Hothotレビュー

デスクトップ級性能で死角なしのゲーミングノート「ALIENWARE AREA-51m」

~2.5GBase-T標準搭載など最新パーツも満載

ALIENWARE AREA-51m

 デルのゲーミングPCブランド「ALIENWARE」に、ノートPCの新たなハイエンド製品として「ALIENWARE AREA-51m」が投入された。17.3型ディスプレイを搭載した大型の筐体に、デスクトップPCを詰め込んだようなマシンだ。これは比喩ではなく、本当にデスクトップPC向けのCPUとチップセットを使っている。

 その証拠となるのが、採用されているACアダプタ。今回試用した最上位モデルの「スプレマシー VR」では、180Wと330Wの2つのACアダプタを使用する。ノートPCの充電は最大100WのUSB Power Deliveryでまかなおうという流れがあるなか、合計510Wというのは異常な要求電力だ。

 毎度規格外なマシンを出してくる「ALIENWARE」が今回はどんなマシンを仕上げてきたのか、使用感も含めて詳しく見ていきたい。

デスクトップ向けのパーツを搭載したゲーミングノート

 「ALIENWARE AREA-51m」は4つのモデルが用意されており、カスタマイズも可能となっている。今回は最上位の「スプレマシー VR」をさらにカスタマイズしたものを試用している。

【表1】ALIENWARE AREA-51m スプレマシー VR(BTOカスタマイズ) ※3月20日時点
CPUCore i9-9900K(8コア/16スレッド、3.6~5GHz)
GPUGeForce RTX 2080(GDDR6 8GB、ファクトリーオーバークロック)
メモリDDR4-2400 32GB(16GB×2)
ストレージIntel Optane SSD 118GB×2(RAID 0)、SSHD 1TB
光学ドライブ-
ディスプレイ17.3型フルHD非光沢、G-SYNC対応、Tobii eyetracking対応
解像度1,920×1,080ドット
リフレッシュレート144Hz
OSWindows 10 Home
汎用ポートThunderbolt 3、USB 3.0×4
カードリーダ-
映像出力Thunderbolt 3(DisplayPort)、Mini DisplayPort 1.4(G-SYNC対応)、HDMI 2.0
無線機能IEEE 802.11ac(Killer Wireless 1550 2x2 AC)、Blunetooth 5
有線LAN2.5Gigabit Ethernet
その他92万画素Webカメラ、Alienware Graphics Amplifier、音声入出力など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)402.6×319.14×27.65~31.2mm
重量3.87kg
税別直販価格530,324円

 CPUはデスクトップPC向けのCore i9-9900K。GPUはGeForce RTX 2080で、最大30W分のオーバークロックキャパシティを備える。さらに本機はノートPCとしてはめずらしくCPUとGPUのアップグレードにも対応しており、CPUはデスクトップ向けの製品と交換可能。GPUはオンボードのグラフィックスモジュールの交換、または外付けのAlienware Graphics Amplifierを使用する。これは後々の話であり、現時点ではこれが最上位の構成となる。

 さらにカスタマイズにより、メインメモリは標準の8GBから32GBに、ストレージは標準のSSHD 1TBに加えてOptane SSD 118GB×2(RAID 0)を追加、ディスプレイは144Hzタイプに変更している。この構成だと、3月20日時点で530,324円となる。

 この日は6%オフのクーポンがあったので適用すると498,505円となり、かろうじて税抜き50万円を切った。なお最下位モデルの「フルカスタマイズ」でも322,980円からのスタートとなる。

 ディスプレイは標準だと60Hzの非光沢IPS液晶で、G-SYNCに対応する。144Hzタイプに変更すると、Tobiiの視線追跡機能も搭載される。4Kディスプレイのオプションがないのは少々意外に思えるが、ゲーマー的には解像度よりリフレッシュレートやG-SYNCのメリットのほうが大きいという判断だろうか。

 ほかのスペックもかなり豪華だ。有線LANは2.5GBASE-Tを標準で採用(もちろん1000BASE-Tとしても使える)。3つのUSB端子に加えてThunderbolt 3端子も備える。HDMI 2.0とMini DisplayPort 1.4も用意されており、拡張性や接続性に困ることはまずなさそうだ。

 ACアダプタは180Wと330Wの2つを使用し、合計510Wとなる。どちらか1つを接続すれば充電がはじまるが、両方とも接続しないと3D描画の性能がかなり制限される。ACアダプタの接続端子は180Wと330Wのもので共通となっており、どちらに接続してもかまわない。バッテリは90Whのリチウムイオン電池。

 本体色はルナライト(シルバーホワイト)とダークサイド オブ ザ ムーン(ダークグレー)の2色が用意されている。今回試用したのはルナライト。

 本体サイズは、402.6×319.14×27.65~42mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約3.87kg。決して小さいとは言えないサイズだが、スペックを考えれば十分小さく軽いと思う。

180Wと330Wの2つのACアダプタを使用する。未接続だと性能が大幅に制限される

高リフレッシュレートで最新ゲームを存分に楽しめる

 それでは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていこう。利用したのは、「3DMark v2.8.6546」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」、「BBench」。

 「3DMark v2.8.6546」の結果を見ると、「Fire Strike」でフレームレートは120fps前後となっており、かなりヘビーなゲームでも高リフレッシュレートのディスプレイを活かせるのがわかる。また「Time Spy」でもほぼ60fps以上を維持している。ゲーム系のベンチマークテストでも、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」において、4K・高品質設定では「普通」の評価となったが、フルHD環境であれば「とても快適」となっている。

 すべてのベンチマークテストで、デスクトップ向けのパーツを使っているとおりの高いスコアが出ている。温度周りもCPUが60度台、GPUが70度台に収まっており、高負荷時の冷却性能も十分だ。

【表2】ベンチマークスコア
「3DMark v2.8.6546 - Time Spy」
Score10,406
Graphics score10,359
CPU test10,687
「3DMark v2.8.6546 - Port Royal」
Score5,724
「3DMark v2.8.6546 - Fire Strike」
Score22,559
Graphics score25,571
Physics score24,4345
Combined score11,318
「3DMark v2.8.6546 - Sky Diver」
Score54,342
Graphics score87,302
Physics score21,456
Combined score35,464
「3DMark v2.8.6546 - Night Raid」
Score58,226
Graphics score116,047
CPU score15,229
「3DMark v2.8.6546 - Cloud Gate」
Score57,846
Graphics score151,229
Physics score18,299
「3DMark v2.8.6546 - Ice Storm Extreme」
Score192,037
Graphics score409,932
Physics score67,137
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score11,196
Average frame rate244.08fps
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score8,776
Average frame rate191.32fps
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score3,260
Average frame rate71.07fps
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
3,840×2,160ドット4,393
1,920×1,080ドット10.091
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(最高品質)
3,840×2,160ドット8,124
1,920×1,080ドット18,855
「World of Tanks enCore」(超高)
1,920×1,080ドット35,821
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット78,799
「CINEBENCH R20」
CPU4,600cb
CPU(Single Core)488cb

 ストレージは「CrystalDiskMark 6.0.2」で計測。標準のSSHDはSeagate製「ST10000LX015」。オプションで追加したSSDは「Optane SSD 800P 118GB」を2基、RAID 0で組まれており、シーケンシャルはリード3GB/sを超えている。

 さらに4KiB Q1T1でもリード・ライトともに100MB/s超となっており、あらゆる状況で高速なアクセスを実現してくれるのがわかる。SSHDも遅いわけではないが、この2つを比べると実使用でも明確な速度差が感じられる。

SSHD(Seagate ST10000LX015 1TB)
SSD(Intel Optane SSD 800P 118GB×2 RAID 0)

 バッテリ持続時間は「BBench」で計測した。ディスプレイの明るさ40%の状態で、キーストロークとWeb巡回あり(Wi-Fi接続)で約2時間7分、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」をループで動かしたときには約1時間15分動作した(NVIDIA Battery Boostはオフ)。ACアダプタを2つとも接続していないときには性能が抑えられるので、参考値としてご覧いただきたい。

キータッチから排熱処理まで、あらゆる面で死角なし

 続いて使用感をお伝えする。本機のデザインは白と黒のモノトーンでまとめられており、ディスプレイの周辺と本体後部だけが黒で、後は白を基調としている。

 ディスプレイの背面に光るエイリアンのロゴマークと、「A51」を元にしたと思われる薄いデザインがあるだけで、あまり派手な印象はない。目立つのは背面の排気口を囲うように配されたライティング。これだけでゲーミングPCらしい自己主張と近未来感が出ている。

ルナライトを選ぶと、白と黒のモノトーンカラーとなる。ユニークだが派手という印象でもない
電源を入れると背面のライティングが点灯する。ただし使用者からはディスプレイの向こう側の位置になり、ほぼ見えない

 ディスプレイは17.3型のIPS液晶となっており、視野角はきわめて広く色変化もほとんどない。発色もよく、144Hzで表示できるとなれば、フルHDのディスプレイとしては申し分のない性能だ。

 また今回はTobiiの視線追跡機能がディスプレイに搭載されている。インストールされたソフトを試してみると、PCの前に座った後、画面の指示された場所を見るだけの簡単なキャリブレーションを行なうことで、実際に自分の視線が追跡されるのを確認できるデモを試せた。

 視線はかなり正確かつ高速にトラッキングされており、対応するゲームで視線が向いたときだけUIを出すといった機能が使えたり、動画配信で目線がどこに向いているかを表示させたり、視線を外すとディスプレイの明るさを下げて節電させたりできる。

 キーボードは17.3型ノートだけあって余裕のある配置。最近のノートPCにしてはめずらしくアイソレーションタイプではない。クリック感は強めだが、ストロークはノートPCらしい浅さ。ただスペースキーのような大きめのキーで端を押しても、キーが真っすぐ降りていって引っ掛かりがないなど、作りはしっかりしている。

 タッチパッドはふれると光るという仕込み入り。2つのボタンは独立していて、キーボードと同様に端を押してもきちんとクリックできる。キーボードとタッチパッドのデザインは悪く言えば古臭いが、良く言えば無難で作りが丁寧。デザイン性よりも実用性をきっちり考えてきていると感じる。

 スピーカーは本体前面の左右に用意されている。音質は低音がやや弱いものの、高音は耳障りにならない程度にメリハリのある音がする。またステレオ感はとても良い。さらにオリジナルのソフトでオーディオ効果を調整できる。標準状態で7.1chバーチャルサラウンドが有効になっていて、サラウンド感はぐっと増すが、人の声がややこもったように聞こえる。気になる人は用途によってプロファイルを変更して使うのがいい。

ディスプレイはIPS液晶を採用。視野角がきわめて広く、発色もいい
Tobiiの視線追跡機能も内蔵する。ソフトで簡単に視線追跡のデモを試せる
キーボードはバックライト付き。今時めずらしくアイソレーションタイプではない
付属のソフトはかなり多機能。キーボードバックライトはキー事に色変更が可能
キーボードマクロ機能も搭載
タッチパッドはふれると光る
スピーカーは本体前面。ステレオ感がはっきりと出る
専用のソフトで音質を調整できる

 次にゲーミングPCとしてはもっとも気になる排熱処理について。底面および上部後方から吸気し、背面および側面後方から排気するというエアフローになっている。騒音はアイドル時はほぼ無音で、SSHDのアクセス音のほうがよく聞こえる程度。オフィスワークなどでは、なにかで負荷が上がった瞬間に少しファンが回ることはあっても、まず気にならない程度だ。

 ベンチマークテスト中などの高負荷時のファンの騒音はかなり大きく、ゲームに集中したいならヘッドフォンは必要だろう。とはいえほかのハイエンドゲーミングノートPCと比べてうるさいと感じるほどではなく、本機がデスクトップPCのパーツを使用していることを考えればかなり優秀と言っていい。甲高い風切り音は少なく、ホワイトノイズのような音なので、音の大きさのわりには耳障りには感じない。

 キーボード上の熱はかなり抑えられており、左手付近がほんのり温かく感じる程度。しかしキーボードの上にある電源ボタンがある付近はかなり熱くなる。つねに手がふれるキーボード部分からはうまく熱を逃がしているのがわかる。

 これなら高負荷のゲームを長時間遊んでも不快感はかなり少ないだろう。ただし背面の排気はかなりの風量と熱なので、とくにゲーム中などの高負荷時には、向かい側に人や熱に弱い物がないかは確認したほうがいい。

 GPUのオーバークロック機能を有するということは、マシンからの発熱もその分だけ増える。高性能なパーツがパワーを発揮するための排熱処理も重要だが、本機は利用者の快適性もきちんと考えられている。キートップへ伝わる熱を最小限にしつつ、騒音もなるべく耳触りにならないようにしながら、うまく排熱しているのは高く評価したい。

 筆者は過去に多くのゲーミングノートPCをレビューしてきたが、小さな筐体に高性能なパーツを詰め込む以上、騒音、排熱、性能のいずれかに支障が出ていることが多い。本機は17.3型というノートPCにしてが大型の部類とはいえ、より発熱量が多いデスクトップPC向けのパーツを使ったり、オーバークロックのマージンを確保したりしながら、見事に排熱処理ができている。

 キーボードやディスプレイなどのユーザーインターフェイス部分も、文句のない品質を確保している。さらにマクロキーやオーバークロック調節などのソフトもプリインストールされているし、ソフト自体もシンプルで洗練されている。視線追跡機能を内蔵しているのもユニークだ。

 レビュアーとしては「ここがもう少しこうなれば」と粗探しをしてしまうのだが、本機はゲーミングPCとしてケチの付け所がない。強いて言えば価格が高いが、これだけの性能と完成度を見せられれば納得がいく。高性能なデスクトップとノートを2台そろえるより、これ1台で全部まかなおう……と考えられれば現実的な選択肢になってくるだろう。

本体左側面Thunderbolt 3、USB、マイク端子、ヘッドフォン端子
右側面はUSB端子×2
背面はMini DisplayPort、HDMI、2.5GBase-T Ethernetポート、Alienware Graphics Amplifier接続用ポート、電源端子×2
底面も白と黒のモノトーン。白い部分はマット加工も施されている
CPUやGPUなどのクロックをリアルタイムに確認/調整する機能もある