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Intel、ゲーマー向け次世代GPU「Arc」をチラ見せ。ハイエンドまで対応可能な伸縮アーキテクチャ

Intel Arcのブランドで提供されるXe-HPG(出典:Intel Architecture Day 2021)

 Intelは、最新GPUアーキテクチャ「Xe」ベースの単体GPUとなる「Xe-HPG」の構想を、昨年(2020年)のArchitecture Dayで公開。今週の頭にはそのブランド名が「Intel Arc」となり、第1弾製品を2022年の第1四半期に投入すると明らかにしている。

 そして、Intelがオンラインで開催した「Intel Architecture Day 2021」において、そのIntel Arcのベースになっている「Xe-HPG」のアーキテクチャの概要が公開された。

Xe-HPGは「16のベクター/マトリックスエンジン > 4つのXe-core > 8つのレンダースライス」という階層構造

Xe-core(出典:Intel Architecture Day 2021)

 Intel Arcとして、来年(2022年)の第1四半期に提供されるのが、開発コードネームで呼ばれる単体GPUの「Alchemist」(アルケミスト)だ。アーキテクチャは昨年公開されたXe-HPGがベースになっている。

 Xe-HPGの最小単位となるのが、Xe-Coreと呼ばれる演算ブロックで、1つあたり256bitの演算が可能なベクターエンジンが16基、XMX(Xe Matrix eXtensions)と呼ばれるエンジンあたり1,024bitの演算が可能なマトリックスエンジンが16基、そしてL1キャッシュとシェアードローカルメモリから構成されている。

レンダラースライス(出典:Intel Architecture Day 2021)

 さらに、4つのXe-Coreで構成されるのがレンダースライスで、Xe-Coreのほかに4つのサンプラ、ジオメトリエンジン、ラスタライザエンジン、ピクセルバックエンドなどのDirectX 12 Ultimateに対応するための固定機能、そしてリアルタイムレイトレーシングに対応するためのレイトレーシングユニットが4つ用意されている。

8つのスライスまで伸縮可能な仕組み(出典:Intel Architecture Day 2021)

 レンダースライスは最大8つの構成を取ることが可能で、その数を増減することで、ハイエンド向けからエントリーまで幅広いレンジの単体GPUに派生できる特徴を備えている。つまり、NVIDIAやAMDのGPUと同じように、伸縮可能なアーキテクチャになっているということだ。

クロック周波数や電力効率はXe-LPの1.5倍(出典:Intel Architecture Day 2021)
TSMCのN6ノードで製造される(出典:Intel Architecture Day 2021)

 Alchemistは、TSMCのN6ノード(6nmプロセスルール)を利用して製造される。N6に最適化されたデザインを採用することで、Intelの10nm SuperFinで製造される従来製品の単体GPU(Iris Xe MAX、開発コードネームDG1)と比較して、同じ電圧であればクロック周波数は1.5倍高く設定可能で、電力効率も1.5倍になっている。

Xe-HPGのロードマップ(出典:Intel Architecture Day 2021)

 なお、Intelは今後Xe2-HPGのアーキテクチャに基づいて「Battlemage」、Xe3-HPGに基づいた「Celestial」、次世代のXeアーキテクチャに基づいた「Druid」という製品を計画しており、長期に渡ってゲーミング向けGPU製品に専念していく姿勢を明らかにしている。

高品質なアップスケーリング機能「Xe SS」を提供

ユニファイドドライバ(出典:Intel Architecture Day 2021)

 GPUソフトウェア開発へも力を入れており、Xe-LPがベースになっている第11世代Coreの内蔵GPUや、Iris Xe MAXのドライバも従来よりも早いタイミングでアップデートをかける予定としている。

 IntelもNVIDIAやAMDと同じように、同じXeアーキテクチャベースの製品であれば、同じデバイスドライバが利用できる「ユニファイドドライバ」を既に実現しており、今後ゲーミング向け単体GPUが登場しても、PC用のプロセッサに内蔵されている内蔵GPUと単体GPUが、1つの同じドライバを利用可能になる。

 そして、ドライバの機能向上にも取り組んでおり、ゲーム配信機能や性能チューニング機能などのユーザー体験の改善を行なうほか、Unreal Engineなどのゲームエンジンへの最適化、DirectX 12 UltimateやVulkanなどの最新APIへの対応も積極的に進めている。

Xe-SS(出典:Intel Architecture Day 2021)
Xe-SSの仕組み(出典:Intel Architecture Day 2021)
負荷はほぼ変わらないが表示品質が向上(出典:Intel Architecture Day 2021)
Xe SSのSDKを提供開始(出典:Intel Architecture Day 2021)

 今回Intelはソフトウェア面でのアップデートとして「Xe SS」(Xe Super Sampling)の導入を明らかにした。

 Xe-SSはニューラルエンジンを利用した高性能なアップスケーリング機能で、ディープラーニングを利用して低解像度なイメージを高品質で高解像度なイメージへとアップスケーリングする。

 レンダリングエンジンへの負荷は低いままゲームを実行することができ、表示品質は向上するがフレームレートは高いままゲームをプレイできる。

 ディープラーニングの処理はXMXを利用するか、DP4aを利用可能で、ゲーム開発者などにXe SSを実装するために必要となるSDKは、XMX版が今月から、DP4a版が今年の末までに提供する計画になっている。