Hothotレビュー
GTX 1060搭載で9万円台のゲーミングPC、パソコン工房「LEVEL-M0B6-i5F-RNJR」
2019年3月26日 11:00
ユニットコムのLEVEL∞から登場したゲーミングPC「LEVEL-M0B6-i5F-RNJR」は、GPUを内蔵しないことで話題を呼んだCore i5-9400Fを採用し、ビデオカードにGeForce GTX 1060(3GB)を組み合わせた製品だ。コスパのよい2つのパーツを組み合わせ、標準構成で直販価格98,258円と、10万円を切る抜群のコスパを実現している。
黒/赤デザインの特徴を受け継ぐミニタワー筐体
LEVEL-M0B6-i5F-RNJRは、LEVEL∞のゲーミングPCのなかでも「M-Class」に属する。microATXベースのミニタワー筐体を採用しており、机の上にも置けるコンパクトさ、ゲーミングPCでは必須のビデオカードに加えてもう1本分の拡張カードスロット、十分な数のシャドウベイといったほどよい拡張性を備えている。
デザイン的には同社のATXミドルタワーモデル「R-Class」の特徴を色濃く残している。たとえば側面には赤いライン、光学ドライブベイ部分は少しかたちが異なるがやはり赤い縁取りを設けており、前面パネルはヘアライン加工風で中央にLEVEL∞ロゴをあしらっている。
赤いサイドラインの右側に前面インターフェイスがある。一番上に電源ボタン、少し空けてUSB 3.0×2とオーディオ入出力が並んでいる。また、サイドライン左右部分は吸気口にもなっているところもミドルタワーモデルと同じだ。
ミドルタワーモデルとサイズを比較してみるとコンパクトさがわかる。幅については190mmで同じ。高さはミドルタワーモデルが432mmだったのに対してミニタワーモデルは356mmとなり、机の上に置いたさいの天板の高さから受ける印象は大きく異なり、圧迫感が少ない。奥行きも477mmが410mmへと小型化し、机の手前に生まれるスペースにマウスパッドを置くさいに余裕がある。
側面板は、右側がフラットで左側は中央部分に吸気口が設けられている。背面を見ると、電源が上、マザーボードが下のレイアウトがわかる。バックパネルの右にあるのが背面排気口。ミニタワー筐体ではここに9cm角ファンを採用するモデルもあるが、本製品は12cm角ファンだ。通電中にここに手を当てると、なかなかの風量で排気していることがわかる。
拡張スロットは、ブラケットが4本用意されているが、まずビデオカードが2本を消費している。その上で、マザーボード側には3本分の拡張スロットしかないため、自由に搭載できるのは実質1本だけだ。
左側面板は背面のネジ2つで開ける。通常ネジなのでドライバーは必要。内部を見ると、先に指摘したように電源がケース内上部後方に配置された伝統的なスタイルだ。電源は80PLUS Bronze認証の500Wモデルが搭載されていた。ケーブルが直付けタイプなので、プラグインタイプと比べれば煩雑なのだが、要所をタイで留め、シャドウベイの影に隠してきれいにまとめあげている。
前面寄りのシャドウベイは、光学ドライブベイの下に5インチ×1、そして3.5インチ×2が2ケージ。標準搭載のHDDとSSDは、2つの3.5インチシャドウベイのうち、取り外し可能な下のケージに収められている。
ビデオカードはGeForce GTX 1060(3GB)のシングルファンタイプ。標準的な2スロット厚タイプだが、カード長は短めでクーラーの構造もヒートパイプこそ使用しているもののシンプルだ。後部には電源からの6ピン補助電源が1本が接続されている。
マザーボードはIntel B360チップセットを搭載するmicroATXだが、標準のサイズよりも高さ、幅ともに短いコンパクトなモデルだ。そのため、メモリスロットは2本、拡張スロットは計3本と、ATXはもちろんスタンダードなmicroATXよりも少ない。とくにメモリスロットは後々に拡張したい場合、最大容量の制限と、場合によっては標準搭載モジュールを交換することになる点には要注意だ。
なお、標準では8GBモジュール1枚を搭載している。増量するとしても、もう1枚8GBモジュールを搭載して16GBとするあたりがちょうどよい。その意味ではメインストリームの範囲の使い方で問題となる可能性は少ないだろう。
抜群のコスパを実現するのはGPU非搭載Core i5と旧世代メインストリームGPU
LEVEL-M0B6-i5F-RNJR | |
---|---|
CPU | Core i5-9400F(6コア/6スレッド、2.9~4.1GHz) |
GPU | GeForce GTX 1060(3GB) |
チップセット | Intel B360 |
メモリ | DDR4-2666 8GB |
ストレージ | SATA SSD 240GB、HDD 1TB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
電源 | 500W 80PLUS Bronze |
OS | Windows 10 Home |
USB | USB 3.1×4、USB 3.0×2、USB 2.0×2 |
映像出力 | DisplayPort×3、HDMI、DVI |
無線通信 | - |
有線LAN | Gigabit Ethernet |
その他 | PS/2、音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約190×410×356mm |
直販価格 | 98,258円 |
CPUはCore i5-9400F。本機の構成のなかでももっとも特徴的なところではないだろうか。Core i5-9400Fは、Core i5-8400の後継となるCPUだが、従来のIntelのメインストリーム向けCPUで搭載されていたGPU機能が省かれている。
つまりビデオカードが必須となるわけだが、本製品のようにゲーミングPCならばビデオカード搭載が前提なので問題にならない。あえて問題を挙げるならば、ビデオカードが故障したさいに、内蔵GPUでその場をしのぐことができないといったあたりだろうか。それもめったに起きることではないので気にするほどではないだろう。
スペックに目を向けると、Core i5-9400Fは6コア6スレッド(Hyper-Threading非対応)で、動作クロックは定格2.9GHz、ターボ時最大4.1GHzとなる。Core i5-8400とコア/スレッド数は同じだが、動作ロックはそれぞれ100MHz高い。その分、若干性能は高くなっている。
また、TDPに関しては65Wで同じだ。本製品ではトップフロー型でいわゆるリテールクーラーとほぼ変わらないサイズのCPUクーラーを搭載しているが、十分に冷却できているようで、動作音はそこまで大きくない。もっとも、剛性の高い筐体が音漏れや共振を防いでいるようで、側面板を開けるとそれなりの音量だ。
ちなみに、サイドフローで12cm角ファンを搭載するCooler Master Hyper 212 EVOに交換するオプションもある。これの店頭価格とほぼ同値で用意されているので、購入時に選んでおけばより静かなPCにすることが可能だ。
ビデオカードは、先のとおりGeForce GTX 1060(3GB)。ご存知のとおり、NVIDIAからはすでに後継GPUのGeForce GTX 1660などが登場しているため旧世代GPUである。その点、GeForce GTX 1060(3GB)は在庫かぎりとなるため、本構成がいつまで販売されるのかは不透明ではある。ただ、新モデルと比べると若干安価であることは確かだ。コスパ重視のゲーミングPCに最適と言えるだろう。
GeForce GTX 1060(3GB)はおよそ1,920×1,080ドット環境向けのGPUだ。その上で、ビデオメモリが3GBという点には注意しておく必要があるだろう。
昨今のゲームタイトルでは、たとえ1,920×1,080ドット解像度でも、最高画質に引き上げると3GBのビデオメモリを使い切るものがいくつかある。そうしたタイトルでは、ビデオメモリに収まる下の画質設定に対し、ビデオメモリをあふれる高画質設定では極端にフレームレートが低くなるようなことも生じる。
メモリは先のとおり8GBモジュール1本。シングルチャネルなので、2枚組のデュアルチャネル時と比べると、多少性能が劣るところもあるだろう。容量も現在の標準からすると最小限なので、余裕があれば8GBモジュールをもう1本追加した16GBとするのがよい。動作モードはDDR4-2666。
ストレージは、CドライブがSSD、DドライブがHDDというゲーミングPCの標準的な構成だ。CドライブはIntel SSD 545s 256GB。Serial ATA 3.0接続で3D TLC NANDを採用している。製品の構成上では240GB扱いなので、通常販売される製品でIntel SSD 545sが採用されているのかどうかはわからない。
DドライブはSeagate ST1000DM010 1TB。Barracudaシリーズの定番HDDだ。7,200rpmなのでより低回転のHDDよりも若干転送速度が速いが、おもにゲームデータを保存する領域に用いるため、容量のほうが重要だろう。ここも1TBで足りないことが想定されるなら、カスタマイズで大容量HDDに変更しておきたい。
1,920×1,080ドット液晶に最適。重いゲームでも中~高画質で楽しめる
今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 v1.1.1739」、「3DMark v2.8.6536」、「VRMark」、Maxonの「CINEBENCH R15」、「CINEBENCH R20」。CPUが1世代古いCore i7-8700、GPUが同じGeForce GTX 1060(3GB)を搭載するモデルのデータを比較対象として添えている。
LEVEL-M0B6-i5F-RNJR | NEXTGEAR-MICRO im610SA1-SP-C | |
---|---|---|
CPU | Core i5-9400F(6コア/6スレッド、2.9~4.1GHz) | Core i7-8700(3.20~4.60GHz) |
チップセット | Intel B360 | Intel B360 |
GPU | GeForce GTX 1060(3GB) | NVIDIA GeForce GTX 1060(3GB) |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 8GB×1 | DDR4-2400 SDRAM 8GB×2 |
ストレージ | 240GB SATA SSD+1TB HDD | 240GB SATA SSD+1TB HDD |
OS | Windows 10 Home 64bit |
以下のCINEBENCH R15のスコアが示すとおり、6コアでもHyper-Threadingに対応しているCore i7-8700と比べるとマルチスレッド時のスコアは2/3あたりになる。また、4GHzを超えるターボ時のクロックで169.44cbは記録しているが、Core i7-8700のように4.6GHzまで上がるCPUと比べるとやはり低めだ。
ただし、これはCore i7-8700と比較してのこと。Core i5としての性能は高いと言える。その上で、PCMark 10や3DMarkのスコアが示すとおり、実運用面での性能はCore i7-8700と比べてもほとんど差がなく、いくつかのテストでは上回っている。
LEVEL-M0B6-i5F-RNJR | NEXTGEAR-MICRO im610SA1-SP-C | |
---|---|---|
PCMark 10 | v1.1.1739 | |
Extended Score | 5,881 | 5,239 |
Essentials Scenario | 8,491 | 8,561 |
App Start-up Test | 10,248 | 11,591 |
Video Conferencing Test | 6,990 | 6,017 |
Web Browsing Tset | 8,548 | 8,997 |
Productivity Scenario | 6,704 | 5,859 |
Spreadsheets Test | 9,020 | 5,348 |
Writing Test | 4,983 | 6,420 |
Digital Content Creation Scenario | 6,561 | 4,602 |
Photo Editing Test | 7,519 | 3,316 |
Rendering and Visualization Test | 7,554 | 8,737 |
Video Editing Test | 4,974 | 3,365 |
Gaming Scenario | 8,662 | 8,820 |
Fire Strike Graphics Test | 12,214 | 11,861 |
Fire Strike Physics Test | 12,213 | 18,183 |
Fire Strike Combined Test | 4,428 | 4,335 |
3DMark | v2.8.6536 | v2.5.5029 |
TimeSpy Extreme | 1,846 | 1,856 |
TimeSpy Performance | 4,011 | 3,977 |
NightRaid Performance | 29,877 | - |
FireStrike Ultra | 2,830 | 2,769 |
FireStrike Extreme | 5,414 | 5,431 |
FireStrike Performance | 10,278 | 10,616 |
SkyDiver Performance | 25,631 | 30,059 |
CloudGate Performance | 25,038 | 34,095 |
IceStorm Unlimited | 194,457 | 187,183 |
IceStorm Extreme | 148,595 | 143,250 |
IceStorm Performance | 169,277 | 172,341 |
VRMark | ||
Blue Room | 1,160 | 1,124 |
Cyan Room | 3,453 | 3,295 |
Orange Room | 6,601 | 6,429 |
CINEBENCH R15 | ||
Rendering (Multiple CPU) | 784.98cb | 1,183.85cb |
Rendering (Single CPU) | 169.44cb | 194.59cb |
ゲームベンチマークは「Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands」、「Shadow of the Tomb Raider」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」を計測した。
LEVEL-M0B6-i5F-RNJR | NEXTGEAR-MICRO im610SA1-SP-C | |
---|---|---|
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlands | ||
1,920×1080ドット(ウルトラ) | 32.28fps | 34.66fps |
1,920×1080ドット(非常に高い) | 57.45fps | - |
1,920×1080ドット(高) | 64.99fps | 67.22fps |
1,920×1080ドット(中) | 70.53fps | 72.48fps |
1,920×1080ドット(低) | 97.60fps | - |
Shadow of the Tomb Raider(DX12) | ||
1,920×1080ドット(最高) | 完走せず | - |
1,920×1080ドット(高) | 50fps | - |
1,920×1080ドット(中) | 57fps | - |
1,920×1080ドット(低) | 70fps | - |
1,920×1,080ドット(最低) | 84fps | - |
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク | ||
1,920×1,080ドット(高品質) | 4,115(普通) | - |
1,920×1,080ドット(標準品質) | 6,009(快適) | 5,880(やや快適) |
1,920×1,080ドット(軽量品質) | 7,961(快適) | 7,792(快適) |
World of Tanks enCore | ||
超高品質(1,920×1,080ドット、TSSAA HQ) | 16,468 | 16,144 |
中品質(1,920×1,080ドット、AAなし) | 39,436 | 42,938 |
最低品質(1,366×768ドット、AAなし) | 91,354 | 109,240 |
Tom Clancy's Ghost Recon Wildlandsで見られたのは、比較対象とくらべてわずかにフレームレートが低い点。約2fps程度だ。ところが、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは本製品のほうが高いスコアになった。一貫性がないのでおそらく誤差の範囲だろう。コア/スレッド数に余裕があったほうが有利なことは確かでも、Core i5以上のグレードであれば実際のゲームで明確な差を生み出すほどではないと言える。
プレイ環境としては、先に指摘したとおり。解像度は1,920×1,080ドットをメインとするのがよく、たとえばFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークなどでは2,560×1,440ドットはどの画質設定でも快適評価は得られなかった。
画質についても、各タイトルの最高画質は60fpsに達していない。中~高といった画質なら60fpsを満たせるので、このあたりを選ぶのがよいだろう。軽量なタイトル、たとえばWorld of Tanks enCoreなどでは、超高品質でも問題ない。ある程度余裕もあるので2,560×1,440ドットで楽しむことも可能だろう。
フルHD環境ではCPUはおおむねOK。GPUはアップグレードしたいところだがGTX 1060(3GB)のコスパは捨てがたい
LEVEL-M0B6-i5F-RNJRのポイントはやはりコスパのよさだ。GPUを搭載しなCore i5-9400F、旧世代でビデオメモリが少し少ないGeForce GTX 1060(3GB)といったスペックは、多少注意点はあるものの、それを理解できれば10万円という予算で手に入る。
性能としては1,920×1,080ドット、中~高画質狙いといったあたりがベンチマーク結果からわかるとおり。ゲーミングPCとしてはエントリーグレードで、PCのゲーミング環境としてはメインストリームといったところだ。これが10万円以下なら悪くない。
とくに、ゲームにおいて必要なCPU性能は、多くの場合Core i5で足りそうだ。アップグレードするならビデオカードということになるが、ビデオカードはさらに高価なパーツ。より上の環境、たとえば1,920×1,080ドット、最高画質を求めるとプラス4万円、2,560×1,440ドットで高画質を狙いに行くとプラス6万円といった予算になる。
画質やフレームレートをとるか、コスパをとるか。標準構成のGeForce GTX 1060(3GB)はコスパ側に大きく振った選択であり、おこずかいの範囲内で、カジュアルにゲームを楽しみたいなら、これでもよい選択なのではないだろうか。