Hothotレビュー
ペンが使えて1kg切りの軽量2in1「dynabook V8」。新開発の小型ダブルファンで処理速度もトップクラス
2020年12月23日 06:55
Dynabook株式会社は第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake)を搭載する13.3型2in1「dynabook V8」を11月10日に発表、11月下旬より販売開始した。税別店頭価格は22万円前後。
本製品はディスプレイが360度回転するヒンジ機構を備えた2in1。ワコムのアクティブ静電結合方式のスタイラスペンが同梱されており、5つのスタイルで利用できる「5in1プレミアムPenノートパソコン」と同社はアピールしている。
第11世代Coreプロセッサ搭載となれば、やはり気になるのは性能。というわけで今回のレビューでは、とくに性能面にスポットを当ててレビューしよう。
Core i7/i5搭載モデルを1機ずつとシンプルなラインナップ
dynabook V8には下位モデルとして「dynabook V6」がラインナップされている。両機種で異なるスペックは下記のとおり。
- dynabook V8
Core i7-1165G7、メモリ16GB、SSD 512GB - dynabook V6
Core i5-1135G7、メモリ8GB、SSD256GB
これ以外のスペックはまったく同じ。OSは「Windows 10 Home」を採用。ディスプレイはペン対応の13.3型フルHD液晶(1,920×1,080ドット)を搭載している。
インターフェイスはThunderbolt 4(Type-C)×2、USB 3.1 Type-A、HDMI、microSDXCカードスロット、3.5mmヘッドセットジャックを装備。通信機能はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.1をサポートしている。
カメラは92万画素Webカメラに加えて、キーボード奥に800万画素背面カメラを装備。タブレットスタイルで高解像度な800万画素背面カメラで撮影可能だ。また92万画素Webカメラを物理的にふさぐシャッターも装備。Windows Hello対応顔認証カメラ(IRカメラ)も標準搭載するなど使い勝手に配慮した仕様だ。
本体サイズは303.9×197.4×17.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約979g。筐体素材は軽量性と堅牢性を両立するためにマグネシウム合金が使われており、また製法もAパーツ(天面)とCパーツ(底面)はプレス、Bパーツ(キーボード面)はダイカストを採用。米国国防総省制定「MIL-STD-810G」に準拠した10項目の耐久テスト(落下/粉塵/高度/高温/低温/温度変化/湿度/振動/衝撃/太陽光照射)を実施予定とのこと(12月18日時点)。
製品公式サイトに耐久テストが「実施予定」と記載されているのを見るのははじめてだが、少なくともテストをクリアできる見込みはあるのだろう。
なお法人向けにはVZ/HPシリーズが用意されており、OS、CPU、メモリ(8GB/16GB)、ストレージ(256GB/512GB/1TB)、Officeの有無を自由に選択可能だ。
製品名 | dynabook V8 | dynabook V6 |
---|---|---|
型番 | V8/P P1V8PPBB | V6/P P1V6PPBB |
OS | Windows 10 Home 64bit | |
CPU | Core i7-1165G7(4コア8スレッド、4.7GHz) | Core i5-1135G7(4コア8スレッド、4.2GHz) |
GPU | Intel Iris Xe Graphics(1.3GHz) | |
メモリ | 16GB(LPDDR4X-4266) | 8GB(LPDDR4X-4266) |
ストレージ | 512GB SSD(PCIe 3.0 x2接続) | 256GB SSD(CIe 3.0 x2接続) |
ディスプレイ | 13.3型フルHD液晶 (1,920×1,080ドット、166ppi、16:9、非光沢、輝度非公表、色域非公表、タッチ対応、スタイラス対応) | |
通信 | IEEE 802.11ax、Bluetooth 5.1 | |
WWAN | - | |
インターフェイス | Thunderbolt 4(Type-C)×2、USB 3.1、HDMI、microSDXCカードスロット、音声入出力 | |
カメラ | 前面92万画素/背面800万画素 | |
バッテリ容量 | 53,130mWh(Battery reportで確認) | |
バッテリ駆動時間 | 約24時間 | |
バッテリ充電時間 | 約3.5時間(電源オフ時) | |
本体サイズ | 303.9×197.4×17.9mm(幅×奥行き×高さ) | |
重量 | 約979g | |
セキュリティ | Windows Hello対応顔認証カメラ(赤外線カメラ) | |
オフィスアプリ | Microsoft Office Home & Business 2019 | |
同梱品 | アクティブ静電ペン、ACアダプタ、電源ケーブル、取扱説明書、保証書、クリーナークロス | |
税別店頭価格 | 22万円前後 | 19万円前後 |
Dynabookが謳う5in1とは?
dynabook V8の製品ページを見ると、5つのスタイルで利用できる「5in1プレミアムPenノートパソコン」と謳っている。5つの内訳は「Note PCスタイル」、「Tabletスタイル」、「Penスタイル」、「Monitorスタイル」、「Flatスタイル」だ。
ディスプレイ回転型のコンバーチブル2in1は一般的に、ノートブック、スタンド、テント、タブレットと4つのモードをアピールしていることが多い。利用スタイルをどのようにアピールするかはメーカーの自由だが、「5in1プレミアムPenノートパソコン」というと2in1より利用スタイルが3つ増えているように感じられる。見出しだけでは誤解を招きそうだ。
それはさておきdynabook V8の使い勝手だが、実用性重視で真面目に作られているというのが率直な感想。カメラを物理的に遮断するカメラシャッターはプライバシー的に安心。92万画素Webカメラ、800万画素背面カメラは最新スマートフォンに比べれば見劣りするが、ノートパソコンというカテゴリのなかでは平均以上の画質だ。
キーボードは19mmのキーピッチ、1.5mmのキーストロークが確保されており、打鍵感は心地よく、打鍵音も低めに抑えられている。タッチパッドのストロークは個人的にはもう少し浅いほうが好みだが、許容範囲だ。快適に操作できるキーボード、タッチパッドだと思う。
Fキー | Enterキー | Spaceキー | |
---|---|---|---|
dynabook V8 | 0.51N | 0.54N | 0.5N |
13インチMacBook Air | 0.51N | 0.51N | 0.53N |
ZenBook 13 UX325EA | 0.53N | 0.5N | 0.51N |
13インチMacBook Pro | 0.51N | 0.54N | 0.5N |
One-Netbook A1 | 0.61N | 0.55N | 0.56N |
MUGAストイックPC3 | 0.51N | 0.46N | 0.47N |
DAIV 4N | 0.55N | 0.55N | 0.58N |
LG gram 2-in-1 | 0.6N | 0.6N | 0.6N |
16インチMacBook Pro | 0.55N | 0.55N | 0.55N |
ZenBook Duo | 0.56N | 0.54N | 0.55N |
平均以上の色域、音質も良好
dynabook V8には13.3型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、166ppi、16:9、非光沢、タッチ対応、スタイラス対応)が搭載されている。高輝度、高色純度、広視野角が謳われているIGZO液晶が採用されているものの、輝度や色域は非公表だ。
そこでカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で実測したところ、輝度は約300cd/平方m、色域はsRGBカバー率98.8%、sRGB比100.7%、Adobe RGBカバー率74.2%、Adobe RGB比74.6%、DCI-P3カバー率74.2%、DCI-P3比74.2%という結果となった。モバイルノートの非光沢ディスプレイとしては平均以上の色域だ。
一方サウンド面については、ハーマンインターナショナルと共同開発したharman/kardonステレオスピーカーを搭載し、立体音響技術「Dolby Atmos」を採用しているだけに、低音から高音までバランスのいいサウンドを楽しめる。
Dynabookによれば低音域の再現性を高めるためにかぎられたスペースでスピーカーボックスの容量を大きく確保しているとのこと。ただ、音質はよいのだが、ボリュームが少々物足りない。部屋のどこにいても楽しめる音量を確保したいのなら、外付けスピーカーを用意することをおすすめする。
冷却効率向上により高いクロック周波数を維持
最後に性能をチェックしてみよう。今回は同じく「Core i7-1165G7」を搭載する「ZenBook 13 UX325EA」と比較してみた。下記が検証機の仕様とその結果だ。
dynabook V8 | ZenBook 13 UX325EA | |
---|---|---|
CPU | Core i7-1165G7(4コア8スレッド、4.7GHz) | |
GPU | Intel Iris Xe Graphics(1.3GHz) | |
メモリ | LPDDR4X-4266 SDRAM 16GB | |
ストレ-ジ | 512GB PCIe NVMe SSD | |
ディスプレイ | 13.3型、1,920×1,080ドット(166ppi) | |
TDP | 28W | |
OS | Windows 10 Home バージョン2004 | |
サイズ (幅×奥行き×高さ) | 303.9×197.4×17.9mm | 304×203×13.9mm |
重量 | 約979g | 約1.15kg |
dynabook V8 | ZenBook 13 UX325EA | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.1.2506 | ||
PCMark 10 Score | 4,681 | 4,832 |
Essentials | 9,612 | 9,836 |
App Start-up Score | 11,994 | 13,031 |
Video Conferencing Score | 8,265 | 8,097 |
Web Browsing Score | 8,960 | 9,019 |
Productivity | 6,050 | 6,766 |
Spreadsheets Score | 5,655 | 5,971 |
Writing Score | 6,473 | 7,668 |
Digital Content Creation | 4,788 | 4,601 |
Photo Editing Score | 7,925 | 7,388 |
Rendering and Visualization Score | 2,770 | 2,749 |
Video Editting Score | 5,003 | 4,796 |
PCMark 10 Modern Office Battery Life ※ディスプレイ輝度50%で測定 | 10時間17分 | 12時間42分 |
3DMark v2.16.7113 | ||
Time Spy | 1,738 | 1,559 |
Fire Strike Ultra | 1,246 | 1,197 |
Fire Strike Extreme | 2,366 | 2,167 |
Fire Strike | 4,917 | 4,456 |
Night Raid | 16,320 | 14,182 |
Sky Diver | 13,399 | 12,862 |
Cinebench R23.200 | ||
CPU(Multi Core) | 5,108 pts | 4,697 pts |
CPU(Single Core) | 1,446 pts | 1,402 pts |
Cinebench R20.060 | ||
CPU | 1,973 pts | 1,823 pts |
CPU(Single Core) | 558 pts | 543 pts |
Cinebench R15.0 | ||
OpenGL | 94.67 fps | 88.09 fps |
CPU | 839 cb | 878 cb |
CPU(Single Core) | 218 cb | 217 cb |
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC) | 9,741(非常に快適) | 9,278(非常に快適) |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC) | 6,940(とても快適) | 6,335(とても快適) |
SSDをCrystalDiskMark 8.0.0で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 2,332.216 MB/s | 1,809.300 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 1,379.647 MB/s | 972.913 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 1,504.107 MB/s | 1,467.171 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 1,165.374 MB/s | 908.589 MB/s |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 267.154 MB/s | 344.804 MB/s |
4K Q32T16 ランダムライト | 314.989 MB/s | 440.939 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 36.757 MB/s | 39.137 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 81.319 MB/s | 110.229 MB/s |
まずCPUスコアだ。dynabook V8はZenBook 13に対してCinebench R23で約1.09倍に相当する5,108 pts、Cinebench R20で約1.08倍に相当する1,973 ptsを記録した。3Dグラフィックスにおいても、3DMarkのスコアはすべてdynabook V8が上回っており、とくにNight Raidでは約1.15倍に相当する16,320を記録している。
PCMark 10とCinebench R15のCPUスコアで結果が逆転しているが、ほとんどのベンチマークでdynabook V8が上回っていることを考えると、計測誤差ではなく実効性能が優れていることは間違いない。
そこでCinebench R23実行中のクロック周波数とCPU温度をチェックしてみた(室温19.2℃で測定)。すると、ベンチマークを実行してから36秒後にクロック周波数が2,530MHzまで一気に低下したあと、その後じりじりと上昇して51秒後に2,826.4MHzに到達し、1分56秒まで2,840MHz前後で安定。さらに、1分59秒後に3,128.9MHzに一気に上昇し、その後3,105MHz前後で推移してベンチマークを終了していた。CPU温度は一時102℃に達したが、36秒後以降は最大75℃にとどまっている。一方、ZenBook 13はベンチマーク後半でCPU温度は最大77℃に達し、クロック周波数は2,720MHz前後だ。
両者の最大CPU温度とクロック周波数を比較してみると、dynabook V8のほうが冷却効率はよく、高いクロック周波数を維持できている可能性が高い。ただし、OSのアップデートをそろえなければ厳密には比較できないし、現在のZenBook 13はファームウェアアップードなどで性能が改善されているかもしれない。あくまでも参考に留めてほしい。
一方バッテリ駆動時間は、ZenBook 13のほうが2時間25分長い結果となった。これはZenBook 13のほうが67Whと大容量のバッテリを搭載しているためだ。ただし重量は、dynabook V8が約979g、ZenBook 13が約1.15kg。バッテリ駆動時間と重量のどちらを優先させるかは悩ましい選択だ。
ライバルより高価だが軽量性を重視するならこれ一択
dynabook V8はTDP 28Wのプロセッサの処理能力を最大限に引き出すために、熱流体シミュレーションにより筐体内部の吸排気の流れを可視化し、「小型ダブルファン冷却システム」を新たに開発したという。その効果はベンチマークで確かに確認できた。
またカメラシャッター、800万画素背面カメラなど便利な機能も装備しており、1kg切りの重量、輝度50%で10時間超えのバッテリ駆動時間とモバイル性能も申し分ない。
価格は2in1の競合となるHP「ENVY x360」および「Spectre x360」、ASUS「ZenBook Flip S」より高価だが、軽量性を重視するなら“これ一択”と強く推せる1台だ。