山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

3.6型の超小型Androidスマホ「Rakuten Mini」で電子書籍は楽しめるのか

「Rakuten Mini」。今回紹介するクリムゾンレッドのほか、ナイトブラック、クールホワイトの3色をラインナップする

 「Rakuten Mini」は、楽天モバイルが販売する小型Androidスマートフォンだ。同社オリジナルであるこの端末は、3.6型というコンパクトな画面サイズで、同社が用意するスマートフォンのラインナップの中でもひときわ目を引く存在だ。

 現行のスマートフォンの中でも飛び抜けて小型でもあり、普通に考えると電子書籍の利用には向かなさそうだが、6月17日までは定額かけ放題プラン「Rakuten UN-LIMIT」の申込みで1円で入手できることから、関心を持っている人も多いはずだ。

 当初公表されていた対応周波数の一部が実際には利用できないことが今月に入って発覚するなど、いろいろな意味で話題を振りまいているこの端末、今回は初代iPhone SEなどコンパクトな端末と比較しつつ、使い勝手を検証する。

外見は一般的なAndroidスマートフォンと変わりない
右側面に音量ボタンおよび電源ボタンが配置されている
正面上にはカメラを搭載する。ちなみにデフォルトで保護フィルムが貼られている
背面。今回はクリムゾンレッドをチョイスした。中央上にFeliCaマークがある

ミニの名に恥じないコンパクトさ。重量は現行スマートフォンの約半分

 ざっと仕様をおさらいしておこう。画面サイズは3.6型ということで、ミニという名称に恥じないコンパクトさだ。初代iPhone SEが4型だったので、それよりもさらに小さいことになる。また150gを切れば「軽量」と言える現行のスマートフォンの中で、そのおよそ半分となる79gという軽量さはインパクト抜群だ。

 もっともこれだけ小型軽量でありながら、OSはAndroid 9、またメモリも3GBということで、ハイエンドではないものの、実用性は二の次でメモリなどを削りまくった格安端末とは一線を画している。Wi-Fiも、いまだに5GHz帯に対応しない格安スマートフォンもある中、802.11acに対応しているのもよい。さらには顔認証に対応しているのも驚きだ。

 また防滴防塵対応(IPX2/IP5X)に加え、NFC対応でおサイフケータイとして利用できるなど、機能面も見るべきところは多い。USB PDには非対応ながら、USB Type-Cを搭載しているため、ほかのデバイスと端子を統一できるのもよい。イヤフォンジャック変換アダプタも付属するほか、本体にはストラップホールを備えているのも、国内で企画された製品らしいといえばらしい。

 やや気になるのはバッテリだ。画面が小さいことは消費電力も少ないことを意味するが、それでもさすがに1,250mAhというのは心もとない。実際に使ってみたかぎり、本製品の利用にあたってこれが最大の問題点となるのだが、詳しくは後述する。

 またストレージは32GBなのだが、システムが占有する領域がかなり多めのようで、初期設定を終えて後述する複数の電子書籍アプリを入れ、コンテンツを10冊程度ダウンロードしただけで、残りが約6割と、かなりの割合を使ってしまう。外部メモリにも非対応ということで、少々心もとなく感じる。

 ちなみに本製品は楽天モバイル以外にドコモ回線を利用したIIJのeSIM対応プランも利用できるが、Band 1(2.1GHz)に対応するモデルと非対応のモデルが混在していることが6月10日に発表され、ドコモ回線での利用はやや不利になった。本稿では詳しく検証しないが、楽天モバイル以外で使いたい人は、今後の新情報にはつねに気を払っておきたい。

サイズは約53.4×106.2×8.6mm(幅×奥行き×高さ)。初代iPhone SE(右)が大きく見えるほどのコンパクトさだ
第2世代iPhone SE(右)との比較。重量は79gということで、iPhone SE(146g)の約半分しかない
厚みの比較。左が本製品、上段右が初代iPhone SE、下段右が第2世代iPhone SE。それほど薄型というわけではない
Android 9を搭載する。ちなみにCPUはSnapdragon 439(オクタコア2GHz+1.45GHz)
コネクタはUSB Type-C。USB PDには対応しないが、バッテリ容量を考えてもとくに必要ではないだろう
筆者が購入した個体はBand 1(2.1GHz)非対応だった。ドコモ回線での利用は難しそうだ

特徴的なホーム画面。アプリの見分けがつきにくい

 セットアップの手順は、一般的なAndroidのそれと同様で、とくに奇をてらった項目はない。セットアップ完了後に行なわれる楽天回線への接続フローについては、現在何のための作業をしているのかが少々わかりにくいものの、手順に従って行なえばとくに難しいというわけではない。

 ホーム画面は、さまざまなアプリのアイコンがバルーン状に表示される、Palm Phoneに似たインターフェイスとなっている。やや見慣れない画面だが、アプリのアイコン自体は一般的なアイコンそのものなので、それぞれのアイコンがどのアプリなのかを把握していればとくに問題はない。

 ただし本製品で初めてスマートフォンに触れるなどして、それぞれのアイコンを識別できない状態では、起動しない限りどのようなアプリかわからないため、かなり使いづらいと考えられる。このあたりは、メインではなくサブで使う端末という性格が色濃く出ている。

ホーム画面。アイコンは上下にスクロールする。中央寄りのアプリにフォーカスが当たる仕組み
新たにアプリをインストールすると、ホーム画面の下にアイコンが追加される。よく使うアイコンを上に移動させたりと、並び替えは自由に行なえる
よく似たアイコンが多く区別がつきにくいのがネックだ。楽天製アプリのほか、Google製アプリも見間違えやすい
通知領域を表示したところ。ほぼ素のAndroidであることがわかる

 また本製品は光沢調の筐体がかなり滑りやすく、操作には非常に気を使う。購入したらできるだけ早めに保護ケースを入手することを個人的にお勧めする。本体底部のストラップホールを活用し、ストラップをつけるのも1つの方法だろう。

ピアノ調の光沢がある筐体ゆえかなり滑りやすいのが欠点だ
本体底部のストラップホールにストラップを付けて持ち歩くのもよいだろう

テキストコンテンツの表示は案外イケる

 さて電子書籍アプリについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」、テキストは太宰治著「グッド・バイ」を用いている。とくに断りがない限り、電子書籍ストアは楽天Koboを使用している。

 本製品には楽天製のアプリが多数プリインストールされているが、その中には楽天傘下の電子書籍サービス「楽天Kobo」は含まれず、自前でインストールする必要がある。インストール自体はとくに問題があるわけではなく、Google Playストアを開いてダウンロードすれば済む。ほかの電子書籍ストアアプリも同様だ。

 とはいえ、画面サイズは3.6型と極小ゆえ、コミックの表示にはさすがに無理がある。本製品の解像度は1,280×720ドットなので、計算上は400ppiを超えているはずだが、なにせ画面の横幅がたった45mmしかないので、解像度が高いか低いか以前の問題だ。言うまでもないが、見開き表示はまったくもって実用的ではない。

コミックの単ページ表示。ガラケーよりは大きいが、さすがに無理があるのは明白だ
横幅はわずか45mm。6型スマートフォンであれば65~70mmはあるので差は歴然だ
見開きにできなくはないが、サムネイルと変わらないサイズになってしまう
iPhone 11 Pro Max(右)で見開きにしたサイズと、本製品の単ページ表示がおおむね同じサイズとなると、その小ささもわかろうというもの

 ではテキストはどうだろうか。結論から言うと、文字サイズや行間、余白などをきちんと調整すれば問題なく読める。本製品の画面サイズであれば、文庫本と同等になるよう文字サイズを調整すれば約7行、多少詰めれば10行前後が表示できる。一般的な文庫本は1ページあたり16行程度なので、だいたい3分の2程度という計算になる。

楽天Koboで文字サイズを文庫本に合わせた状態。9行ほど表示できている

 以上のように、閲覧性は決して高いとはいえないが、なにせ端末が軽量なので、仰向けの姿勢で長時間頭上にかざしていてもまったく疲れないなど、一般的なスマートフォンにはない読書体験ができる。前述のように400ppiオーバーなので、細い線がしっかり出るのもよい。

 今回の試用中も、長らく積読状態になっているテキスト本を開いたところ、普段と違う感覚も手伝って、スルスルと読み進めることができてしまった。紙の本を読む時、自宅では集中できないのに電車の中だとかえって没頭できることがあるが、それに近い感覚だ。

仰向けになって本体を頭上にかざしてもまったく手が疲れない。その軽さゆえ、落下させて顔面に落ちてもダメージは軽微だ
音量ボタンによるページめくりも可能だ。片手ですべて完結させられるのはよい
ダークモードに対応している電子書籍アプリならばこうした表示も可能だ

 ただしテキスト本の表示にあたり、画面下のステータスバーを非表示にできない電子書籍アプリや、行間もしくは上下左右の余白が調整できない電子書籍アプリは、本製品での利用にあまり向かない。ただでさえ画面サイズが小さいところ、テキストを表示できるエリアがひとまわり小さくなってしまうからだ。

 たとえば楽天Koboは、行間と余白、どちらも調整できないため、1画面に表示できるテキストの分量をもう少し増やそうとしても、文字サイズを小さくする以外の選択肢がない。テキストサイズを(実用性無視で)極小に設定できるという、楽天Koboならではの特徴も、活かしきれていない印象だ。

 一方、BookLive!Readerや紀伊國屋書店Kinoppy、BN Reader(BOOK☆WALKER)は、行間もしくは余白を調整する機能があるため、見やすいように細かくカスタマイズできる。Kindleも悪くはないのだが、これら3つのアプリに比べると自由度が低い。画面が小さすぎる本製品ならではの問題といえそうだ。

楽天Koboの読書設定。フォントサイズおよびフォントは変更できるが、余白および行間を変更できない
BN Reader(BOOK☆WALKER)での表示。デフォルトの状態(左)では文字が小さく、ステータスバーも表示されたままなので、読みやすく直したのが中央の状態。右は行間と余白をゼロにした状態で、実用的ではないが、ここまでカスタマイズできるのはプラスだ

最大の敵はバッテリ駆動時間?

 以上のように、画面サイズは小さくコミックの表示には適さないものの、テキストコンテンツは問題なく読めてしまう。さすがに電子書籍を読むためにわざわざ本製品を買う必要はないし、おすすめもしないが、すでに所有しているユーザーが気分転換がてら試すのにはよいと思う。

 これが地図アプリだと、画面が小さいせいで表示されるランドマークの数自体が減らされてしまい、使い勝手が致命的に悪くなってしまうが、電子書籍のテキストコンテンツであれば表示できる前後の段落が少なくなるだけで、読書そのものに支障はないからだ。

手のひらサイズの読書体験もなかなか新鮮だ

 そんな本製品の最大の問題は、バッテリの駆動時間だろう。待受状態で放置していると約1.5~2日しか持たないほどで、「バッテリの持ちが悪い」という一言で片付けられるレベルをはるかに超えている。何年か使い込んで劣化したスマートフォンでも、ここまで速い電池の減りはなかなかお目にかからない。

電池使用量の画面。「82%で残り1日12時間」「残り26%であと9時間」という表示から、おおむね1.5~2日しか持たないことがわかる

 もっとも電子書籍であれば、ダウンロードさえ完了していればあとは機内モードにしておいても問題なく楽しめるので、バッテリに制限がある中で使い道を探す場合、有力な候補になりうる。試したところ、バッテリセーバーをオンにし、さらに機内モードをオンにすれば数日持たせることは可能なので、こうした使い方も模索してみてはいかがだろうか。