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“MacBookと一発で色味が合う! ”クリエイター向け4KモニタBenQ「PD2725U」が超便利だった

~Windowsユーザーも必見の便利機能を多数搭載

BenQの27型4K液晶「PD2725U

 動画編集を行なう環境においては、編集ソフトを動作させるPCがキモであることははもちろんだが、映像ソースを表示するディスプレイも無視できない重要な機材だ。

 その動画編集用ディスプレイに求められる要素としては、ソースを忠実に表示する画質、4Kソースに対応する高解像度などが挙げられるが、最近登場したBenQのプロクリエイター向け4K液晶ディスプレイ「PD2725U」は、さらに一歩先を行くアプローチが取られた意欲的な製品。画質面のこだわりはもちろん、作業効率を高めてくれるさまざまな機能や、多くのクリエイターが使っているMacへの対応が非常に充実しており、かつ実用的なのである。“高品質動画の生産効率を上げる”という明確なコンセプトをひしひしと感じる。

BenQ「PD2725U」は今時のデバイスで再生される映像作品の制作に最適な4Kディスプレイ。高画質で快適にとどまらず、効率よく作業できることが重視されている

Display P3/DCI-P3カバー率95%の高色域対応

 「PD2725U」の詳細をチェックしていこう。このモデルは動画や写真、CGなどを制作するプロクリエイター向けの27型4K液晶ディスプレイだ。ベゼルの狭いデザインにノングレアのIPSパネル、上下動や90度回転(ピボット)機能を搭載する。流行の“ゲーミング感”のまったくない落ち着いたデザインに惹かれる人も多いだろう。

 色域のカバー率はDisplay P3とDCI-P3が95%と広く(Rec.709とsRGBは当然100%)、さらに10bitカラーにVESA DisplayHDR 400もサポートする。印刷業界ではデファクトスタンダードと言えるAdobe RGB(の表示モード)は備えていないが、これに対応するためにはコスト増は避けられない。また、BenQはAdobe RGB対応の別ラインとして“SWシリーズ”を用意することで幅広いユーザーニーズに応えられる体制を整えている。PD2725Uは、インターネットを介して流通するデジタルデータを扱う多くのクリエイターの実情に合わせた割り切りをしていると言える。

PD2725Uのスタンドの台座は13型級ノートPC程度の大きさがあるので安定感抜群。ディスプレイの確度を調整したりするたびに気を使わなくて済むのは意外なまでに快適。また、卓上の専有面積は広いものの上部はフラットなのでキーボードを載せてもグラつきにくい
PD2725Uのスタンドは上下150mmの範囲で調整可能。チルトも-5〜20度で調整可能なので見やすいポジションに容易に設定できる

 ネットで流通する動画なら色域はsRGBで作るのが無難では……? と考える方もいるもしれないが、iPadやiPhoneのディスプレイは今やより色域の広いDisplay P3対応が普通だし、AndroidデバイスでもsRGBより広い色域を表示できるディスプレイを備えているのが当たり前になりつつある(sRGBとDisplay P3の見え方の違いについては、Googleのこの記事が参考になる)。タブレットやスマホの上で消費されるコンテンツをよりよい状態で作り込みたいと考える人には、PD2725Uは非常に魅力的な仕様と言える。

Thunderbolt 3と充実のMac対応

 ここまで紹介したスペックの液晶ならば、既存製品で十分カバーできるようにも思える。。だがPD2725Uをプロクリエイター向けの特別な存在としているのは、Mac環境への親和性を意識した製品作りだ。

 本機が対応する映像入力インターフェイスはHDMI 2.0にDisplayPort1.4のほか、Thunderbolt 3による入力にも対応している。USB Type-C入力に対応した4K液晶は最近増えていたが、Thunderbolt 3となると選択肢がぐっと減る。

PD2725UにUSB接続のキーボードとマウスをつなぎ(写真の製品はワイヤレスモデル)、MacBook Air(M1)とThunderbolt 3ケーブルで接続すれば、MacBook Airのデュアルディスプレイ化と給電、外付けキーボード、マウスによる操作をケーブル一本の接続で実現できる。モバイルノートがあっという間にデスクトップPCのような環境に! Thunderbolt 3対応のWindowsノートでも同じことができる
背面中央下部にインターフェイス群が配置されているが、通常利用時はフタで隠されている。ケーブルが散らばらないにする配慮だろう
HDMIが2系統にDisplayPortが1系統、さらにThunderbolt 3(2つ存在しており、内部で接続されている)を備える。さらにUSB 3.1(5Gbps)のアップストリームとダウンストリーム×2を備える
Thunderbolt 3ケーブルも同梱。40Gbpsのデータ転送に対応するパッシブタイプで長さは約70cm
2基あるThunderbolt 3ポートのうち、PCのアイコンが付いたポートは最大65Wの給電に対応(ノート型Macはこちらに接続)、付いていないほうは最大15Wの給電に対応する

 Thunderbolt 3ポートは2系統あり、給電能力は最大65Wと大きいため、ケーブル1本で映像出力とノート型Macへの給電を実現できる。標準のACアダプタが95WのMacBook Pro 16インチだと利用状況しだいというところだが、MacBook Airや13インチのMacBook Proなら余裕で駆動できる。2つあるThuderbolt 3ポートは内部でつながっており、Mac→PD2725U→別のThunerbolt 3デバイスやディスプレイといったデイジーチェイン接続にも対応している。

 ノート型Macのディスプレイは精緻で発色もよいが画面が狭くて困る……という人も多いだろうが、PD2725Uなら4K27型の広大な空間がケーブル1本で接続可能なのだ。

MacBook Air(M1)ならThunderbolt 3ケーブル1本で本体の充電もディスプレイ出力も可能。後述するMac向けのカラーモードを使えばさらに快適
macOS上からの扱いは内蔵ディスプレイと同じ。PD2725Uの場合1,920×1,080ドット相当から3,840×2,160ドット等倍表示まで、5段階の解像度が選択できる
MacBook AirとPD2725UをThunderbolt 3ケーブルで接続したときの状態をチェックしてみた。最大40Gbpsでリンクしていることが示されている
PD2725UのマニュアルではPCのアイコンのないThunderbolt 3ポートは映像出力専用となっているが、実際はThunderbolt 3ポートとして機能しているようだ。図はMacBook Airに接続したPD2725Uに、AVerMedia製Thunderbolt 3キャプチャユニット「GC555」を接続したところ。仕様外の使い方なのでGC555がきちんと安定動作する保証はないが、Thunderboltデバイスとして認識されていることが分かる
iPad Pro 12.9インチ(M1)もThunderbolt 3ケーブルでサクッとつながる。iPad Pro本体のディスプレイのミラー表示しかできないが、iPadの液晶は文字が小さくてつらい……という人にはかなり有効

MacBookと一発で色味が合う! デュアルディスプレイ環境に最適な専用カラーモード

 ノート型Macと外部ディスプレイを使うにあたって困るのは、本体側のディスプレイと外部ディスプレイの色味の違いだ。Macに合わせて外部ディスプレイの表示モードをDisplay P3に設定しても結構な色味の違いがあることがほとんどだ。これを回避するためにはめんどうなキャリブレーション作業を行なうか、どちらかの発色を無視するしかない。

 だがPD2725Uの場合はカラーモードに「M-book」というモードを備えており、これを利用すると「ディスプレイと接続したMacBookシリーズの視覚的差異を最小化(マニュアルより引用)」した表現が得られる。確かに同じ画像をMacBook Airの液晶とDisplay P3モードのPD2725Uで表示すると、両者の違いが目立つ。しかしM-bookモードだとその差異はかなり縮まる。MacBook Airの液晶がグレアでPD2725Uがノングレアなので両者を視覚的に完璧に一致させるのは難しいが、設定1つですぐに違和感なく作業できる環境になるのは非常にうれしい。

PD2725Uの対応するカラーモードはDCI-P3を筆頭に12種類。ノート型Macユーザーに大きな恩恵があるのがM-bookというモードだ
PD2725UはDisplay P3モードで表示しているが、PD2725UのトーンはMacBook Airの液晶と少し違う
PD2725UをM-bookモードにすると、MacBook Airの液晶にかなり近い印象になる

 そのほかカラーモードはPC用ディスプレイのベースと言えるsRGB、テレビなどの映像制作で多用されるRec.709、デジタルシネマ向けのDCI-P3が選べるほか、CAD/CAM作業や暗室作業時など、さまざまなプロの利用環境を想定したモードが用意されている。

「CAD/CAM」モードではコントラストが強調される
「暗室」モードは文字どおり照明を落とした暗室やスタジオで作業するのに適したモードだ

 また、PD2725Uは出荷時に校正済みの液晶パネルを採用している。製造時の個別キャリブレーションはもちろんだが、CalMAN認証とPANTONE認証も取得しているため、開封した状態で正しい発色が得られるのだ。

 さらに液晶には付き物の輝度ムラを抑制し均一なユニフォーミティを得るための「ムラ補正機能」も搭載している。ムラ補正機能を利用する場合はコントラストや輝度の上限が低くなるという制約はあるものの、パネル周辺部の輝度ムラが劇的に改善され、全体が均一に明るくなる。

BenQの提唱する「AQCOLORテクノロジ」にのっとり校正済みであることを証明するシリアルナンバー入りの書類が同梱
ムラ補正機能をオフにした状態。周辺部にわずかだが輝度ムラが確認できる
ムラ補正機能をオンにすると、全体がやや明るくなり輝度ムラが目立たなくなった

 特定のカラーモードで作業しているときに、ほかのカラーモードでの見え方を確認したい(例えばM-bookモード中にsRGBで見たい)時もあるだろう。こういう場合OSDを出してカラーモードを切り換えるのはめんどうだ。そこでPD2725Uは素早く比較を行なえる仕掛けを複数用意している。

 まずはPD2725Uの機能である「デュアルビュー」を使う方法だ。異なるカラーモードの表示を画面左右2分轄で行なえるので、微妙なニュアンスの違いが一目で分かる。

OSDでデュアルビューを有効にすることで、今表示しているカラーモードとは別のカラーモードをサイドバイサイドで表示できる
デュアルビューが発動したところ。左側がメインで使っているカラーモードで、デュアルビューで指定したカラーモードは右手に表示される。切り換え直後は画面上部にカラーモードが文字で表示されるが、すぐ消えてしまうのが難点

 さらにこの操作を補助するための機能として、PD2725Uの背面に配置されている2つの「カスタムキー」と、PD2725Uに同梱される有線リモートスイッチ「Hotkey Puck G2」を使う方法がある。OSD上でカスタムキーやHotkey Puck G2のボタン設定を変更すれば、ボタン一発で指定したモードのデュアルビューを有効化/無効化することが可能だ。デュアルビューを使わず、ワンキーで特定のカラーモードに切り換えてもよいだろう。

 Hotkey Puckと言えばBenQ製ゲーミング液晶が発祥のアドオンだが、PD2725Uで使うHotkey Puckは“これがなかったらデュアルビューなんか使ってられない”と思えるほど便利なものだ。Hotkey Puck G2の1/2/3のボタンによく使うカラーモード3つを割り当てるのも手だ。

本体背面のスイッチ回り。左から電源、OSD操作用スティック、そしてカスタムキーが2つ。カスタムキーはデフォルトでカラーモード変更と映像入力変更に割り当てられている。カスタムキーのボタン割り当ては変更可能だが、手探りで押すためやや間違えやすい。そこでHotkey Puck G2の出番だ
PD2725Uに同梱されるHotkey Puck G2。3つのコントローラーキー(数字ボタン)とローテーションキー(∴ボタン)、中央にダイヤルキーを備える。手元に引き出しておけるので非常に実用的
デュアルビューを活用するにはHotkey Puck G2のボタンにデュアルビューを割り当てるのが一番使い勝手がよいと感じた。比較に使うモードを最大3つピックできる
カラーモード変更をHotkey Puck G2の1/2/3ボタンに割り当てる場合は、数字それぞれに1つずつ割り当てる。頻用する3つを選択するとよいだろう
Hotkey Puck G2のダイヤルは輝度/コントラスト/音量調整のみが割り当て可能

 PD2725Uの設定を切り換える方法としては、もう1つ「Display Pilot」という専用アプリが存在する。Thunderbolt 3またはUSBケーブルで接続したMac/Windows PC上で動作し、映像入力やカラーモード変更、デュアルモードのオン/オフまで実施できるというものだが、残念なことに9月上旬時点利用できるのはWindowsとIntel製プロセッサを搭載したMacのみ。今後主力となるM1搭載Macには対応していないのは残念だ。1日も早いM1 Mac対応を期待したい。

PD2725Uの設定をMac/Windows PC上で行なえるDisplay Pilot。図はWindows版のもの。選択したカラーモードとWindows側のICCプロファイルを連動させる機能を備える
デュアルビューの設定もマウス操作で実施できる
ホットキー入力で映像入力やカラーモードを切り換えたりする機能もある。だが作業中のアプリとのホットキー被りを考えると、実用性はHotkey Puck G2に劣る

今や必要不可欠のKVM

 クリエイティブな作業をするにあたり、複数入力対応のディスプレイを使い、複数のMacやWindows PCで切り換えて使うという方も多い。そのとき悩ましいのがキーボードとマウスの置き場所だ。机の上のスペースが限られていると、キーボードとマウスは1セットにまとめてしまいたいし、キーボードマウスのコストもかさんでしまう。

 昔からよくあるのはキーボード/マウス切り換え器、いわゆる「KVM」を使う方法だが、配線がゴチャゴチャするもとにもなる。だがPD2725UにはKVM機能が内蔵されており、PD2725UのUSBダウンストリームポート×2に接続したUSBデバイスを2台のMacやWindows PCで共有することが可能だ。片方の本体をThunderbolt 3、もう片方をUSB 3.1アップストリームポートに接続しておき、映像入力と連動させるという使い方になる。

 映像入力の1つはThunderbolt 3に固定で、KVM用にもう1つ入力を指定する形だが、KVMに連動させないのであればすべての入力ポートに異なるデバイスを接続することは問題なく行なえる。

1台のPD2725Uにマウスとキーボードを接続しておき、KVM機能を利用して上流の本体を切り換える方法だ。片方はThunderbolt 3接続であることが必要になる(図はマニュアルより抜粋)
PC2専用のディスプレイがあっても、PC2とPD2725UをUSBケーブルで接続することにより、マウスとキーボードを一元化するという使い方もある
KVMの設定もOSDで実施する。Hotkey Puck G2のボタンにKVMボタンを割り当てることも可能だ
PBP(Picture By Picture)は2入力同時、もしくは4入力を同時に1画面に表示可能。各映像信号はPD2725U上でスケーリング表示されるので、PBPに入れた瞬間に解像度が変わるという煩わしさはない

迷いを払拭できるプロ向け液晶

 今回筆者はMacBook AirとPD2725Uをペアにしてしばらく使ってみたが、とにかくPD2725Uの画面は見やすい。27型4Kパネルは単純に広く、かつ表示できる情報量が多いことはもちろんだが、発色がよい。そして、MacBook Airでやっていた作業をスムーズにPD2725U上で引き継げる。M-bookモードで作業することで、自分がどっちの色を信じてよいのか迷うことがなくなったのはきわめて大きい。

 さらに今時の液晶ゆえフリッカーフリーも標準搭載。長時間作業でも眼が疲れにくい印象だ。デュアルビューで色味の違いがサイドバイサイドで確認できるのも便利だが、そのうちHotkey Puck G2で色モードをサクッと変えたほうがよいのでは……と感じてきた。これは人それぞれだろう。KVMの使い勝手もきわめて良好で、サブの環境との切り換えがスムーズに。

 PD2725Uは色域とか発色といったプロ向クリエイター向けディスプレイに求められる要素はしっかりおさえつつ、作業効率を大きく底上げしてくれる存在と言える。とくにMacを所有(あるいはMacBook Pro購入を考えている)しており、見やすいディスプレイ環境が欲しいクリエイターなら、買って損のない1台といえるだろう。