西川和久の不定期コラム
約1.3kgでComet LakeとGeForce MX250を搭載したモバイルノート「MateBook X Pro」
2020年6月13日 06:55
ファーウェイ・ジャパンは6月2日、MateBook X Proの新モデルを発表、6月5日より販売を開始した。Core i5とCore i7モデルがあるなか、後者が編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
ちょうど2年でモデルチェンジした13.9型ハイエンドノートPC
2018年6月に販売開始された前モデルの「MateBook X Pro」は、サイズ、重量、デザイン、パネル、クアッドスピーカー、ポップアップするWebカメラなどは同じ。プロセッサが第8世代Core i7/i5、GPUはGeForce MX150、ストレージは512GB/256GB SSDという構成だった。
そして今回2年を経てリニューアルされた。SKUは違うものの名称が同じなので、2020をつけたほうがわかりやすいかもしれない。というのも、スペックを調べようと名前で検索したところ、2018年モデルが先に見つかり、プロセッサの部分を見るまで気がつかなかった経緯がある。また執筆時点ではAmazon.co.jpで前モデルが今でも売られているため、余計ややこしいことになっている。
旧モデルとの違いは第10世代Comet Lakeになった点と、ストレージが倍増した点、そしてdGPU(Core i7モデルのみ)がパワーアップした点で、今時の構成となった。おもな仕様は以下のとおり。
【表】HUAWEI「MateBook X Pro」の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i7-10510U(4コア8スレッド/1.8GHz~4.9GHz/キャッシュ 8MB/TDP 15W) |
メモリ | 16GB/LPDDR3 2133MHz |
ストレージ | 1TB SSD |
OS | Windows 10 Home(64bit) |
ディスプレイ | 13.9型3,000×2,000ドット(260PPI)、sRGB100%、10点タッチ対応 |
グラフィックス | UHD Graphics 620/GeForce MX250(2GB)、Type-C |
ネットワーク | IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0 |
インターフェイス | USB 3.0×1、USB 3.1 Type-C×2、約100万画素Webカメラ、指紋センサー、音声入出力、クアッドスピーカー、クアッドマイク |
バッテリ容量/駆動時間 | 56Wh、14.9時間 |
サイズ/重量 | 約304×217×14.6mm(幅×奥行き×高さ)/約1.33kg |
MateDock2 | Type-A、Type-C×2(入力/出力)、HDMI、ミニD-Sub15ピン |
価格 | 261,781円(Amazon.co.jp調べ) |
プロセッサは、Comet Lakeの第10世代Core i7-10510U。4コア8スレッドでクロックは1.8GHzから最大4.9GHz。キャッシュは8MBで、TDPは15W。メモリはLPDDR3 2133MHzの16GB(8GB×2)。ストレージは1TB SSD。OSは64bit版Windows 10 Homeを搭載する。
グラフィックスは、プロセッサ内蔵UHD Graphics 620と、GeForce MX250(2GB)。外部出力用に本体側にType-C、MateDock2側にHDMIとミニD-Sub15ピンを備えている。ディスプレイは、13.9型3,000×2,000ドット(260PPI)、個人的に好みのアスペクト比3:2だ。色域sRGB 100%、10点タッチに対応する。
ネットワークは、IEEE 802.11ac対応、Bluetooth 5.0。今時としてはWi-Fi 6でないのが残念。そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×1、USB 3.1 Type-C×2、約100万画素Webカメラ、指紋センサー、音声入出力、クアッドスピーカー、クアッドマイク。Webカメラは狭額縁でフチには入り切らず、キーボードの上中央にポップアップ式で収まっている。SDカードなどには非対応だ。
標準でMateDock2が付属。Type-Cのケーブル1本でType-A、Type-C、HDMI、ミニD-Sub15ピンの拡張が可能だ。できればこちら側でGigabit EthernetとSDカードに対応してほしかったところか。ACアダプタは65WタイプのPD対応。30分の充電で本機を6時間使用することが可能だ。
サイズ約304×217×14.6mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.33kg。56Whのバッテリを内蔵し、最大14.9時間駆動。価格は261,781円(Amazon.co.jp調べ)。スペック的に仕方ないが高価なモデルとなる。
なお、Core i5-10210U(4C/8T、1.6-4.2 GHz)/16GB/512GB/iGPUの下位モデルは、価格195,781円(同)。用途的にiGPUでよければ、こちらを選択するのもありだろう。少し前に購入し、ご紹介したNUCもこのプロセッサでiGPUだが、十分快適に動作している。
筐体の色はスペースグレイ。質感や見た目も含め、某社のBookにそっくりだが、パネルが3:2なので、本機のほうがバランス的に奥行きがある。逆にWindowsマシンであの雰囲気がほしい人にはピッタリのデザインだ。約14型で実測1,347g。重いほうではないだろう。
前面は画面占有率91%なのでフチがほぼない。このためWebカメラはキーボード面にポップアップ式で収納している。ただローアングルになるため、顔の映りはあまり良くない。昨今ビデオ会議がはやっているので、これはマイナスポイントとなるだろう。
左側面に音声入出力、Type-C×2。右側面にType-Aを配置。横の写真からもわかるように3.5mmジャックの高さがギリギリとかなり薄く、コネクタ類はシンプルになっている。その分、Gigabit EthernetやSDカードスロットがないなど、一部犠牲になっているが、ここは痛し痒しと言ったところか。
付属のACアダプタは、サイズ約60×60×30mm、重量152g、出力5V/2A、9V/2A、12V/2A、15/V3A、20V/3.25A(65Wタイプ)。もちろんPD対応だ。またMateDock2と呼ばれる拡張ポートも標準で付属する。
キーボードは、オフ+2段階のキーボードバックライトつきアイソレーションタイプだ。ストロークとクリック感もそこそこあり、加えてキーピッチがそろっているのでかなり使いやすい。キートップの感触もいいのだが、少し汚れやすいのが玉に瑕。電源ボタンは指紋センサーを兼ねている。タッチパッドは1枚プレート型。パームレストも含め十分な面積を確保。年間数多くのノートPCを試用しているが、このキーボード/タッチパッドは個人的には上位にランクする好みとなる。
13.9型3,000×2,000ドットのディスプレイは、アスペクト比3:2とこれも筆者の好み。sRGB100%で発色も良く、明るさ(最大450 nit)、コントラスト、視野角も十分。品質の高いパネルが使われている。しかもタッチ対応だ。
余談になるが、長年使っていた「EIZO CG245W」から「BenQ SW240」へつい先日乗り換えた。24.1型非光沢1,920×1,200ドット、sRGB 100%/Adobe RGB 99%でハードウェアキャリブレーション対応なのだが、CG245Wとは違い、センサーは外付けになるため、フードと合わせて「X-Rite i1Display Pro」も購入。これによりノートPCのパネルなどの特性を測ることが可能になった(i1Profilerを使用)。以降、必要に応じて掲載するので参考にしてほしい。
基準値は、一般的に写真表示に適していると言われる“白色点D65K、輝度120cd/平方m”。ただしノートPCの輝度は加減が大雑把なので、一番近いところで合わすことになる。今回まんなかだと90cd/平方m、もう1つ上だと135cd/平方mだったので、後者で計測。
結果を見るとD65Kは完璧。黒色輝度(つまり真っ黒)も0cd/平方mになっているのでシャドウは浮いて見えない。R/G/Bのリニアリティもこの手のノートPCとしては優秀なほうだろう。ほぼほぼそろってる上に直線的だ。輝度は120cd/平方mではないものの、まんなか(90cd/平方m)か+1の位置(135cd/平方m)にすれば、写真を表示するのに適した状態となる。筆者が目視で「綺麗」と書くよりは、こちらのほうが説得力があるだろう。
振動やノイズは試用した範囲ではとくに感じなかった。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、キーボード上の金属部分が分単位で指を置くにはつらい温度、そしてパームレストまで熱が下りてくる。本機の唯一気になる部分だ。
サウンドは本体の裏左右にスリット、キーボード脇左右にメッシュがあり、直接音と机などに反射した間接音の2種類の音となる。筐体毎振動させるほどパワーがあり、ノートPCとしてはなかなかの音だ。幅もあるのでステレオ感も十分。本体だけで音楽も映像も楽しめる。
ストレスなしで操作でき、バッテリ駆動約12時間
初回起動時、スタート画面(タブレットモード)は1画面。とくに追加されたグループはない。デスクトップは壁紙の変更とPC Managerへのショートカットおよびタスクトレイに追加。構成が構成なのでストレスなく動作する。
ストレージは1TB SSDのSAMSUNG「MZVLB1T0HBLR-00000」。仕様によるとシーケンシャルリード3,500MB/s、シーケンシャルライト3,000MB/s。ベンチマークテストの結果もそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約938.25GBが割り当てられ空き903GB。
Wi-FiとBluetoothはIntel製。NVIDIAコントロールパネルでGeForce MX250(2GB)はCUDAコア384なのがわかる。
おもなプリインストールのソフトウェアは、「PC Manager」、「Huawei HotKeys」。PC Manager / 自分の端末にある、OneHop、スクリーン録画、ファイルとクリップボードを共有は、同社のスマートフォンでEMUI 9.1以上を搭載していれば使用可能。マルチスクリーンコラボレーションのみEMUI 10.0以上が必要となる。同社の端末が必要と、少しハードルが高いものの、所有していれば使わない手はない。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、CINEBENCH R20、CrystalDiskMark、PCMark 10/BATTERY/Modern Office。結果は以下のとおり。以前試用したCore i7-10510U/iGPUを搭載したノートPCと比較して、3DMarkはざっくり倍前後違う感じだ。
PCMark 10/BATTERY/Modern Office 11時間53分(キーボードバックライトOFF。明るさ、バッテリモードなどはシステム標準)。仕様では最大14.9時間であるが、このテストは結構重めなので、12時間近く持てば十分だと思われる。
【表】ベンチマーク結果 | |
---|---|
PCMark 10 v2.1.2177 | |
PCMark 10 Score | 3,985 |
Essentials | 8,713 |
App Start-up Score | 13,775 |
Video Conferencing Score | 6,557 |
Web Browsing Score | 7,324 |
Productivity | 7,201 |
Spreadsheets Score | 7,845 |
Writing Score | 6,610 |
Digital Content Creation | 2,737 |
Photo Editing Score | 3,209 |
Rendering and Visualization Score | 1,874 |
Video Editting Score | 3,410 |
PCMark 8 v2.8.704 | |
Home Accelarated 3.0 | 3,235 |
Creative Accelarated 3.0 | 3,597 |
Work Accelarated 2.0 | 4,492 |
Storage | 5,095 |
3DMark v2.11.6866 | |
Time Spy | 897 |
Fire Strike Ultra | 417 |
Fire Strike Extreme | 1,222 |
Fire Strike | 2,493 |
Sky Diver | 7,842 |
Cloud Gate | 10,057 |
Ice Storm Extreme | 37,730 |
Ice Storm | 32,135 |
CINEBENCH R20 | |
CPU | 1109 pts(10位) |
CPU(Single Core) | 374 pts(5位) |
CrystalDiskMark 6.0.0 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 3562.146 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 3025.548 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 1465.427 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 1131.628 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 578.713 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 415.835 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 51.542 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 170.416 MB/s |
PCMark 10/BATTERY/Modern Office | 11時間53分 |
以上のようにHUAWEI「MateBook X Pro」は、Comet LakeのCore i7、メモリ16GB、ストレージ1TB、13.9型3,000×2,000ドットのディスプレイ、そしてdGPUとしてGeForce MX250(2GB)を搭載したノートPCだ。性能はもちろん、バッテリ駆動時間も12時間近くと結構長い。ただ税込み価格が25万円オーバーなので、予算的に厳しいときは、Cpre i5/iGPUモデルも考慮に入れたい。
負荷をかけるとパームレストまで熱が下りてくるのは気になるが、全体的に完成度は高い。Comet Lakeで13型より少し広めでスリムなノートPCを探しているユーザーにおすすめしたい1台だ。