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インテル日本法人の新社長に元ソニーVAIO担当の鈴木国正氏

 インテル株式会社は、11月1日より同社代表取締役社長に元ソニー出身の鈴木国正氏が就任すると発表した。これに先立ち、24日に都内で記者会見を開催した。

 鈴木氏は1984年にソニーに入社し、役員などを歴任。1999年から2000年代半ばまではVAIO事業本部で製品開発などにも携わった。以降、PlayStationやXperia事業も経験しており、いわばソニーのコンシューマコンピューティングデバイスに一通り携わったことのある人物である。

 発表会の冒頭では、鈴木氏の直属上司に当たる予定の米Intel セールス&マーケティング統括本部 副社長 兼 グローバル・マーケッツ&パートナーズ 本部長のシャノン・ポーリン氏がコメント。

シャノン・ポーリン氏

 「鈴木氏は採用のプロセスではじめて知り合ったのだが、役職に大きな貢献が期待できる人物である。われわれは当初より、インテルをよく理解していて、なじみを持っている人を探していた。日本はインテルにとって重要な市場である。また、人工知能や機械学習、データセンターなどは、インテルの今後にとっては極めて重要な技術であり、これから前進していくために、適切なリーダーが必要だった。

 また、日本のモノづくりの会社との連携といったものも重要視した。日本の社長は多側面を持ち、日本のお客様、パートナー、大手企業、販売店、フォーチュン2000の企業を相手にしなければならない。これに適任した鈴木氏に出会えてよかった。

 また、これまでの半年間、日本の臨時社長に就いたスコットオーバーソン氏にも感謝したい。よい実績を残した。アメリカに戻り、別の役職につくことになる」とした。

スコット・オーバーソン氏

 現インテル株式会社 代表取締役社長のスコット・オーバーソン氏は「私が就任した半年間、日本における新たな市場の創出に携われてうれしく思う。インテルの社長として楽しい時を過ごせた。日本経済は世界で第3位、PCもサーバーも世界第3位の規模である。また、これとは別に自動車においてもイノベーションが進んでいる。就任の間、日本の市場について深く学ぶことができ、さらに日本の文化を体感できた。私は日本の文化や人々を高く評価しており、日本の方々に感謝したい。

 新しい指導者として鈴木氏が就任するが、パートナー、政府、お客様との関係を深め、インテルに対して前向きな影響を与えるだろう。また、日本の社会全体においても、前向きな影響を与えることに期待している」と語った。

鈴木国正氏

 鈴木氏は、「私は今年(2018年)の3月末でソニーの本体の方はリタイアして、4月からソニー生命のアドバイザーとして、海外展開などのミッションを担当してきたが、落ち着いた頃にインテルからお話が来て、結果としてこういう場でイントロダクションを受けることになった。私はソニーでキャリアを終わらせるつもりだったが、3つの理由で継続することにした。

 1つ目だが、私は1999年あたりから、ソニーのなかでVAIOの事業に携わり、約10年間はインテルと深く関わってきた。そのなかで、パートナーとしてのインテルが魅力的に感じた。それは提携のなかで、本社の人間の顔が浮かぶ、インテル日本法人の人々の顔が浮かんでくることだ。それだけインテルに対して強い印象を持っていた。今回の就任後も、すぐにこの企業に溶け込めるのではないかと、魅力的に感じたからである。

 2つ目は、ソニー時代に、PC、スマートフォン、PlayStationなどの事業において、チーム一丸となって変革を推し進めててきた自分の経験と、インテルがこの5~6年のあいだに行おうとしている変革--つまりPCセントリックからデータセントリックへの変革--と似ていると感じたこと。こうした変革は“言うがやすし、行なうは難し”だが、こうした自分の経験は、インテルのチームと同じ言葉とアウトラインを共有できるのではないかと考えたことだ。

 3番目は社会的な変革が背景にあること。今は第4次産業革命といわれており、AIだったりデータだったり、コネクテッドだったりするわけだが、Society 5.0と言われるなかで、間違いなくほぼすべての企業がなんらかの影響を受けるのではないかと考えている。

 第4次産業革命やSociety 5.0の最終的な絵は、人々によって異なるかもしれないが、変革は続けていくものだ。そのなかで、日本の企業の経営が変わる、形が変わる、変わらなくても、何か足される、進化することといったことが生まれる。その変革のなかで、インテルはシリコンそのものを製造する立場として、担うものが必ず存在すると考えた」とした。

 こうした背景をもとにした同氏の今後の抱負だが、「インテルは、こうした変革のなかで、本格的で、信頼される、ニュートラルな立場であらゆる企業を支援するアドバイザーになることを目指している。つまり、大きなマクロのなかで、インテルの企業が担う役割を果たすことを実現したい、これからは本格的にBtoBを学ばなければならないが、現行のチームの人たちと動くなかで、インテル株式会社を“本格的なトラステッドアドバイザーベースドカンパニー”ににしていきたい。これが日本の企業の発展、社会の貢献にもなると思っている。私は今後、ソニーの豊かな経験を活かし、インテルの強さを足し算して、こうした夢を実現したいと思っている」とした。

パートナーから見たインテルという経験を活かす

 質疑応答では、以下のような質問と回答があった。

--パートナーからシリコン企業で働くことが増えているが、今までOEM側からインテルをどう見てきたのか、今後その経験をどう活かすのか。

鈴木氏:深い結びつきがあったから1999年から2000年の半ばまでだった。私はPC全盛期からスマートフォンへの変化を見てきた。インテルはシリコンバレーの雄とも言える企業だが、ソニー時代には非常に深いコラボレーションによるプロジェクトが存在した。そのなかで、“インテルのビジネスユニット側の顔が見える”ということは、大変印象だった。直接ビジネスユニットの人々たちと関わり、PCなどのデバイスをどうやったらユーザーに使ってもらえるようになるのかということをやっているなかで、顧客志向のマインドセットが強いことが伺えた。

 私が所属する日本は、多くの人々の顔が浮かぶ。いずれの方々もエゴ意識が強くなく、PCをもっと広めなければならないということだけを考えていた。Intel Insideといったプログラムは極めて積極的に議論し尽くした。

 インテルからふと社長の話が来た時に、PCセントリックからデータセントリックに変わってきたなかで、インテルが文化を進化させて、PCで培ったものと、データセントリックの経験は、異なったかたちで活かせるのではないかと考えている。パートナーと新しいインテルとの関係が築けるのではないかと思っている。

--インテルを取り巻く環境と今後課題はなにか。

鈴木氏:まだ就任もしてないので、なかの情報はまったく得ていない。11月1日以降、いろんなことを学んでいくことだろう。公開されている情報のなかからで言えば、多くの機会があるのではないかと考えている。

 まずは、IoTをどうするのか、グラフィックスをどう作りこんでいくか、5Gのエリアでどうするか、自動運転などが、1つ大きなチャレンジではないかと考えている。意味のある議論はこれからだし、これからいろんな企業とお話できるのではないかと考えている。

--VAIOを経験した立場から、インテルのなかで何を活かせるのか。

鈴木氏:これまでの経験が全部活きるとは思っていない。過去を振り返ると、いつも新しいチームと新しいことにチャレンジしていたのではないかと思っている。私はカテゴリ1つ1つよりも、物事がどう作られるべきか、チームがどうあるべきか、守っていく人たちを次の段階にどう進化させるべきかを考えてきた。大きな産業革命は間違いなくやってきているなかで、私の経験は、すべての人たちになんらかの変化をもたらせるのではないかと考えている。