西川和久の不定期コラム
スライド式QWERTY物理キーボード搭載のAndroidスマホ「F(x)tec Pro1」
2020年7月10日 06:50
6月23日リンクスインターナショナルは、5列66キーのスライド式QWERTY物理キーボードと、5.99型ELディスプレイを搭載した「F(x)tec Pro1」を7月4日から国内販売することを発表した。実機が編集部から送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
Snapdragon 835/6GB/128GBのハイエンド仕様
ほとんどのスマートフォンのキーボードはディスプレイ上のソフトウェア式。入力方法はガラケーからの流れをくむテンキー式かPCで一般的なQWERTYとなるだろうか。基本的にソフトウェアなので、並びやキートップの刻印に相当する部分の自由度は高く、IMEによっても並びがまちまちだったりする。Bluetoothで外部キーボードも接続可能だが、これを使うのは少数派だろう。
対してBlackBerryを代表とし、往年のハンドヘルドPC(最近だとUMPC)の流れをくみ、そのまま超小型化&スマホ化するようなアプローチも過去いろいろな機種で試されている。つまり物理的なキーボードを搭載しているスマートフォンだ。今回ご紹介するF(x)tec Pro1もその1つ。おもな仕様は以下のとおり。
英F(x)tec「F(x)tec Pro1」の仕様 | |
---|---|
SoC | Snapdragon 835(最大2.45GHz×4+最大1.9GHz×4/オクタコアCPU、Adreno 540) |
メモリ | LPDDR4 6GB |
ストレージ | 128GB |
OS | Android 9 |
ディスプレイ | 5.99型有機EL(2,160×1,080ドット)、Gorilla Glass 3 |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5+LE |
SIM | Nano SIMカードスロット×2 |
対応バンド | GSM : 2/3/5/8 CDMA : BC0/BC1 WCDMA : 1/2/4/5/8 : TD-SCDMA : 34/39 TDD-LTE 38/39/40/41(100mHz) FDD-LTE : 1/2/25/3/4/5/19/26/7/8/12/17/13/20/28 |
インターフェイス | USB Type-C(HDMI対応)、3.5mmジャック、microSDスロット(Nano SIMと排他)、ステレオスピーカー、5列66キースライド式QWERTY物理キーボード(バックライト搭載) |
センサー | 指紋、GPS/AGPS、加速度、近接、光、ジャイロ、磁気 |
カメラ | 背面カメラ : 1,200万画素(ソニーIMX363)、F1.8+500万画素、F2.0 前面カメラ : 800万画素、F2.0 |
サイズ/重量 | 154×73.6×13.98mm(幅×奥行き×高さ)/約243g |
バッテリ | 3,200mAh(QC3.0急速充電対応、約36分で50%) |
税別価格 | 89,900円前後 |
SoCはSnapdragon 835。性能優先の最大2.45GHz×4と省電力優先の最大1.9GHz×4の構成でオクタコアCPUだ。8xx系なのでハイエンド向けとなる。GPUとしてAdreno 540を内包。メモリはLPDDR4 6GB。ストレージは128GB。OSはAndroid 9を採用している。
ディスプレイは5.99型2,160×1,080ドットの有機ELでGorilla Glass 3対応。Type-CからHDMIもしくはDisplayPort(手元の機材で確認)で外部ディスプレイへミラーリングできる。
ネットワークはIEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5+LE。SIMはNano SIMが2つ(ただし一方はmicroSDカードと排他)。対応バンドは表のとおり。
インターフェイスは、USB Type-C、3.5mmジャック、microSDスロット(Nano SIMと排他)、ステレオスピーカー、そして本機の特徴であるバックライト対応の5列66キースライド式QWERTY物理キーボードを搭載している。センサーは、指紋、GPS/AGPS、加速度、近接、光、ジャイロ、磁気。
カメラは背面カメラ:1,200万画素(ソニーIMX363)、F1.8+500万画素、F2.0。前面カメラ:800万画素、F2.0。サイズ154×73.6×13.98mm(幅×奥行き×高さ)、重量約243g。バッテリは3,200mAh。約36分で50%充電のQC 3.0急速充電に対応している。税別価格は89,900円前後。もちろんリンクスインターナショナルが扱っているのは技適対応版となる。
筐体は裏がつや消し黒。前面から見た雰囲気も左右が狭額縁でかつ曲がっており今風だ。キーボードが仕込まれている分、厚みが13.98mm、そして重量が247gと、持ったとき、ズッシリ重い。参考までにiPhone 11 Pro Maxの重量は226g。これよりさらに重いことになる。
前面はパネル中央上にカメラ。背面は左上に背面カメラ。左側面にNano SIM/microSDカードスロット。下側面にType-Cとスピーカー。右側面に音量±ボタン、電源ボタン、指紋センサー、シャッターボタン。上側面に3.5mmジャックとスピーカーを配置。
Nano SIM/microSDカードスロットは、一般的なイジェクトピンを使うタイプではなく、へこみがあるので、そこへ小さいマイナスドライバー(爪では厳しかった)的なものでちょっと引っ掛けると出てくる仕掛けになっている。奥側がSIM1、手前がSIM2/microSDカードとなる。
付属品は、パネル保護フィルム、Type-A/Type-Cケーブル、ACアダプタと交換用プラグ(製品版とは異なる)。
ディスプレイの5.99型有機ELは、明るさ、発色、コントラスト、視野角すべて良好。有機ELらしく、黒がしまっていい感じだ。キーボードを出していないときは、タッチで普通のスマートフォンとして操作できる。キーボードを出しての横位置は、画面が結構横に間延びするため、写真のようにOSの機能である画面分割を使えば効率良さそうだ。
キーボードは、ノートPCの場合、パネル面が内側になっており、開くと出てくるが、本機はパネルが外側にあるため、開くのではなく、(電源ボタン側)を少し持ち上げながらスライドする感じとなる。角度は写真の位置で固定。
キーピッチが実測で9mmとかなり狭いものの、(個人差もあるだろうが)ギリギリ指が横のキーに触らない範囲となる。机か何かに置いている時は人差し指で、サイドを両手で持ってる時は親指を使う感じだろうか。Ctrl-C/Ctrl-Vでのコピペにも対応している。打鍵感は結構硬く、プチプチ入力する感じだが悪くない。キーボードバックライトを搭載しており、暗い場所でも容易に入力ができる。
IMEにGboardが設定されているので、物理キーボードをFxtec Pro1/英語(アメリカ)とし、言語に日本語と英語を設定すれば[Shift]+[Space]で日本語/半角英数(英語)の切り替えが可能だ。
発熱は使った範囲ではとくに気にならなかった。サウンドは、左右のスリットにスピーカーがあり、サイズのわりにステレオ感もしっかり出る。パワーも最大ではうるさいほど。カマボコレンジではあるものの、できる範囲でうまくバランス良く鳴らしている。3.5mmジャックからの出力も傾向は同じ。本体だけで音楽も動画も十分楽しめる。
ハイエンドのわりに物足らないカメラ
搭載しているカメラは、前面800万画素、F2.0。背面1,200万画素(ソニーIMX363)、F1.8と500万画素、F2.0。背面1,200万画素以外は固定フォーカス。背面1,200万画素の出力画素数は最大3,000×4,000ドット。Exif上の焦点距離は4mmとなっている。
モードは、オート、HDR、Portrait、Landscape、Sports、Candlelight、夕焼け、夜景、Beach、Snow、ProMode。
オートでは上のメニューバーで、フィルタ、ボケ、HDR、フラッシュの切り替えが可能。ProModeは、露出補正:±2、焦点距離、ホワイトバランス:Auto/白熱灯/蛍光灯/晴れ/曇り、ISO:Auto/100/200/400/800の設定ができる。
設定は、全般:撮影場所の記録、Face Detection、Storage。カメラ:カウントダウンタイマー、Continuous Shot、画像サイズ(12M/8M/5M/4M/3M/HD1080/2M/1.5M/1.3M/WXGA/HD720/1M/SVGA/WVGA/720x480/VGA/CIF/QVGA)、Picture quality(Low/Standard/High)、Redeye Reduction、露出、ホワイトバランス、Shutter Sound、Space Shoot。ビデオ:画質(4K UHD/HD 1080p/HD 720p/SD 480p/VGA/CIF/QVGA)、Video duration、Image Stabilization、Noise Reduction、Video Encoder(MPEG4/H263/H264/H265)、Audio Encoder、Video Rotation、低速度撮影、Video High FrameRate。
上記の表記からもわかるように、カメラアプリはほとんど日本語化されていない。表示/編集はGoogleフォトを使用する。
以下作例20枚を掲載する。撮影モードはオート。3枚目の黄色い花の写真だけ“ぼけ”をオンにしている。使用感は、カメラの起動、AF自体は速いのだが、モード/設定への切り替えや、メニューバーにある“ぼけ”……といったアイコンを押しても反応しないことがかなりの確率で発生しストレスだった。
“ぼけ”は、一昔前の周囲を無理にぼかした感じで不自然。発色自体は悪くはないものの、現在ミドルレンジ以下でもこのレベルであれば上回る機種が多い。価格帯やSoCはハイエンドであるが、カメラは残念ながら少し時代遅れと言えよう。
初期セットアップ
初期セットアップは、Wi-Fiのみ、Googleアカウント、各認証などはスキップして行なった。最初(UKになってるのが本機の特徴を表してて逆におもしろい)と、最後は少し違うので外すと計8画面の最小構成だ。サクッと初期セットアップは完了する。
指紋認証はパターン/PIN/パスワードを設定した後に登録できる。“センサーに触れる”の絵で、場所が右側面になっているのがわかる。電源ボタンと変わらないサイズ/面積なので、登録は少ししにくいものの、認証はすばやく終わる。
SIMは、一般的なDual SIMのパターンなので難しいところはない。APNをセットすれば、再起動なしに通信可能となる。
素のAndroid 9で素直な操作性
OSはAndroid 9。今年(2020年)出る端末で10でないのは残念なところ。初期起動時のストレージは15.99GB(12%)使用中(若干の画面キャプチャを含む)。上から下へのスワイプで通知パネル、下から上へのスワイプでアプリ一覧。壁紙長押しでホームの設定/ウィジェット/壁紙と、操作性はAndroid標準のままだ。
アプリは、「カレンダー」、「ドライブ」、「ファイル」、「フォト」、「マップ」、「メッセージ」、「時計」、「設定」、「電卓」、「電話」、「連絡帳」、「Chrome」、「Duo」、「FM Radio」、「Gmail」、「Google」、「Keepメモ」、「Playストア」、「Playムービー」、「Snapdragon Camera」、「YouTube」、「YT Music」。ほとんどAndroid標準のみ、そして他社と比較して異様に少ない。もともとこの端末は玄人志向なので、いらぬおせっかいは無用と言ったところなのだろう。
ウィジェットは、「カレンダー」、「ドライブ」、「ホーム画面のヒント」、「マップ」、「時計」、「設定」、「連絡帳」、「Chrome」、「Gmail」、「Google」、「Keepメモ」。
なお本機の特徴として、0~9、A~Zキーに好みのアプリを割り当て、長押しで起動することができる。設定方法は、壁紙の長押しでホームの設定/ウィジェット/壁紙を表示、ホームの設定からKeyboard Shortcuts、割り当てたい文字をタップ(ここではG)、アプリを選択(ここではChrome)、指定した文字を長押しでアプリが起動する。こういったショートカットは、物理的なキーボードを搭載している本機ならでは。うまく使えば便利そうだ。
一般的用途であれば十分なパフォーマンスとバッテリ駆動時間
ベンチマークテストは簡易式だが「Geekbench 5.1.1」と「Google Octane 2.0」を使用した。GeekbenchはSingle-Core 392、Multi-Core 1,648、OpenCL 1,976。Google Octane 2.0は11,381。
Single-CoreとMulti-Coreは、あまりミドルレンジと変わらないが、OpenCLは桁違いに速い。逆にSingle-CoreとMulti-Coreのスコアがこのクラスだと、Google Octane 2.0は1万少し超えと、あまり振るわなかった。
バッテリ駆動時間は、輝度/音量50%、Wi-Fi経由でフルHD動画を全画面連続再生して約12時間で電源が落ちた。短くもなく長くもなくと言ったところだろうか。
以上のようにF(x)tec Pro1は、Snapdragon 835、メモリ6GB、ストレージ127GB、5.99型2,160×1,080ドット有機ELディスプレイ、そしてキーボードを搭載したSIMロックフリーAndroidスマートフォンだ。なんと言っても最大の特徴は物理キーボード。バックライトやショートカットなどの機能もあり、パネルをタッチするソフトウェアキーボードとはまったく異なる使用感となる。
クラスのわりにカメラ性能がイマイチなのは残念。厚みがあって、重いのは仕方ないとして、そのほかに気になる部分はとくになく、とにかく物理的キーボード命! のユーザーに使ってほしい1台だ。