笠原一輝のユビキタス情報局

Pro XとPro 8がニコイチになった「Surface Pro 9」と、Intelだけになった「Surface Laptop 5」

Microsoftが発表したSurface Pro 9、ポートの配置はSurface Pro X譲り、厚みはSurface Pro 8譲りという筐体を採用している(写真提供:Microsoft)

 米Microsoftは、10月12日(現地時間)に報道発表を行ない、2022年モデルのSurface製品を発表した。PC本体としては「Surface Pro 9」、「Surface Laptop 5」そして「Surface Studio 2+」といった製品が発表された。

 本記事ではモバイル製品となるSurface Pro 9、Surface Laptop 5が技術的に見て前世代とどのあたりが違うのかを解説していきたい。

Surface Laptop 5ではAMDの選択肢がなくなり、CPUはIntelの第12世代Core U15のみに

Surface Laptop 5(写真提供:Microsoft)

 以下の図1はSurfaceブランドのモバイル向け製品を、おおむねシャシーの共通性を元に図にしたものだ。

【図1】Surfaceブランドのモバイル製品の進化(筆者作成、拡大可能な大きな画像で開きます)

 今回のアップデートではクラムシェル型のSurface Laptopシリーズ、そしてキーボード脱着式2-in-1型のSurface Proシリーズが更新されている。

 始めにSurface Laptop 5からいこう。基本的にSurface Laptop 5は、Surface Laptop 4のキープコンセプトとなる製品で、筐体のサイズや構造などは基本的にほぼ同じと考えてよい。大きな違いは2点ある。1つはCPUの選択肢からAMD CPUがなくなったこと、そしてもう1つがUSB Type-CポートがThunderbolt 4への対応したことだ。

 Microsoftは、2019年10月に発表したSurface Laptop 3の世代から、AMD Ryzenプロセッサの「AMD Ryzen Microsoft Surface Edition」と同社が呼んでいるカスタムRyzen CPUを15型モデルで採用した。

 詳しくは上記の記事で解説しているように、Picasso(ピカソ)の開発コードネームで知られるZen+世代のRyzen 3000シリーズがベースになっており、Ryzen 7 3780U、Ryzen 5 3580Uという通常のAMDのSKUにはないモデルナンバーがつけられており、通常のCPUに比べてやや高クロックになっていることが大きな特徴になっていた。

 その1年半後、2021年の4月に発表されたSurface Laptop 4ではCPUは開発コードネームRenoir(ルノアール)で知られるZen 2世代のRyzen 4000シリーズに強化され、やはりSurface専用となる「AMD Ryzen Microsoft Surface Edition」が投入された。やはりクロック周波数などが通常のSKUに比べて引き上げられているのは同様だったが、このSurface Laptop 4世代では15型のモデルに加えて、13.5型のモデルでもAMD CPUが投入され、どちらのディスプレイでもIntelの第11世代Core(UP3)ないしはRyzen 4000と2つのCPUから選択できるようになった。

【表1】Surface Laptop 5(13.5型のスペック)
製品名Surface Laptop 5(13.5型)Surface Laptop 4(13.5型)
CPUIntel 第12世代Core(消費者向けCore i7-1255U/i5-1235U、企業向けi7-1265U/i5-1245U)Intel 第11世代Core/AMD Ryzen 4000シリーズ
GPUIntel Iris XeIntel Iris Xe/AMD Radeon Graphics
メモリ8/16/32GB(LPDDR5x)8/16/32GB(LPDDR4X-3733)
ストレージ256GB/512GB/1TB(M.2 NVMe SSD/リムーバブル)256GB/512GB/1TB(M.2 NVMe SSD/リムーバブル)
ディスプレイ13.5型 PixelSense(2,256×1,504ドット、3:2)13.5型 PixelSense(2,256×1,504ドット、3:2)
タッチ/ペン10点マルチタッチ/Surface Pen10点マルチタッチ/Surface Pen
カメラ(Windows Hello対応有無)720p HD(Hello対応)720p HD(Hello対応)
USB-A11
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2)1
USB Type-C(TB)1(TB4)
オーディオ3.5mmジャック3.5mmジャック
マイクデュアル 遠方界スタジオマイクデュアル 遠方界スタジオマイク
その他ポートSurface ConnectポートSurface Connectポート
Wi-FiWi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
BluetoothBluetooth 5.1Bluetooth 5.0
センサー環境光環境光
セキュリティfTPM2.0(消費者向け)/HW TPM 2.0(企業向け)TPM2.0
キーボードフルサイズフルサイズ(バックライト/1.3mmストローク/ソフトタッチ)
ポインティングデバイス高精度タッチパッド高精度タッチパッド(115×76.66mm)
ACアダプタ60W(5W USB-A端子)60W(5W USB-A端子)
バッテリ最大18時間最大17時間(Coreモデル)/最大19時間(Ryzenモデル)
カラープラチナ(アルカンターラ)/セージ/マットブラック/サンズストーンプラチナ/アイスブルー(アルカンターラ)/マットブラック/サンズストーン
サイズ(幅×奥行き×高さ)308×223×14.5mm308×223×14.5mm
重量1.272kg(アルカンターラ)/1.297(メタルモデル)1.265kg(プラチナム/アイスブルー)/1.288kg(マットブラック/サンズストン)
OSWindows 11 Home/Windows 11 Pro/Windows 10 ProWindows 10 Home(消費者向け)/Windows 10 Pro(企業向け)
【表2】Surface Laptop 5(15型のスペック)
製品名Surface Laptop 5(15型)Surface Laptop 4(15型)
CPUIntel 第12世代Core(消費者向けCore i7-1265U)Intel 第11世代Core/AMD Ryzen 4000シリーズ
GPUIntel Iris XeIntel Iris Xe/UHD、AMD Radeon Graphics
メモリ8/16/32GB(LPDDR5x)8/16/32GB(Intel版:LPDDR4X-3733、AMD版:DDR4-2400)
ストレージ256GB/512GB/1TB(M.2 NVMe SSD/リムーバブル)256GB/512GB/1TB(M.2 NVMe SSD/リムーバブル)
ディスプレイ15型 PixelSense(2,496×1,664ドット、3:2)15型 PixelSense(2,496×1,664ドット、3:2)
タッチ/ペン10点マルチタッチ/Surface Pen10点マルチタッチ/Surface Pen対応
カメラ(Windows Hello対応有無)720p HD(Hello対応)720p HD(Hello対応)
USB-A11
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2)1
USB Type-C(TB3)1(TB4)
オーディオ3.5mmジャック3.5mmジャック
マイクデュアル 遠方界スタジオマイクデュアル 遠方界スタジオマイク
その他ポートSurface ConnectポートSurface Connectポート
Wi-FiWi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
BluetoothBluetooth 5.1Bluetooth 5.0
センサー環境光
セキュリティfTPM2.0(消費者向け)/HW TPM 2.0(企業向け)
キーボードフルサイズフルサイズ(バックライト/1.3mmストローク)
ポインティングデバイス高精度タッチパッド高精度タッチパッド(115x76.66mm)
ACアダプタ60W(5W USB-A端子)60W+5W(USB-A)
バッテリ最大17時間16.5時間(Coreモデル)/17時間(Ryzenモデル)
カラープラチナ/マットブラックプラチナ/マットブラック
サイズ(幅×奥行き×高さ)340×244×14.7mm339.5×244×14.7mm
重量1.56kg1.542kg
OSWindows 11 Home/Windows 11 Pro/Windows 10 ProWindows 10 Home(消費者向け)/Windows 10 Pro(企業向け)

 しかし、今回の世代では、CPUはIntelのみの選択肢になり、Alder Lakeの開発コードネームで知られる第12世代Coreへと強化されている。ただし、Surface Laptop 4で採用されていた第11世代CoreではUP3というTDPが12W~28Wとより広いレンジに設定できていたCPUが採用されていたのに対して、Surface Laptop 5で採用されているのはU15と通称される、Uシリーズの製品うち、TDPが15Wに設定されているモデルとなる。

Pコア2つ、Eコア8つのCore i7-1255Uは、Pコア4つの第11世代Coreを上回る性能を発揮する

第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake)

 TDPが下がったように見えるので、性能が下がっているように感じるかもしれないが、実際にはそんなことはない。第12世代CoreはIntelがパフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャと呼んでいる2種類のCPUコアがあり、レイテンシ重視の処理で効果を発揮するPコアと、並列実行時の効率重視のEコアという2種類のCPUコアが内蔵されている。

 このコア構成は、シリーズによって異なっており、TDP 28WのP28(通称)と、TDP 15WのU15シリーズでは以下のような違いがある。

【表3】P28とU15の違い(いずれもCore i7とi5のみ)
通称P28(i7とi5のみ)U15(i7とi5のみ)
正式名称PシリーズUシリーズ
Pコア4~62
Eコア88
ベース電力(TDP/PL1)28W15W
ターボ時最大電力64W55W

 いずれもCore i7とCore i5だけで比較すると、P28は確かにPコアが6コア(最上SKUのみ)ないし4コアになっており、U15のPコアが2コアよりは多くなっている。しかし、Eコアに関してはP28と同じように8コアになっており、マルチスレッドで処理する時の性能が上がっている。

 同じCore i7-1255Uを搭載した製品でCinebench R23を実行した結果が以下の通りだ(Surface Laptop 5の結果ではない、念のため)。

グラフ1(Core i7-1280P=ThinkPad X1 Gen 10、Core i7-1255U=HP Elite Dragonfly G3、Core i7-1185G7=Surface Pro 8)

 これを見れば分かるように、ベースパワーが28WになっていてPコアが3倍もあるCore i7-1280Pには及ばないが、第11世代Coreの発表時の最上位であるCore i7-1185G7は上回っていることが分かる。Pコアは4から2に減っているが、8つのCPUコアを搭載しているEコアが追加されたことで、Cinebench R23のようなマルチスレッドで実行するアプリでは性能が向上しているのだ。

 無論、現代のノートPCのCPU性能は、そのシステムに実装されている熱設計(放熱機構の設計のこと)に依存する。このため、どういう性能をもっているのかは実機を待つ必要があるが、少なくとも従来世代より低いということはないと考えられる。

 なお、従来のモデルではUSB Type-CはThunderbolt 3/4には対応していなかった。しかし、今回のSurface Laptop 5では、CPUにThunderbolt 4のコントローラを内蔵しているIntel CPUだけになったこともあり、Thunderbolt 4対応になった。

Surface Pro 8の後継でもあり、Surface Pro Xの後継でもあるSurface Pro 9

Surface Pro 9、写真をよく見ると、右側にはSurface Connect端子しかないのが分かる(写真提供:Microsoft)

 今回のモバイル製品のもう1つは「Surface Pro 9」だ。このSurface Pro 9がとてもユニークなのは、数字番号から明らかなようにSurface Pro 8の後継でもあり、そしてギリシャ数字では1つ多い数字の「X」(テン)を持つ「Surface Pro X」の後継でもある点だ。Surface Pro 8の後継として考えると「+1」で、Surface Pro Xの後継として考えると「-1」となる。

【表4】Surface Pro 9、Surface Pro 8のスペック
製品名Surface Pro 9Surface Pro 8
CPU第12世代Coreプロセッサ(消費者向けCore i7-1255U/I5-1235U、企業向けCore i7-1265U/I5-1245U)、Microsoft SQ3(QCT)第11世代Coreプロセッサ(i5-1135G7/i7-1185G7、消費者向け)(i3-1115G4/i5-1145G7/i7-1185g7、企業向け)
GPUIntel Iris Xe(i5/i7)、Adreno 8cx Gen 3(QCT)Intel UHD(i3)/Iris Xe(i5/i7)
メモリ8/16/32GB(LPDDR5、Intel)、8/16GB(LPDDR4x、QCT)8GB/16GB/32GB(LPDDR4x)
ストレージ128GB/256GB/512GB/1TB(Intel)、128GB/256GB/512GB(QCT)128GB/256GB(Wi-Fi/LTE)、512GB/1TB(Wi-Fiのみ)
ディスプレイ13型 PixelSense Flow/120Hz/2,880×1,920ドット(267ppi)13型 PixelSense Flow/120Hz/2,880×1,920ドット(267ppi)
タッチ/ペン10点マルチタッチ/Surface Slim Pen 2(別売)10点マルチタッチ/Surface Slim Pen 2(別売)/SurfaceDial対応(別売)
カメラ(Windows Hello対応有無)1080p前面カメラ(Hello対応)/4K 背面カメラ(1000万画素)/Surface Studio対応(QCTのみ)1080p前面カメラ(500万画素、Hello対応)/4K 背面カメラ(1000万画素)
USB Type-C(USB 3.1 Gen1 or Gen2)2(QCTのみ、USB 3.2)
USB Type-C(TB)2(TB4、Intelのみ)2(TB4)
オーディオ端子3.5mmヘッドフォン
マイクデュアルマイク(遠方界対応)デュアルマイク(遠方界対応)
その他ポートSurface Connect(1)、Surface Typeカバーポート(1)Surface Connect(1)、Surface Typeカバーポート(1)
Wi-FiWi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
BluetoothBluetooth 5.1Bluetooth 5.1
WAN5G対応(5G、ミリ波対応可能=市場により異なる、QCT)、Intelモデルにも対応モデルありQualcomm Snapdragon X20 LTE Modem
対応LTEバンド1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/19
/20/25/26/28/29/30/38/39/
40/41/46/48/66/71
1/2/3/4/5/7/8/12/13/14/19
/20/25/26/28/29/30/38/39/
40/41/66
対応5Gバンド(サブ6)n1/n2/n3/n5/n7/n8/n20
/n25/n28/n38/n40/n41/
n66/n71/n77/n78/n79
センサー加速度計/ジャイロスコープ/磁力計/環境光センサー加速度計/ジャイロスコープ/磁力計/環境光センサー
TPMTPM 2.0/Pluton(QCT)TPM 2.0
キーボードSurface Pro Signature Keyboard(別売)Surface Pro Signature Keyboard(別売)
ポインティングデバイスSurface Pro Signature Keyboard(別売)Surface Pro Signature Keyboard(別売)
ACアダプタ60W(5W USB-A端子)60W(5W USB-A端子)
バッテリ(サイズ/駆動時間)不明/最大15.5時間(Intel)、不明/最大19時間(QCT)50.2Wh/最大15時間
カラープラチナ/グラファイト(Intelのみ)/Sapphire(Intelのみ)/フォレスト(Intelのみ)プラチナ/グラファイト
サイズ(幅×奥行き×高さ)287×208×9.4mm287×208×9.4mm
重量879g(Intel)/883g(QCT/ミリ波)/878g(QCT/サブ6)891g
OSWindows 11 Home/Windows 11 Pro/Windows 10 ProWindows 11 Home/Windows 11 Pro/Windows 10 Pro

 このため、Surface Pro 9は2種類のCPUが用意されており、1つはSurface Pro 8の後継としてのIntelの第12世代Coreを搭載したIntel版(製品名としてはSurface Pro 9)、そしてもう1つがSurface Pro Xの後継としてのQualcommのSoCをベースにしたMicrosoft SQ3を搭載したSQ3版(製品名としてはSurface Pro 9 with 5G)。

 第12世代Coreに関してはU15になり、性能などに関する議論はSurface Laptop 5と同じになるので、Surface Laptop 5の項をご参考にしていただきたい。

 ここでは、新しいMicrosoft SQ3に関して解説していきたい。Microsoftは、2019年に発表したSurface Pro Xには「Microsoft SQ1」、2020年のリフレッシュモデルで「Microsoft SQ2」という命令セットにArmアーキテクチャを採用したオリジナルのSoCを採用していた。いずれもQualcommのSnapdragon 8cx(SQ1)、Snapdragon 8cx Gen 2(SQ2)をベースに、CPUのクロック周波数などを引き上げた製品で、今回のSurface Pro 9 with 5Gに搭載されているSQ3も同様に、Snapdragon 8cx Gen 3をベースにしていると考えられる。

 Microsoftの資料にはGPUが「Microsoft SQ3 Adreno 8cx Gen 3」であると書かれているので、そう考えてまず間違いないだろう(というよりも、Surface Proシリーズに採用されるようなQualcommのWindows向け製品は、現状Snapdragon 8cx Gen 3以外にはない)。なお、Snapdragon 8cx Gen 3の特徴と性能に関しては以前の記事が詳しいので、ご興味がある方はそちらをご参照いただきたい。

SQ3搭載モデルはいずれも5Gに対応

Microsoft SQ3のベースになっていると考えられるSnapdragon 8cx Gen 3

 このMicrosoft SQ3の、第12世代Coreにはない特徴は3つある。1つはWindows 11 2022 Update(いわゆる22H2)からサポートされた「Windows Studio」に対応していることで、2つ目がMicrosoft Plutonに対応していること、そして最後にSQ3モデルは5Gの機能が標準搭載であることだ。

 Microsoft SQ3には、Qualcomm AI EngineというNPU(Neural Processing Unit)相当の機能が用意されている。これは、Qualcommが用意しているソフトウェアエンジンがCPU、GPU、DSPなどを異種混合に利用する環境を提供し、ハードウェアを利用してAIの推論処理を高速に行なうことを可能にする。

 Windows 11 2022 UpdateではこのQualcomm AI EngineをNPUとして利用して、画像認識や音声解析などを行なう「Windows Studio」と呼ばれる機能が用意されており、Surface Pro 9 with 5Gもそれを活用できる。

 具体的にはTeamsなどのビデオ会議で、前面カメラを利用したオートフレーミング、視線追従、音声のフォーカス機能、背景ぼかしなどの機能を利用できる。そうした機能がOS標準の機能として、CPUやGPUなどに大きな負荷をかけずにできるわけだ。

 Intel製品で、Windows StudioをサポートするNPUがCPUに統合されるのは、次々世代(第14世代Core ?)となるMeteor Lakeであることが既に発表されており、それまではこのWindows StudioはSnapdragonだけの特徴となりそうだ。

 もう1つの特徴は、Microsoft Plutonの機能をサポートしていることだ。Microsoft Plutonは簡単に言ってしまえば、一般的なノートPCに搭載されているTPM 2.0(単体チップないしはSoCに内蔵されたfTPM)の強化版と言って良い存在で、TPM 2.0相当の機能をサポートしながら機能拡張が可能になっていることが大きな特徴だ。近い将来に機能のアップグレードなどが入る場合には、Windows Updateを通じて提供されることになる。

 また、Microsoft SQ3を搭載したモデルはSurface Pro 9 with 5Gという製品名が示すように、5Gのセルラー機能が標準搭載されている。ミリ波の搭載モデルも用意されているが、これはミリ波の5Gがサービスインされている市場のみで提供される(日本も通信キャリアがミリ波のサービスを提供しているが、原稿執筆時点では日本でミリ波モデルが提供されるかは不明)。

 ミリ波に対応している場合には下り最大4.2Gbps、サブ6のみの場合には下り最大2.8Gbpsでの通信が可能になっている(いずれもキャリアアグリゲーションを利用した場合なので、この速度が出せるかどうかは通信キャリアのサービス状況に依存する)。

筐体もSurface Pro 8とSurface Pro XをニコイチにしているSurface Pro 9

右側ポートにはUSB Type-Cが2つあることが分かる(写真提供:Microsoft)

 最後にSurface Pro 9の筐体に関しても触れておきたい。SoCがIntelとQualcommがニコイチされたのと同じように、実は筐体の方もSurface Pro 8とSurface Pro Xのニコイチになっている。Surface Pro 8とSurface Pro Xの筐体をそれぞれ表にすると以下のようになっていた。

【表5】Surface Pro 8とSurface Pro Xをニコイチして作られたSurface Pro 9の筐体
Surface Pro 9Surface Pro 8Surface Pro X
幅×奥行き287x208 mm287x208 mm287x208 mm
厚さ9.4mm9.4mm7.3mm
左側端子USB Type-C×23.5mmヘッドフォンUSB Type-C×2
右側端子Surface ConnectUSB Type-C×2、Surface ConnectSurface Connect

 Surface Pro 8もSurface Pro Xも幅×奥行きは287×208mmとなっており、今回発表されたSurface Pro 9もそれは同様だ。このため、Surface Pro 8とSurface Pro Xと共通で利用できたSurface Pro Signature KeyboardがSurface Pro 9でも利用できる(ただし、Surface Pro 8/Xがそうだったように、底面のサイズとキーボード用の端子が異なるためSurface Pro 7+以前の脱着型キーボードは利用できない)。

Surface Pro 8とSurface Pro Xの左側面。上がSurface Pro 8で 3.5mmヘッドフォン端子のみがある。下はSurface Pro XでUSB Type-C×2がある。厚みは上のSurface Pro 8が9.7mm、Surface Pro Xが7.3mmとやや薄いことが分かる。Surface Pro 9はこのSurface Pro Xの左側にUSB Type-C端子が2つあるのを継承するが、厚さはSurface Pro 8と同じ9.7mmになる
Surface Pro 8とSurface Pro Xの右側面。上がSurface Pro 8で、USB Type-C×2とSurface Connectがある。下がSurface Pro XでSurface Connectのみがある

 Surface Pro 9の厚さは、Surface Pro 8と同じ9.4mmになっており、Surface Pro Xの7.3mmに比べて厚くなっている。厚さが増えているのはIntel版だけでなく、SQ3版でも同様で、熱設計の共通化とバッテリを共通化したため、こうしたスペックになっているのだと考えることができる。

 面白いのは、Surface Pro 8と同じ外形サイズ(縦横厚さ)になったのに、端子類の配置はSurface Pro Xと同じになっていることだ。Surface Pro Xでは本体の左側面にはUSB Type-Cが2つ、右側面にSurface Connect(ACアダプタやドッキングステーション用のプロプライエタリな端子)という形になっていたが、Surface Pro 8は左側面には3.5mmヘッドフォン端子があり、左側面にUSB Type-C×2とSurface Connectになっていた。

 今回のSurface Pro 9では、Intelモデルも、SQ3モデルもSurface Pro Xと同じ端子配置になっている。このため、Surface Pro 9にはヘッドフォン端子がない。

 このように、Surface Pro 9はCPU的な意味でも、筐体的な意味でも、Surface Pro 8とSurface Pro Xをニコイチした製品で、どちらのユーザーにとっても正統的な後継と言えるだろう。

Surface Pro 9(写真提供:Microsoft)