山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

カラーE Ink搭載Androidタブレット「BOOX Nova3 Color」。モノクロとの違いを検証

「BOOX Nova3 Color」。国内代理店SKTの販売価格は5万1,800円

 Onyx Internationalの「BOOX Nova3 Color」は、最新のカラーE Ink電子ペーパー「E INK Kaleido Plus(カレイドプラス)」を搭載した7.8型のAndroid 10タブレットだ。KindleやKoboなど、特定の電子書籍ストアと紐づいたE Ink端末と異なり、Google Playストアからさまざまなアプリをインストールし、カラー表示で使えることが特徴だ。

 カラー電子ペーパー端末が長らく待望されながらもなかなか普及しなかったのは、1つは色の再現性、もう1つは書き換え時間などの性能の問題だ。採用製品はちらほら登場するものの、テストマーケティング的な意味合いが強く、ネットで評判になることもほとんどなかった。

 今回の製品は、カラーE Inkの新世代にあたる「E INK Kaleido Plus」を採用しており、従来のカラー電子ペーパー採用製品とは一線を画す完成度だ。ベースとなっているBOOXシリーズは、Android 10搭載でGoogle Playにも対応していることから、電子書籍にかぎらず、好みのAndroidアプリを自由にインストールして利用できる。

 今回は、国内代理店であるSKTから借用した製品をもとに、従来のモノクロE Inkモデル「BOOX Nova 3」と比較しつつレビューをお届けする。

従来モデルの筐体に新世代のカラーE Inkを搭載

 まずは本製品のモノクロ版に相当する「BOOX Nova 3(以下従来モデル)」とスペックを比較する。なおソフトウェアは2021年3月20日時点の最新版を使用している(一部スクリーンショットのみ例外あり)。

【表】BOOX Nova3 ColorとBOOX Nova3のスペック
BOOX Nova3 ColorBOOX Nova3
CPUQualcomm 8コア(Cortex-A72 + Cortex-A55)Qualcomm 8コア(Cortex-A72 + Cortex-A55)
メモリ3GB(LPDDR4X)3GB(LPDDR4X)
ROM32GB(eMMC)32GB(eMMC)
ディスプレイ7.8型ニューカレイドスクリーン(カレイドプラス、4,096色)7.8型E Ink Cartaフレキシブルスクリーン
解像度468×624(100dpi カラー)
1,404×1,872(300dpi 白黒)
1,872×1,404(300 dpi)
ライトフロントライト(寒色)フロントライト(寒色および暖色)
ネットワークWi-Fi 5(IEEE 802.11ac) 2.4G + 5GWi-Fi 5(IEEE 802.11ac) 2.4G + 5G
BluetoothBT 5.0BT 5.0
バッテリ3,150mAhリチウムポリマーイオン電池3,150mAhリチウムポリマーイオン電池
拡張端子USB Type-C(OTGサポート)USB Type-C(OTGサポート)
スピーカーありあり
マイクありあり
OSAndroid 10Android 10
寸法(幅×奥行き×高さ)197.3×137×7.7mm197.3×137×7.7mm
重量265g265g

 7.8型のタッチスクリーンを備えた外観は、従来モデルとまったく同じ。画面下の「戻る」ボタンやUSB Type-Cポート、および本体上部の電源ボタンなど、見た目はまったく区別がつかない。Wi-FiやBluetooth、バッテリまわりのスペックも同等だ。

本体外観。画面サイズは7.8型で、スタイラスも付属する
背面上部にスピーカーを搭載。下部には技適マークも見える
外観はモノクロ版のBOOX Nova 3(右)とそっくりで、表示しているページがモノクロだと見分けがつかない
7型のモノクロE Ink端末「Kindle Oasis」(右)との比較。ベゼル幅の関係で本製品のほうが画面サイズ以上に巨大に見える
ベゼルは段差のないタイプ。幅は上が実測16mm、左右が実測9mm
画面下にあるのは「戻る」ボタン。設定画面でホームボタンへの変更も可能
上面には電源ボタンを備える。イヤフォンジャックや音量調整ボタンはない
底面はやや左寄りにUSB Type-Cポートを備える。OTGにも対応する

 フロントライトは、従来モデルは2種類の色(暖色/寒色)が搭載されていたが、本製品は寒色のみ。明るさの調整は画面上ステータスバーから呼び出せるスライダーのほか、ジェスチャー機能を有効にすれば画面右端の上下スライド操作でも行なえる。詳しくは後述する。

 重量は従来と同じく265g。実測値では269g→274gとわずかに増えているのだが、サイズがほぼ同じiPad mini(約300g)と比べて1割ほど軽量であることに変わりはない。

重量は実測274g。ほぼ同等サイズのiPad mini(約300g)よりわずかに軽い。ちなみにKindle Oasisは約188gと大差がついている
従来モデルは実測269gなので多少重くなっているが、この程度の違いしかないのがむしろ驚異的だ

 実売価格は5万1,800円で、iPad miniの64GBモデル(5万380円)とはほぼ同額。デバイスとしての性格は異なるが、画面サイズがほぼ等しいため、比較対象になることは多いだろう。ちなみに手書き用途であれば、Apple Pencilが別売のiPad miniよりも、本製品のほうが圧倒的に安価とも言える。

 セットアップは、最初に電源まわりとスタイラスの設定を行ない、ホーム画面を表示させたあとで必要に応じてWi-Fi設定、およびGoogleログインの設定を行なうという、素のAndroidのそれとはかなり異なる手順だ。前回紹介したモノクロ大画面版の「BOOX Max Lumi」とほぼ同じなので、そちらを参照してほしい。

モノクロ300ppi、カラー100ppiはどのように表示されるのか

 本製品が採用するカラーE Inkこと「E INK Kaleido Plus」は、第3世代のカラー対応E Ink電子ペーパーで、4,096色のカラー表示に対応している。同社では従来の「E INK Kaleido」と比べて色域が3倍広がったとしている。まずはざっと特性をチェックしよう。

第3世代のカラーE Ink「Kaleido Plus」によりカラー表示を実現している
左が本製品、右が従来のモノクロE Ink。やはり表現力が桁違いだ

 E Inkがカラーになったと言っても、特徴は従来のモノクロE Inkと変わらない。具体的には紙のような見た目や質感、視野角の広さ、スタンバイモードで約40日持つ低消費電力などが挙げられる。バックライトではなくフロントライトを採用するため目に優しく疲れにくいのも、従来と同様だ。

 さて、この「E INK Kaleido Plus」でおもしろいのは、モノクロ部分が300ppi、カラー部分が100ppiと、異なる解像度が混在していることだ(それぞれが異なるレイヤー層で表示されている)。たとえばカラーのコミックを表示した場合、輪郭線や吹き出し、セリフなどは従来のモノクロE Inkと同等の表現力で、そこに色が乗る格好になる。

 こうしたことから、カラーの解像度自体は低くても、表示のシャープさは、従来のモノクロE Inkと(ほぼ)変わらない。ページ内に色が1箇所でもあるからと言って、ページごと100ppiにダウンスケール表示されるわけではない。また古い世代のカラー電子ペーパーのように、カラーを表示するのに複数回にわたって書き換えを行なうこともない。

 一方で、黒い文字であっても、その周囲が色で塗りつぶされていると、極端に見づらいことがある。E Inkの図解を見ると、1枚のパネルのなかで、白黒を表現するマイクロカプセル層の上にカラーフィルタアレイが乗っているので、黒が黒のまま見えるのを、カラー層が遮っていると見られる。

カラー部分は明らかに粗いが、モノクロ部分は300ppiの高解像度ゆえ、極小の文字でもそこそこ読める
黒字の周囲が色で塗りつぶされているなど、カラーと黒が混じる場所は、文字のディティールが極端に粗くなる

 このほか書き替えのたびに発生する残像や、それをクリアするためのリフレッシュが必要になるという、E Inkの欠点にあたる特性もそのままで、スクロールや動画再生など、絶え間なく描き替わるコンテンツの表示には向いていない。これらが読書にどのような影響を与えるかは、本製品特有の発色と併せて、このあとじっくり見ていく。

色合いに過剰な期待は禁物

 実際に電子書籍ユースで使ってみよう。以下電子書籍の表示サンプルは、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。

 また今回はカラーということで、新たに「ニブンノイクジ 1巻」についても、うめ氏より許諾を得て借用している。電子書籍アプリは原則Kindleを使用している。

 画面構成は従来と同様で、書庫/ストア/ノート/保管庫/アプリ/設定という6つのカテゴリのアイコンが画面左に縦に並んで配置され、選択したカテゴリが画面右に表示される仕組みだ。ホーム画面として表示する画面は、これら6つのカテゴリから自由に選べる。

書庫/ストア/ノート/保管庫/アプリ/設定という6つのカテゴリが縦に並ぶ。なおここで使用している画像はスクリーンショットなので、「Kaleido Plus」を通じた画面上の色合いとは異なる(以下同様)
どのカテゴリをホーム画面に表示するかはカスタマイズ可能。電子書籍ユースがメインであれば「アプリ」をホームに設定しておくと便利だ
画面上をタップするとクイック設定パネルが表示される。フロントライトの調整もここから行なえる。スライダはパーセンテージなどの数値表示がなく前回の値を再現しづらい
本体のリフレッシュ設定は画面上のステータスバーから呼び出せる。ちなみにこれはデバイス全体に適用される設定で、アプリ単位での変更は後述の「アプリ最適化」で行なう
「ディスプレイコントロール」は、本製品が備える調整機能のうちもっともダイナミックに色の濃度、彩度、輝度を変更できる。アプリ単位ではなく全体に反映される

 従来のモノクロE Inkモデルは、カラー表示を前提に設計されたアプリをモノクロで表示するため、アプリごとにさまざまな最適化機能を用意していた。本製品もそれらチューニング機能はほぼそのまま踏襲している。一部の画面には、カラー向けに新しい項目が追加されている。

アプリ単位の最適化を行なうには、アプリアイコンを長押しすると表示されるメニューから「最適化」を選択
最適化メニュー。DPI設定やフォント太字化のほか、別画面で「背景の希薄化」設定が行なえる
「背景の希薄化」画面では、色の細かい設定変更が行なえる。もっとも「暗い色の強調表示」、「色の明るさ」以外は、あまり効果は感じられない
リフレッシュモードはアプリインストール直後の初期設定値は「スピードモード」となる。後述するがここの選択が残像低減のポイントになる
値をリセットしたくなったら、ここで「全体をリセット」を選択するとよい

 そのカラーE Inkこと「E INK Kaleido Plus」は、従来と比べ、全体的に白く曇りがちだった色調は大幅に改善されている。離れたところから見ても色がついているときちんと認識できるし、視野角も120度と広い。レスポンスも高速で、カラーになったからと言ってページめくりがもっさりしていることもない。

 もっとも、実際の以下の写真ではじめて「E INK Kaleido Plus」を見た人は「えっ、これで色調が改善されたレベルなの!?」と驚くかもしれない。実際のところ「カラーE Inkにしては鮮やか」というだけで、液晶や有機ELの発色と比較できるレベルではない。かつてのSTN液晶に近いと言えば、一部の人には伝わりやすいかもしれない。

左が本製品、右が従来の「BOOX Nova 3」。たしかに色はついているが……
iPad mini(右)と比べると彩度の差は歴然だ
Impressサイトのアイコン一覧を、スクリーンショット(上)、Kaleido Plus上の実写画像(下)とで比較してみた。色ごとの見え方の違いがよくわかる

 その一方で、従来はモノクロ表示のせいで見づらかったWebページのボタンや境界線が、カラー化によって識別しやすくなったケースはあちこちに見られる。発色では分が悪くとも、こうした表現力の差は圧倒的だ。なぜモノクロではなくカラーが必要かと問われた場合に、有力な答えの1つとなるだろう。

モノクロE Inkだとボタンの色が消失していたのが(上)、カラーE Inkだときちんと見える(下)。こうした例はあちこちにある
モノクロE Inkだとステータスバーや買い物かご、検索ボタンなどが完全に消失していたのが(上)、本製品であれば(ややコントラストは弱めだが)きちんと見える(下)

むしろ問題となるのは「残像」

 もっとも、ディスプレイコントロールおよびフロントライトの光量である程度調整できる「発色」よりも、電子書籍ユースについてはむしろ「残像」のほうがクリティカルな問題だ。

 数ページごとのリフレッシュで済むモノクロE Ink(Carta)と異なり、本製品の「Kaleido Plus」は、毎ページごとにリフレッシュしたくなるほど残像が目立つ。ページめくり時の挙動は電子書籍アプリによっても若干違うが、残像のわずらわしさはおおむね同様だ。

左が通常時、右が前後に数ページ往復したのちの状態。直前のページで濃い色があった箇所が、次ページでは残像となってごっそり白く抜けてしまう
Kindleはページめくり時に横に1/5ページほどスライドするため、前ページの残像だけでなく、同じページ内の残像が元絵と並んで表示されてしまう
【カラーページめくり】
Kindleで前後に数ページ往復する様子。残像が重なっていくのがわかる。ただしレスポンス自体は悪くない

 ではどうすればよいか。手っ取り早いのは、実際に毎ページごとにリフレッシュが実行されるよう、設定を変更してしまうことだ。たとえば全ページがカラーのコミックでは、以下のように設定することで、残像をほぼゼロにして読むことができる。

  • 本体側のリフレッシュを「ノーマルモード」に設定
  • アプリ個別の最適化設定でもリフレッシュを「ノーマルモード」に設定
  • リフレッシュの値を「1」に設定
ステータスバーからリフレッシュ設定を呼び出し「ノーマルモード」に設定
対象のアプリ(ここではKindle)を起動後、画面下部のナビボールから「アプリ最適化」を開き、ここでもリフレッシュモードを「ノーマルモード」に設定。併せて同じタブにある画面全体のリフレッシュを「1」に設定
【カラーページめくり残像なし】
上記設定を行なったあとKindleでページめくりを行なっている様子。残像はほぼ発生していない。ただしページが切り替わる動きはかなり目障りだ

 残像を完全にゼロにできないのが悩ましいのだが、試したかぎりではこの方法が現時点ではもっともマシなようだ(リフレッシュ設定は本来アプリ側が優先されるはずなので、挙動としては矛盾しており、将来的に変更になる可能性はある)。

 ただしこの設定では毎ページごとに画面がリフレッシュされるため、動きはかなり目障りで、かつページ遷移に時間がかかる。またモノクロのコンテンツではここまで頻繁なリフレッシュは必要ないので(後述)、逆にわずらわしく感じることもある。

 こうしたことから、この設定を使うのは全ページがカラーのコンテンツのみに限定し、モノクロ主体のコンテンツはがまんしてそのまま使い、必要に応じて手動リフレッシュを行なうのが現実的だろう。写真集など、白黒ページとカラーページが交互に表示されるコンテンツも、ページをめくるだけで残像がほぼ解消されるので、こうした設定は必要ない。

 これらコンテンツごとのリフレッシュの有無と頻度は、正解が1つならばまだしも、ユーザーの好みにも依存するので、デバイス側で推奨設定を用意するのは今後も難しいだろう。ユーザー自身が自分にとっての最適解をプロファイルとして保存し、ワンタッチで切り替えられるようになれば、かなり使いやすくなるのではないかと思う。

 ちなみにモノクロ部分に限れば、本製品は従来のモノクロE Inkよりも残像が目立ちにくい。速度についてもとくに差は見られず、むしろページの空振りが起こりにくい傾向があるなど、反応は良好だ。

【モノクロページめくり】
モノクロでのページめくりの比較。左が本製品、右が従来のモノクロE Ink(BOOX Nova 3)。速度は同等で、かつ従来モデルではまれに発生する空振りも、本製品では起こりにくい傾向がある

 ただし画質については、解像度は同じ300ppiながら、カラーフィルタアレイらしき走査線が見えるせいで、従来のモノクロE Inkよりも粗く感じられる。モノクロページばかりのコンテンツを読むならば、本製品よりもむしろ従来のモノクロE Inkを選んだほうが快適かもしれない。

左が本製品、右が従来のモノクロE Ink(BOOX Nova 3)。本製品は走査線が目立つほか、線もやや太って見える傾向がある
テキストコンテンツの比較。本製品(左)で目立つ走査線は、タッチパネルの裏側にあるカラーフィルタアレイかもしれない。見やすさは従来のモノクロE Ink(右)のほうが上だ

本製品を快適に使うためのTipsいろいろ

 本製品を購入した人、これから手に取る予定がある人向けに、10日ほど使って気づいた操作のコツをまとめておく。

 本製品を利用するにあたって、まず極めたいのがナビボールの利用だ。ナビボールとは、画面の右下に表示される、タップすることでさまざまなコンテクストメニューを表示できるナビゲーション用のメニューだ。

ナビボール。場所はデフォルトでは右下に表示されるが、ドラッグして自由に移動させられる。画面端に隠すことも可能だ
タップするとメニューが表示される。マウス右クリックのコンテクストメニューのような役割だ

 活用したい機能はおもに3つ。1つは上から2つ目、画面をリフレッシュするボタン。これは前述の、E Inkの残像を解消するために用いる。余談だが、リフレッシュ完了後ボタンは表示されたままになるため、ナビボール自体の残像が残るのはいただけない。リフレッシュ完了後に自動的に非表示になるよう挙動を変更してほしいものだ。

 またその次、3つ目のボタンからは、アプリ最適化のメニューが呼び出せる。前述のリフレッシュ方式の切り替えのほか、背景の希薄化など行なえる。ちなみに画面上ステータスバーから呼び出せる「最適化」と違い、ここでの「最適化」はアプリ単体に適用される。

 もう1つ、下から3つ目には、画面を1ページずつ上下スクロールさせるメニューが用意されている。これを使えば、Webページのように縦に長いページを、ページをめくるように表示できるので、残像を最小限に抑えつつ、ページを閲覧できる。電子書籍のライブラリの検索や、ストアのランキングを見る場合に便利だ。

【上下スクロールボタン】
上下スクロールボタンを使えば、Webページなどで残像をおさえつつ、快適な閲覧が可能になる

 これに加えて、このナビボール自体、ダブルタップをすることで、ホームボタンと同じ役割を果たす。画面の下にあるハードウェアボタンはデフォルトの「戻る」のまま固定しておき、ホームに戻りたい場合はこのナビボールのダブルタップで戻るようにしたほうが効率的だ。

ナビボールの機能は変更可能。使わない機能はピン留めを外してしまってよいだろう。個人的には最上部まで一発でスクロールするボタンも欲しい

 また本製品は(従来モデルもそうだが)、電源オフの状態からの起動には、30秒近く時間がかかるため、電源は完全にオフにせず、スリープモードで運用したほうが、ストレスなく利用できる。もちろんそうなるとバッテリの消費が速くなるが、それでも数日は持つので、あとは使い方とのバランス次第だ。

電源設定は工夫のしどころ。筆者はシャットダウンせずスリープだけで運用する設定にしている

 最後に、画面端の上下スライドによる明るさ調整も要チェックだ。Koboに酷似したこの機能、クイック設定パネルを開いて左右スライダで明るさを調整するよりも手軽なので、活用したいところ。ただし割当先が画面右端のせいでスクロールと操作がバッティングすることがあり、割当を左側に変更するなどのカスタマイズ機能がほしい。

設定の「ジェスチャーマネージャー」では、画面右を上下にスワイプしてフロントライトの明るさを調整する機能も備える
【フロントライト調整】
画面右から左へとエッジスワイプし、そのまま上下になぞることで、フロントライトの明るさを調整できる。なおバーの長さや濃淡は、ライトの明るさとは連動していない

ノート機能はカラーに対応するも若干マイナスも

 最後に、本製品のもう1つの大きな機能である、付属のスタイラスを使ったノート機能にも触れておこう。

スタイラスは充電不要な軽量タイプ。反対側は消しゴムとしても使える

 ノート機能としては、ひととおりの機能がそろっている。ペン先が数種類、太さもスライダーで自由に調整でき、扱えるカラーの数も増えている。また消しゴム機能や、範囲選択からの移動や拡大縮小、さらには(日本語には対応していないが)テキストへの変換機能なども備えている。さらに新機能のボイスメモ機能も用意されている。

「ノート」カテゴリは作成済みのノートが表示される。新規作成には「新規ノート作成」をタップ
ペンは5種類から選択可能。罫線などのテンプレートは左列上から3つ目のアイコンをタップして選択する

 本製品の最大の利点は、書き込んだカラーが画面上で確認できることだが、やや困りものなのは、従来モデルには搭載されていた「RD(赤)」、「GN(緑)」、「BU(青)」という色がパレットから姿を消し、淡い色ばかりに改められてしまったことだ。

 これは赤・緑・青といった原色系の色が、画面上での色の再現性が低いことが理由ではないかと推測されるが、新しく追加された色も、画面上で注意深く見ないと、色がついていることに気づかない場合すらある。ちなみに赤にもっとも近い色は、画面上ではほぼ茶色で表示される。

 そのため、画面上ではモノクロでも、エクスポートして別のデバイスで表示すれば赤・緑・青がはっきり表示できた従来よりも、本製品のほうが制限がつく。画面上で色を判別するには、なるべく色が識別しやすいよう、線は太めに、フロントライトは強めにするなどの工夫が必要だろう。

本製品の目玉はカラーが使えることだ(上)。ただし色数は大きく増える一方で、従来のパレット(下)にあった「RD」、「GN」、「BU」がなくなっている
パレットの各色を書き出したもの(左)と、それをファイルで出力したもの(右)。実画面との色の違いは明らかだ
これは従来モデルで「RD」、「GN」、「BU」で書き出した色。このように、エクスポート後にきちんと赤、緑、青として表示されていた色が、本製品では出力できなくなっている

 なお本製品はパームリジェクションに対応しており、画面に手を載せた状態での筆記も問題なく行なえるが、画面の右下に配置されているナビボールは、ノートでの手書き中に何かと反応しがちだ。ノート機能を使うときは、ナビボールを右端に隠すか、ドラッグして左側に移すなどの対策をしておいたほうが快適に使える。

作成したノートはPDF形式でエクスポートや共有が可能
Androidの新機能であるニアバイシェアにも対応。近隣にあるAndroidスマートフォンにワイヤレスで転送できる

万人向けではないがカラーE Ink端末の1つの完成形

 以上のように、本製品は、カラーE Ink端末の1つの完成形と言っていい製品だ。実用レベルに達していない過去のカラー電子ペーパー端末と比べると、よくぞここまで来たものだと感慨深く感じる。それでいて実売価格が5万円強と、モノクロE Inkと比較して極端に値段が上がっていないのも好印象だ。

2009年に発売された富士通フロンテックのカラー電子ペーパー端末「FLEPia」(右)との比較。本製品のほうが実際の紙に近く、書き換え速度も早い。当時のレビューは下記の関連記事を参照
FLEPiaでは画面の書き換えを複数回に分けて行なうため時間がかかる(4,096色表示には2スキャンが必要)。同じカラー電子ペーパーでもまったく別の技術ではあるが、今回のE INK Kaleido Plusとの違いがよくわかる

 ただしこれが万人向けの製品かというと、これは明確に「No」だ。世代を重ねてある程度完成されてから日本に上陸したKindle Paperwhiteですら、E Inkにはじめて触れるユーザーからは動作速度や白黒反転の挙動など、否定的な評価は少なくなかった。本製品も一般ユーザーから見ると、そうした評価は避けられないだろう。

第5世代iPad mini(右)との比較。見た目だけが比較対象になった場合、本製品の発色や残像はネガティブに評価されがちだろう

 「いやいや、実用レベルのカラーE Ink端末が出てきただけで画期的だよ」という意見はあるだろうし、筆者も個人的にもそう思うが、それはテクノロジ側の事情を斟酌した視点で、一般ユーザーはそうは考えないだろう。「カラーE Inkってどうですか」という質問に対しては、過剰な期待をもたせるのではなく、デメリットもしっかり説明すべきだ。

 ただしひととおりの特性を知った上で、カラーE Inkならではの利点に魅力を感じるならば、一定の完成形としておすすめできる製品だ。一般的に、最新技術を搭載したデバイスでは、本体サイズや重量、動作速度など別の部分が割を食うことがあるが、本製品はそうした問題もない。当たり前すぎて見逃されがちだが、これは特筆すべきことだろう。

 なお現時点で、このE INK Kaleido Plusで量産工程に乗っているパネルサイズは7.8型のみということで、さらなる大画面版が出てくるのは、仮にあったとしても、かなり先になるだろう。購入するか否かを考える場合、そうした状況も頭に入れておいたほうがよさそうだ。

7.8型ということで、文庫本並みの小ささになるものの、コミックの見開き表示にも対応する。ただしジャイロセンサーは非搭載なので手動での回転となる