Hothotレビュー

オモテは液晶、ウラはE Ink。レノボのデュアル画面モバイルノート「ThinkBook Plus」

背面にE Inkディスプレイを搭載するものの、見た目は一般的なWindowsノートだ。画面サイズは13.3型

 レノボ・ジャパンの「ThinkBook Plus」は、13.3型の液晶ディスプレイの背面、天板に当たる部分に、10.8型のE Inkディスプレイを搭載したモバイルノートだ。普段はWindows 10のノートとして利用できるほか、閉じた状態でもE Inkディスプレイにさまざまな情報を表示できることが特徴だ。

 E Inkディスプレイを搭載したノートパソコンとしては、同じレノボの「Yoga Book C930」が挙げられるが、物理キーボードを搭載しない代わりにE Inkパネルにスクリーンキーボードを表示する仕組みだった「Yoga Book C930」に対し、本製品は物理キーボードを含むノートPCは一般的な仕様で、そこにE Inkディスプレイを追加した仕様になっている。

 直販サイトではカスタマイズが可能だが、ハードウェアで選択可能なのはCPU(第10世代のCore i5/i7)、およびメモリ(8/16GB)、SSD(256/512GB)のみで、そのほかは固定となっている。今回借用した機材は、CPUがCore i5-10210U(1.6GHz)、メモリ8GB、SSD 512GB、Windows 10 Home 64bitという仕様だった。

外見はいたって普通の13.3型Windowsノートだが……

 まずは外見から見ていく。正面側から見た状態では、至って普通のノートPCだ。画面サイズは13.3型、解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で、上下左右ともに視野角は非常に広い。画面はノングレアで、ビジネスユースに適した仕様だ。タッチ操作には対応しない。

 ベゼルは、左右はスリムな一方、下はかなりの厚みがあり、少々野暮ったいイメージだ。上も極端に太いわけではないが、スリムベゼルと呼ぶには語弊がある。

背面にE Inkディスプレイを搭載するものの、見た目は一般的なWindowsノートだ。画面サイズは13.3型

 サイズは約308×217×17.4mm(幅×奥行き×高さ)で、13.3型のノートPCとしては標準的。天板にE Inkパネルを搭載しているものの、厚みの増加は最小限に抑えられており、見た目にも分厚いイメージはない。同じレノボの13.3型モデルである「ThinkPad X13」が厚み16.9mmなので、誤差の範囲と言っていいだろう。

 筐体色はアイアングレーという、ガンメタリックに近い色だ。側面は楔状になっており、かなり鋭角的。金属製ということもあり、パームレスト部などはひんやりとしている。MILスペック対応がうたわれているわけではないが、堅牢性はかなり高いと感じる。

 左側面にはHDMI、USB Type-C、オーディオ出力の各ポート、右側面にはUSB×2ポートと、指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンが搭載されている。USB Type-Cが1ポートなのは、昨今のノートPCとしてはやや少ない。しかも本製品の場合、この唯一のUSB Type-CポートにACアダプタをつなぐため、少々心もとない。

天板部。10.8型のE Inkディスプレイを搭載する。段差はなく、見た目は筐体に印刷された模様に見える
底面
左側面。HDMIポート、USB Type-Cポート、オーディオ出力ポートを備える。ACアダプターはこのUSB Type-Cポートに接続する
右側面。USB 3.2 Gen 1準拠のUSB Aポート×2、指紋センサー搭載の電源ボタンを備える
正面。筐体がくさび状になっているのがわかる
背面。ヒンジの下には排気口がある
180度いっぱいまで開く。背面まで一周させることはできない
画面下部のベゼルはかなりの厚みがある
720p HDカメラは物理カバーを備えないタイプ

 キーボードは6列のアイソレーションタイプで、キー数は84。他言語のキーボードと筐体を共用するためか、Enterキー周りがやや特殊なデザインだが、配列自体は日本語JISに準拠している。キーピッチも19mmと十分だ。ストロークは反発力がやや強めに感じられるが、とくに打鍵していて違和感があるわけではない。

 同社ThinkPadシリーズでお馴染みのトラックポイントは搭載されておらず、キーボード手前のタッチパッドで操作することになる。ThinkPad X13など、サイズの近い同社製品と比較する上では、1つのポイントになるだろう。

 このほか、Wi-Fiは11ax(Wi-Fi 6)対応、TPMチップも搭載する。一方でカードリーダーは非搭載であるほか、ワイヤレスWANモデルも用意されない。

キーボードは6列のアイソレーションタイプ。「Yoga Book C930」のようなタッチキーボードではなく、一般的な物理キー仕様
キー配列は日本語JISだが、EnterやShift、BackSpace周りが隣のキーと一見つながって見える特殊なデザイン。他言語のキーボードと筐体を共用するためだろう
キーピッチは19mmと十分。なおバックライトも搭載している
キーストロークは約1mmで、この種のアイソレーションキーボードとしては一般的だ
タッチパッド。横幅は105mm
縦は63mm。面積的には十分だ
右側面の電源キーは指紋センサーを兼ねる。位置的に誤って押してしまいがちなのがネック

 付属品は最大65W対応のACアダプタのほか、E Inkディスプレイと組み合わせて使用するペン(Lenovo Precision Pen)、さらにキャリングケースが添付される。この手の製品としては珍しいキャリングケースは、天板のE Inkディスプレイを保護する目的だろう。

 ネックなのは重量だ。実測約1.4kgという本製品の重量は、13.3型のノートPCとしてはやや重い部類に入る。同じレノボのThinkPad X13が約1.28kgなので、スマホ約1台弱ぶん重い計算になる。こちらも決して軽量ではないことを考えると、モバイルを名乗るにはギリギリといったところだろう。

ハードウェア周りの付属品一覧。ACアダプタ、電源ケーブル、Lenovo Precision Penが付属する
本体のみ重量は実測で1400g。13.3型のノートPCとしてはやや重い
ACアダプタ+電源ケーブルの重量は約292g
Lenovo Precision Pen。2つのサイドボタンは消しゴム/テキストコピーに割り当てられている。本体後部のキャップを外してバッテリの入れ替えが行なえる
本体左右側面に磁力で吸着させることができる
この種の製品としては珍しくキャリングケースが添付される

E Inkはメインディスプレイとは独立して利用

 さて本製品最大の特徴は、天板部、つまり液晶画面の背面にE Inkのディスプレイを搭載し、さまざまな情報を表示できることだ。

 メインの液晶画面が13.3型なのに対して、E Inkディスプレイは10.8型とひとまわり小さい。つまり天板部全体ではなく、中央部分だけがE Inkということになるが、実測で幅238mm×高さ134mmと、サイズは相応に大きい。Amazonの6型電子書籍端末「Kindle Paperwhite」は、E Ink部分のサイズが横90mm×縦122mmほどなので、横に約2.5枚並べたサイズということになる。

 E Inkはガラス素材で覆われているため、ひ弱さは微塵もなく、また一体感も高い。何も表示させていない状態でのグレーがかった色味は確かにE Inkなのだが、段差もないため、見た目は普通の天板に見えるのが面白い。ただし手の脂はややつきやすいのと、また輸送時は保護のため、前述のキャリングケースは使用したほうがよいだろう。

正面から見ると一般的な13.3型のノートPCだが…
背面から見ると10.8型のE Inkディスプレイを搭載したスタンド型デバイスだ
6型の「Kindle」とのサイズ比較。高さは同等、横幅はおよそ2.5倍ある
E Inkディスプレイは段差もなく、壁紙を非表示にすれば普通の天板と見分けがつかない

 E Inkディスプレイの具体的な機能は後述するとして、気になるのは、このE InkディスプレイがノートPC側からハードウェア的にどう認識されているかだ。Windows側でディスプレイの設定を開いても、このE Inkディスプレイは見当たらない。つまりセカンダリのディスプレイとして、「複製」や「拡張」表示の対象になっているわけではない。

 挙動を見る限りでは、本製品のE Inkディスプレイ側は、ストレージを中心とした一部のハードウェアをノートPC側と共有しているものの、ノートPC側とはほぼ別物扱いのようだ。E Ink側で「開く」を選択すると、ノートPCのCドライブや、デスクトップやドキュメントといったフォルダが表示される。これらの中にあるPDFやテキストファイルを、ビルトインのビューアで表示する仕組みだ。

 このほか、キャプチャした画像をクリップボード経由でノートPC側に送ったり、またノートPC側のOutlookから当日の予定や未読メールを読み込んで表示したりと、PC側との連携はするものの、使える機能はあらかじめ用意されたものだけで、任意のアプリを新規インストールして利用することはできない。液晶を使わずにE Inkを常時使用するといった使い方はできないので気をつけたい。

E InkディスプレイはWindowsから見てディスプレイとして認識されておらず、言うなればストレージなどを共有する別デバイスという扱い
Cドライブ内を参照し、保存されているPDFなどのドキュメントを表示できる
未使用時は背景画像を表示しておける

E Inkディスプレイでは手書きメモやドキュメントの表示が可能

 ではE Ink側で何ができるかを見ていこう。

 E Inkディスプレイのホーム画面には、カレンダー、メールといったウィジェットや、日付、天気が表示できる。ウィジェットはOutlookと連携しており、当日の予定、未読のメールが表示される。E Inkは低消費電力が特徴だけに、これらを表示したままでもバッテリ駆動時間への影響は軽微なのが利点だ。

 またこのホーム画面の右下には、「描画ボード」、「ノート」、「ブック」、「ヘルプ」という、4つのアイコンが並んでおり、タップすることで各機能が起動する仕組みになっている。以下、これらの機能について紹介する。

ホーム画面。左の2つのカラムにはOutlookのカレンダーから読み込んだ当日の予定、および未読メールを表示している。利用する機能は右下の4つのアイコンから選択する

 「ノート」は、E Inkディスプレイで手書きメモを取る機能だ。罫線や方眼などのテンプレートから選択する一般的な仕様で、線の太さは6段階から選択でき、消しゴム機能や範囲選択ツールも備える。基本的にはペンを使うことが前提だが、指先での描画にも対応している。ちなみにペンは筆圧検知に対応するが、指先は対応しない。

 また手書き文字を認識してテキストに変換する機能も備えており、クリップボードを経由してWindows側のアプリ、たとえばWordなどに貼り付けられる。日本語にも問題なく対応している。このほかOneNoteとノートを同期する機能も備えているので、こうした手書きメモ類をOneNoteに集約している人にとっては便利だろう。

ノート機能ではペンを使って描画が行なえる
手書き文字を認識してテキストに変換することも可能。日本語にも対応する

 「ブック」はいわゆるドキュメントビューア機能で、PDFやテキストのほか、EPUB、MOBIにも対応する。単ページ/見開きの選択はできるが右綴じに非対応なので、日本語特有の縦書きコンテンツの表示には向かない。また横幅に比べて天地が狭いため、ページが天地に合わせて縮小されてしまい、6型の読書端末と同等の表示サイズになってしまう。

 むしろおすすめなのは、画面の横幅に合わせてドキュメントを拡大表示し、縦スクロールで読むことだ。スクロール可能なのは同じページ内だけで、次のページに移るには毎回ページ送りを行なう必要があるが、これならばビジネス文書を、実用的な文字サイズで読み進められる。

 またペンおよび指先を使って注釈を書き込んだり、スクリーンショットを撮る機能も用意されている。全ページをサムネイル表示する機能もあり、注釈のあるページだけに絞り込んで表示する機能もあるので、校正作業などで便利に使える。ちなみにペンの太さは5種類、色は3色と、さきほどの「ノート」機能におけるペンツールとは別物だ。

ブック機能はPDFを表示できる。ペンを使って上から書き込むことも可能だ
見開きにも対応するが、右綴じには非対応なので、日本語の縦書き書籍やコミックは進行方向と逆になる。また解像度は204ppiとあまり高くなく、小さな文字は読みづらい
どちらかというと横書きのドキュメントを、横幅いっぱいに表示して縦スクロールしながら閲覧するほうが、デバイスの特性にはマッチしている
凸形状のインターフェイスを使って、ページ内での上下および左右スクロールが行なえる

 「描画ボード」は、このE Inkディスプレイをペン入力のためのタブレットとして使う機能だ。タッチ操作に対応しないメインの液晶ディスプレイを補完する機能だが、いかんせん本製品の液晶画面はE Inkディスプレイの真裏にあるので同時参照ができない。

 そこでこの機能を使うときは、本製品に外部ディスプレイを接続した状態で、本製品を閉じ、E Inkディスプレイを手元に置いた状態で描画を行なう。理屈が分かればナルホドと納得するのだが、かなり変則的な機能だ。

描画ボード機能は、本製品を手書き入力用のタブレットとして使う機能。本体を閉じた状態で使うため、外部ディスプレイの接続が不可欠だ
手に持って電子書籍を読むのは、文字サイズ、重量の問題からしてかなり苦しい
縦向きの表示にも対応するが、手に持っての読書となると、やはり重量がネックになる

 なおここまで紹介した機能は、原則としてノートPCを完全に閉じた状態で行なうことになる。半開きの状態でも動作はもちろんするのだが、E Inkディスプレイにタッチした時にかかる力の方向が、画面を閉じる向きと同じなので、手で支えてやらないと、タッチのたびに画面が閉じていってしまう。最初から閉じたまま使うのが無難だろう。

 ちなみに手に持った状態での利用にはあまり適していない。物理キーボードを省いて約775gという軽さを実現していた「Yoga Book C930」と違い、本製品は1.4kgもの重量があること、また利用中は底面がかなり熱を持ち、背面のスリットから放出される熱風が手にかかりやすいというのも理由だ。一時的ならまだしも、長時間の利用は難しい。

 レスポンスについては、タップから反応まで、わずかに間が空く。反応がないのでもう一度タップしたら、前のタップが有効で画面が行き過ぎてしまった……といったこともたびたび発生し、挙動は全般的にきびきびしているとはいえない。ただしペンによる描画はきちんと追従してくるので、そちらの用途がメインであればストレスも少ないだろう。

ベンチマークは典型的ビジネスノートの特徴

 ではベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回利用したベンチマークソフトは、ULの「PCMark 10 v2.1.2506.0」、「3DMark Professional Edition v2.5.0.0」、Maxonの「CINEBENCH R23.200」の3つだ。比較として同じレノボの「ThinkPad X1 Carbon(2019)」の結果も加えてある。どちらも低消費電力仕様のプロセッサを採用しており、用途としてはビジネス向けとなる。

ThinkBook PlusThinkPad X1 Carbon
CPUCore i5-10210UCore i7-8565U
ビデオチップIntel UHD GraphicsIntel UHD Graphics 620
メモリ8GB DDR4 SDRAM16GB LPDDR3 2133MHz
ストレージ512GB SSD(NVMe/PCIe)256GB SSD(NVMe/PCIe)
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Pro 64bit
PCMark 10 v2.1.2177
PCMark 10 Score3,5483,810
Essentials7,8547,993
App Start-up Score10,9389,554
Video Conferencing Score6,3706,951
Web Browsing Score6,9547,691
Productivity5,5696,376
Spreadsheets Score7,4317,040
Writing Score4,1745,775
Digital Content Creation2,7722,947
Photo Editing Score3,5373,659
Rendering and Visualization Score1,6951,928
Video Editting Score3,5563,629
PCMark 10 Modern Office Battery Life7時間52分5時間53分
Performance50566690
CINEBENCH R23.200
CPU2,7993,552
CPU (Single Core)3181031
3DMark Professional Edition
Night Raid スコア4,4116,021
グラフィックスのスコア4,4566,206
CPUスコア4,1775,151
Sky Diver スコア3,7854,990
グラフィックスのスコア3,5514,624
物理スコア6,0538,302
総合スコア3,5474,969
Time Spy スコア372448
グラフィックスのスコア325390
CPUスコア2,2032,986
Fire Strike スコア9131234
グラフィックスのスコア9911354
物理スコア71458882
総合スコア316418

 比較対象であるThinkPad X1 Carbon(2019)は、第8世代(Whiskey Lake-U)のCore i7、メモリ16GBという構成だ。一方の本製品は、第10世代(Comet Lake-U)のCore i5、メモリ8GBということで、CPUの世代こそ新しいものの、スペック的にはワンランク下となる。

 それゆえベンチマークの数値も、どの項目も平均して低めに出ている。PCMarkでは表計算ソフトの性能を測る「Spreadsheets」など一部テストでThinkPad X1 Carbonを上回っているが、3DMarkだと総じて20%ほどスコアは低く、GPUまわりの弱さが出ている。特にDirectX 12ベースの「Time Spy」はかなりきつい印象だ。

 もっともビジネス向けとして見た場合、極端な欠点がないのも事実で、また直販モデルならばCPUはCore i7-10710UもしくはCore i7-10510U、メモリは16GBを選択することもできる。天板にE Inkディスプレイを追加した特殊な仕様ながら、実用レベルに仕上がっていると言える。

 バッテリ容量は、輝度50%の状態で、PCMark 10の「Modern Office Battery Life」で計測したところ約8時間ということで、ひとまず及第点だ。バッテリの持続時間をさらに伸ばしたければ、常時表示しておきたい情報についてはE Inkディスプレイに表示させ、消費電力をなるべく抑えるという、ほかのノートPCにはできない裏技も使える。

E Inkをどう評価するか。Kindleアプリの搭載見送りは残念

 本製品は、E Inkディスプレイを搭載したノートPCという特殊な製品だが、実際に製品を使ってみると、ノートPCとしての実用性を第一に考えて設計されているのがよくわかる。こうした2WAYのデバイスにありがちな、特徴となる機能を重視するあまり、本来の機能がおろそかになっていることもない。

 このあたりが、E Inkの搭載に代えて物理キーボードを取り払った「Yoga Book C930」と違うところで、E Inkはあくまでプラスアルファの付加価値という立ち位置を崩していない。BOOXなど専用のE Inkタブレットに比べると、レスポンスの遅さのほか、アプリが追加できない、バックライトがないなど機能面の不足はあるが、ノートPCの付加価値であると考えれば、むしろプラスに捉えられるだろう。

 個人的に気になったのは、底面のビスがほぼむき出しであることだ。本製品は側面が楔状になったデザインで、背面に回り込む面にこのネジがあるため、少し本体を持ち上げるとこのネジが目に飛び込んでくる。両手で保持して使う機会は少ないにせよ、一般的なノートPCより持ち上げて使う機会は多いはずで、見た目への配慮も欲しかったところだ。

まずはノートPCとしてしっかり使えるよう設計されているのは好感が持てる
底面に回り込む面のビス。目立たないよう一工夫ほしかったところだ

 販売価格は税込18万9,200円、eクーポン適用時は税込12万2,980円(本稿執筆時)からということで、一般的なCore i5ノートとしてはやや高価だが、コストの掛かる10型クラスのE Inkパネルを採用してこの価格というのは、むしろかなり頑張っている印象はある。E Inkは根強いファンも多く、人によって評価が大きく変わる製品だろう。

 唯一惜しいのは、本製品が今年1月にプレス向けに発表された段階では存在したE Inkディスプレイの2つの機能が、製品版では省かれていることだ。1つはAlexaアプリ、もうひとつは内蔵のKindleアプリを使って電子書籍を読める機能だ。

 とくにKindleアプリは、実装されていれば、見開き表示が可能な10.8型のE Inkデバイスとして評価されていただろう。製品版で省かれた理由は不明だが、本製品添付の多言語版スタートガイドでもKindleアイコンは見当たらないので、国内版だけでなく、根本から省かれたようだ。今後この機能が搭載されることがあれば、また評価も変わってくるだろう。

2020年1月、CES 2020で展示されていた展示機のE Inkディスプレイの画面。右下に、製品版にはないAlexaアイコン(いちばん左)、Kindleアイコン(左から2つ目)が見える。製品版にある「描画ボード」のアイコンはない