山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Google Playストア対応でE Ink採用の7.8型Androidタブレット「BOOX Nova2」

Onyx International「BOOX Nova2」

 Onyx Internationalの「BOOX Nova2」は、7.8型のE Ink電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットだ。Kindleや楽天Koboなど特定の電子書籍ストアとひもづいたE Ink端末と異なり、Google Playストアからさまざまなアプリをインストールして使える汎用のE Ink端末である。

 「BOOX Nova」の後継となる本製品は、ベースのAndroidが6.0から9へと進化しているほか、2GBだったメモリは3GB、1.6GHzクアッドコアだったCPUは2.0GHzオクタコアへと改められるなど、土台にあたる部分が底上げされている。またスタイラス対応により手書きノートとしても利用可能になるなど、用途の幅も広がっている。

 今回は国内代理店であるSKTから機材を借用できたので、電子書籍端末として競合になるAmazonの「Kindle Oasis」および楽天Koboの「Kobo Forma」と比較しつつチェックする。

縦向き利用を基本としたデザイン。従来モデルの「BOOX Nova」と同じくフロントライトを搭載する
背面。フォルムは先代のKindle Paperwhiteに酷似している。カメラは非搭載
本体下部に物理式のバックボタンを搭載する。長押しでフロントライトのオン/オフが可能だ
本体上部に電源ボタンを備える。スピーカーを内蔵しないため、音量ボタンは搭載しない
底面には充電用のUSB Type-Cポートを搭載する

電子書籍ユースに向いた7.9型のE Ink電子ペーパー端末

 まずは外観から見ていこう。画面サイズは7.8型で、iPad mini(7.9型)とほぼ同じ。E Ink端末ではKobo Forma(8型)、次いでKindle Oasis(7型)が近い。解像度は3,00ppi(1,872×1,404ドット)と、電子書籍の表示には十分だ。

 E Ink電子ペーパーは、従来と同じく16階調グレースケールだ。世代はCartaで、とくに目新しい技術は採用されていないように見える。重量は275gということで、iPad mini(300.5g)に比べると軽量だが、Kindle Oasis(188g)Kindle Paperwhite(182g)などの軽さを想像していると、現物を持った時にかなり重く感じる。

 本体にあるボタンは、上面の電源ボタン、および画面下の「戻る」ボタンのみ。ちなみにこの「戻る」は役割をホームボタンに切り替えることもできるが、本製品はモノクロ表示ゆえ画面内のナビゲーションが見えにくく、その場合に物理的な「戻る」ボタンがあったほうが何かと重宝するため、個人的にはそのままで使うことをおすすめする。

7型のKindle Oasis(右)との比較。画面は本製品のほうがひとまわり大きい
6型のKindle Paperwhite(右)との比較。Kindle Oasisと比べてもかなりのサイズ差だ
7.9型のiPad mini(右)との比較。画面サイズは酷似している
7.9型のKobo Forma(右)との比較。こちらも画面サイズは同等だ
厚み比較。左はいずれも本製品、右は上から順に、Kindle Oasis、Kindle Paperwhite、、Kobo Forma、iPad mini。グリップのあるKindle OasisとKobo Formaは画面側の厚みも比べてみてほしい

独特のセットアップフロー。Google Playストアも利用可能

 本製品はAndroid 9ベースだが、セットアップのフローは一般的なAndroidと大きく異なっている。具体的には、国やタイムゾーン、画面オフまでの時間だけ設定すれば、すぐにホーム画面が表示され、以降のプロセスはすべて個別に(自力で)行なうようになっている。

 これは本製品がGoogle Playの利用を前提としていないことが大きな理由だ。セットアップ完了時点ではGoogleアカウントの登録を行なっていないばかりか、Wi-Fiの設定すら完了していない。事実、手書きでノートを取るだけならこれでも問題なく利用できるわけで、あとは必要に応じ、自力で設定していくことになる。

セットアップ開始。この段階からフロントライトがアンバーに点灯する
まずは言語設定。日本語を選択。このあとプライバシーポリシーに同意する
日時設定。この時点ではタイムゾーンが中国になっているが追って修正するのでそのまま進む
電源管理設定。ここもカスタマイズが必要な箇所だが後回しにしてそのまま進む
本製品はペンに対応している。必要に応じてキャリブレーションを実行。完了すると再起動が行なわれる
起動しホーム画面が表示された。左列最下段の「設定」をタップし、前述のタイムゾーンや電源管理設定を必要に応じて行なう

 今回は電子書籍ユースで利用するので、Google Playの有効化、およびアプリのインストールまでの作業を行なう。ホーム画面が表示されたらまずWi-Fiを有効にし、その後Google Playを有効にするにチェックを入れた上で、GSF IDの登録を行なう。その後Googleの設定画面を開いてログインすることで、はじめててGoogle Playが利用可能になり、Androidアプリのダウンロードが可能になる。

 BOOXシリーズにはじめてて触れるユーザー、とくにAndroidスマホやタブレットの設定に慣れているユーザーほど、特殊なフローに戸惑う可能性があるが、今回使ったかぎりでは従来製品に比べ、作業1つするにしても何のための作業なのかが理解しやすくなっている。日本語も利用できるので、手順に従って進めれば、難易度は高くはない。

この段階ではまだネットワークに接続されていないので、設定画面でWi-Fiをオンにし、ネットワークへの接続を完了させる
続いて設定画面の「アプリ」を開き、「Google Playを有効化」にチェックを入れる。GSF IDが表示され、アクティベートを行なうか尋ねられるので「OK」を選択
ここではじめててGoogleのアカウントを入力する
デバイスの登録を実行する。CAPTCHA認証を行なって次へ進む
完了。プリインストールアプリ一覧のなかにある「Google Play ストア」を開く
サービスの設定画面。Androidスマホなどではセットアップなかに表示される画面だ。必要に応じてチェックを入れて次へと進む
Google Playストアが表示された。以降は通常のAndroidタブレットと同じく、必要なアプリを探してインストールする

 実機を使ったかぎりでは、フロントライトがかなり特徴的だ。最近のE Ink端末はフロントライト=青白い光ではなくアンバーな光が多くなりつつあるが、本製品はそのなかでもかなり黄色味が強い。もちろんオフにもできるが画面下部ボタンの長押しでオン/オフが切り替えられる、もう少し黄色味が控えめな色のバランスのまま、明暗をコントロールできるとありがたい。

黄色味を最大限まで強くした状態。むしろ目を痛めそうなレベルだ
こちらは一般的な青白いライト。上部の通知領域からスライダで自由に調整できる

 なお電源管理が初期設定のままでは、スリープではなく毎回電源をオン/オフする設定になっているので、電源ボタンを押してから使えるようになるまで1分近く時間がかかる。Kindleの専用端末などはもともとスリープのみで運用されているので、本製品もこれに併せてシャットダウンまでの時間を「なし」に設定し、スリープのみで運用するとよいだろう。

電源管理の画面で、シャットダウンするまでの時間を「なし」に設定し、スリープのみでの運用にすれば使いやすくなる

適切な表示モードの選択が快適な利用への第一歩

 では電子書籍ユースについて見ていく。とくに断りがないかぎり、コミックの表示サンプルにはうめ著「大東京トイボックス 1巻」を、電子書籍アプリはKindle(Koboとの比較の場合のみ楽天Kobo)を用いている。

 本製品をはじめとするBOOXシリーズを電子書籍ユースで使いこなすカギとなるのは、表示モードの選択だ。表示するアプリ(またはコンテンツ)に合った表示モードを選ぶことで、画像のクオリティは上がり、ページめくりやスクロールも快適になる。

 過去のモデルではこのモードについて取説以外に満足な説明がなく、手探りで使うしかなかったのだが、本製品は画面上の通知領域から4つの表示モードを選べるようになったため、格段に使いやすくなった。

表示モードの設定画面。モノクロ16諧調のグレースケールで表示することを想定していないアプリを本製品で動かすには必須の機能だ。説明も日本語なのでわかりやすい
上段左が「通常モード」、右が「高速モード」、下段左が「A2モード」、右が「Xモード」。グラデーションや残像の残りやすさ、ページめくりのエフェクトなど、特性はバラバラだ

 今回、代表的な電子書籍ストアアプリ(Kindle、楽天Kobo、BOOK☆WALKER、BookLive!、紀伊國屋書店Kinoppy、ebookjapan)で試したかぎり、画像のなめらかさを優先するなら1番目の「通常モード」、きびきびした動作とシャープさを優先するならば3番目の「A2モード」が適切なようだ。アプリ側のアニメーション効果は別途オフにするとよい。

【動画】「通常モード」でのページめくり。残像は少なく、コミックの表示に向く。ただしグラデーションがなめらかでなく、段々で表示されるのはマイナス
【動画】「高速モード」。ページが横にスライドするエフェクトが発生するほか、残像もかなり残るため、コミックの表示にはそもそも向かない
【動画】「A2モード」。全体的にざらついた画作りだが、ページの横スライドエフェクトも高速で、コミックをきびきび読むのには向いている
【動画】「Xモード」。「A2モード」に似て動作はスムーズだが画質はさらに低く、また残像も多い

 ただしどのモードでも、チューニングが施されているKindleや楽天Koboの専用端末に比べると画質はワンランク下がるほか、動作速度もKobo Formaとは同等だがKindle Oasisにはかなわない。つまり専用端末と比べた場合、汎用性を取るか、それとも画面のクオリティおよび速度を取るか、どちらかということになる。

 とはいえ動画を見てもらえばわかるように、十分に実用レベルに達しており、従来モデルのようにスクロールがページの3分の2のところで止まったり、タップしても反応したりしなかったりといった問題はない。またKindleにしても、専用端末よりも画面サイズが大きいことから、それ目当てで本製品を使う意味はある。

デバイスごとの表示の比較。上段左が本製品(の通常モード)、右がKindle Oasis、下段左がKindle Paperwhite、右がiPad mini。解像度的には同等だが、やはりグラデーションが段差になっているのが目立つ
左が本製品(の通常モード)、右がKobo Forma。こちらもやはり背景のグラデーションの違いが目立つ
【動画】Kindle Oasis(右)とのページめくりの比較。レスポンスが速いA2モードでも、Kindle Oasisの高速さにはかなわない
【動画】Kobo Forma(右)とのページめくりの比較。Kobo端末はタップから反応までの時間が長いため、次のページが表示されるまでの所要時間はほぼイーブンだ

 前述の表示モードの選択に加えて、アプリごとに表示を最適化する機能も活用したい。本製品はもともとカラーのアプリをモノクロで表示しているため、ダイアログの境界線が見えなかったり、ボタンが薄すぎて気づかないことが多々ある。最適化機能で濃度を調整すれば見やすさが向上する。全アプリ共通ではなくアプリ単位で調整できるのはありがたい。

アプリのアイコンを長押しするとメニューが表示されるので「最適化」を選択
最適化のメニューその1。「背景の希薄化」でコントラストの調整が行なえる
最適化のメニューその2。リフレッシュにまつわる設定が行なえる
最適化のメニューその3。フォントサイズや濃度が調整できる。前の2つに比べるとあまり出番はない
特定のアプリだけではなく全体のコントラストを調整することもできる

 ところで本製品は、画面の回転が通知領域から行なえるようになったため、見開き表示も容易になった。従来モデルで画面を回転させるためにはサードパーティ製のアプリが必要だったが、これが本体側でできるようになったわけだ。

 前述の6ストアで検証したかぎり、いずれも単ページ表示の時と変わらない使い勝手で快適に利用できた。コミックの場合、7.9型で単ページというのはむしろ大きすぎるので、見開きをメインに使う人も多いのではないだろうか。

見開き表示も実用的。単ページとの切り替えも容易だ

実用性の高いノート機能が新たに追加

 最後に、電子書籍以外の機能もざっとおさらいしておこう。本製品のホーム画面には「書棚」、「書店」、「ノート」、「保管庫」、「アプリ」、「設定」という6つの項目がある。自前でインストールした電子書籍アプリは「アプリ」の中から呼び出す格好だ。

「書棚」は、内蔵のPDFリーダー「Neo Reader」で開いたファイルが表示されるが、使わなければこのように真っ白なままだ
「書店」は、BOOXデフォルトの電子書籍ストアだが、日本語非対応なので実質使い道がない。設定画面でオフにしておくとよい
「保管庫」は要するにファイラーで、本体内に保存したスクリーンショットの画像を開く場合などに利用する

 目玉となるのはスタイラスを使って描画が行なえる「ノート」だろう。スケッチのような高速な描画にこそ向かないものの、ビジネス用途での手書きのメモにはかなり使える。本製品を購入した場合、用途の1つは電子書籍、もう1つはこのノートとなる人も多いはずだ。

「ノート」は手書きのメモを取れる。テンプレートも多数用意されている
4,096段階筆圧検知のwacomデジタイザが利用できる
高速な筆記にこそ向かないが、パームリジェクションも用意されており、十分に実用的だ

 ナビゲーション系で押さえておきたいのは、画面の右下に表示される「ナビボール」と呼ばれるフローティングメニューだ。普段はボール状だが、必要なときはタップすることでメニューが展開し、「戻る」などの操作が行なえる。スクリーンショットのように、ここでしか設定できないメニューもあるので、チェックしておきたいところだ。

ナビボール。デフォルトでは画面右下にあるが、位置は自由に移動できる。ちなみにダブルタップすることでホームボタンと同じ役割を果たす
タップするとメニューが展開する。画面上に指を伸ばすよりもこちらのほうが操作しやすい
ボタンはカスタマイズも可能。スクリーンショットを撮るメニューもあるので、設定しておくと便利だ

動作もきびきびしており合格点。持ちやすさは一工夫が必要か

 以上のように本製品は、専用にチューニングされたKindleやKoboのE Ink端末にはおよばないものの、7.9型の大画面と、さまざまな電子書籍ストアアプリが使える汎用性の高さから、電子書籍ユースに向いた製品だ。個人的には、過去のモデルではいまいち実用的でなかった見開き表示にきちんと対応したこと、またKindleが快適に使えるのが大きい。

 動作もきびきびとしており、メモリが少ない製品にありがちな、画面のフリーズや、タップから反応まで待たされるストレスも激減している。筐体の剛性も十分で、ケースなしでバッグに放り込んで気軽に持ち歩ける。中級者以上の製品なのは事実だが、実売価格も39,800円と、各社の専用端末やiPad miniと比較しても、バランスが取れている。

 そんな本製品の欠点を敢えて挙げるならば、仰向けになった姿勢での持ちづらさだろう。一般的に電子ペーパー端末と言えば、200gを切る軽さで長時間持っていても疲れにくいのが特徴だが、本製品は7.9型という画面サイズもあり、重量は275gと決して軽くはない。とくに7型のKindle Oasis(188g)と比べると、1.5倍以上だ。

 また本製品は、画面が大きいためかページめくりに必要なスワイプの移動距離が長めで、片手で持つ場合、左手ならページを的確にめくれるのに対し、右手ではスワイプ・タップともにページがめくりづらい。その結果として、電子書籍ユースでは、実質的に左手持ち限定・スワイプ限定となりがちだ(右綴じの場合。左綴じの書籍では逆になる)。

左手で持った状態。両手を使わなくとも、親指によるスワイプ操作でページがめくれる
右手でも同じことができそうに見えるが、6型クラスの端末に比べるとスワイプに必要な横移動の距離が長いため、この持ち方ではスムーズにめくりづらい

 つまり片手持ちをする場合、操作に疲れたらもう一方の手に持ち替えるというワザが使いにくいわけで、現実的な解決策としては、何らかの補助グリップないしはスマホリングを導入し、持ちやすくしてやるとよい。こうすれば仰向けでの操作も可能になるわけで、こうした部分は個人が使い方に応じて一工夫する余地があると言えそうだ。

これはKindle Paperwhiteの例だが、このように背面からひっかけるグリップなどを導入し、片手で安定して保持できるようにすれば、操作性は向上するはずだ