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試して分かった!「Ryzen 7 5800X3D」が世界最高のゲーム向けプロセッサである理由
2022年4月14日 22:00
AMDが4月22日に発売を予定している「Ryzen 7 5800X3D」は、3D V-Cache テクノロジーの採用によって従来の3倍のL3キャッシュを搭載した新CPUだ。価格は6万5,300円。
今回は、AMDが「世界最高のゲーム向けプロセッサ」であると謳うRyzen 7 5800X3Dの実力を、ベンチマークテストと実際のゲームを使ってテストしてみた。
【お詫びと訂正】初出時に発売日を4月20日としておりましたが、4月22日の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。
96MBのL3キャッシュを搭載するRyzen 7 5800X3D
Ryzen 7 5800X3Dは、Zen 3アーキテクチャに基づいて製造されたRyzen 5000シリーズの最新モデルで、Socket AM4に対応する8コア16スレッドCPU。TDPは105W。
基本的な設計は従来のRyzen 5000シリーズと共通だが、CPUダイであるCCD(Core Chiplet Die)にTSV(シリコン貫通ビア)技術を用いてSRAMを追加実装する「3D V-Cache テクノロジー(以下3D V-Cache)」を新採用したことで、96MBという大容量L3キャッシュを搭載している。このL3キャッシュ容量は、同じ8コア16スレッドCPUであるRyzen 7 5800X(32MB)の3倍だ。
3D V-CacheによってL3キャッシュ容量が激増したRyzen 7 5800X3Dだが、動作クロックについてはベースクロック=3.4GHz、ブーストクロック=4.5GHzとなっており、従来のRyzen 7 5800Xより低くなっている。今回の検証では、キャッシュ容量の増加がクロックの低下を補えるものなのかにも注目したい。
【表1】Ryzen 7 5800X3Dの主な仕様 | ||
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モデルナンバー | Ryzen 7 5800X3D | Ryzen 7 5800X |
CPUアーキテクチャ | Zen 3 | Zen 3 |
製造プロセス | 7nm CCD + 12nm IOD | 7nm CCD + 12nm IOD |
CPUコア数 | 8 | 8 |
CPUスレッド数 | 16 | 16 |
L2キャッシュ | 4MB | 4MB |
L3キャッシュ | 96MB | 32MB |
ベースクロック | 3.4GHz | 3.8GHz |
ブーストクロック | 4.5GHz | 4.7GHz |
CPU内蔵GPU (iGPU) | 非搭載 | 非搭載 |
対応メモリ | DDR4-3200(2ch) | DDR4-3200(2ch) |
PCI Express | PCIe 4.0 x24 | PCIe 4.0 x24 |
TDP | 105W | 105W |
対応ソケット | Socket AM4 | Socket AM4 |
比較用CPUとテスト環境
今回、Ryzen 7 5800X3D比較対象として、従来モデルである「Ryzen 7 5800X」のほか、Intelの第12世代Coreから「Core i7-12700K」と「Core i9-12900K」を用意した。
各CPUを搭載するマザーボードは、AMD環境がX570チップセット搭載マザーボード「ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI)」、IntelはZ690チップセット搭載マザーボード「ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4」。いずれもDDR4メモリに対応したマザーボードであり、今回はDDR4-3200動作のスタンダードメモリを合計32GB搭載した。
各CPUの動作設定については、基本的にはマザーボード標準設定を適用しているが、Intel製CPUについては電力リミットの上限値を各CPUのMTP値に設定した。
ビデオカードにはGeForce RTX 3090 Tiを搭載する「ASUS TUF-RTX3090TI-O24G-GAMING」を用意。今回は全ての環境で「Resizable BAR」を有効化している。
【表2】テスト機材一覧 | ||||
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CPU | Ryzen 7 5800X3D | Ryzen 7 5800X | Core i7-12700K | Core i9-12900K |
コア数/スレッド数 | 8C/16T | 8C/16T | 8P+4E/20 | 8P+8E/24 |
L3キャッシュ | 96MB | 32MB | 25MB | 30MB |
CPUパワーリミット | PPT=142W、TDC=95A、EDC=140A | PL1=PL2=190W、Tau=56秒 | PL1=PL2=241W、Tau=56秒 | |
CPU温度リミット | 90℃ | 100℃ | ||
ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI) [UEFI=4204] | ASUS TUF GAMING Z690-PLUS D4 [UEFI=1304] | |||
CPUクーラー | ADATA XPG LEVANTE 360 ARGB (ファンスピード=100%) | |||
メモリ | DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-52、1.2V) | |||
ビデオカード | ASUS TUF-RTX3090TI-O24G-GAMING | |||
システム用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) | |||
アプリケーション用SSD | CFD CSSD-M2B2TPG3VNF 2TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) | |||
電源 | Thermaltake Toughpower Grand RGB 1050W Platinum | |||
GPUドライバ | GeForce Game Ready Drivers 512.16 (30.0.15.1216) | |||
Resizable BAR | 有効 | |||
電源プラン | バランス | |||
OS | Windows 11 Pro 21H2 (build 22000.593/VBS有効) | |||
モニタリングソフト | HWiNFO64 Pro v7.22 | |||
ワットチェッカー | ラトックシステム RS-BTWATTCH2 | |||
室温 | 約25℃ |
ベンチマーク結果
それでは、ベンチマークテストの結果をみていこう。
実施したベンチマークテストは、「CINEBENCH R23」、「Blender Benchmark」、「V-Ray Benchmark」、「やねうら王」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra」、「3DMark」、「VRMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「Forza Horizon 5」「フォートナイト」、「Apex Legends」、「レインボーシックス シージ」、「Microsoft Flight Simulator」。
CINEBENCH
CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCINEBENCH R23では、CPUが備える全てのCPUコアでテストを行なう「Multi Core」と、1スレッドでテストを行なう「Single Core」を実行した。最低実行時間はどちらも標準の「10分」に設定している。
Multi CoreでRyzen 7 5800X3Dが記録したスコア「14,601」は比較製品中最下位で、Ryzen 7 5800Xを約4%、Core i7-12700Kを約35%、Core i9-12900Kを約46%、それぞれ下回っている。
Single CoreでもRyzen 7 5800X3Dのスコアは最下位の「1,473」で、Ryzen 7 5800Xを約6%下回り、Core i7-12700Kを約23%、Core i9-12900Kを約26%、それぞれ大幅に下回った。CINEBENCH R23では、3D V-CacheによるL3キャッシュの増加より、クロック低下の影響の方が大きかったようだ。
3DMark「CPU Profile」
3DMarkの「CPU Profile」は、CPUのゲーミング性能をCPUスレッド数毎に計測するテストだ。
ここでも、Ryzen 7 5800X3Dは比較製品中最下位に沈んでおり、Ryzen 7 5800Xを2~7%、Core i7-12700Kを14~26%、Core i9-12900Kを16~37%、それぞれ下回った。
Blender Benchmark
テストが刷新された「Blender Benchmark 3.0.0」では、3つのシーンのレンダリング速度(Samples per minutes)を計測した。
CPUのマルチスレッド性能が問われるこのテストでも、Ryzen 7 5800X3Dのスコアは比較製品中最下位で、Ryzen 7 5800Xを1~4%、Core i7-12700Kを22~31%、Core i9-12900Kを29~41%、それぞれ下回った。
V-Ray Benchmark
1分間CGレンダリングを実行してその速度を計測するV-Ray BenchmarkでもRyzen 7 5800X3Dは振るわず、Ryzen 7 5800Xを約2%、Core i7-12700Kを約27%、Core i9-12900Kを約36%、それぞれ下回った。
将棋ソフト「やねうら王」
将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型と、NNUE型のAVX2版とZen 3最適化版でベンチマークコマンドを実行した。
マルチスレッドでのRyzen 7 5800X3Dは、NNUE型のAVX2版とZen 3最適化版ではRyzen 7 5800Xとほぼ同等の速度を記録する一方、KPPT型ではRyzen 7 5800Xを8%上回った。3D V-Cacheの効果を確認できた一方、Intel製CPUには差をつけられており、Core i7-12700Kを11~30%、Core i9-12900Kを24~41%下回った。
シングルスレッドでのRyzen 7 5800X3Dは、NNUE型でRyzen 7 5800Xを約4%下回ったが、KPPT型では同等の速度を記録した。Intel製CPUとの比較では、Core i7-12700Kを9~11%、Core i9-12900Kを13~14%下回っている。
動画エンコードソフト「HandBrake」
オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのに掛かった時間を測定した。
Ryzen 7 5800X3Dのエンコード時間はRyzen 7 5800Xとほぼ同等で、3D V-Cacheが動作クロックの差をほぼ補っていることが確認できる。一方、Intel製CPUには大差をつけられており、そのエンコード速度はCore i7-12700Kから18~24%、Core i9-12900Kから24~34%遅れを取っている。
動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」
動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)のソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのに掛かった時間を測定した。
ここでもRyzen 7 5800X3DはRyzen 7 5800Xと遜色ないエンコード速度を発揮しており、動画のエンコードでは3D V-CacheによるL3キャッシュの増加がある程度有効に機能していることが伺える。ただ、Intel製CPUには及ばず、5万円前後で販売されているCore i7-12700Kを9~24%も下回っている。
PCMark 10
PCMark 10では、もっとも詳細なテストである「PCMark 10 Extended」のスコアを比較した。
Ryzen 7 5800X3Dが記録した総合スコア「11,293」は比較製品中最下位のものだが、ゲーム系のテストを行なう「Gaming」については、トップのCore i9-12900Kに次ぐスコアである「30,910」を記録しており、ゲーミングシーンにおける実力の片鱗を示している。
SiSoftware Sandra 「CPUベンチマーク」
SiSoftware SandraのCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」のスコアをグラフ化した。
「Arithmetic」と「Multi-Media」では、Ryzen 7 5800X3Dが備える3D V-Cacheの効果は表れておらず、Ryzen 7 5800Xを2~6%下回るスコアを記録している。このさい、「Arithmetic」ではIntel製CPUに及ばないが、「Multi-Media」では整数演算でCore i7-12700Kを上回っている。
「Image Processing」でも基本的にはRyzen 7 5800Xをやや下回っているRyzen 7 5800X3Dだが、「Diffusion」ではRyzen 7 5800Xを約30%も上回り、Intel製CPUに肉薄する高いパフォーマンスを発揮している。
SiSoftware Sandra「メモリベンチマーク」
SiSoftware Sandraで、メインメモリの帯域幅とレイテンシの計測を行なった。
Ryzen 7 5800X3Dのメモリ帯域幅は「35.76GB/s」で、これはRyzen 7 5800Xとほぼ同等で、38GB/s前後を記録したIntel製CPUを5~8%下回る数値だ。
Ryzen 7 5800X3Dのメモリレイテンシは「68.6ns」で、Ryzen 7 5800Xの70.4nsより若干短い一方、Core i7-12700Kの約2.2倍、Core i9-12900Kの約3倍となっている。
SiSoftware Sandra「キャッシュベンチマーク」
CPU内蔵キャッシュのレイテンシや帯域幅の測定を行なった結果、96MBのL3キャッシュ容量が効果を発揮すると期待される64MBブロックにおいて、Ryzen 7 5800X3Dは「11.2ns」のレイテンシと「552GB/s」の帯域幅を記録。同条件ではメインメモリにアクセスしている他のCPUを圧倒した。
3DMark
3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」、「Port Royal」を実行した。
Time SpyでのRyzen 7 5800X3Dは、Ryzen 7 5800Xをわずかに上回って全体3番手のスコアを記録したが、Core i7-12700Kを約6%、Core i9-12900Kを約7%下回った。
Fire StrikeではRyzen 7 5800Xにやや遅れをとったものの、Core i7-12700Kを約1%上回って全体3番手のスコアを記録。トップのCore i9-12900Kを約15%下回った。
Wild Lifeでは、Ryzen 7 5800X3Dは最下位に沈んでおり、Ryzen 7 5800Xを約2%、Core i7-12700Kを約8%、Core i9-12900Kを約8%、それぞれ下回っている。
一方、4K解像度で実行するWild Life Extremeでは各CPUのスコアが横並びとなっており、有意な差はついていない。これは、DXRテストであるPort Royalについても同様だ。
VRMark
VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」を実行し、スコアと平均フレームレートをグラフにまとめた。
DirectX 11テストのOrange Roomでは、Ryzen 7 5800X3DがRyzen 7 5800Xを約2%上回って全体3番手のスコアを記録。Core i7-12700Kを約2%、Core i9-12900Kを約8%下回った。
DirectX 12テストのCyan Roomでは、Ryzen 7 5800X3Dは最下位となっており、Ryzen 7 5800Xを約1%、Core i7-12700Kを約5%、Core i9-12900Kを約7%、それぞれ下回っている。
5K解像度テストのBlue Roomについては、各CPUのスコアが横並びとなっており、差がつかなかったと言って差し支えない結果となっている。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」にして、フルHD~4Kの画面解像度でテストを実行。スコアと平均フレームレートをグラフ化した。
ここで、Ryzen 7 5800X3Dは全ての条件で全体ベストのスコアを記録した。Ryzen 7 5800Xを6~23%、Core i7-12700Kを3~15%、Core i9-12900Kを2~12%上回った。
GPUのボトルネックが支配的になる4K解像度を除いた場合、Ryzen 7 5800Xを22~23%、Core i7-12700Kを13~15%、Core i9-12900Kを10~12%も上回っている。ファイナルファンタジーXIVの公式ベンチマークは、以前からキャッシュやメモリ速度が効果を発揮しやすいベンチマークであると認識していたが、3D V-Cacheの効果がこれほど顕著に表れるとは驚きだ。
平均フレームレートで比較した場合でも、4K以外ではRyzen 7 5800Xを約14%、Core i7-12700Kを8~11%、Core i9-12900Kを5~9%上回っている。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画品質を「高品質」にして、フルHD~4Kの画面解像度でテストを実行した。
Ryzen 7 5800X3Dは全ての条件で最高スコアを記録しており、Ryzen 7 5800Xを1~11%、Core i7-12700Kを2~11%、Core i9-12900Kを1~9%上回った。
Forza Horizon 5
Forza Horizon 5では、描画品質を「エクストリーム」に設定したフルHD~4Kの画面解像度と、フルHD解像度で描画品質を「高」に引き下げた高fps設定で、ゲーム内ベンチマークモードを実行した。
Ryzen 7 5800X3Dは、WQHD解像度でCore i9-12900Kを1fps下回ったものの、他の条件ではCore i9-12900Kと同等以上のフレームレートを記録して比較製品中最高の数値を記録している。
高fps設定ではCore i9-12900Kを4%上回って単独トップに立っており、Ryzen 7 5800Xを13%、Core i7-12700Kを15%上回った。
フォートナイト
フォートナイトでは、描画品質を「最高」に設定したフルHD~4Kの画面解像度と、フルHD解像度で描画品質を「中」に引き下げた高fps設定で、フレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は100%。
Ryzen 7 5800X3Dはここでもトップクラスの平均フレームレートを記録。高fps設定ではCore i9-12900Kを約2%上回ってトップを獲得し、Ryzen 7 5800Xを約16%、Core i7-12700Kを約22%上回った。
Apex Legends
Apex Legendsでは、描画品質を可能な限り高く設定して、フルHD~4Kの画面解像度でフレームレートを計測した。テスト時の上限フレームレートは300fps。
フルHDではフレームレート上限、WQHD以上ではGPUのボトルネックによって、各CPUの差はほとんどついていない。いずれのCPUもGeForce RTX 3090 Tiの性能を可能な限り引き出せた結果であるとも言える。
レインボーシックス シージ
レインボーシックス シージでは、描画設定を「最高」にして、フルHD~4Kの画面解像度でゲーム内ベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIは「Vulkan」で、レンダリングのスケールは100%。
WQHD以上では有意な差はついていないが、フルHDでは平均600fpsを記録したRyzen 7 5800X3Dがトップにたっており、Ryzen 7 5800Xを約12%、Core i7-12700Kを約22%、Core i9-12900Kを約3%上回った。
Microsoft Flight Simulator
Microsoft Flight Simulatorでは、描画設定を「ウルトラ」にしたフルHD~4Kの画面解像度と、フルHD解像度で描画品質を「ミドル」に引き下げた高fps設定で、フレームレートを測定した。グラフィックスAPIは「DirectX 11」で、羽田空港から関西国際空港へのルートをエアバスA320neoでAIに飛行させ、離陸から3分間の平均フレームレートを計測している。
Microsoft Flight Simulatorは、以前からCPUがボトルネックになってGPU性能を十分に引き出せないタイトルであると認識していたが、ここでRyzen 7 5800X3Dが示した結果は驚異的なものだった。Ryzen 7 5800X3Dは全ての条件で最高の平均フレームレートを記録しただけにとどまらず、GPUのボトルネックが支配的になる4Kを含めても、Ryzen 7 5800Xを20~48%、Core i7-12700Kを23~59%、Core i9-12900Kを5~33%もの大差で上回った。
テスト中に表示されたフレームレートを見て、設定ミスを疑ったほどRyzen 7 5800X3DのMicrosoft Flight Simulatorにおけるパフォーマンスは圧倒的なものだ。「ゲーム」という括りではともかく、Microsoft Flight Simulator用のCPUとして、Ryzen 7 5800X3Dが世界最高の選択肢であることは間違いないだろう。
システムの消費電力
ワットチェッカーを使ってシステムの消費電力を測定し、アイドル時の最小消費電力と、ベンチマーク実行中の平均消費電力および最大消費電力をグラフ化した。今回は、CPUベンチマークと3Dベンチマークの結果を分割してグラフ化している。
アイドル時の最小消費電力は、Ryzen 7 5800X3Dの94.7Wがもっとも高かった。Ryzen 7 5800Xも92.6Wを記録しており大きな差はついていないが、Intel製CPUは76.2~77.4Wを記録したIntel製CPUの方がアイドル時消費電力に関してはかなり有利なようだ。
CPUベンチマーク実行中の消費電力は、Ryzen 7 5800X3Dが平均202.4~230.4W、最大214.8~232.5Wで、これは比較製品中もっとも低い数値だった。同じ電力リミットが設定されているRyzen 7 5800Xを平均値で3~16%、最大値で4~12%下回っていた。クロックの低下などもあってか消費電力自体は低くなっているようだ。
3Dベンチマーク実行中のRyzen 7 5800X3Dの消費電力は、平均556.9~597.6W、最大596.7~641.6W。いくつかの条件でCore i7-12700Kと同程度になっているが、最大値に関しては比較製品中もっとも低い消費電力となっている。
CINEBENCH R23 Multi Core実行中のモニタリングデータを確認
HWiNFO64 Proを使って取得した、CINEBENCH R23のMulti Coreテスト実行中のモニタリングデータをもとに、CPU温度、消費電力、動作クロックの平均値と最大値をグラフ化した。
Ryzen 7 5800X3Dは、平均122.2Wの電力を消費しながら、平均CPUクロック4,354.6MHzで動作していた。CPU温度は平均81.8℃で最大82℃となっている。
CCD1基の面積から100W以上の発熱が生じることもあるRyzen 7 5800Xは、熱密度的に温度を下げるのが難しいCPUなのだが、消費電力(=発熱)が20W以上も低いにも関わらず同程度の温度になっているところを見ると、Ryzen 7 5800X3DもRyzen 7 5800Xと同等以上に温度を下げるのが難しいCPUのようだ。CCD上にSRAMを積層しているという構造的にも、熱伝導のボトルネックが大きくなっているであろうことは想像に難くない。
以下は、モニタリングデータを基に作成したCPUごとの推移グラフだ。いずれのCPUもサーマルスロットリングは作動していないが、Ryzen 7 5800Xだけは電力リミットであるPPTの142Wに到達していることが伺える。ほかのCPUは特にリミットが作動した様子はなく、最大限のブーストクロックで動作しているようだ。
ゲーミングシーンでの実力は「本物」。最上級のゲーミング性能を実現するRyzen 7 5800X3D
3D V-Cacheによって3倍に増加したL3キャッシュは、実際のゲームにおいてかなり有効に機能しており、従来モデルであるRyzen 7 5800Xを上回るだけでなく、最上級のゲーム向けCPUと思われていたCore i9-12900Kを相手に、多くのゲームで同等以上のパフォーマンスを発揮した。
今回実施したテストの中でも、Core i9-12900Kを圧倒してみせたMicrosoft Flight Simulatorでの結果は衝撃的なもので、キャッシュが効くゲームでは比類ないパフォーマンスを発揮するRyzen 7 5800X3Dは、現時点で最上級のゲーミング性能を備えたCPUであることは間違いないだろう。
CPUベンチマークの結果では5万円前後のCore i7-12700Kに大差をつけられてはいるが、Ryzen 7 5800X3DのCPU性能自体もそれほど悪いものではない。純粋なCPU性能への要求が高いクリエイティブアプリなどでの性能を期待するならベストな選択肢にはなり得ないが、ゲームでのパフォーマンスに重きを置くユーザーの期待に応えられるだけの性能をRyzen 7 5800X3Dは備えているはずだ。