまりにコンパクトだと放熱や騒音が心配になってしまうが、そのあたりは後ほど実機で検証していきたい。

 Type-CのUSB 3.1ポートは、映像出力と本体への給電にも対応しており、給電は100WのUSB PDを利用可能。本機の消費電力は最大約240Wとされており、フル稼働時にはUSBからの給電では追いつかない計算になるが、低負荷時や未使用時などにUSB Type-Cから充電できるのは、先々で重宝する場面がありそうだ。

 なお充電には100W出力のUSB PD充電器が必要とされ、筆者所有のスマートフォン用USB PD充電器(27W出力)では充電できなかった。

 そのほかの注意点としては、キーボードは100キー英語配列となっており、日本語配列の製品は用意されていない。またノートパソコンとしてはめずらしく、Webカメラを搭載していない(マイクは内蔵しているのでボイスチャットは可能)。その分、ディスプレイ上部が狭額縁ですっきりしており、筐体の小型化にも一役買っている。

デスクトップパソコン顔負けの処理能力を実現

 早速、実機の検証に入ろう。まずはベンチマークテストを試していく。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2506」、「3DMark v2.16.7113」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.0」。

 本機は専用ソフト「Armoury Crate」を使い、性能の調整ができる。静音の「サイレント」、標準の「パフォーマンス」、高性能な「Turbo」(なぜかこれだけ英語だった)の3種類があり、ほかに自分で細かく設定できる「手動」がある。標準だと、ACアダプタ接続時は「パフォーマンス」、未接続時は「サイレント」に設定される。

 今回のテストでは、「パフォーマンス」と「Turbo」でベンチマークテストを実施。バッテリテストについては、実際の使用環境を想定して、初期設定の「サイレント」とした。

【表2】ROG Strix SCAR 17のベンチマークスコア
パフォーマンスモードTurboモード
「PCMark 10 v2.1.2506」
PCMark 107,1037,230
Essentials10,31610,003
Apps Start-up score14,91913,505
Video Conferencing Score7,8767,899
Web Browsing Score9,3459,384
Productivity9,70510,391
Spreadsheets Score11,27513,050
Writing Score8,3548,354
Digital Content Creation9,7139,871
Photo Editing Score15,79015,931
Rendering and Visualization Score11,46311,785
Video Editing Score5,0645,123
Idle Battery Life(サイレント)11時間49分
Modern Office Battery Life(サイレント)87間57分
Gaming Battery Life(サイレント)1時間10分
「3DMark v2.16.7113 - Time Spy」
Score10,93511,199
Graphics score11,13111,477
CPU score9,9469,852
「3DMark v2.16.7113 - Port Royal」
Score6,7696,963
「3DMark v2.16.7113 - Fire Strike」
Score24,34824,779
Graphics score27,54528,238
Physics score25,29125,609
Combined score12,64112,596
「3DMark v2.16.7113 - Wild Life」
Score53,73455,084
「3DMark v2.16.7113 - Night Raid」
Score45,68946,634
Graphics score74,11874,367
CPU score14,39714,980
「3DMark v2.16.7113 - Sky Diver」
Score43,88644,079
Graphics score62,76264,024
Physics score19,70819,328
Combined score31,00831,140
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score10,65910,802
Average frame rate232.36FPS235.49FPS
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score9,5819,838
Average frame rate208.87FPS214.47FPS
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score3,3583,456
Average frame rate73.19FPS75.35FPS
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
3,840×2,160ドット4,8675,046
1,920×1,080ドット9,98710,326
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(最高品質)
1,920×1,080ドット15,56015,591
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット43,31544,910
「Cinebench R23」
CPU(Multi Core)12,912pts13,299pts
CPU(Single Core)1,486pts1,456pts

 結果で目を引くのは、「Cinebench R23」のスコアの高さ。8コア16スレッドで同等のデスクトップ向けCPUと比較しても、前世代のものなら勝ててしまうほどだ。シングルコアでも高いスコアが出ており、Zen 3アーキテクチャの素性の良さがうかがえる。

 GPUのほうは、さすがにデスクトップ向けのGeForce RTX 3080に比べると落ちるものの、半減まではいかない。デスクトップ向けのミドルクラスGPUには勝るとも劣らない性能は確認できる。

 ゲーム系のベンチマークテストでも、フルHDでは最高評価が並ぶが、本機の場合、フルHDで300Hzのディスプレイを利用することになる。「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」では150~200fps、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」では平均約130fpsとなっている。これらは最高画質設定での話なので、画質よりフレームレートを優先するなど好みに合わせた設定を選ぶといい。

 「パフォーマンス」と「Turbo」の設定の差については、全体的に2%前後の向上が見られる。動作中のCPUやGPUの最高クロックを確認しても差は見当たらないが、CPUとGPUの温度は少し上がっているので、冷却を強化した分で性能向上を拾っているものと思われる。劇的な向上ではないものの、発熱以外にネガティブなデータもないので、騒音と相談しながら使うのがいいだろう。

 ストレージはM.2 PCIe接続のSSDを、RAID 0で2基接続した構成。そのため搭載されているSSDがBIOSからも確認できなかった。BIOS等の情報から類推できる情報からは、おそらくSamsung製の製品で、PCIe 3.0対応の製品となっている。

 データとしては、シーケンシャルリードで7GB/sを超えるなど極めて優秀で、RAID 0の効果が出ている。しかも容量は2TBなので、速度と容量の両面で最高級の環境と言える。

CrystalDiskMark 8.0.0

15.6型相当のコンパクトな筐体に注目機能が満載

取り換え可能なArmorキャップがユニーク

 続いて製品の各所を見ていきたい。筐体はブラックをベースに、一部にグレーや半透明部分がある。左奥にあるROGと書かれたグレーの部分はArmorキャップと呼ばれており、取り外しが可能。シルバー、半透明の同形状の部品が付属しており、好みに応じて外見を変えられる。

 外見の部分的なユニークさはあるものの、筐体の天面はほぼフラットで、形状としてはオーソドックスな部類。見た目のサイズや持ったときの感触から、15.6型ゲーミングノートならこのくらいだろう、という印象を持った……が、それは間違い。筆者が本機を手にした当初は勘違いしていたのだが、本機は17.3型ノートパソコンだった。

 液晶の額縁部分は、左右と上がいずれも5mmほどと狭く、画面サイズに対してのフットプリントは限界に近いほど小さい。さらに厚みも一般的なゲーミングノートと比べても十分薄く、持ったときの手の収まりもいい。モバイル用とまでは言わないにしても、ちょっとした持ち運びならまったく支障がない。

 加えて剛性も高い。液晶部分をねじるような動きにもほとんどたわみが出ず、天板を押してもほとんどへこまない。液晶部分の厚みは約7mmあり、堅牢性の高さも感じさせる。スペックから考えればとてもコンパクトで、持ち運びもしやすいのは高く評価したい。

 装飾類は、筐体前面と液晶下部にLEDバーが仕込まれている。液晶背面のロゴ部分とキーボードバックライトと合わせて、LED装飾はかなり多め。ただLEDの場所がキーボードバックライトを除いて使用中に直接見えにくい場所にあるため、間接照明的なかたちで淡い光の演出に見える。遠目に見ると存在感があるので、なかなかうまいやり方だと思う。なおLED演出は専用アプリでカスタマイズできる。

 筐体を見渡すと、右側に端子がないのがわかる。左手はキーボード、右手はマウスというスタイルでゲームをプレイするとき、筐体右側からケーブルが出ているとマウス操作の邪魔になりがち。端子がなければ邪魔になることもなく、ゲーマーフレンドリーな仕様だ。左利きのゲーマーは困るかもしれないが、背面にもUSB Type-AとType-Cが1つずつあるので、そちらで対応する手はある。

天面はほぼフラット。液晶とのつなぎ目部分に少しくぼみがある
前面は下部にLED装飾のバーが仕込まれている
左側面はUSB 3.0×2、ヘッドセット用端子
右側面には端子部がない
背面には電源端子、Gigabit Ethernet、HDMI、USB 3.1 Type-C、USB 3.0
底面のデザインはユニーク。吸気口やスピーカーが見える
LED類の光り方は専用ソフト「Armoury Crate」でカスタマイズできる。AURA Sync対応機器を連動して光らせることも可能
LEDの光り方を細かくカスタマイズするツール「AURA Creator」も付属

 液晶は非光沢タイプで、色味に派手さはないものの、明るさ100%にするとまぶしく感じるほど十分な光量がある。視野角も広く、17.3型の画面も違和感なく使える。300Hzのリフレッシュレートのおかげで、ゲームだけでなく普段使いのスクロールなども滑らかで快適だ。スクロール中の残像感もほとんどなく、高いリフレッシュレートを活かしきっている。

 本機の注目ポイントの1つである光学式スイッチを採用したキーボードは、押すとメカニカルスイッチ風のカチカチという小さい音がする。しかし音から連想するほどのクリック感はなく、軽いタッチと浅いストロークで押せる。光学式の特徴とされる高速なインプットを最優先にしたような仕様だ。Nキーロールオーバーで同時押しにも強い。

 キートップはほぼ正方形で、カーソルキーも独立したスペースに配置されている。スペースキーのような長いボタンでは、端を押してもきちんと全体が真下にストロークする。キーがカチカチ鳴る点と、英語キーボードであることで好みは分かれるが、1億回の打鍵テストに合格したという耐久性も含め、キーボードそのものは極めて優秀なものだと思う。

 タッチパッドは一枚板でボタンが分かれていないタイプ。手前の左右でクリックできるのだが、タッチパッドの最上段付近でも押し込むとクリックできてしまう。右手前部分以外はすべて左クリック扱いになるので、おそらく意図的にこういう機構にしているのだと思うが、ドラッグ&ドロップの操作などで誤ってクリック操作してしまうので、使い勝手がよくない。

液晶は非光沢で、明るく目に優しい色味
視野角も十分あり、使用上の違和感はない
キーボードは英語配列ながら全体に余裕がある
タッチパッドは大きめだが、クリックの仕様が惜しい

 スピーカーはキーボード奥と底面手前に左右1つずつ、計4つ搭載されている。キーボード奥のスピーカーで高音から人間の声辺りまでの音域をクリアに出し、底面のものは低音重視で音のバランスを取っている。4スピーカーのおかげで音の出所がうまくまぎれ、低音のサポートも効いて、全体として自然な音の出方になっている。

 スピーカー1つ1つはいかんせん小型なので、低音はそこまで強くなく、高音もやや尖った印象はあるが、ノートパソコンとしては贅沢な音が出せるほうだ。ゲームや動画視聴であれば不満なく使えるだろう。

 排熱処理では、底面から吸気し、左右側面の奥から背面にかけて排気する。低負荷時には、「サイレント」設定だとほぼ無音で、「パフォーマンス」および「Turbo」だとわずかにファンが回る音が聞こえる。

 高負荷時には、左右のファンが高速に回る。6本のヒートパイプと改良されたファンのおかげか、小型のわりには風量も大きい。また排気はかなり高温で、排気口は熱くて触れないくらいになる。排気口付近に熱に弱いものを置かないように注意。

 騒音は風量から考えればかなりひかえ目。音質はほぼ完全に風切り音だけで、ホワイトノイズのような音は耳触りに感じにくい。ゲームの音もあまり邪魔をしないので、ヘッドフォンなしでも使える程度だ。スペックや発熱量からすると、驚異的と言っていい静粛性だ。

 さらにすごいのはキーボード周りへの熱の伝わり方。FPSでよく使うW/A/S/Dキー付近はほんのり温かさを感じる程度で、リストレスト部にいたってはよく冷えたままだ。ファンクションキーなどがある上部はもう少し温かくなるので、ゲームでよく使うキー周りや、手首がつねに触れるリストレスト部は何としても冷やそうという意図が見える。

「Armoury Crate」を使ったパフォーマンス設定の切り替え。「サイレント」、「パフォーマンス」、「Turbo」、「手動」の4つが選べる

 使用感のほかにもう1点付け加えたい。キーボード部の右側には、普通のパソコンには見られないくぼみがある。これは独自のKeystone IIという機能で、マグネット式のNFCキーを挿し込めるようになっている。

 キーを挿し込むと、パフォーマンス設定を切り替えたり、指定したアプリを起動させたりといった挙動が可能になる。つまり、特定のゲームの環境をキー挿入だけで整えるという機能だ。さらにキーを挿し込んだときだけ使えるシャドウドライブの設定や、キーを外したときにWindowsアカウントをロックする機能など、セキュリティ関連の機能も有している。

 Keystone IIの使用は必須ではないので、これらの機能が不要であれば挿入せずに使い続けても問題ない。

Keystone IIのNFCキー。キーホルダーのようなパーツに入れて持ち運べる
キーボード右側のくぼみに装着して使う
NFCキーを挿入したときにパフォーマンス設定を自動で切り替えられる
ソフトを自動で起動させることも可能

 ACアダプタは240W出力とパワフルだが、出力のわりにはコンパクト。本体の薄い部分と同等の厚さになっており、持ち運びしやすいよう配慮されている。先述のように、100WのUSB PD充電器にも対応しているので、外でヘビーなゲームをしないのであれば、よりコンパクトな充電器を使うことも可能だろう。

240WのACアダプタ。本体とほぼ同等の厚みになっている

ほとんどのゲーマーを満足させてしまうであろうノートパソコン

 本格的にパソコンゲームをプレイするならデスクトップパソコンがいい、というのは認識として間違っていない。究極のハイエンドを求めるならそうだろう。

 本機はそこにくさびを打ち込むようなマシンだ。CPUパワーはデスクトップに引けを取らず、GPUも最新のミドルクラスに比肩する。大型で高リフレッシュレートのディスプレイも内蔵し、応答性に優れた光学式スイッチ搭載のキーボードを採用。ストレージも大容量かつ超高速で、メインメモリも十分。各所にゲーマーへの配慮が見える作り込みもすばらしい。これで不満のあるゲーマーは、いったいどのくらいいるだろうか?

ゲーマーのことを考え抜いて作られた1台だ

 ASUSが発するべきメッセージは、「これならゲーマーもデスクトップパソコンは要らないでしょ?」だろう。より大きな画面で遊びたいという人もいるだろうし、万人にマッチするとは言わない。とは言え、可搬性や省スペースにも魅力を感じるとしたら、本機ほどニーズを満たしてくれるパソコンはないだろう。

 あとはお値段とのご相談。32万9,800円と決してお安い1台ではないが、唯一無二の魅力を数多く有する本機を眺めて、じっくりと検討していただきたい。