Hothotレビュー

ペンが使えて1kg切りの軽量2in1「dynabook V8」。新開発の小型ダブルファンで処理速度もトップクラス

「dynabook V8」税別22万円前後

 Dynabook株式会社は第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake)を搭載する13.3型2in1「dynabook V8」を11月10日に発表、11月下旬より販売開始した。税別店頭価格は22万円前後。

 本製品はディスプレイが360度回転するヒンジ機構を備えた2in1。ワコムのアクティブ静電結合方式のスタイラスペンが同梱されており、5つのスタイルで利用できる「5in1プレミアムPenノートパソコン」と同社はアピールしている。

 第11世代Coreプロセッサ搭載となれば、やはり気になるのは性能。というわけで今回のレビューでは、とくに性能面にスポットを当ててレビューしよう。

Core i7/i5搭載モデルを1機ずつとシンプルなラインナップ

 dynabook V8には下位モデルとして「dynabook V6」がラインナップされている。両機種で異なるスペックは下記のとおり。

  • dynabook V8
    Core i7-1165G7、メモリ16GB、SSD 512GB
  • dynabook V6
    Core i5-1135G7、メモリ8GB、SSD256GB

 これ以外のスペックはまったく同じ。OSは「Windows 10 Home」を採用。ディスプレイはペン対応の13.3型フルHD液晶(1,920×1,080ドット)を搭載している。

 インターフェイスはThunderbolt 4(Type-C)×2、USB 3.1 Type-A、HDMI、microSDXCカードスロット、3.5mmヘッドセットジャックを装備。通信機能はWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.1をサポートしている。

 カメラは92万画素Webカメラに加えて、キーボード奥に800万画素背面カメラを装備。タブレットスタイルで高解像度な800万画素背面カメラで撮影可能だ。また92万画素Webカメラを物理的にふさぐシャッターも装備。Windows Hello対応顔認証カメラ(IRカメラ)も標準搭載するなど使い勝手に配慮した仕様だ。

 本体サイズは303.9×197.4×17.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約979g。筐体素材は軽量性と堅牢性を両立するためにマグネシウム合金が使われており、また製法もAパーツ(天面)とCパーツ(底面)はプレス、Bパーツ(キーボード面)はダイカストを採用。米国国防総省制定「MIL-STD-810G」に準拠した10項目の耐久テスト(落下/粉塵/高度/高温/低温/温度変化/湿度/振動/衝撃/太陽光照射)を実施予定とのこと(12月18日時点)。

 製品公式サイトに耐久テストが「実施予定」と記載されているのを見るのははじめてだが、少なくともテストをクリアできる見込みはあるのだろう。

 なお法人向けにはVZ/HPシリーズが用意されており、OS、CPU、メモリ(8GB/16GB)、ストレージ(256GB/512GB/1TB)、Officeの有無を自由に選択可能だ。

【表1】dynabook Vシリーズのスペック
製品名dynabook V8dynabook V6
型番V8/P P1V8PPBBV6/P P1V6PPBB
OSWindows 10 Home 64bit
CPUCore i7-1165G7(4コア8スレッド、4.7GHz)Core i5-1135G7(4コア8スレッド、4.2GHz)
GPUIntel Iris Xe Graphics(1.3GHz)
メモリ16GB(LPDDR4X-4266)8GB(LPDDR4X-4266)
ストレージ512GB SSD(PCIe 3.0 x2接続)256GB SSD(CIe 3.0 x2接続)
ディスプレイ13.3型フルHD液晶
(1,920×1,080ドット、166ppi、16:9、非光沢、輝度非公表、色域非公表、タッチ対応、スタイラス対応)
通信IEEE 802.11ax、Bluetooth 5.1
WWAN
インターフェイスThunderbolt 4(Type-C)×2、USB 3.1、HDMI、microSDXCカードスロット、音声入出力
カメラ前面92万画素/背面800万画素
バッテリ容量53,130mWh(Battery reportで確認)
バッテリ駆動時間約24時間
バッテリ充電時間約3.5時間(電源オフ時)
本体サイズ303.9×197.4×17.9mm(幅×奥行き×高さ)
重量約979g
セキュリティWindows Hello対応顔認証カメラ(赤外線カメラ)
オフィスアプリMicrosoft Office Home & Business 2019
同梱品アクティブ静電ペン、ACアダプタ、電源ケーブル、取扱説明書、保証書、クリーナークロス
税別店頭価格22万円前後19万円前後
本体天面。筐体の素材はマグネシウム合金
本体底面。2in1としては冷却口が多め
ディスプレイ面。ディスプレイ上部に92万画素WebカメラとWindows Hello対応顔認証カメラ(赤外線カメラ)が内蔵されている
キーボード面。キーボードは日本語仕様のみ
本隊前面(上)と本体背面(下)。本体背面の中央にあるのは吸気口。小型ダブルファン冷却システムが採用されている
右側面(上)にはmicroSDXCカードスロット、電源ボタン、USB 3.1、左側面(下)にはセキュリティロックスロット、Thunderbolt 4(Type-C)×2、HDMI、3.5mmヘッドセットジャックが用意
本体以外に、ACアダプタ、電源ケーブル、アクティブ静電ペン、クリーナークロス、Microsoft Office Home & Business 2019ライセンスカード、取扱説明書、保証書が同梱される
ACアダプタのケーブル長は実測180cm、電源ケーブルの長さは実測50cm
ACアダプタの仕様は入力100V~1.5A、出力5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/3.25A
アクティブ静電ペンはワコム製
本体の実測重量は949.5g
ACアダプタと電源ケーブルの合計重量は実測244.2g
システム情報
主要なデバイス
初期化直後のCドライブの空き容量は410.39GB
「powercfg /batteryreport」コマンドを実行したところ、DESIGN CAPACITYは53,130mWh、FULL CHARGE CAPACITYは53,761mWhと表示された

Dynabookが謳う5in1とは?

 dynabook V8の製品ページを見ると、5つのスタイルで利用できる「5in1プレミアムPenノートパソコン」と謳っている。5つの内訳は「Note PCスタイル」、「Tabletスタイル」、「Penスタイル」、「Monitorスタイル」、「Flatスタイル」だ。

左上から「Note PCスタイル」、「Tabletスタイル」、「Penスタイル」、「Monitorスタイル」
これは「Flatスタイル」

 ディスプレイ回転型のコンバーチブル2in1は一般的に、ノートブック、スタンド、テント、タブレットと4つのモードをアピールしていることが多い。利用スタイルをどのようにアピールするかはメーカーの自由だが、「5in1プレミアムPenノートパソコン」というと2in1より利用スタイルが3つ増えているように感じられる。見出しだけでは誤解を招きそうだ。

 それはさておきdynabook V8の使い勝手だが、実用性重視で真面目に作られているというのが率直な感想。カメラを物理的に遮断するカメラシャッターはプライバシー的に安心。92万画素Webカメラ、800万画素背面カメラは最新スマートフォンに比べれば見劣りするが、ノートパソコンというカテゴリのなかでは平均以上の画質だ。

スイッチを左にスライドするとカメラが物理的に遮断される
92万画素Webカメラで撮影した写真

 キーボードは19mmのキーピッチ、1.5mmのキーストロークが確保されており、打鍵感は心地よく、打鍵音も低めに抑えられている。タッチパッドのストロークは個人的にはもう少し浅いほうが好みだが、許容範囲だ。快適に操作できるキーボード、タッチパッドだと思う。

F5、F6キーの上に800万画素背面カメラが配置。ファンクションキーを多用する人は、意図せずレンズに触れて汚さないように注意
800万画素背面カメラで撮影した写真
キーボードバックライトは赤色。明るさ調整は非対応
タッチパッドのサイズは実測で幅99×奥行き57mm。手の大きさによっては狭く感じるかもしれない
キーストロークは19mm
キーピッチは1.5mm
Fキーの押圧力は0.51N
【表2】キーボードの押圧力の一例
FキーEnterキーSpaceキー
dynabook V80.51N0.54N0.5N
13インチMacBook Air0.51N0.51N0.53N
ZenBook 13 UX325EA0.53N0.5N0.51N
13インチMacBook Pro0.51N0.54N0.5N
One-Netbook A10.61N0.55N0.56N
MUGAストイックPC30.51N0.46N0.47N
DAIV 4N0.55N0.55N0.58N
LG gram 2-in-10.6N0.6N0.6N
16インチMacBook Pro0.55N0.55N0.55N
ZenBook Duo0.56N0.54N0.55N

平均以上の色域、音質も良好

 dynabook V8には13.3型フルHD液晶(1,920×1,080ドット、166ppi、16:9、非光沢、タッチ対応、スタイラス対応)が搭載されている。高輝度、高色純度、広視野角が謳われているIGZO液晶が採用されているものの、輝度や色域は非公表だ。

 そこでカラーキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で実測したところ、輝度は約300cd/平方m、色域はsRGBカバー率98.8%、sRGB比100.7%、Adobe RGBカバー率74.2%、Adobe RGB比74.6%、DCI-P3カバー率74.2%、DCI-P3比74.2%という結果となった。モバイルノートの非光沢ディスプレイとしては平均以上の色域だ。

実測したsRGBカバー率は98.8%、sRGB比は100.7%
Adobe RGBカバー率は74.2%、Adobe RGB比は74.6%
DCI-P3カバー率は74.2%、DCI-P3比は74.2%
色味はニュートラル。とくに癖はない
広視野角が謳われているIGZO液晶だけに真横からでもなにが表示されているのか確認できる

 一方サウンド面については、ハーマンインターナショナルと共同開発したharman/kardonステレオスピーカーを搭載し、立体音響技術「Dolby Atmos」を採用しているだけに、低音から高音までバランスのいいサウンドを楽しめる。

 Dynabookによれば低音域の再現性を高めるためにかぎられたスペースでスピーカーボックスの容量を大きく確保しているとのこと。ただ、音質はよいのだが、ボリュームが少々物足りない。部屋のどこにいても楽しめる音量を確保したいのなら、外付けスピーカーを用意することをおすすめする。

YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大72.4dBA(50cmの距離で測定)

冷却効率向上により高いクロック周波数を維持

 最後に性能をチェックしてみよう。今回は同じく「Core i7-1165G7」を搭載する「ZenBook 13 UX325EA」と比較してみた。下記が検証機の仕様とその結果だ。

【表3】検証機の仕様
dynabook V8ZenBook 13 UX325EA
CPUCore i7-1165G7(4コア8スレッド、4.7GHz)
GPUIntel Iris Xe Graphics(1.3GHz)
メモリLPDDR4X-4266 SDRAM 16GB
ストレ-ジ512GB PCIe NVMe SSD
ディスプレイ13.3型、1,920×1,080ドット(166ppi)
TDP28W
OSWindows 10 Home バージョン2004
サイズ
(幅×奥行き×高さ)
303.9×197.4×17.9mm304×203×13.9mm
重量約979g約1.15kg
【表4】ベンチマ-ク結果
dynabook V8ZenBook 13 UX325EA
PCMark 10 v2.1.2506
PCMark 10 Score4,6814,832
Essentials9,6129,836
App Start-up Score11,99413,031
Video Conferencing Score8,2658,097
Web Browsing Score8,9609,019
Productivity6,0506,766
Spreadsheets Score5,6555,971
Writing Score6,4737,668
Digital Content Creation4,7884,601
Photo Editing Score7,9257,388
Rendering and Visualization Score2,7702,749
Video Editting Score5,0034,796
PCMark 10 Modern Office Battery Life
※ディスプレイ輝度50%で測定
10時間17分12時間42分
3DMark v2.16.7113
Time Spy1,7381,559
Fire Strike Ultra1,2461,197
Fire Strike Extreme2,3662,167
Fire Strike4,9174,456
Night Raid16,32014,182
Sky Diver13,39912,862
Cinebench R23.200
CPU(Multi Core)5,108 pts4,697 pts
CPU(Single Core)1,446 pts1,402 pts
Cinebench R20.060
CPU1,973 pts1,823 pts
CPU(Single Core)558 pts543 pts
Cinebench R15.0
OpenGL94.67 fps88.09 fps
CPU839 cb878 cb
CPU(Single Core)218 cb217 cb
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC)9,741(非常に快適)9,278(非常に快適)
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC)6,940(とても快適)6,335(とても快適)
SSDをCrystalDiskMark 8.0.0で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード2,332.216 MB/s1,809.300 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト1,379.647 MB/s972.913 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード1,504.107 MB/s1,467.171 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト1,165.374 MB/s908.589 MB/s
4K Q32T16 ランダムリ-ド267.154 MB/s344.804 MB/s
4K Q32T16 ランダムライト314.989 MB/s440.939 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド36.757 MB/s39.137 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト81.319 MB/s110.229 MB/s

 まずCPUスコアだ。dynabook V8はZenBook 13に対してCinebench R23で約1.09倍に相当する5,108 pts、Cinebench R20で約1.08倍に相当する1,973 ptsを記録した。3Dグラフィックスにおいても、3DMarkのスコアはすべてdynabook V8が上回っており、とくにNight Raidでは約1.15倍に相当する16,320を記録している。

 PCMark 10とCinebench R15のCPUスコアで結果が逆転しているが、ほとんどのベンチマークでdynabook V8が上回っていることを考えると、計測誤差ではなく実効性能が優れていることは間違いない。

 そこでCinebench R23実行中のクロック周波数とCPU温度をチェックしてみた(室温19.2℃で測定)。すると、ベンチマークを実行してから36秒後にクロック周波数が2,530MHzまで一気に低下したあと、その後じりじりと上昇して51秒後に2,826.4MHzに到達し、1分56秒まで2,840MHz前後で安定。さらに、1分59秒後に3,128.9MHzに一気に上昇し、その後3,105MHz前後で推移してベンチマークを終了していた。CPU温度は一時102℃に達したが、36秒後以降は最大75℃にとどまっている。一方、ZenBook 13はベンチマーク後半でCPU温度は最大77℃に達し、クロック周波数は2,720MHz前後だ。

 両者の最大CPU温度とクロック周波数を比較してみると、dynabook V8のほうが冷却効率はよく、高いクロック周波数を維持できている可能性が高い。ただし、OSのアップデートをそろえなければ厳密には比較できないし、現在のZenBook 13はファームウェアアップードなどで性能が改善されているかもしれない。あくまでも参考に留めてほしい。

 一方バッテリ駆動時間は、ZenBook 13のほうが2時間25分長い結果となった。これはZenBook 13のほうが67Whと大容量のバッテリを搭載しているためだ。ただし重量は、dynabook V8が約979g、ZenBook 13が約1.15kg。バッテリ駆動時間と重量のどちらを優先させるかは悩ましい選択だ。

ベンチマークを実施するさいにはWindowsの電源モードを「最も高いパフォーマンス」、「dynabookセッティング」のパフォーマンス設定で「Intel Turbo Boost Technology 2.0」を有効に設定している
dynabook V8はCPU温度が75℃を超えなかった。新開発の「小型ダブルファン冷却システム」の効果と思われる
消費電力の推移を見ても、後半じりじりと消費電力が高くなっていることを確認できた
キーボード面の最大温度は46.3度(室温19.2℃で測定)
底面の最大温度は46.5℃
ACアダプタの最大温度は40.8℃

ライバルより高価だが軽量性を重視するならこれ一択

 dynabook V8はTDP 28Wのプロセッサの処理能力を最大限に引き出すために、熱流体シミュレーションにより筐体内部の吸排気の流れを可視化し、「小型ダブルファン冷却システム」を新たに開発したという。その効果はベンチマークで確かに確認できた。

 またカメラシャッター、800万画素背面カメラなど便利な機能も装備しており、1kg切りの重量、輝度50%で10時間超えのバッテリ駆動時間とモバイル性能も申し分ない。

 価格は2in1の競合となるHP「ENVY x360」および「Spectre x360」、ASUS「ZenBook Flip S」より高価だが、軽量性を重視するなら“これ一択”と強く推せる1台だ。