Hothotレビュー
デスクトップ級性能で死角なしのゲーミングノート「ALIENWARE AREA-51m」
~2.5GBase-T標準搭載など最新パーツも満載
2019年3月27日 11:00
デルのゲーミングPCブランド「ALIENWARE」に、ノートPCの新たなハイエンド製品として「ALIENWARE AREA-51m」が投入された。17.3型ディスプレイを搭載した大型の筐体に、デスクトップPCを詰め込んだようなマシンだ。これは比喩ではなく、本当にデスクトップPC向けのCPUとチップセットを使っている。
その証拠となるのが、採用されているACアダプタ。今回試用した最上位モデルの「スプレマシー VR」では、180Wと330Wの2つのACアダプタを使用する。ノートPCの充電は最大100WのUSB Power Deliveryでまかなおうという流れがあるなか、合計510Wというのは異常な要求電力だ。
毎度規格外なマシンを出してくる「ALIENWARE」が今回はどんなマシンを仕上げてきたのか、使用感も含めて詳しく見ていきたい。
デスクトップ向けのパーツを搭載したゲーミングノート
「ALIENWARE AREA-51m」は4つのモデルが用意されており、カスタマイズも可能となっている。今回は最上位の「スプレマシー VR」をさらにカスタマイズしたものを試用している。
【表1】ALIENWARE AREA-51m スプレマシー VR(BTOカスタマイズ) ※3月20日時点 | |
---|---|
CPU | Core i9-9900K(8コア/16スレッド、3.6~5GHz) |
GPU | GeForce RTX 2080(GDDR6 8GB、ファクトリーオーバークロック) |
メモリ | DDR4-2400 32GB(16GB×2) |
ストレージ | Intel Optane SSD 118GB×2(RAID 0)、SSHD 1TB |
光学ドライブ | - |
ディスプレイ | 17.3型フルHD非光沢、G-SYNC対応、Tobii eyetracking対応 |
解像度 | 1,920×1,080ドット |
リフレッシュレート | 144Hz |
OS | Windows 10 Home |
汎用ポート | Thunderbolt 3、USB 3.0×4 |
カードリーダ | - |
映像出力 | Thunderbolt 3(DisplayPort)、Mini DisplayPort 1.4(G-SYNC対応)、HDMI 2.0 |
無線機能 | IEEE 802.11ac(Killer Wireless 1550 2x2 AC)、Blunetooth 5 |
有線LAN | 2.5Gigabit Ethernet |
その他 | 92万画素Webカメラ、Alienware Graphics Amplifier、音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 402.6×319.14×27.65~31.2mm |
重量 | 3.87kg |
税別直販価格 | 530,324円 |
CPUはデスクトップPC向けのCore i9-9900K。GPUはGeForce RTX 2080で、最大30W分のオーバークロックキャパシティを備える。さらに本機はノートPCとしてはめずらしくCPUとGPUのアップグレードにも対応しており、CPUはデスクトップ向けの製品と交換可能。GPUはオンボードのグラフィックスモジュールの交換、または外付けのAlienware Graphics Amplifierを使用する。これは後々の話であり、現時点ではこれが最上位の構成となる。
さらにカスタマイズにより、メインメモリは標準の8GBから32GBに、ストレージは標準のSSHD 1TBに加えてOptane SSD 118GB×2(RAID 0)を追加、ディスプレイは144Hzタイプに変更している。この構成だと、3月20日時点で530,324円となる。
この日は6%オフのクーポンがあったので適用すると498,505円となり、かろうじて税抜き50万円を切った。なお最下位モデルの「フルカスタマイズ」でも322,980円からのスタートとなる。
ディスプレイは標準だと60Hzの非光沢IPS液晶で、G-SYNCに対応する。144Hzタイプに変更すると、Tobiiの視線追跡機能も搭載される。4Kディスプレイのオプションがないのは少々意外に思えるが、ゲーマー的には解像度よりリフレッシュレートやG-SYNCのメリットのほうが大きいという判断だろうか。
ほかのスペックもかなり豪華だ。有線LANは2.5GBASE-Tを標準で採用(もちろん1000BASE-Tとしても使える)。3つのUSB端子に加えてThunderbolt 3端子も備える。HDMI 2.0とMini DisplayPort 1.4も用意されており、拡張性や接続性に困ることはまずなさそうだ。
ACアダプタは180Wと330Wの2つを使用し、合計510Wとなる。どちらか1つを接続すれば充電がはじまるが、両方とも接続しないと3D描画の性能がかなり制限される。ACアダプタの接続端子は180Wと330Wのもので共通となっており、どちらに接続してもかまわない。バッテリは90Whのリチウムイオン電池。
本体色はルナライト(シルバーホワイト)とダークサイド オブ ザ ムーン(ダークグレー)の2色が用意されている。今回試用したのはルナライト。
本体サイズは、402.6×319.14×27.65~42mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約3.87kg。決して小さいとは言えないサイズだが、スペックを考えれば十分小さく軽いと思う。
高リフレッシュレートで最新ゲームを存分に楽しめる
それでは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていこう。利用したのは、「3DMark v2.8.6546」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」、「BBench」。
「3DMark v2.8.6546」の結果を見ると、「Fire Strike」でフレームレートは120fps前後となっており、かなりヘビーなゲームでも高リフレッシュレートのディスプレイを活かせるのがわかる。また「Time Spy」でもほぼ60fps以上を維持している。ゲーム系のベンチマークテストでも、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」において、4K・高品質設定では「普通」の評価となったが、フルHD環境であれば「とても快適」となっている。
すべてのベンチマークテストで、デスクトップ向けのパーツを使っているとおりの高いスコアが出ている。温度周りもCPUが60度台、GPUが70度台に収まっており、高負荷時の冷却性能も十分だ。
【表2】ベンチマークスコア | |
---|---|
「3DMark v2.8.6546 - Time Spy」 | |
Score | 10,406 |
Graphics score | 10,359 |
CPU test | 10,687 |
「3DMark v2.8.6546 - Port Royal」 | |
Score | 5,724 |
「3DMark v2.8.6546 - Fire Strike」 | |
Score | 22,559 |
Graphics score | 25,571 |
Physics score | 24,4345 |
Combined score | 11,318 |
「3DMark v2.8.6546 - Sky Diver」 | |
Score | 54,342 |
Graphics score | 87,302 |
Physics score | 21,456 |
Combined score | 35,464 |
「3DMark v2.8.6546 - Night Raid」 | |
Score | 58,226 |
Graphics score | 116,047 |
CPU score | 15,229 |
「3DMark v2.8.6546 - Cloud Gate」 | |
Score | 57,846 |
Graphics score | 151,229 |
Physics score | 18,299 |
「3DMark v2.8.6546 - Ice Storm Extreme」 | |
Score | 192,037 |
Graphics score | 409,932 |
Physics score | 67,137 |
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」 | |
Score | 11,196 |
Average frame rate | 244.08fps |
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」 | |
Score | 8,776 |
Average frame rate | 191.32fps |
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」 | |
Score | 3,260 |
Average frame rate | 71.07fps |
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質) | |
3,840×2,160ドット | 4,393 |
1,920×1,080ドット | 10.091 |
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(最高品質) | |
3,840×2,160ドット | 8,124 |
1,920×1,080ドット | 18,855 |
「World of Tanks enCore」(超高) | |
1,920×1,080ドット | 35,821 |
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6) | |
1,920×1,080ドット | 78,799 |
「CINEBENCH R20」 | |
CPU | 4,600cb |
CPU(Single Core) | 488cb |
ストレージは「CrystalDiskMark 6.0.2」で計測。標準のSSHDはSeagate製「ST10000LX015」。オプションで追加したSSDは「Optane SSD 800P 118GB」を2基、RAID 0で組まれており、シーケンシャルはリード3GB/sを超えている。
さらに4KiB Q1T1でもリード・ライトともに100MB/s超となっており、あらゆる状況で高速なアクセスを実現してくれるのがわかる。SSHDも遅いわけではないが、この2つを比べると実使用でも明確な速度差が感じられる。
バッテリ持続時間は「BBench」で計測した。ディスプレイの明るさ40%の状態で、キーストロークとWeb巡回あり(Wi-Fi接続)で約2時間7分、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」をループで動かしたときには約1時間15分動作した(NVIDIA Battery Boostはオフ)。ACアダプタを2つとも接続していないときには性能が抑えられるので、参考値としてご覧いただきたい。
キータッチから排熱処理まで、あらゆる面で死角なし
続いて使用感をお伝えする。本機のデザインは白と黒のモノトーンでまとめられており、ディスプレイの周辺と本体後部だけが黒で、後は白を基調としている。
ディスプレイの背面に光るエイリアンのロゴマークと、「A51」を元にしたと思われる薄いデザインがあるだけで、あまり派手な印象はない。目立つのは背面の排気口を囲うように配されたライティング。これだけでゲーミングPCらしい自己主張と近未来感が出ている。
ディスプレイは17.3型のIPS液晶となっており、視野角はきわめて広く色変化もほとんどない。発色もよく、144Hzで表示できるとなれば、フルHDのディスプレイとしては申し分のない性能だ。
また今回はTobiiの視線追跡機能がディスプレイに搭載されている。インストールされたソフトを試してみると、PCの前に座った後、画面の指示された場所を見るだけの簡単なキャリブレーションを行なうことで、実際に自分の視線が追跡されるのを確認できるデモを試せた。
視線はかなり正確かつ高速にトラッキングされており、対応するゲームで視線が向いたときだけUIを出すといった機能が使えたり、動画配信で目線がどこに向いているかを表示させたり、視線を外すとディスプレイの明るさを下げて節電させたりできる。
キーボードは17.3型ノートだけあって余裕のある配置。最近のノートPCにしてはめずらしくアイソレーションタイプではない。クリック感は強めだが、ストロークはノートPCらしい浅さ。ただスペースキーのような大きめのキーで端を押しても、キーが真っすぐ降りていって引っ掛かりがないなど、作りはしっかりしている。
タッチパッドはふれると光るという仕込み入り。2つのボタンは独立していて、キーボードと同様に端を押してもきちんとクリックできる。キーボードとタッチパッドのデザインは悪く言えば古臭いが、良く言えば無難で作りが丁寧。デザイン性よりも実用性をきっちり考えてきていると感じる。
スピーカーは本体前面の左右に用意されている。音質は低音がやや弱いものの、高音は耳障りにならない程度にメリハリのある音がする。またステレオ感はとても良い。さらにオリジナルのソフトでオーディオ効果を調整できる。標準状態で7.1chバーチャルサラウンドが有効になっていて、サラウンド感はぐっと増すが、人の声がややこもったように聞こえる。気になる人は用途によってプロファイルを変更して使うのがいい。
次にゲーミングPCとしてはもっとも気になる排熱処理について。底面および上部後方から吸気し、背面および側面後方から排気するというエアフローになっている。騒音はアイドル時はほぼ無音で、SSHDのアクセス音のほうがよく聞こえる程度。オフィスワークなどでは、なにかで負荷が上がった瞬間に少しファンが回ることはあっても、まず気にならない程度だ。
ベンチマークテスト中などの高負荷時のファンの騒音はかなり大きく、ゲームに集中したいならヘッドフォンは必要だろう。とはいえほかのハイエンドゲーミングノートPCと比べてうるさいと感じるほどではなく、本機がデスクトップPCのパーツを使用していることを考えればかなり優秀と言っていい。甲高い風切り音は少なく、ホワイトノイズのような音なので、音の大きさのわりには耳障りには感じない。
キーボード上の熱はかなり抑えられており、左手付近がほんのり温かく感じる程度。しかしキーボードの上にある電源ボタンがある付近はかなり熱くなる。つねに手がふれるキーボード部分からはうまく熱を逃がしているのがわかる。
これなら高負荷のゲームを長時間遊んでも不快感はかなり少ないだろう。ただし背面の排気はかなりの風量と熱なので、とくにゲーム中などの高負荷時には、向かい側に人や熱に弱い物がないかは確認したほうがいい。
GPUのオーバークロック機能を有するということは、マシンからの発熱もその分だけ増える。高性能なパーツがパワーを発揮するための排熱処理も重要だが、本機は利用者の快適性もきちんと考えられている。キートップへ伝わる熱を最小限にしつつ、騒音もなるべく耳触りにならないようにしながら、うまく排熱しているのは高く評価したい。
筆者は過去に多くのゲーミングノートPCをレビューしてきたが、小さな筐体に高性能なパーツを詰め込む以上、騒音、排熱、性能のいずれかに支障が出ていることが多い。本機は17.3型というノートPCにしてが大型の部類とはいえ、より発熱量が多いデスクトップPC向けのパーツを使ったり、オーバークロックのマージンを確保したりしながら、見事に排熱処理ができている。
キーボードやディスプレイなどのユーザーインターフェイス部分も、文句のない品質を確保している。さらにマクロキーやオーバークロック調節などのソフトもプリインストールされているし、ソフト自体もシンプルで洗練されている。視線追跡機能を内蔵しているのもユニークだ。
レビュアーとしては「ここがもう少しこうなれば」と粗探しをしてしまうのだが、本機はゲーミングPCとしてケチの付け所がない。強いて言えば価格が高いが、これだけの性能と完成度を見せられれば納得がいく。高性能なデスクトップとノートを2台そろえるより、これ1台で全部まかなおう……と考えられれば現実的な選択肢になってくるだろう。