イベントレポート
Dell新製品の新ギミック
2019年1月12日 10:26
Dellは1月8日~1月11日(現地時間)にアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスで開催されているCESの初日にあたる1月8日に記者会見を開催し、同社のフラッグシップモバイルPCとなる2019年モデル(モデル9380)の「XPS 13」、同社のメインストリーム向け2-in-1型PCとなる「Inspiron 13/15 7000 2-in-1」を発表した。
今回発表されたXPS 13(9380)は、昨年(2018年)型となる「XPS 13(9370)」と比べるとCPUが同じ第8世代Coreプロセッサながら、2017年8月に発表されたKaby Lake-Rから、2018年8月に発表されたWhiskey Lake-Rベースにアップデートされている。それに加えて、従来はディスプレイ下部にあった前面カメラは、2.25mm幅の新カメラを採用したことにより、ディスプレイ上部へと移動しているなどの強化が図られている。
また、Inspiron 13/15 7000 2-in-1は新たにアルミニウム素材の筐体を採用しており、より高級感が増し、上位モデルとなるXPS 13 2-in-1に迫る仕上がりになっている。最大の特徴は、フルサイズのアクティブペンを本体に内蔵できるようになっていることで、ペンをなくさずに持ち歩くことが可能になっている。
本記事ではDell エクスペリエンスデザイングループ コンシューマーデザイン担当 副社長 ジャスティン・ライルズ氏に、両製品の特徴などを伺ってきたのでその模様をお届けしたい。
KBL-RからWHL-UへとCPUが変更され、新色となるフロスト/アーティックホワイトが追加される
Dell エクスペリエンスデザイングループ コンシューマーデザイン担当 副社長 ジャスティン・ライルズ氏によれば、今回発表されたXPS 13(モデル9380)の強化点は大きく3つあるという。
昨年型モデルではKaby Lake-Rの第8世代Coreプロセッサを採用していたが、今回のモデルではWhiskey Lake-Uの第8世代Coreプロセッサを搭載。同じ世代の製品ではあるが、10%性能が向上する。
今回のXPS 13に「Dell Power Manager」という新しい省電力ツールを用意しており、それを利用することで、バッテリ駆動重視や処理能力重視に振った設定などが可能になる。
また、ノートPCのユーザーであれば経験したことがあると思うが、PCを起動したばかりのときは筐体が冷えているので、CPUがTurbo Boost機能でクロックが高めになり、高い性能を発揮するが、だんだん筐体が暖まってくると、クロックが下がってきて若干性能が低下する。XPS 13では熱設計周りを見直すことで、これをできるだけ性能が一定になるように設計しているという。
なお、そのほかの細かなスペックの変更としては、液晶ディスプレイのスペックが若干変更されていることが挙げられる。FHD、4Kから選べるのは昨年までと同じだが、輝度は400cd/平方mへと強化されており、Dolby VisionによるHDR動画再生に対応した。
2つ目は新色の追加だ。それ以前のXPS 13と言えば、シルバー/ブラックだけが提供されており、一般消費者向けだとしても、ビジネス向けというイメージがあったことは否めなかった。しかし、昨年にローズゴールド/アルパインホワイトが追加されたことで、大きくイメージが変わってきており、より一般消費者向けの製品になっている。
ライルズ氏によれば「昨年の製品での非常に良好なフィードバックを受けて、今年は新色としてフロスト/アーティックホワイトが追加されている。これにより、中も外もホワイトという新しいカラーが選択できるようになった。製品の位置づけにそったカラーが追加されたことは歓迎していいだろう。
2.25mm幅の新モジュール開発で、ついにディスプレイの上にカメラが入る
3つ目は前面カメラの位置が変更されたことだ。ライルズ氏によれば「3年前に現在の製品のベースになるXPS 13を出したときに、カメラをディスプレイの下部に置いた。我々自身もここがベストの場所ではないことは認めており、可能であればディスプレイの上部に入れたいと考えてきた」とのこと。
じつは今回ライルズ氏にお話しを伺う前に行なわれたDellの記者会見で、従来のXPS 13の前面カメラを使うと、ビデオチャットなどで、ユーザーの顔を見上げた映像が送られてしまうという、やや自虐的ともとれる画像が映し出されると、会場からは笑いが起こったほど。
日本ではビデオチャットそのものはあまり使われていないが、欧米では家族とSkypeなどを利用してビデオチャットを利用するというのは普通の使い方で、そうした時に顔を見上げた映像になってしまうので、従来のXPS 13の数少ない弱点の1つだとされていたからだ。
そこで今回の新モデルではそこが大きく改善した。それに貢献したのは、Dellが新しく開発した2.25mm幅のカメラだ。
「カメラを小さくすることは2つの課題があった。1つはカメラモジュール自体のサイズの問題。そしてもう1つはサイズを小さくすることによって、センサーのサイズが小さくなってしまうので、映像のクオリティが下がってしまうという問題だ。
そこで、我々の開発はそれをクリアする超小型カメラモジュールを開発し、徹底的にチューニングすることで、映像のクオリティを従来のカメラモジュールと同じレベルに持ってくることに成功した」とのことで、その結果としてカメラを上に持ってくることができた。これにより、左右は4mm、上部は5.98mmという三辺狭額縁が実現されている。
ただ、従来のモデルではIRカメラにより、Windows Helloの顔認識機能が入っていたのに、今年のモデルでは入っていないことが気になるだろう。この点に関してはライルズ氏は「もちろんそういう声があることは認識しているが、Windows Helloに関しては電源ボタンの部分に指紋認証センサーを選ぶことができるので、そちらを選んで頂ければと考えている。小型でかつIRを入れるとなると、カメラのサイズが限りなく3mmに近づいてしまい、今回のような5.98mmという縁を実現するのは難しい」とのことで、トレードオフの結果としてXPS 13のデザインアイデンティティである3辺狭額縁が実現できなくなってしまうので、指紋を選択をしたとのことだ。
なお、ライルズ氏はDellは小型IRカメラを別途開発しており、そちらは1月4日(現地時間)に発表された14型狭額縁の製品となるLatitude 7400 2-in-1に採用されているとも述べた。Latitude 7400 2-in-1では顔認証と指紋認証の両方を同時に搭載することが可能だ。
フルサイズのペンを本体内蔵と同等にするInspiron 13/15 7000 2-in-1
Inspironは、Dellの一般消費者をターゲットにしたメインストリーム市場向けノートPCのブランドになる。今回Dellが発表したのはInspironブランドの2-in-1型で、7000、5000、3000という日本で言うところの松竹梅のグレードの中でも松に相当する7000シリーズの製品となる新しいInspiron 13/15 7000 2-in-1(2019モデル)だ。
Inspiron 13/15 7000 2-in-1(2019モデル)の特徴は、アクティブペンを本体に収納できることだ。MicrosoftのSurfaceシリーズが典型例だが、アクティブペンが付属するPCは少なくないが、多くの場合はペンは収納できず、マグネットでサイドに貼り付けるという製品が多い。この場合、机の上に置いておく場合には問題ないのだが、そのまま鞄に入れると、鞄の中で取れてしまい、いざ使おうとした時には行方不明というのがよくあるパターンだ。
また、LenovoのThinkPad X1 Yogaシリーズのように、本体にペンを内蔵できる製品も少なくない。しかし、その場合には、昔のPDAに付属していたような細く短いペンで、長時間入力にはあまり向いていないペンになる。この場合は、ユーザーは別途フルサイズのペンを購入して鞄に入れて持ち歩くという使い方になるだろう。
ライルズ氏によれば、Inspiron 13/15 7000 2-in-1(2019モデル)はその2つの課題を解決した製品で、「アクティブペンはヒンジ部分にマグネットで格納される。これにより、クラムシェル型であっても、タブレットであってもテントモードであっても素早く取り外して使うことができる」とのことだ。
ヒンジ部にマグネットでホールドされるかたちになっているので、使い終わったらしまっておくことができるし、クラムシェルの状態で閉じておけば、ペンは内側に入るので、鞄の中で取れてしまって行方不明という事態も防ぐことができる。言われてみればなんてこともないことだが、とても画期的な発想といえる。
ライルズ氏によればペンなしも選ぶことは可能ということで「ペンなしを選んだ場合には、ペンの収納場所は普通のカバーになる」とのことなので、ペンを選ばない場合には普通のタッチ2-in-1デバイスとしても使うことができる。
なお、別記事でも説明したとおり、Inspiron 13/15 7000 2-in-1(2019モデル)の販売は6月~7月が予定されており、詳細なスペックはそれに併せて公開される予定だ。